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74イルヴァ・グレイ
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「さて、それでは話を進めましょうか」
ホージ侯爵とマリアンヌが連れて行かれた扉をじっとみていたエマは皇太后に顔を向けた。
彼女は二人のことを羽虫を払った程度にしか思っていないようだ。
「ああ、そんなに離れていては話ができないわ。
こちらに来てちょうだい。他の者たちは皆下がりなさい」
エマはジークヴァルトに手を取られ皇太后の元まで連れてこられた。
目元が見えないヴェール越しにエマをじっと見上げる皇太后に戸惑っていると、「我が公爵家の屋敷はいかがですか?」と宰相デイヴィッドが声をかけてきた。
間近で目を合わせたデイヴィッドは、まるで歳を重ねたジークヴァルトに優しく微笑まれているようでエマはドキドキして戸惑った。
「これは失礼、ご挨拶が先でしたね。
初めまして、公爵位を賜りこの国の宰相をしておりますデイヴィッド・フォン・ホランヴェルスと申します。以後お見知りおきを」
胸に手を置き丁寧に頭をさげる姿に、エマは戸惑いなど吹き飛びギョッとなった。
エマだけではない。ジークヴァルトにとっては父親が、ルイス王子にとっては臣下第一位の公爵家当主が例え『魔女』でもエマにするには慇懃すぎる挨拶だった。
すると、今度は皇太后が先ほどまでの威厳はどこに行ったのか、
「ダメよ、私が先よ。私が驚かせたいのだから!」
と拗ねたようにデイヴィッドを止めた。
ルイス王子は使用人たちが全て退室しているか確認する様に周りを見回し、ジークヴァルトはどういうことかとエマに目で訴えるが、エマは激しく首を振る。
皇太后は「ああ、何から話せばいいのかしら。まずは自己紹介ね」と少女のようにウキウキと興奮気味に声を弾ませた。
そして、目元を隠していたヴェールを上げながら、
「私の名前は、
ジェシカ・イルヴァ・グレイ・フォン・シュタルラント。
この国の皇太后位であり、『占いの魔女』よ」
と名乗った。
エマの膝の力ががくりと抜けた。ジークヴァルトの大きな手が体を支えてくれる。
「そんな…うそ…、おばあ…さま?」
祖母がそこにいた。
英国の屋敷へ遊びに行った時には祖父と共に迎えてくれた優しい表情のままに。
明るい空色の美しい青い瞳が大好きだった。
衝撃の言葉にルイス王子が「ええっ!!?」と大きく反応すると、皇太后はうるさそうに眉をひそめる。
「ルイス、私があの人を裏切って他に夫を持っていたと?もし、そうなら私は王家を裏切った罰を受けなければならないわね」
と、ルイス王子を軽くいなすと今度はエマにむかって、
「私はおばあちゃまではないわ。よく見て、ジェシカよ」
と何かを期待するように見つめ両手をにぎった。
エマを見上げる皇太后は祖母にとてもよく似ていたが、よくよく見るとたしかに別人で記憶にある祖母より年老いていた。
エマの目はみるみる見開かれ、その様子に皇太后は楽しげに微笑む。
「ふふふ、とっても驚いている。私よ、エマ姉様」
「ジェシー…?」
恐る恐るかつて呼んでいた愛称を言ったエマの言葉に、ルイス王子とジークヴァルトおまけに事情を知り尽くしたように立っていた宰相デイヴィッドさえも「「「姉様?!ジェシー?!」」」とひっくり返った声を上げ、コンサバトリーに響き渡った。
✳︎
広いコンサバトリーにもかかわらず大きく長いテーブルの一角、皇太后のもとに椅子を寄せ集めエマはその隣に座った。
皇太后はエマに膝を寄せ澄んだ青い瞳をキラキラとさせて見つめた。
「この世界で私が『姉様』と呼ぶのも、私を『ジェシー』と愛称で呼ぶのも、エマ姉様だけね。ふふふ。
エマ姉様、あなたの真実の名を彼らに教えてあげて」
エマの声が震える。
「エマ・…イルヴァ・グレイ・カミヤ…
英愛・イルヴァ・グレイ・神谷です」
「イルヴァ・グレイ?!」
いちいち驚くルイス王子に皇太后は「少し落ち着きなさい」と呆れる。
「そうよ、エマ姉様も『グレイ家』の者で『イルヴァ』の名を持つ者。
『イルヴァ』は『グレイ家』の血族の女性のみに名付けるのが慣し。
どこにいても、いつの時代になっても血族の女子だと分かるように、ね?」
と、エマに親しみのこもった微笑みを向けた。
(『どこにいても……』
お母さんが言っていた。娘が生まれれば『イルヴァ』の名前を付けて『ルーン』の読み書きを教えるのがグレイ家の伝統だって。
たしか『イルヴァ』は遠い先祖の女性の名前だって言ってた。
え?お母さんは私が異世界に飛ばされることを知っていたの?
ああ、頭が混乱してきた。)
エマは冷ますように額に手を当てた。
そんなエマの肩を皇太后はいたわるように撫で、ルイス王子とジークヴァルトには威厳のある視線を向けた。
「ルイスとジークヴァルトは今から話すことを黙ってお聞きなさい。そして、一度で理解なさい。
まず…、エマ姉様と私は従姉妹の関係よ。
姉様のお母様は私のお父様の実妹でグレイ伯爵家のご出身。
私の実家としている『グレイ伯爵家』、あれはドミニク…先王が私のためにこの国に創ってくれたもの。
あの時はいろいろあったわ…もう60年も前になるのね。
つまり、エマ姉様にとってルイスはいとこの孫になるわね」
母方の従兄弟妹たちの末の女の子ジェシカはエマが英国への帰省の度に「エマ姉様」と言って慕ってくれていた。
エマが十三歳の時ジェシカは確か六歳だったはず。
「私の本当の実家の『グレイ伯爵家』があった国は『United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland』というの。
そう、『この世界』にはない国。
つまり、私たちはこの世界の人間ではなく別の世界から『界渡り』をしてきた者。
ある日突然気付いたら身一つでこの世界に放り込まれていたのよ」
ジェシカは淡々とそう言うが、エマの瞳に戸惑いを見つけると手を握りその甲を優しく撫ぜてくれる。
「エマ姉様が行方不明になった連絡は私たちにもすぐにきたわ。
たくさんの人たちの目の前でいきなり消えたから、当時日本では大きく騒がれていたそうよ」
そうしてジェシカは何故自分たちが突然この世界に飛ばされたのか、グレイ家に伝わる『界渡り』について教えてくれた。
遠い遠い昔、キリスト教が入るよりもっと前の話。
まだ自分たちの神を持っていた頃、大陸の北の地に住んでいた民がいた。
その頃は自然の精霊とも話ができ、民たちの巫女『イルヴァ』は精霊の世界を通ってこの世界にも自由に来ることができていた。
でも彼女の死後、血筋の女性がまるでこの世界に呼ばれるように飛ばされるようになってしまった。はじめのうちは帰って来る者もいたがやがて二度と戻ってくることはなかった。
時代を経て、彼女の血を継ぐ一族が英国で『グレイ家』を創っても稀にそれは続き、だから、せめてもと娘が産まれれば『イルヴァ』の名を名札がわりに付けるようになった。『界渡り』の地で出会えばわかるように。
「叔母さまがこのことをエマ姉様に教えていなかったのは日本で暮していたから。
遠いアジアの国でまさかエマ姉様の身に起こるなんて思っておられなくて…お嘆きは大変なものだった。
叔母さまは、おじいちゃまたちに『教えるべきことは教えてある。だからエマならきっと大丈夫』と説得されて最後には覚悟を決めておられたわ」
(『教えるべきこと』とはきっと『ルーン』のこと。
『界渡り』のことは教えられてはいなかったけれど、お母さんはこの世界で絶大な『力』を持つ『ルーン』を私にちゃんと教えてくれていた。)
そして、エマを信じてくれていると知ることが出来たのは本当に嬉しくてほっとした。
家族はずっと悲しみ続けているかも知れないという心に刺さった刺がすっと抜けたように思えた。
涙をにじませるエマの手を皇太后は撫で続ける。
「私がここへ来たのは14歳のとき。
後から来たのにエマ姉様と会うのに60年もかかるなんてね。
この世界の長い歴史の中で、多くの『イルヴァ』がこの世界に来て『魔女』として生きて、たくさんの知識や文化を伝えたのよ」
(ああ、だからこの世界は既視感に満ちているんだ。)
「私の師匠はこの世界の人だったけれど、ドリスの師匠は13世紀初めのイングランドから来た『イルヴァ』だったのよ。彼女はこの世界は驚きが多いと言っていたわ」
そう言うと、ジェシカはドレスのポケットから手のひらサイズの板状のものを取り出した。
「でも、私たちにとってはものすごく不便な世界よね。これはスマートフォンっていうの」
ジェシカは、アプリだのSNSだのと説明してくれたが、ほとんど分からなかった。
エマがポケットから取り出した小さな巾着袋の中には二つ折れの黒こげの塊が入っていた。
「携帯電話…こんなに真っ黒に…。
エマ姉様の大切な思い出なのに…。
ごめんなさい、私は全て『視て』分かっていたの」
ホージ侯爵とマリアンヌが連れて行かれた扉をじっとみていたエマは皇太后に顔を向けた。
彼女は二人のことを羽虫を払った程度にしか思っていないようだ。
「ああ、そんなに離れていては話ができないわ。
こちらに来てちょうだい。他の者たちは皆下がりなさい」
エマはジークヴァルトに手を取られ皇太后の元まで連れてこられた。
目元が見えないヴェール越しにエマをじっと見上げる皇太后に戸惑っていると、「我が公爵家の屋敷はいかがですか?」と宰相デイヴィッドが声をかけてきた。
間近で目を合わせたデイヴィッドは、まるで歳を重ねたジークヴァルトに優しく微笑まれているようでエマはドキドキして戸惑った。
「これは失礼、ご挨拶が先でしたね。
初めまして、公爵位を賜りこの国の宰相をしておりますデイヴィッド・フォン・ホランヴェルスと申します。以後お見知りおきを」
胸に手を置き丁寧に頭をさげる姿に、エマは戸惑いなど吹き飛びギョッとなった。
エマだけではない。ジークヴァルトにとっては父親が、ルイス王子にとっては臣下第一位の公爵家当主が例え『魔女』でもエマにするには慇懃すぎる挨拶だった。
すると、今度は皇太后が先ほどまでの威厳はどこに行ったのか、
「ダメよ、私が先よ。私が驚かせたいのだから!」
と拗ねたようにデイヴィッドを止めた。
ルイス王子は使用人たちが全て退室しているか確認する様に周りを見回し、ジークヴァルトはどういうことかとエマに目で訴えるが、エマは激しく首を振る。
皇太后は「ああ、何から話せばいいのかしら。まずは自己紹介ね」と少女のようにウキウキと興奮気味に声を弾ませた。
そして、目元を隠していたヴェールを上げながら、
「私の名前は、
ジェシカ・イルヴァ・グレイ・フォン・シュタルラント。
この国の皇太后位であり、『占いの魔女』よ」
と名乗った。
エマの膝の力ががくりと抜けた。ジークヴァルトの大きな手が体を支えてくれる。
「そんな…うそ…、おばあ…さま?」
祖母がそこにいた。
英国の屋敷へ遊びに行った時には祖父と共に迎えてくれた優しい表情のままに。
明るい空色の美しい青い瞳が大好きだった。
衝撃の言葉にルイス王子が「ええっ!!?」と大きく反応すると、皇太后はうるさそうに眉をひそめる。
「ルイス、私があの人を裏切って他に夫を持っていたと?もし、そうなら私は王家を裏切った罰を受けなければならないわね」
と、ルイス王子を軽くいなすと今度はエマにむかって、
「私はおばあちゃまではないわ。よく見て、ジェシカよ」
と何かを期待するように見つめ両手をにぎった。
エマを見上げる皇太后は祖母にとてもよく似ていたが、よくよく見るとたしかに別人で記憶にある祖母より年老いていた。
エマの目はみるみる見開かれ、その様子に皇太后は楽しげに微笑む。
「ふふふ、とっても驚いている。私よ、エマ姉様」
「ジェシー…?」
恐る恐るかつて呼んでいた愛称を言ったエマの言葉に、ルイス王子とジークヴァルトおまけに事情を知り尽くしたように立っていた宰相デイヴィッドさえも「「「姉様?!ジェシー?!」」」とひっくり返った声を上げ、コンサバトリーに響き渡った。
✳︎
広いコンサバトリーにもかかわらず大きく長いテーブルの一角、皇太后のもとに椅子を寄せ集めエマはその隣に座った。
皇太后はエマに膝を寄せ澄んだ青い瞳をキラキラとさせて見つめた。
「この世界で私が『姉様』と呼ぶのも、私を『ジェシー』と愛称で呼ぶのも、エマ姉様だけね。ふふふ。
エマ姉様、あなたの真実の名を彼らに教えてあげて」
エマの声が震える。
「エマ・…イルヴァ・グレイ・カミヤ…
英愛・イルヴァ・グレイ・神谷です」
「イルヴァ・グレイ?!」
いちいち驚くルイス王子に皇太后は「少し落ち着きなさい」と呆れる。
「そうよ、エマ姉様も『グレイ家』の者で『イルヴァ』の名を持つ者。
『イルヴァ』は『グレイ家』の血族の女性のみに名付けるのが慣し。
どこにいても、いつの時代になっても血族の女子だと分かるように、ね?」
と、エマに親しみのこもった微笑みを向けた。
(『どこにいても……』
お母さんが言っていた。娘が生まれれば『イルヴァ』の名前を付けて『ルーン』の読み書きを教えるのがグレイ家の伝統だって。
たしか『イルヴァ』は遠い先祖の女性の名前だって言ってた。
え?お母さんは私が異世界に飛ばされることを知っていたの?
ああ、頭が混乱してきた。)
エマは冷ますように額に手を当てた。
そんなエマの肩を皇太后はいたわるように撫で、ルイス王子とジークヴァルトには威厳のある視線を向けた。
「ルイスとジークヴァルトは今から話すことを黙ってお聞きなさい。そして、一度で理解なさい。
まず…、エマ姉様と私は従姉妹の関係よ。
姉様のお母様は私のお父様の実妹でグレイ伯爵家のご出身。
私の実家としている『グレイ伯爵家』、あれはドミニク…先王が私のためにこの国に創ってくれたもの。
あの時はいろいろあったわ…もう60年も前になるのね。
つまり、エマ姉様にとってルイスはいとこの孫になるわね」
母方の従兄弟妹たちの末の女の子ジェシカはエマが英国への帰省の度に「エマ姉様」と言って慕ってくれていた。
エマが十三歳の時ジェシカは確か六歳だったはず。
「私の本当の実家の『グレイ伯爵家』があった国は『United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland』というの。
そう、『この世界』にはない国。
つまり、私たちはこの世界の人間ではなく別の世界から『界渡り』をしてきた者。
ある日突然気付いたら身一つでこの世界に放り込まれていたのよ」
ジェシカは淡々とそう言うが、エマの瞳に戸惑いを見つけると手を握りその甲を優しく撫ぜてくれる。
「エマ姉様が行方不明になった連絡は私たちにもすぐにきたわ。
たくさんの人たちの目の前でいきなり消えたから、当時日本では大きく騒がれていたそうよ」
そうしてジェシカは何故自分たちが突然この世界に飛ばされたのか、グレイ家に伝わる『界渡り』について教えてくれた。
遠い遠い昔、キリスト教が入るよりもっと前の話。
まだ自分たちの神を持っていた頃、大陸の北の地に住んでいた民がいた。
その頃は自然の精霊とも話ができ、民たちの巫女『イルヴァ』は精霊の世界を通ってこの世界にも自由に来ることができていた。
でも彼女の死後、血筋の女性がまるでこの世界に呼ばれるように飛ばされるようになってしまった。はじめのうちは帰って来る者もいたがやがて二度と戻ってくることはなかった。
時代を経て、彼女の血を継ぐ一族が英国で『グレイ家』を創っても稀にそれは続き、だから、せめてもと娘が産まれれば『イルヴァ』の名を名札がわりに付けるようになった。『界渡り』の地で出会えばわかるように。
「叔母さまがこのことをエマ姉様に教えていなかったのは日本で暮していたから。
遠いアジアの国でまさかエマ姉様の身に起こるなんて思っておられなくて…お嘆きは大変なものだった。
叔母さまは、おじいちゃまたちに『教えるべきことは教えてある。だからエマならきっと大丈夫』と説得されて最後には覚悟を決めておられたわ」
(『教えるべきこと』とはきっと『ルーン』のこと。
『界渡り』のことは教えられてはいなかったけれど、お母さんはこの世界で絶大な『力』を持つ『ルーン』を私にちゃんと教えてくれていた。)
そして、エマを信じてくれていると知ることが出来たのは本当に嬉しくてほっとした。
家族はずっと悲しみ続けているかも知れないという心に刺さった刺がすっと抜けたように思えた。
涙をにじませるエマの手を皇太后は撫で続ける。
「私がここへ来たのは14歳のとき。
後から来たのにエマ姉様と会うのに60年もかかるなんてね。
この世界の長い歴史の中で、多くの『イルヴァ』がこの世界に来て『魔女』として生きて、たくさんの知識や文化を伝えたのよ」
(ああ、だからこの世界は既視感に満ちているんだ。)
「私の師匠はこの世界の人だったけれど、ドリスの師匠は13世紀初めのイングランドから来た『イルヴァ』だったのよ。彼女はこの世界は驚きが多いと言っていたわ」
そう言うと、ジェシカはドレスのポケットから手のひらサイズの板状のものを取り出した。
「でも、私たちにとってはものすごく不便な世界よね。これはスマートフォンっていうの」
ジェシカは、アプリだのSNSだのと説明してくれたが、ほとんど分からなかった。
エマがポケットから取り出した小さな巾着袋の中には二つ折れの黒こげの塊が入っていた。
「携帯電話…こんなに真っ黒に…。
エマ姉様の大切な思い出なのに…。
ごめんなさい、私は全て『視て』分かっていたの」
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