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番外編②
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モブ冒険者視点
「なあ、聞いたか?」
「何を?」
昼下がりの冒険者ギルドにて、とある冒険者が興奮した様子で仲間たちに話しかける。
「あのザックスがついに結婚したらしいぜ。しかも相手はシノちゃんだって!俺もう吃驚しちゃったな~」
「はっ?シノちゃんと!?あの天使と!?」
「嘘だろ……」
「嘘じゃない。プロポーズされたんだ~ってシノちゃんが仲良い受付嬢に話してたんだよ。」
それを聞いて彼らは大層驚く。
「まじか……。ザックスの奴、とうとう男になったのか。でもまあ、お似合いと言えばお似合いなのかもな。」
「ああそうだな。シノちゃんは容姿も性格も女神レベルなのに、趣味だけは悪ぃもんな。」
「おい」
「シノ様……俺らが遠征後のボロ姿でも笑顔で挨拶してくれた女神様……うっ、うっ」
「おい泣くなよ!」
「でもあんな可愛い子と結婚出来るなんて超羨ましい!ったく、俺のことも好きになってくれりゃいいのにな~」
「なんだそれ。美人は一妻多夫制ってか?」
ぼやく彼だったが、それは無理というものだろう。
「ははっ。それは諦めるしかないんじゃねーの?」
「ちぇっ、俺もシノちゃんみたいな女のコと出会いた~い!!」
ギルド内に響いたそんな声にどっと笑いが沸き起こった。
醜いザックスと美しいシノの結婚というビッグニュースは瞬く間に街全体に知れ渡った。それから数週間経った今でもまだザックスたちを話題にする人々は多い。
そしてそんな彼らのことを羨ましそうに見つめる視線も少なくなかったとか。……しかし、当の本人たちはそんな視線に気づいてすらいないのだが。
ちなみにシノ自身はと言うと、『私なんかよりもっと魅力的な人は沢山いるはずなのに。どうしてみんな、よりによって私と結婚したいんでしょうね?よく分からないです』と首を傾げている始末である。
その無自覚な鈍感さこそが魅力であり、男たちの心を射止めてしまう所以だということには、彼女はきっと気づいていない。
***
商人ギルド受付嬢視点
一方その頃、二人の噂を耳にしたギルド職員たちの反応は様々だった。中には結婚して幸せな家庭を築いている者もいるため素直に喜ぶ者もいれば、失恋して落ち込む者、そして何故か悔し泣きする者などがいたらしい。その中でも1番悲嘆に暮れていたのは他でもない……シノの登録を担当した彼女であった。
あれ以来すっかり仕事にも身が入らなくなってしまった彼女のことを心配した先輩の職員たちが休憩室へと連れて行くと、案の定、彼女は泣きじゃくっていた。
「うぅ~……ぐすん」
「どうせまたシノちゃんのことでしょ?あんた本当にあの子のこと好きなのね」
「だって、あんなに素敵なシノさんがですよ?粗雑そうな冒険者と結婚なんて!うぅ。もっともっとハイスペックな紳士じゃないと……」
「でも相手の彼はSランク冒険者でしょ?顔は……まぁ、ほら。愛着湧くかもしれない可能性も無きにしもあらず?……多分。」
呆れて言う先輩の言葉に彼女は納得がいかない様子。すると、そんな彼女らのもとに噂の人物が現れたではないか。突然の登場により驚いた二人が呆然としている中、ザックスの妻となったシノはいつも通りの優しい声音で話しかけてきた。
「こんにちは」
途端に顔を熱くし、慌てふためきながら言葉を紡いだ。
「こここ、こんにちは!し、失礼しました!あの、何かご用でしょうか!?ああっ、書類ですか!?今すぐに持ってきます!」
完全にテンパっている姿を見て、思わずクスリと笑みを浮かべシノは言った。
「違いますよ、お話があって来たんです。」
「……話、ですか?」
「はい。」
キョトンとした顔で首を傾げるとニコリと微笑み、シノはゆっくりと口を開いた。
「お世話になってきた貴女に渡したいものがあって。だからこうしてやって来たんです。」
そう言って見せたのは……小さな包みだった。不思議に思う表情を浮かべたまま固まっていると、今度は悪戯っぽい笑顔を向けられる。
「ふふっ、これは私の手作りなんですよ。開けてみて下さい。」
言われるままに小包を開けるとそこには、可愛らしくラッピングされたシュシュが入っていた。驚いて目を見開くと、シノは照れ臭そうに笑いかける。
「へへ、初めて作ったからあまり上手くないかもですけど……」
「そ、そんなことありません!可愛い…凄く嬉しいです!それにしても、どうしてこれを……?」
「それはもちろん、今までのお礼ですよ。ずっと親切に、そして仲良くしてくれましたよね。これくらいじゃ全然足りないくらい。」
「シノさん……」
「本当にありがとうございます。それと……」
そこで一旦言葉を切ると、真剣な眼差しを向けてくる。
「これからもよろしくお願いしますね!」
涙を流すまいと必死に耐えていたが無駄な努力だったようだ。その言葉に、ポタリポタリと零れる雫を止める術はない。
「こ、こちらこそ……!末永く宜しくお願いいたします!!」
「あはは、プロポーズみたいですよっ!」
その後、感動のあまりに泣いてしまった彼女を慰めようと、先輩職員たちが慌ててやって来るまであとわずか。
***
後日、ザックスとシノの結婚式にて仲人を務めた彼女が、同僚たちに自慢気に話す姿が目撃されたという。『純白の花嫁衣装を身に纏う幸せそうなシノが美しい』『白を基調とした装飾が神聖だ』と力説する彼女の話を聞いた他の女性職員たちは皆一様に羨ましがり、同時に自分もいつかは素敵な人と出会いたいと願ったとか。
――――とあるギルドに、今日も元気な挨拶が響き渡る。
「おはようございます!」
ここは、街の外れにあるギルド。
そこに勤める彼女は、今日も一生懸命に働くのであった。
【END】
――――――――――――――――――――
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。 第三者視点で書くのは初めてだったので楽しかったです。
ちなみに、二人の結婚式に参加したのは
商業ギルドの受付嬢、シノのお店の常連客、ザックスを何かと気にかけてくれている冒険者ギルドのギルド長でした。
ザックスが冒険者になるきっかけとなったフードの青年も、もしかしたら遠くから覗いていたかも……?
拙い文章ではありましたが、少しでも楽しんでいただけていたら嬉しいです。ありがとうございました。
「なあ、聞いたか?」
「何を?」
昼下がりの冒険者ギルドにて、とある冒険者が興奮した様子で仲間たちに話しかける。
「あのザックスがついに結婚したらしいぜ。しかも相手はシノちゃんだって!俺もう吃驚しちゃったな~」
「はっ?シノちゃんと!?あの天使と!?」
「嘘だろ……」
「嘘じゃない。プロポーズされたんだ~ってシノちゃんが仲良い受付嬢に話してたんだよ。」
それを聞いて彼らは大層驚く。
「まじか……。ザックスの奴、とうとう男になったのか。でもまあ、お似合いと言えばお似合いなのかもな。」
「ああそうだな。シノちゃんは容姿も性格も女神レベルなのに、趣味だけは悪ぃもんな。」
「おい」
「シノ様……俺らが遠征後のボロ姿でも笑顔で挨拶してくれた女神様……うっ、うっ」
「おい泣くなよ!」
「でもあんな可愛い子と結婚出来るなんて超羨ましい!ったく、俺のことも好きになってくれりゃいいのにな~」
「なんだそれ。美人は一妻多夫制ってか?」
ぼやく彼だったが、それは無理というものだろう。
「ははっ。それは諦めるしかないんじゃねーの?」
「ちぇっ、俺もシノちゃんみたいな女のコと出会いた~い!!」
ギルド内に響いたそんな声にどっと笑いが沸き起こった。
醜いザックスと美しいシノの結婚というビッグニュースは瞬く間に街全体に知れ渡った。それから数週間経った今でもまだザックスたちを話題にする人々は多い。
そしてそんな彼らのことを羨ましそうに見つめる視線も少なくなかったとか。……しかし、当の本人たちはそんな視線に気づいてすらいないのだが。
ちなみにシノ自身はと言うと、『私なんかよりもっと魅力的な人は沢山いるはずなのに。どうしてみんな、よりによって私と結婚したいんでしょうね?よく分からないです』と首を傾げている始末である。
その無自覚な鈍感さこそが魅力であり、男たちの心を射止めてしまう所以だということには、彼女はきっと気づいていない。
***
商人ギルド受付嬢視点
一方その頃、二人の噂を耳にしたギルド職員たちの反応は様々だった。中には結婚して幸せな家庭を築いている者もいるため素直に喜ぶ者もいれば、失恋して落ち込む者、そして何故か悔し泣きする者などがいたらしい。その中でも1番悲嘆に暮れていたのは他でもない……シノの登録を担当した彼女であった。
あれ以来すっかり仕事にも身が入らなくなってしまった彼女のことを心配した先輩の職員たちが休憩室へと連れて行くと、案の定、彼女は泣きじゃくっていた。
「うぅ~……ぐすん」
「どうせまたシノちゃんのことでしょ?あんた本当にあの子のこと好きなのね」
「だって、あんなに素敵なシノさんがですよ?粗雑そうな冒険者と結婚なんて!うぅ。もっともっとハイスペックな紳士じゃないと……」
「でも相手の彼はSランク冒険者でしょ?顔は……まぁ、ほら。愛着湧くかもしれない可能性も無きにしもあらず?……多分。」
呆れて言う先輩の言葉に彼女は納得がいかない様子。すると、そんな彼女らのもとに噂の人物が現れたではないか。突然の登場により驚いた二人が呆然としている中、ザックスの妻となったシノはいつも通りの優しい声音で話しかけてきた。
「こんにちは」
途端に顔を熱くし、慌てふためきながら言葉を紡いだ。
「こここ、こんにちは!し、失礼しました!あの、何かご用でしょうか!?ああっ、書類ですか!?今すぐに持ってきます!」
完全にテンパっている姿を見て、思わずクスリと笑みを浮かべシノは言った。
「違いますよ、お話があって来たんです。」
「……話、ですか?」
「はい。」
キョトンとした顔で首を傾げるとニコリと微笑み、シノはゆっくりと口を開いた。
「お世話になってきた貴女に渡したいものがあって。だからこうしてやって来たんです。」
そう言って見せたのは……小さな包みだった。不思議に思う表情を浮かべたまま固まっていると、今度は悪戯っぽい笑顔を向けられる。
「ふふっ、これは私の手作りなんですよ。開けてみて下さい。」
言われるままに小包を開けるとそこには、可愛らしくラッピングされたシュシュが入っていた。驚いて目を見開くと、シノは照れ臭そうに笑いかける。
「へへ、初めて作ったからあまり上手くないかもですけど……」
「そ、そんなことありません!可愛い…凄く嬉しいです!それにしても、どうしてこれを……?」
「それはもちろん、今までのお礼ですよ。ずっと親切に、そして仲良くしてくれましたよね。これくらいじゃ全然足りないくらい。」
「シノさん……」
「本当にありがとうございます。それと……」
そこで一旦言葉を切ると、真剣な眼差しを向けてくる。
「これからもよろしくお願いしますね!」
涙を流すまいと必死に耐えていたが無駄な努力だったようだ。その言葉に、ポタリポタリと零れる雫を止める術はない。
「こ、こちらこそ……!末永く宜しくお願いいたします!!」
「あはは、プロポーズみたいですよっ!」
その後、感動のあまりに泣いてしまった彼女を慰めようと、先輩職員たちが慌ててやって来るまであとわずか。
***
後日、ザックスとシノの結婚式にて仲人を務めた彼女が、同僚たちに自慢気に話す姿が目撃されたという。『純白の花嫁衣装を身に纏う幸せそうなシノが美しい』『白を基調とした装飾が神聖だ』と力説する彼女の話を聞いた他の女性職員たちは皆一様に羨ましがり、同時に自分もいつかは素敵な人と出会いたいと願ったとか。
――――とあるギルドに、今日も元気な挨拶が響き渡る。
「おはようございます!」
ここは、街の外れにあるギルド。
そこに勤める彼女は、今日も一生懸命に働くのであった。
【END】
――――――――――――――――――――
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。 第三者視点で書くのは初めてだったので楽しかったです。
ちなみに、二人の結婚式に参加したのは
商業ギルドの受付嬢、シノのお店の常連客、ザックスを何かと気にかけてくれている冒険者ギルドのギルド長でした。
ザックスが冒険者になるきっかけとなったフードの青年も、もしかしたら遠くから覗いていたかも……?
拙い文章ではありましたが、少しでも楽しんでいただけていたら嬉しいです。ありがとうございました。
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