15 / 16
番外編
しおりを挟む
―――ある日の午後。
「ねえ、ザックス。今日は何作ろう?」
私はザックスと暮らし始めてから、料理当番を買って出るようになっていた。といっても、今までほとんど自炊をしてこなかった私はあくまで簡単なものしか作ることが出来ないのだけど。それでも、ザックスは私の作ったものを食べる度に美味しいと言ってくれた。それが何よりも嬉しかった。そうやって二人で話し合っていると――
ぐうぅ~
突然、お腹の鳴る音が聞こえてきた。
音の発信源を探すと、ザックスが恥ずかしそうにお腹を押さえている。どうやら随分お腹が空いているみたいで、私はくすっと笑って言った。
「よし、今日はオムライスにしよっか。」
「おっ、本当か?」
「うん!」
「やった、楽しみにしてるな。前にシノが作ってくれて初めて食べたけど、あれうまいんだよな。」
「えへへ~任せてよ!」
得意気に胸を張るとザックスは私の頭を優しく撫でた。
「行ってくる。」
「うん。いってらっしゃい!」
玄関先で手を振り、依頼へ向かうザックスを見送る。
(今日も無事に帰って来ますように。)
***
今日はお店の定休日なので、黙々と家事をこなしていく。
(よし。普段手が回らない場所も綺麗に出来たし、これくらいでいいかな。)
一通り終わらせてふと窓の外を見ると、いつの間にか日が傾き始めていた。
(えっ、もうこんな時間だったんだ。そろそろ帰ってくる頃かも。急げ急げ~!)
夕飯の支度を終わらせて彼を出迎えるために、私は早速準備に取り掛かった。
ふと時計を見るともう7時を回っていた。いつもなら帰ってきている時間なのだが……。そう思っていると―ガチャリ―玄関が開く音が聞こえて、私はエプロン姿のまま小走りで駆け寄った。
「おかえりなさい!」
「ただいま、シノ。」
笑顔で出迎えるといつものように口付けを落とされる。触れるだけの軽いキス。
「ふふっ、ご飯できてるよ。あと盛り付けるだけだから先に着替えてくる?」
「ああ、そうだな。頼む。」
返事を聞くと私はキッチンへと戻った。テーブルに料理を並べていると程なくして彼が戻ってきたので、向かい合わせに座る。
「「いただきます。」」
勿論異世界にこの挨拶の習慣はないが、私は食事前に必ずいただきますをしたい派なのでザックスに合わせてもらった。最初は不思議そうな顔をしていたが今では様になっている。
一口スプーンで掬って口に運び、ドキドキしながら反応を待つ。
「……どう?」
「……うまい。」
「わぁ、良かったぁ……!」
ほっとして思わず笑みが溢れる。
「おむらいす、だったか?毎日作ってほしい。いくらでも食えそうだ。」
「あはは!もちろん喜んで!でも飽きちゃうからほどほどにしようね。」
「……」
笑いながら言うと、彼は少し不満げに口を尖らせた。
(何その顔!?かっ可愛い……!)
内心悶えながら、頬が緩むのを誤魔化すように食事を再開した。
***
そして夕食を食べた後は、いつものように二人で食後のティータイムを楽しむ。
「ふふっ」
「? どうかしたか?」
「ううん、なんでもない。」
幸せだなぁと思って。そう伝えると、ザックスは微笑んで頭を撫でてくれた。
「なぁシノ。」
「ん?」
「このあと何か予定あるか?」
「特にないよ。」
「そうか。じゃあゆっくりできるな。」
「えっと……?わっ!」
意図が分からず首を傾げると、急に抱き上げられた。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。ザックスは意地悪な笑みを浮かべて言った。
――寝室に行こうか。
途端に顔が熱くなる。
ザックスはたまにこうしてストレートに誘いをかけてくるので、未だに慣れることができない。恥ずかしくて彼の首筋に顔を埋めると、クツクツと笑う声がした。ベッドに慎重に降ろされ、優しく抱き寄せられた。
二人は見つめ合った後、どちらともなく唇を重ねる。そしてゆっくりと、そのままソファへと倒れ込んだ。
そうして、私達は幸せな時間を過ごしていくのだった。
「ねえ、ザックス。今日は何作ろう?」
私はザックスと暮らし始めてから、料理当番を買って出るようになっていた。といっても、今までほとんど自炊をしてこなかった私はあくまで簡単なものしか作ることが出来ないのだけど。それでも、ザックスは私の作ったものを食べる度に美味しいと言ってくれた。それが何よりも嬉しかった。そうやって二人で話し合っていると――
ぐうぅ~
突然、お腹の鳴る音が聞こえてきた。
音の発信源を探すと、ザックスが恥ずかしそうにお腹を押さえている。どうやら随分お腹が空いているみたいで、私はくすっと笑って言った。
「よし、今日はオムライスにしよっか。」
「おっ、本当か?」
「うん!」
「やった、楽しみにしてるな。前にシノが作ってくれて初めて食べたけど、あれうまいんだよな。」
「えへへ~任せてよ!」
得意気に胸を張るとザックスは私の頭を優しく撫でた。
「行ってくる。」
「うん。いってらっしゃい!」
玄関先で手を振り、依頼へ向かうザックスを見送る。
(今日も無事に帰って来ますように。)
***
今日はお店の定休日なので、黙々と家事をこなしていく。
(よし。普段手が回らない場所も綺麗に出来たし、これくらいでいいかな。)
一通り終わらせてふと窓の外を見ると、いつの間にか日が傾き始めていた。
(えっ、もうこんな時間だったんだ。そろそろ帰ってくる頃かも。急げ急げ~!)
夕飯の支度を終わらせて彼を出迎えるために、私は早速準備に取り掛かった。
ふと時計を見るともう7時を回っていた。いつもなら帰ってきている時間なのだが……。そう思っていると―ガチャリ―玄関が開く音が聞こえて、私はエプロン姿のまま小走りで駆け寄った。
「おかえりなさい!」
「ただいま、シノ。」
笑顔で出迎えるといつものように口付けを落とされる。触れるだけの軽いキス。
「ふふっ、ご飯できてるよ。あと盛り付けるだけだから先に着替えてくる?」
「ああ、そうだな。頼む。」
返事を聞くと私はキッチンへと戻った。テーブルに料理を並べていると程なくして彼が戻ってきたので、向かい合わせに座る。
「「いただきます。」」
勿論異世界にこの挨拶の習慣はないが、私は食事前に必ずいただきますをしたい派なのでザックスに合わせてもらった。最初は不思議そうな顔をしていたが今では様になっている。
一口スプーンで掬って口に運び、ドキドキしながら反応を待つ。
「……どう?」
「……うまい。」
「わぁ、良かったぁ……!」
ほっとして思わず笑みが溢れる。
「おむらいす、だったか?毎日作ってほしい。いくらでも食えそうだ。」
「あはは!もちろん喜んで!でも飽きちゃうからほどほどにしようね。」
「……」
笑いながら言うと、彼は少し不満げに口を尖らせた。
(何その顔!?かっ可愛い……!)
内心悶えながら、頬が緩むのを誤魔化すように食事を再開した。
***
そして夕食を食べた後は、いつものように二人で食後のティータイムを楽しむ。
「ふふっ」
「? どうかしたか?」
「ううん、なんでもない。」
幸せだなぁと思って。そう伝えると、ザックスは微笑んで頭を撫でてくれた。
「なぁシノ。」
「ん?」
「このあと何か予定あるか?」
「特にないよ。」
「そうか。じゃあゆっくりできるな。」
「えっと……?わっ!」
意図が分からず首を傾げると、急に抱き上げられた。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。ザックスは意地悪な笑みを浮かべて言った。
――寝室に行こうか。
途端に顔が熱くなる。
ザックスはたまにこうしてストレートに誘いをかけてくるので、未だに慣れることができない。恥ずかしくて彼の首筋に顔を埋めると、クツクツと笑う声がした。ベッドに慎重に降ろされ、優しく抱き寄せられた。
二人は見つめ合った後、どちらともなく唇を重ねる。そしてゆっくりと、そのままソファへと倒れ込んだ。
そうして、私達は幸せな時間を過ごしていくのだった。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
84
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる