ひよこクスマ

第9話 格好いい師匠

市場を離れた後も、あの悪意と嘲笑が入り混じった空気は、まるでふゆこの体にまだ粘り付いているかのようだった。

先ほどまで王都に好奇心旺盛だったふゆこも、今ではまるで豪雨に打たれて萎れた小さな花のようだ。ふゆこはずっと俯いたまま歩き、元気だったはずの柳松茸（ヤナギマツタケ）も力なく垂れ下がり、ふゆこの重い足取りに合わせて頼りなげに揺れている。ふゆこの口からは、蚊の鳴くようなか細い呟きが、絶えず繰り返されていた。

「全部わたしのせい……わたしが落ちこぼれだから……」

その耳障りな言葉は、ふゆこにすべて受け止められ、自分自身への最も残酷な審判へと内面化されていく。クスマはふゆこの隣を歩き、ふゆこのその様子を見て、胸に言いようのない息苦しさを感じていた。

クスマは何かを言おうとしたが、自分がいかに口下手であるかに気づくだけだった。「自信を持て」などという空虚な大義名分は、クスマには口にできなかったし、言っても無駄だと感じていた。

─ (•ө•) ─

二人はそのまま無言で宿屋の入口まで戻ってきた。まさに別れてそれぞれの部屋に戻ろうとしたその瞬間、クスマはふゆこの陰鬱な後ろ姿を見て、ついに耐えきれなくなった。
クスマはどう慰めればいいのか分からなかったかもしれない。だが、クスマは、今、自分は何かをしなければならない、ということだけは分かっていた。

「ふゆこ！」

クスマは深呼吸をし、思い切り自分の頼りない胸を叩き、彼特有の、根拠のない自信に満ちた大声で言った。

「約束する！今日から、俺が君の師匠だ！俺が持つ全ての『忍者』の技を、君に教えてやる！」

クスマは胸を張り、頭のもやしも元気に揺れて、まるで彼を応援しているかのようだった。クスマの声は、明るい肯定に満ちていた。

「安心しろ！保証する、絶対に君の従兄さん達に見返りを食らわせてやる！」

生まれてこの方、ふゆこは誰かが自分にこれほど肯定的で、希望に満ちた言葉をかけてくれたことなど一度もなかった。

「師匠」という言葉は、彼女にとってそれほどまでに馴染みがなく、そして、それほどまでに温かかった。クスマが描いた未来はあまりに漠然としていて、実現不可能な絵に描いた餅のようだったが、純粋なふゆこはそれでも信じることを選んだ。

ふゆこの翳っていた瞳に再び一筋の光が宿り、拳を固く握りしめ、揺るぎない眼差しでクスマを見つめ、小声ながらも力強く言った。

「師匠、私、絶対に努力して、従兄さん達に認めてもらいます！」

─ (•ө•) ─

ふゆこが元気を取り戻したのを見て、クスマは満足した。彼は「師匠」としての威厳と格好良さが、瞬く間に最高潮に達したように感じた。

この「師弟関係」の成立を祝い、そしてふゆこに「格好いい師匠」の第一印象を与えるため、クスマは突然閃き、宿屋の二階にある彼の部屋の窓を指差した。

「ふゆこ、よく見てろ！本物の忍者は、部屋に戻る時でさえ、『カッコよさ』にこだわるもんだ！」

言い終わると、クスマは自分自身が最高に格好いいと思っている忍者の構えを取り、弟子を前に、驚天動地の「壁走り」を披露するつもりだった。

クスマは数歩助走をつけ、黄色い稲妻のように宿屋の外壁にある高い木製の花棚へと跳びかかった。彼は軽やかに花棚に乗り、爪先でトンと一蹴りし、その勢いを借りて二階の窓から格好良く部屋に飛び込む算段だった。

クスマはもう、脳内で完璧に着地した後、振り返ってふゆこに深遠な笑みを浮かべるシーンまで予行演習済みだった。

しかし、クスマが高く跳び上がり、完璧な着地を披露しようとしたその瞬間、足元に奇妙な、ぬるりとした感触が伝わった。

（ん？バナナの皮？）

その考えがクスマの脳裏をよぎった瞬間、彼は心の中で「まずい」と叫んだが、時すでに遅し。

「おわっ！」

クスマは短い驚きの声を上げた。彼の完璧な忍者のポーズは瞬時に崩れ、体は空中で滑稽に一回転し、そして「ドサッ！」という音と共に、ひよこ一羽が大の字になって、見事に、そして非常に無様に、ふゆこの足元にあったミカンが満載の木箱へと、正確に落ちていった。

丸々としたミカンが、一瞬にして黄色い津波のようにクスマを完全に飲み込んだ。ただ、彼の罪のないもやしだけが、ミカンの山からひょっこりと顔を出し、ぷるぷると震えていた。

ふゆこは呆然とこの光景を見ていた。元々萎れていた彼女の柳松茸（ヤナギマツタケ）が、まず不思議そうにぴくりと揺れた。

その時、毛むくじゃらの黄色い頭が、地面から顔を出したばかりの筍のように、ミカンの海から必死に頭を擡（もた）げてきた。

クスマの顔には果肉がつき、頭のもやしには滑稽にも一枚の葉っぱがぶら下がっていた。彼は気まずそうにふゆこを一瞥すると、ちょうど彼女の視線と交わった。

その瞬間、ふゆこのずっと俯いていた瞳に、まず抑えきれない笑みが閃き、次いで可愛らしい三日月の形に彎曲した。彼女はもう我慢できず、小さな肩を激しく震わせ、「ぷっ」という音と共に、澄んだ笑い声が銀の鈴のように、初めて何の気兼ねもなく二人の間に響き渡った。

その清らかな笑い声は、一筋の陽光のように、彼女の顔に積もっていた全ての陰鬱を瞬時に溶かした。それと同時に、クスマの目にも、ちょうど隣の屋台の帆布の破れ目から一筋の光が差し込み、ふゆこの横顔に降り注いで、彼女の上がった口角を照らすのが見えた——その瞬間、クスマが見たのは、まさしくふゆこの年齢にふさわしい、純真で輝く笑顔だった。