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第二章 恋
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荒れ果てた戦場。
レヴェリスとルクシアが激しくぶつかり合うその光景を、高台から静かに見下ろす二つの影があった。
女王然とした佇まいの フェリーチェ は、冷ややかな瞳でその戦いを観察していた。
その隣には、無言で周囲を警戒する キリカ の姿。
「……やれやれ。所詮は出来損ない同士の争いね」
フェリーチェはため息をつき、指先で退屈そうに髪を弄ぶ。
すると背後から、落ち着いた声が返った。
「軽々しく言うものではないわ。あれでも必死に戦っているのでしょう?」
反論するのは エリシア。その目は戦いに真剣さを見て取っていた。
フェリーチェは鼻で笑い、視線を逸らす――その瞬間、彼女の瞳が別の人物に釘付けになった。
フェリナ。戦場の端で仲間を支えるように立ち回る少女の姿だ。
「……あら。」
女王はふと目を細め、口元に妖艶な笑みを浮かべる。
「この退屈な劇場の中で、唯一輝いている宝石を見つけてしまったわね」
キリカは眉をひそめたが、主人の言葉には口を挟まない。ただその横顔を見守るだけだった。
やがて戦いは終わり、静寂が訪れる。
フェリーチェはためらいなく戦場を歩き、フェリナの前に立った。
「初めまして……わたくし、フェリーチェと申しますの。ひと目で分かりましたわ。あなたはわたくしの運命の人。どうか、わたくしの隣に――」
しかしフェリナはきっぱりと手を振り、笑顔で答えた。
「ごめん!そういうの、わたし興味ないから!」
空気が一瞬凍りつく。
フェリーチェは言葉を失い、背後でキリカが小さく肩を揺らした。
エリシアは思わず吹き出し、「女王様でも玉砕するのね」と皮肉を漏らす。
フェリーチェはやがてため息をつき、無理に気丈な笑みを浮かべると、背を向けて歩き出した。
「……ふふ、なるほど。ますます欲しくなったわ。振られた程度で諦める女王ではなくってよ」
その声は、まだどこか甘やかで執着の色を帯びていた。
フェリーチェは冷笑を浮かべ、手を掲げた。
「だったら……こうして差し上げますわ!」
放たれたビームが自分とフェリナを包み込み、光が収まったとき――状況は一変していた。
フェリーチェの体を持つ少女がビックリして自分の体を見つめている。
逆にフェリナの体を纏った存在は、妖艶な笑みを浮かべ、女王様の声で告げる。
セリアが目を細めて叫ぶ。
「……入れ替わったな!」
「ご明答~♪」
フェリナの体に宿るフェリーチェは自分の腕を撫で、頬に触れ、満足げに吐息を漏らした。
「なんて見事な肉体……もう返すつもりなど毛頭ございませんわ!」
フェリナの体(中身はフェリーチェ)は、女王様の声で鋭く命じる。
「その体を返しなさい!」
しかし、フェリーチェの体に囚われたフェリナは、両手をぶんぶん振って明るく叫んだ。
「やだよー! もう返さないからっ!」
だが返事はさらに軽やかで陽気だった。
「絶っ対イヤ! これからはわたしがフェリナとして生きてくんだもん! はははははっ!」
狂気じみた笑いが場を震わせる。
だが次の瞬間、セリアが踏み込み、拳を叩きつけた。
バシィッ――!
「だったら……お前を倒すまでだ!」
皆が息を呑む中、殴られた“フェリナの体”は冷笑を浮かべ、指を鳴らした。
「ペナルティ、ですわ」
パチン――。
その合図と同時に、キリカが動きルナを捕縛する。
「くっ……!」
高台に立った“フェリナ”は、勝ち誇った笑みでエヴィたちを見下ろした。
「次元の扉の奥――建物の屋上までいらっしゃい! そこで決着をつけて差し上げますわ!」
その声を最後に姿を消し、残された仲間たちはただ唖然としながらも、戦う覚悟を決めた――。
次元の扉がゆらめき、異様な空気が流れる。
ホノカが前へ踏み出し、勢いよく駆け込もうとしたその時――
「待ちなさい、バカホノカ!」
リーファが彼女の服の裾をぐいっと引っ張る。
「なにすんだよリーファ! あたいがぶっ飛ばしてくりゃ早いんだよ!」
「無策で突っ込むなんて見苦しいですね!」
二人はすぐさま掴み合いになり、火花を散らす。
「やんのかコラ!」
「望むところです!」
その騒ぎにフローラが割って入る。
「いい加減にしなさいよアンタら! 今はケンカしてる場合じゃないでしょ!」
ようやく二人が引き剥がされると、少し離れた場所でフェリーチェの姿をしたフェリナを、エレナが心配そうに覗き込む。
「フェリナ、大丈夫……? 体、変わっちゃってるけど……」
しかしフェリーチェの体に入ったフェリナは、腕を組んで胸を持ち上げるようにしながらにっこり。
「えへへ、この体、なかなかナイスバディだね♪」
「えっ……そ、そういう問題じゃないと思うんだけど……」
エレナは困惑して頭を抱えた。
そこへアクアが前に進み出る。
「とにかく、きちんと作戦を立てましょう。今のままでは危険です」
すると、セリアがにやりと笑う。
「ふふ……いい方法がある」
ホノカが眉をひそめ、すぐさま噛みつく。
「お前の言うことなんか聞きたくねぇ!」
セリアは妖しく微笑んで返す。
「お前らは、これから起こることを何も知らない。だから私が導いてやるのよ」
そして一歩、次元の扉に向かって歩き出す。
「協力しないなら、私一人で行く」
「待って!」
エヴィの声が鋭く響いた。
セリアが振り返ると、エヴィはまっすぐに見つめていた。
「……私、協力したい」
「エヴィ!?」
仲間たちが一斉に声を上げる。
だがエレナが小さく頷き、フェリーチェ姿のフェリナも元気に手を挙げた。
「わたしも賛成だよっ!」
「……私も」アクアが力強く賛同する。
その流れに押されて、フローラも深いため息をつきつつ頷いた。
「仕方ないわね……わたしも賛成」
最後にホノカとリーファが顔を見合わせ、不承不承うなずく。
「チッ……しゃーねぇな!」
「……この選択、後悔しないでくださいよ」
セリアは満足げに笑い、前に出た。
「決まりね。それじゃあ――私の作戦を教えてあげる」
場に緊張が走り、全員の視線が彼女に注がれた。
次元の扉を越え、屋上へと到着する。
そこに姿を現したのは――フェリナの姿をしたフェリーチェと、その傍らに立つキリカ、そして連れてこられたルナだった。
エリシアが険しい目で問いかける。
「……あんた、いったい何のためにこんなことをしてるの?」
すると、フェリーチェの姿をしたフェリナがうっとりとした表情で答える。
「決まってるじゃない……フェリナとの愛のためよ。あの子と私は結ばれる運命なの。たとえ誰に何を言われようと、この体で、あの子を愛し続けるわ……!」
その陶酔した語りに、エリシアとルナは同時に眉をひそめる。
「キモッ……」
「気持ち悪いです……」
二人にあっさり突き放され、フェリナは顔を真っ赤にして怒鳴り返した。
「誰がキモいですって!? これは崇高な愛なのよ!」
だがすぐに表情を切り替え、鋭い目を仲間たちに向ける。
「……もういいわ。あんたたちはさっさと配置につきなさい」
エリシアは肩をすくめながらも一歩前へ。
「……了解。じゃあ、ちょっと見せてあげるわ」
光に包まれた彼女の姿は――**「エリシア・ルナ」**へと変化した。
隣のルナが目を丸くする。
「えっ……な、何それ!? 私!?」
エリシアは得意げに笑みを浮かべる。
「ふふん、そうよ。あんたの味方を騙すための作戦。最高でしょ?」
だが、ルナは目の前の「もう一人の自分」をじっと見つめて首をかしげた。
大人びた雰囲気に、衣装も自分のものとはまるで違う。
「……なんか私っぽくないんだけど……」
「細かいことは気にしない!」とエリシアは一蹴し、ルナの肩を軽く叩く。
「面白くしてくるから、そこで待ってなさい!」
ルナは不安げに眉を寄せつつも、変身したもう一人の「自分」を見つめ続けた。
エヴィたちが建物に入ると、入口でキリカが待ち構えていた。
「来ると思ってたわ」――冷ややかな声。
仲間たちは一斉に武器を構え、激しい戦いが始まる。
戦いの最中、フェリーチェ(中身はフェリナ)が奥で縛られているルナを見つける。
「ルナ! 大丈夫!?」と駆け寄り、縄を解きながら首をかしげる。
「……なんかイメチェンした? 雰囲気変わったけど、似合ってるよ!」
(見た目が全然違うのに本気で信じ込むのがフェリーチェらしい)
縄を解いた瞬間、ルナの姿が不敵に笑う。
「ありがとう。でもね……油断したわね」
――正体はエリシア・ルナだった。
一気にフェリーチェを押し倒し、鋭い光の矢を構える。
「フェリナ! 下がれ!」
エヴィが間一髪で割って入り、剣で矢を弾く。
二人は息を合わせてエリシア・ルナに立ち向かうが、圧倒的な力で押し込まれていく。
エリシア・ルナは冷笑を浮かべながら矢をつがえた。
「これで終わりよ――スターアロー!」
放たれた矢はエヴィの顔をかすめ、壁に深く突き刺さる。
エヴィは息を呑む。
「……やめた」
エリシア・ルナは矢を収め、姿を元のエリシアへと戻す。
エリシアは余裕を漂わせながら二人を見下ろす。
「戦いたいなら、もっと強くなりなさい。私はずっと――見ているから」
そしてフェリーチェに向き直り、畳んだ服を差し出す。
「それと……その格好でいつまでもいるのはやめなさい。あなたには似合わないわ」
フェリーチェ(中身フェリナ)は困惑しながらも受け取り、エヴィと共に着替え直した。
二人が仲間たちの元へ戻ると、全員が倒れていた。
「なっ……何があったの!?」
唯一立っていたホノカが、不敵に笑って答える。
「――うまくいったよ。」
屋上の扉を開けたエリシアの目に飛び込んできたのは、さらし姿に着替えたフェリナの姿をしたフェリーチェだった。
「やっぱりこの衣装が落ち着くわ」
得意げに言う彼女に、ルナはため息をつく。
フェリナはすぐにエリシアへ気づき、手を振って言った。
「おかえり。早かったね」
「まあね。弱かったし」――エリシアは無表情で答え、ゆっくりと近づいてくる。
そこへキリカも戻ってきて、恭しく頭を下げた。
「お待たせしました」
「ふふ、あら。もう全員帰ってきちゃったのね。じゃあ、後は……」
フェリナは冷たく笑い、キリカに命じた。
「ルナを殺しなさい」
次の瞬間、キリカが稲妻のごとき速さで飛び出す――だがエリシアの拳が鋭く叩き込まれ、急所に直撃。スピードを誇るキリカは逆に大きな反動で崩れ、立ち上がれなくなった。
「何をしてるの!?」とフェリナが驚く。
エリシアは口元を歪め、低く笑った。
「ククク……」
光に包まれ、その姿はセリアへと変わる。
「この私を……騙したのね!」
フェリナが叫ぶ。
そこへホノカが屋上の扉を蹴り飛ばし、仲間たちが一斉に乱入。フローラがルナの縄を解き、フェリーチェ姿のフェリナはさらし姿のフェリナを見て目を輝かせた。
「うえ…!?何その格好!?……かっこいい!」
「……ああ、そう。そういうことね」
フェリナ姿のフェリーチェは怒気を帯び、「よくもこの私を騙したな!」と叫ぶ。
「フェリナ、覚悟はいいか」
ホノカが構え、フェリーチェ姿のフェリナは「いつでも!」と自信を持って答える。
次の瞬間、ホノカの拳がフェリーチェ姿のフェリナの顔面を撃ち抜く。リーファも続けざまにリーフブレードを浴びせる。ルナが止めに入ろうとするが、セリアがその動きを封じた。
フェリナ姿のフェリーチェは突然の仲間割れに呆気にとられていた。ボロボロに崩れたフェリナは膝をつく。「どういうことかしら?」しかし彼女の体から見覚えのある光が漏れ出す。
「まさか……!」と気づいた時には遅く、フェリナとフェリーチェの体は入れ替わっていた。
「うわーん! 痛かったよぉー!」
泣きつくもとに戻ったフェリナがフローラに近寄ろうとすると、
「うえ!?……そんな格好で近寄らないで!」と暴言を吐かれる
一方でもとに戻ったフェリーチェはダメージが相当入っていてうつむき、力が入らずに震えていた。
「私は……あなたの技を使えなかったのに……」
エレナが優しく告げる。
「フェリナはね、私たちと一緒にたくさん練習してたんだよ」
エヴィが前に出る。
「観念しろ、フェリーチェ!」
だが彼女はニッと笑い、手元のスイッチを押した。
轟音――突如として大地を揺るがす衝撃が走り、建物全体が大きく震えた。
壁はひび割れ、窓ガラスが砕け散り、炎と煙が内部から噴き上がる。
床が崩れ落ち、瓦礫が次々と天井から降り注ぐ中、仲間たちは必死に互いを呼び合いながら出口へと走った。
「急げ! このままじゃ巻き込まれる!」
ホノカの叫び声が響き、足元で石片が砕け散る。
炎と煙が視界を覆う中、それでも全員は必死に駆け抜け、崩壊寸前の建物から飛び出した。
残されたフェリーチェのもとに、エリシアが現れる。
「……本物?」と問いかけるフェリーチェ。
「本物じゃなかったら、どうするつもり?」と逆に問うエリシア。
フェリーチェはわずかに笑みを浮かべ、「キリカを連れて外に出て……私はもう助からない」と告げる。
エリシアはため息をつき、「バカじゃないの」と吐き捨てる。
「最後のお願いくらい聞いてあげるわ。じゃあね」
彼女はキリカを連れて屋上を去り、建物は崩れ落ちた。
外で合流したエヴィたちは、崩れ落ちる建物を背に、無事を喜び合った。
その中でセリアは、仲間に視線を合わせづらそうに立っていた。
「……ごめん。今まで散々、あんたたちを騙してきた」
彼女は少し肩をすくめ、申し訳なさそうに目を伏せる。
エヴィは首を横に振り、静かに答えた。
「もういいよ。今こうして一緒にいるなら、それで十分だ」
仲間たちも次々に頷き、セリアを受け入れる。
セリアの瞳にかすかな光が宿り、ほんの少し口元が緩んだ。
――しかしその奥。瓦礫の陰から様子をうかがっていた影があった。
エリシアだ。キリカを伴いながら、楽しげに目を細める。
「やっぱりね……」
小さく呟き、微笑むと、闇の中へと静かに姿を消していった。
レヴェリスとルクシアが激しくぶつかり合うその光景を、高台から静かに見下ろす二つの影があった。
女王然とした佇まいの フェリーチェ は、冷ややかな瞳でその戦いを観察していた。
その隣には、無言で周囲を警戒する キリカ の姿。
「……やれやれ。所詮は出来損ない同士の争いね」
フェリーチェはため息をつき、指先で退屈そうに髪を弄ぶ。
すると背後から、落ち着いた声が返った。
「軽々しく言うものではないわ。あれでも必死に戦っているのでしょう?」
反論するのは エリシア。その目は戦いに真剣さを見て取っていた。
フェリーチェは鼻で笑い、視線を逸らす――その瞬間、彼女の瞳が別の人物に釘付けになった。
フェリナ。戦場の端で仲間を支えるように立ち回る少女の姿だ。
「……あら。」
女王はふと目を細め、口元に妖艶な笑みを浮かべる。
「この退屈な劇場の中で、唯一輝いている宝石を見つけてしまったわね」
キリカは眉をひそめたが、主人の言葉には口を挟まない。ただその横顔を見守るだけだった。
やがて戦いは終わり、静寂が訪れる。
フェリーチェはためらいなく戦場を歩き、フェリナの前に立った。
「初めまして……わたくし、フェリーチェと申しますの。ひと目で分かりましたわ。あなたはわたくしの運命の人。どうか、わたくしの隣に――」
しかしフェリナはきっぱりと手を振り、笑顔で答えた。
「ごめん!そういうの、わたし興味ないから!」
空気が一瞬凍りつく。
フェリーチェは言葉を失い、背後でキリカが小さく肩を揺らした。
エリシアは思わず吹き出し、「女王様でも玉砕するのね」と皮肉を漏らす。
フェリーチェはやがてため息をつき、無理に気丈な笑みを浮かべると、背を向けて歩き出した。
「……ふふ、なるほど。ますます欲しくなったわ。振られた程度で諦める女王ではなくってよ」
その声は、まだどこか甘やかで執着の色を帯びていた。
フェリーチェは冷笑を浮かべ、手を掲げた。
「だったら……こうして差し上げますわ!」
放たれたビームが自分とフェリナを包み込み、光が収まったとき――状況は一変していた。
フェリーチェの体を持つ少女がビックリして自分の体を見つめている。
逆にフェリナの体を纏った存在は、妖艶な笑みを浮かべ、女王様の声で告げる。
セリアが目を細めて叫ぶ。
「……入れ替わったな!」
「ご明答~♪」
フェリナの体に宿るフェリーチェは自分の腕を撫で、頬に触れ、満足げに吐息を漏らした。
「なんて見事な肉体……もう返すつもりなど毛頭ございませんわ!」
フェリナの体(中身はフェリーチェ)は、女王様の声で鋭く命じる。
「その体を返しなさい!」
しかし、フェリーチェの体に囚われたフェリナは、両手をぶんぶん振って明るく叫んだ。
「やだよー! もう返さないからっ!」
だが返事はさらに軽やかで陽気だった。
「絶っ対イヤ! これからはわたしがフェリナとして生きてくんだもん! はははははっ!」
狂気じみた笑いが場を震わせる。
だが次の瞬間、セリアが踏み込み、拳を叩きつけた。
バシィッ――!
「だったら……お前を倒すまでだ!」
皆が息を呑む中、殴られた“フェリナの体”は冷笑を浮かべ、指を鳴らした。
「ペナルティ、ですわ」
パチン――。
その合図と同時に、キリカが動きルナを捕縛する。
「くっ……!」
高台に立った“フェリナ”は、勝ち誇った笑みでエヴィたちを見下ろした。
「次元の扉の奥――建物の屋上までいらっしゃい! そこで決着をつけて差し上げますわ!」
その声を最後に姿を消し、残された仲間たちはただ唖然としながらも、戦う覚悟を決めた――。
次元の扉がゆらめき、異様な空気が流れる。
ホノカが前へ踏み出し、勢いよく駆け込もうとしたその時――
「待ちなさい、バカホノカ!」
リーファが彼女の服の裾をぐいっと引っ張る。
「なにすんだよリーファ! あたいがぶっ飛ばしてくりゃ早いんだよ!」
「無策で突っ込むなんて見苦しいですね!」
二人はすぐさま掴み合いになり、火花を散らす。
「やんのかコラ!」
「望むところです!」
その騒ぎにフローラが割って入る。
「いい加減にしなさいよアンタら! 今はケンカしてる場合じゃないでしょ!」
ようやく二人が引き剥がされると、少し離れた場所でフェリーチェの姿をしたフェリナを、エレナが心配そうに覗き込む。
「フェリナ、大丈夫……? 体、変わっちゃってるけど……」
しかしフェリーチェの体に入ったフェリナは、腕を組んで胸を持ち上げるようにしながらにっこり。
「えへへ、この体、なかなかナイスバディだね♪」
「えっ……そ、そういう問題じゃないと思うんだけど……」
エレナは困惑して頭を抱えた。
そこへアクアが前に進み出る。
「とにかく、きちんと作戦を立てましょう。今のままでは危険です」
すると、セリアがにやりと笑う。
「ふふ……いい方法がある」
ホノカが眉をひそめ、すぐさま噛みつく。
「お前の言うことなんか聞きたくねぇ!」
セリアは妖しく微笑んで返す。
「お前らは、これから起こることを何も知らない。だから私が導いてやるのよ」
そして一歩、次元の扉に向かって歩き出す。
「協力しないなら、私一人で行く」
「待って!」
エヴィの声が鋭く響いた。
セリアが振り返ると、エヴィはまっすぐに見つめていた。
「……私、協力したい」
「エヴィ!?」
仲間たちが一斉に声を上げる。
だがエレナが小さく頷き、フェリーチェ姿のフェリナも元気に手を挙げた。
「わたしも賛成だよっ!」
「……私も」アクアが力強く賛同する。
その流れに押されて、フローラも深いため息をつきつつ頷いた。
「仕方ないわね……わたしも賛成」
最後にホノカとリーファが顔を見合わせ、不承不承うなずく。
「チッ……しゃーねぇな!」
「……この選択、後悔しないでくださいよ」
セリアは満足げに笑い、前に出た。
「決まりね。それじゃあ――私の作戦を教えてあげる」
場に緊張が走り、全員の視線が彼女に注がれた。
次元の扉を越え、屋上へと到着する。
そこに姿を現したのは――フェリナの姿をしたフェリーチェと、その傍らに立つキリカ、そして連れてこられたルナだった。
エリシアが険しい目で問いかける。
「……あんた、いったい何のためにこんなことをしてるの?」
すると、フェリーチェの姿をしたフェリナがうっとりとした表情で答える。
「決まってるじゃない……フェリナとの愛のためよ。あの子と私は結ばれる運命なの。たとえ誰に何を言われようと、この体で、あの子を愛し続けるわ……!」
その陶酔した語りに、エリシアとルナは同時に眉をひそめる。
「キモッ……」
「気持ち悪いです……」
二人にあっさり突き放され、フェリナは顔を真っ赤にして怒鳴り返した。
「誰がキモいですって!? これは崇高な愛なのよ!」
だがすぐに表情を切り替え、鋭い目を仲間たちに向ける。
「……もういいわ。あんたたちはさっさと配置につきなさい」
エリシアは肩をすくめながらも一歩前へ。
「……了解。じゃあ、ちょっと見せてあげるわ」
光に包まれた彼女の姿は――**「エリシア・ルナ」**へと変化した。
隣のルナが目を丸くする。
「えっ……な、何それ!? 私!?」
エリシアは得意げに笑みを浮かべる。
「ふふん、そうよ。あんたの味方を騙すための作戦。最高でしょ?」
だが、ルナは目の前の「もう一人の自分」をじっと見つめて首をかしげた。
大人びた雰囲気に、衣装も自分のものとはまるで違う。
「……なんか私っぽくないんだけど……」
「細かいことは気にしない!」とエリシアは一蹴し、ルナの肩を軽く叩く。
「面白くしてくるから、そこで待ってなさい!」
ルナは不安げに眉を寄せつつも、変身したもう一人の「自分」を見つめ続けた。
エヴィたちが建物に入ると、入口でキリカが待ち構えていた。
「来ると思ってたわ」――冷ややかな声。
仲間たちは一斉に武器を構え、激しい戦いが始まる。
戦いの最中、フェリーチェ(中身はフェリナ)が奥で縛られているルナを見つける。
「ルナ! 大丈夫!?」と駆け寄り、縄を解きながら首をかしげる。
「……なんかイメチェンした? 雰囲気変わったけど、似合ってるよ!」
(見た目が全然違うのに本気で信じ込むのがフェリーチェらしい)
縄を解いた瞬間、ルナの姿が不敵に笑う。
「ありがとう。でもね……油断したわね」
――正体はエリシア・ルナだった。
一気にフェリーチェを押し倒し、鋭い光の矢を構える。
「フェリナ! 下がれ!」
エヴィが間一髪で割って入り、剣で矢を弾く。
二人は息を合わせてエリシア・ルナに立ち向かうが、圧倒的な力で押し込まれていく。
エリシア・ルナは冷笑を浮かべながら矢をつがえた。
「これで終わりよ――スターアロー!」
放たれた矢はエヴィの顔をかすめ、壁に深く突き刺さる。
エヴィは息を呑む。
「……やめた」
エリシア・ルナは矢を収め、姿を元のエリシアへと戻す。
エリシアは余裕を漂わせながら二人を見下ろす。
「戦いたいなら、もっと強くなりなさい。私はずっと――見ているから」
そしてフェリーチェに向き直り、畳んだ服を差し出す。
「それと……その格好でいつまでもいるのはやめなさい。あなたには似合わないわ」
フェリーチェ(中身フェリナ)は困惑しながらも受け取り、エヴィと共に着替え直した。
二人が仲間たちの元へ戻ると、全員が倒れていた。
「なっ……何があったの!?」
唯一立っていたホノカが、不敵に笑って答える。
「――うまくいったよ。」
屋上の扉を開けたエリシアの目に飛び込んできたのは、さらし姿に着替えたフェリナの姿をしたフェリーチェだった。
「やっぱりこの衣装が落ち着くわ」
得意げに言う彼女に、ルナはため息をつく。
フェリナはすぐにエリシアへ気づき、手を振って言った。
「おかえり。早かったね」
「まあね。弱かったし」――エリシアは無表情で答え、ゆっくりと近づいてくる。
そこへキリカも戻ってきて、恭しく頭を下げた。
「お待たせしました」
「ふふ、あら。もう全員帰ってきちゃったのね。じゃあ、後は……」
フェリナは冷たく笑い、キリカに命じた。
「ルナを殺しなさい」
次の瞬間、キリカが稲妻のごとき速さで飛び出す――だがエリシアの拳が鋭く叩き込まれ、急所に直撃。スピードを誇るキリカは逆に大きな反動で崩れ、立ち上がれなくなった。
「何をしてるの!?」とフェリナが驚く。
エリシアは口元を歪め、低く笑った。
「ククク……」
光に包まれ、その姿はセリアへと変わる。
「この私を……騙したのね!」
フェリナが叫ぶ。
そこへホノカが屋上の扉を蹴り飛ばし、仲間たちが一斉に乱入。フローラがルナの縄を解き、フェリーチェ姿のフェリナはさらし姿のフェリナを見て目を輝かせた。
「うえ…!?何その格好!?……かっこいい!」
「……ああ、そう。そういうことね」
フェリナ姿のフェリーチェは怒気を帯び、「よくもこの私を騙したな!」と叫ぶ。
「フェリナ、覚悟はいいか」
ホノカが構え、フェリーチェ姿のフェリナは「いつでも!」と自信を持って答える。
次の瞬間、ホノカの拳がフェリーチェ姿のフェリナの顔面を撃ち抜く。リーファも続けざまにリーフブレードを浴びせる。ルナが止めに入ろうとするが、セリアがその動きを封じた。
フェリナ姿のフェリーチェは突然の仲間割れに呆気にとられていた。ボロボロに崩れたフェリナは膝をつく。「どういうことかしら?」しかし彼女の体から見覚えのある光が漏れ出す。
「まさか……!」と気づいた時には遅く、フェリナとフェリーチェの体は入れ替わっていた。
「うわーん! 痛かったよぉー!」
泣きつくもとに戻ったフェリナがフローラに近寄ろうとすると、
「うえ!?……そんな格好で近寄らないで!」と暴言を吐かれる
一方でもとに戻ったフェリーチェはダメージが相当入っていてうつむき、力が入らずに震えていた。
「私は……あなたの技を使えなかったのに……」
エレナが優しく告げる。
「フェリナはね、私たちと一緒にたくさん練習してたんだよ」
エヴィが前に出る。
「観念しろ、フェリーチェ!」
だが彼女はニッと笑い、手元のスイッチを押した。
轟音――突如として大地を揺るがす衝撃が走り、建物全体が大きく震えた。
壁はひび割れ、窓ガラスが砕け散り、炎と煙が内部から噴き上がる。
床が崩れ落ち、瓦礫が次々と天井から降り注ぐ中、仲間たちは必死に互いを呼び合いながら出口へと走った。
「急げ! このままじゃ巻き込まれる!」
ホノカの叫び声が響き、足元で石片が砕け散る。
炎と煙が視界を覆う中、それでも全員は必死に駆け抜け、崩壊寸前の建物から飛び出した。
残されたフェリーチェのもとに、エリシアが現れる。
「……本物?」と問いかけるフェリーチェ。
「本物じゃなかったら、どうするつもり?」と逆に問うエリシア。
フェリーチェはわずかに笑みを浮かべ、「キリカを連れて外に出て……私はもう助からない」と告げる。
エリシアはため息をつき、「バカじゃないの」と吐き捨てる。
「最後のお願いくらい聞いてあげるわ。じゃあね」
彼女はキリカを連れて屋上を去り、建物は崩れ落ちた。
外で合流したエヴィたちは、崩れ落ちる建物を背に、無事を喜び合った。
その中でセリアは、仲間に視線を合わせづらそうに立っていた。
「……ごめん。今まで散々、あんたたちを騙してきた」
彼女は少し肩をすくめ、申し訳なさそうに目を伏せる。
エヴィは首を横に振り、静かに答えた。
「もういいよ。今こうして一緒にいるなら、それで十分だ」
仲間たちも次々に頷き、セリアを受け入れる。
セリアの瞳にかすかな光が宿り、ほんの少し口元が緩んだ。
――しかしその奥。瓦礫の陰から様子をうかがっていた影があった。
エリシアだ。キリカを伴いながら、楽しげに目を細める。
「やっぱりね……」
小さく呟き、微笑むと、闇の中へと静かに姿を消していった。
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