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23 【秋道視点】

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・・・この者は何を言っておるのだ。

あのように無邪気に団子を食べたり花の腕輪を作るのに夢中になるゆきが街で男と逢引きなど万が一でもするはずがないじゃないか。

『おい、悪いが明日その逢引きしに入っていったという空き屋の場所を教えてくれないか?』

そうして翌日早朝に私はその空き屋へと案内してもらった。

確かに人気のない場所だな・・・。

空き屋の中に入ると埃を被ったままの湯呑みが床に転がっていた。よく見ると埃の位置から小さい棚の場所が少しずれているのが分かる。

この場所に・・・何かぶつかったのか?

嫌な予感がした私は慌てて外に出た。

ここを出てからゆきは何処に向かったのだろう。

何か、何か手掛かりは・・・そう思って目を凝らすと道端に白くて小さい何かが落ちていた。目を細めて近くに寄ってみる。

これは・・・シロツメクサ?

一晩経って萎れてはいるもののこれは確かに川原に咲いていたシロツメクサの花だ。あの時自分に腕輪をかけてくれたユキの顔が咄嗟に頭をよぎる。

こんなところに何故花だけが落ちているのだ・・・まさか!?

そう思って辺りをくまなく探すと少し行ったところにまたシロツメクサの花だけが落ちていた。川原にひっそりと咲く花がこんな所に間隔をあけて落ちているのは絶対におかしい。きっとこれはゆきからのメッセージ、彼女に何かあったに違いない!

ぽつりぽつりと落ちているシロツメクサの花を辿ると街からはどんどん離れていった。こんな遠くに来てしまっては土地勘が無い者が街に帰るのはさぞかし大変だろう。そう考えているとシロツメクサを途中まで編んでいる物が道端に置いてあった。

手にとって見るとこれはまさしく自分がゆきにもらった腕輪と同じ編み方だ。

ここまで花を一つ一つ置いていたのに何故ここに全てを残しているのだ?ここで何かあったのか・・・?

目の前には他の街へと続く舗装された道が続いている。この道を通って他の街に向かったのか?それとも・・・?

道をしばらく辿ってみてもシロツメクサの花は見つからなかった。やはりあの場所が何かの転機だったはず。私は道を引き返し、最後にシロツメクサが落ちていた場所へ戻りそこから草むらを掻き分けて山に向かって歩き出した。


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