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7エマとルー
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驚くエマにスーラが、どうだい?驚いただろ?という顔でニヤリとした。
スーラとエマのやり取りに首をかしげながら、店員は「スーラさん、そちらの方は?」とエマを見た。
その声を聞いても、エマにはまだ男性なのか女性なのかが分からなかった。
薬草を買うのに店員の性別は関係ないのだが、気にするなと言われても無理な話だ。
(性別をこえてる…
この人、性別を超越してるよ!
スーラさん!)
「この娘はエマ。いまうちの店で住み込みで働いてもらってるんだよ。エマ、こっちはルー」
スーラはルーに何かを確認するように目配せした。ルーにはその意味が分かったようで、エマを二、三秒見つめた後コクリと頷いた。スーラも頷き返すと、
「彼女の薬草はとても評判がいいんだよ」
と言葉を続けた。
(彼女!?女の人なんだ。
なんて美人さんなんだろう。)
「初めまして、エマといいます。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。ルーです」
(やっぱり落ち着いた中性的な声)
「スーラさん、今日はどういったご用件で?」
「八百屋のおばあちゃんの膝の薬を作るのに薬草を買いにね」
「ああ、八百屋のおばあさんには何度か調合を変えて試したのですが、あまり効きがよくなかったみたいで」
「その話をしていたら、エマがね、田舎の村で作っていた秘伝の薬を試さないかって言ってくれたから作ってもらおうと思って。それで今日連れて来たんだよ」
「秘伝の?」
ルーが怪訝そうにエマを見る。
それはそうだろう。腕がいいと評判の薬草屋のこの人が作って効果がなかったのに、いくら村で秘伝と言っても普通の田舎の小娘が作る薬などどれほどのものかと疑って当然だ。
エマにはルーの言いたいことが充分わかるので慌ててフォローする。
「秘伝だなんて、そんな大層なものじゃないんですけどっ。
故郷の村のお年寄りたちが作ってて、結構効果があったので、八百屋のおばあちゃんにもどうかな~って思ってっ」
(嘘だ。結構どころか効果抜群だ。
なんといっても『魔女』のつくる薬なのだから。
『お婆ちゃん』を魔女と知らない村の人たちは『お婆ちゃん』が亡くなったとき薬作りの腕をひどく惜しんでいた。)
「そう、おばあさんが楽になるなら試してあげればいいけど。それで?何が欲しいの?」
(あ、この人、絶対無理だと思ってる。)
「えっと、ここに書いてある薬草と分量をお願いします」
あらかじめ書いてきたメモを渡すと、「へえ、文字が書けるのね」と無感動にそう言いながらエマとメモを見比べ、部屋にある椅子に掛けて待つよう言うと薬草の調合にとりかかった。
関節の痛みに効く薬草の調合はほぼ確立されている。昔から関節痛は一般庶民によくある悩みだ。長い年月をかけて試行錯誤が繰り返され使用する薬草はほぼ決まっている。
そこに患者によって分量を変えてみたり、少し他の種類を足してみたりするのだ。
エマのメモもごく一般的な薬草に少し別の種類を足したものだ。ルーにとってもこれで劇的に八百屋の老婆の関節痛が治るとは思えないはずだ。やってみれば?程度のものなんだろう。
だが、そこに魔女の『力』が加われば劇的な効果が発揮される。それこそまさに『秘伝』。
(治る確信はあるけど、あまり劇的すぎると素性に疑問を持たれる可能性もあるよね。
何回か使って徐々に治して、それから…)
エマは、数え切れないほどのビンや箱、引き出しから目当ての薬草を淀みなく取り出し黙々と作業をするルーの姿を目で追いながら、頭の中では久しぶりの薬作りの手順を組み立てた。
ルーの薬草屋で手に入れた薬草はスーラのオススメだけあって、どれも上質だった。
帰宅後、エマはすぐに作業にとりかかった。
薬作りといっても電気も機械もないこの世界での方法は、煮て潰してエキスを絞り出したり、煎じたり、粉状に砕いたりなどが主な作業になる。
つまり、ルーによって分量を厳密に計られた薬草は後は台所の調理道具を使って作れてしまうのだ。
ごく弱い火に鍋をかけ、かき混ぜるのはおたまではなく細い棒。ちょうど魔法使いの杖のような。ドリスが使っていたものをエマが受け継いだ。
一見鍋をかき混ぜているように見えても棒先ではルーンが刻まれている。
大層な呪文などいらない。 一つ一つ薬草の名を書き、そしてそれぞれの働きを知って薬草ごとに細かく指示を出し効能を発揮させる。
対象となるものへの滋養、回復、修復、改善、増強、弱体、攻撃、殺傷…彼らは全てルーンを操る魔女に従う。
エマは八百屋の老婆のために水薬と湿布を作った。
それは早速老婆に届けられ、二週間を過ぎる頃にはすっかり効果を発揮していた。
エマの村の秘伝の薬の話は口から口へ話題に上り、近所の老婆たちからも次々に依頼が舞い込んだ。
(困った。もっと時間をかけて治すべきだったかも。二週間くらいが適当だと思ったんだけどな。
でも時間をかけたとしても治ったらやっぱりしゃべっちゃうよね。やれやれ。)
とりあえず話が漏れた近所の数人の老婆たちには薬を作ってあげるしかないかと、ため息をもらすエマだった。
一応老婆たちからはきっちりと薬草代と手間賃をもらっている。さらにこれ以上人数が増えると手が回らなくなると口止めをしたら、老婆たちも自分可愛さに口を噤んだ。
手間賃の一部は台所を使わせてもらっているお礼としてスーラに渡している。エマの手元に残るのは少しの小銭だが、稼ぐつもりでやってるわけではないので現状に不満はない。
*
コンコンコン
「こんにちは、ルー」
今日も薬草の買い出しだ。
あれからスーラに聞いた話しだが、ルーのあの美貌で街の男性の評判にならないのかと聞いたが、中性的な雰囲気を生かして街では男性だと言っているそうだ。
それでは反対に女性客が増えそうだが、あの雰囲気に気後れして若い娘たちは遠巻きに憧れているだけらしい。
ルーが女性だと知っているのは彼女が信頼できると思ったわずかな人だけだ。その中にスーラが入っていることに「さすがスーラさんっ」と何やら誇らしかった。
エマにルーが女性であると明かしていいかと目配せしたのは、スーラがエマを信頼してくれたからだ。
「いらっしゃい。エマ」
「またいつもの薬草をいただきにきたの」
「……ああ」
ルーはいつものようにそう返事するが、何か言い淀むようにカウンターから動かない。
エマが不思議に思い、「ルー?」と声をかけると、ルーはためらったあと、「エマ、あの…」と話しを切り出した。
「エマの村の薬のこと聞いたよ…よく効いているそうだね」
「そ、そうなの。なにせ村の秘伝だからねっ」
内心大焦りで慌てながらも誤魔化すようにあはははとわざとらしく笑った。
「エマ、持って回った言い方は好きではないので、単刀直入に聞く」
ルーの真剣な表情にエマはつくり笑いを止めて、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「あの薬草の種類ではあんな効果は絶対望めない。エマ、今から言う私の質問に答えてくれないか」
「そのかわり私の秘密を教える。大した秘密ではないが…。エマ、私がみんなに秘密にしていることは、」「いいよ、いいよ、聞かなくていいって。なんか聞いちゃったらすごくダメなような気がするっ」
慌ててルーを遮ると、ルーは困った顔をしてクスリと笑った。
(笑った顔、初めてみた!
ちょっと幼い感じになるんだ~
可愛いかも~)
ルーは「少し休憩しないか?」とエマを誘い、店のドアの外に準備中の札をかけると鍵を閉めてしまった。そして、カウンターの奥にある居住の中へエマを招き入れた。
スーラとエマのやり取りに首をかしげながら、店員は「スーラさん、そちらの方は?」とエマを見た。
その声を聞いても、エマにはまだ男性なのか女性なのかが分からなかった。
薬草を買うのに店員の性別は関係ないのだが、気にするなと言われても無理な話だ。
(性別をこえてる…
この人、性別を超越してるよ!
スーラさん!)
「この娘はエマ。いまうちの店で住み込みで働いてもらってるんだよ。エマ、こっちはルー」
スーラはルーに何かを確認するように目配せした。ルーにはその意味が分かったようで、エマを二、三秒見つめた後コクリと頷いた。スーラも頷き返すと、
「彼女の薬草はとても評判がいいんだよ」
と言葉を続けた。
(彼女!?女の人なんだ。
なんて美人さんなんだろう。)
「初めまして、エマといいます。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。ルーです」
(やっぱり落ち着いた中性的な声)
「スーラさん、今日はどういったご用件で?」
「八百屋のおばあちゃんの膝の薬を作るのに薬草を買いにね」
「ああ、八百屋のおばあさんには何度か調合を変えて試したのですが、あまり効きがよくなかったみたいで」
「その話をしていたら、エマがね、田舎の村で作っていた秘伝の薬を試さないかって言ってくれたから作ってもらおうと思って。それで今日連れて来たんだよ」
「秘伝の?」
ルーが怪訝そうにエマを見る。
それはそうだろう。腕がいいと評判の薬草屋のこの人が作って効果がなかったのに、いくら村で秘伝と言っても普通の田舎の小娘が作る薬などどれほどのものかと疑って当然だ。
エマにはルーの言いたいことが充分わかるので慌ててフォローする。
「秘伝だなんて、そんな大層なものじゃないんですけどっ。
故郷の村のお年寄りたちが作ってて、結構効果があったので、八百屋のおばあちゃんにもどうかな~って思ってっ」
(嘘だ。結構どころか効果抜群だ。
なんといっても『魔女』のつくる薬なのだから。
『お婆ちゃん』を魔女と知らない村の人たちは『お婆ちゃん』が亡くなったとき薬作りの腕をひどく惜しんでいた。)
「そう、おばあさんが楽になるなら試してあげればいいけど。それで?何が欲しいの?」
(あ、この人、絶対無理だと思ってる。)
「えっと、ここに書いてある薬草と分量をお願いします」
あらかじめ書いてきたメモを渡すと、「へえ、文字が書けるのね」と無感動にそう言いながらエマとメモを見比べ、部屋にある椅子に掛けて待つよう言うと薬草の調合にとりかかった。
関節の痛みに効く薬草の調合はほぼ確立されている。昔から関節痛は一般庶民によくある悩みだ。長い年月をかけて試行錯誤が繰り返され使用する薬草はほぼ決まっている。
そこに患者によって分量を変えてみたり、少し他の種類を足してみたりするのだ。
エマのメモもごく一般的な薬草に少し別の種類を足したものだ。ルーにとってもこれで劇的に八百屋の老婆の関節痛が治るとは思えないはずだ。やってみれば?程度のものなんだろう。
だが、そこに魔女の『力』が加われば劇的な効果が発揮される。それこそまさに『秘伝』。
(治る確信はあるけど、あまり劇的すぎると素性に疑問を持たれる可能性もあるよね。
何回か使って徐々に治して、それから…)
エマは、数え切れないほどのビンや箱、引き出しから目当ての薬草を淀みなく取り出し黙々と作業をするルーの姿を目で追いながら、頭の中では久しぶりの薬作りの手順を組み立てた。
ルーの薬草屋で手に入れた薬草はスーラのオススメだけあって、どれも上質だった。
帰宅後、エマはすぐに作業にとりかかった。
薬作りといっても電気も機械もないこの世界での方法は、煮て潰してエキスを絞り出したり、煎じたり、粉状に砕いたりなどが主な作業になる。
つまり、ルーによって分量を厳密に計られた薬草は後は台所の調理道具を使って作れてしまうのだ。
ごく弱い火に鍋をかけ、かき混ぜるのはおたまではなく細い棒。ちょうど魔法使いの杖のような。ドリスが使っていたものをエマが受け継いだ。
一見鍋をかき混ぜているように見えても棒先ではルーンが刻まれている。
大層な呪文などいらない。 一つ一つ薬草の名を書き、そしてそれぞれの働きを知って薬草ごとに細かく指示を出し効能を発揮させる。
対象となるものへの滋養、回復、修復、改善、増強、弱体、攻撃、殺傷…彼らは全てルーンを操る魔女に従う。
エマは八百屋の老婆のために水薬と湿布を作った。
それは早速老婆に届けられ、二週間を過ぎる頃にはすっかり効果を発揮していた。
エマの村の秘伝の薬の話は口から口へ話題に上り、近所の老婆たちからも次々に依頼が舞い込んだ。
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でも時間をかけたとしても治ったらやっぱりしゃべっちゃうよね。やれやれ。)
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一応老婆たちからはきっちりと薬草代と手間賃をもらっている。さらにこれ以上人数が増えると手が回らなくなると口止めをしたら、老婆たちも自分可愛さに口を噤んだ。
手間賃の一部は台所を使わせてもらっているお礼としてスーラに渡している。エマの手元に残るのは少しの小銭だが、稼ぐつもりでやってるわけではないので現状に不満はない。
*
コンコンコン
「こんにちは、ルー」
今日も薬草の買い出しだ。
あれからスーラに聞いた話しだが、ルーのあの美貌で街の男性の評判にならないのかと聞いたが、中性的な雰囲気を生かして街では男性だと言っているそうだ。
それでは反対に女性客が増えそうだが、あの雰囲気に気後れして若い娘たちは遠巻きに憧れているだけらしい。
ルーが女性だと知っているのは彼女が信頼できると思ったわずかな人だけだ。その中にスーラが入っていることに「さすがスーラさんっ」と何やら誇らしかった。
エマにルーが女性であると明かしていいかと目配せしたのは、スーラがエマを信頼してくれたからだ。
「いらっしゃい。エマ」
「またいつもの薬草をいただきにきたの」
「……ああ」
ルーはいつものようにそう返事するが、何か言い淀むようにカウンターから動かない。
エマが不思議に思い、「ルー?」と声をかけると、ルーはためらったあと、「エマ、あの…」と話しを切り出した。
「エマの村の薬のこと聞いたよ…よく効いているそうだね」
「そ、そうなの。なにせ村の秘伝だからねっ」
内心大焦りで慌てながらも誤魔化すようにあはははとわざとらしく笑った。
「エマ、持って回った言い方は好きではないので、単刀直入に聞く」
ルーの真剣な表情にエマはつくり笑いを止めて、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「あの薬草の種類ではあんな効果は絶対望めない。エマ、今から言う私の質問に答えてくれないか」
「そのかわり私の秘密を教える。大した秘密ではないが…。エマ、私がみんなに秘密にしていることは、」「いいよ、いいよ、聞かなくていいって。なんか聞いちゃったらすごくダメなような気がするっ」
慌ててルーを遮ると、ルーは困った顔をしてクスリと笑った。
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