普通に役立たずなので当たり前の様に追放されたんだけど明日からどうしよう

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ダンジョンで飯なんか食ってる場合か

メモリアルクエスト:ヒューゲストキャノン

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 テーネは高いところが苦手だ。魔の加護を持つ者は宿を取るのも難しく、安全に眠る場所を確保するのに苦労する。木に登って眠れば安全だろうが、それが出来ない。
「ふぁ……」
 なので魔物の群れに紛れて眠る。魔物は魔の加護を持つものを敵として認識しないのでこういう荒業も可能だ。目を覚まし、近くの川で顔を洗って先を急ぐ。モフモフの魔獣に囲まれていれば他者の目も誤魔化せ、風避けにもなる。巣穴にお邪魔することもあるが、今日は単に群れに囲まれただけである。気候も穏やかで天気も悪くないため、これで十分だ。
 魔の加護を持つものは魔物と同列に扱われる。それは人間から敵とみなされるだけでなく、魔物は味方として扱ってくれるということ。
「さて、そろそろ近いかな?」
 テーネは懐から羊皮紙に印字された案内を取り出す。それはとある軍事国家が人員を募集しているというものだった。遠くの街に張り出されていたので、来るまでに時間が掛かってしまった。周囲にも街はあったが立ち寄っていないので、あまり情報はない。
「罠じゃないといいけど」
 バスターの加護は対人、則ち軍事に使えない。この案内には魔の加護大歓迎と書いてあるが、その理由はテーネ自身もよく分かっている。高性能な人殺しが欲しいのだろう。バスターの加護を受けた状態で人を殺めれば烙印が刻まれ、罪人として追われる身になる。魔の加護持ちは元々人殺しの為に魔王が加護を与えたので問題はない。
 軍事国家が魔の加護を持つ者を欲するのは当然と言える。
「文官がいいな……」
 安住の地を求める以上、死の危険がある前線には行きたくないところ。幸いにして彼には魔の加護以外にアピールできるポイントがある為、ワンチャンあるかもと思ってやってきた。ダメなら帰るだけだ。
「そろそろいいかな、大通り」
 早く着きたいという気持ちが先行し、大通りを通ることにしたテーネ。もしかしたら、同じ考えの者に会えるかもしれない。とはいえ、完全に気を抜いたりはしない。マントで顔を隠し、烙印が見えない様にはしている。看破などでバレてしまうかもしれないが、何もしないよりはいい。
 いそいそと道を歩いていると、何者かが立ちふさがっていた。鎧を着こんでいる癖にミニスカートというちぐはぐな格好の少女だ。いいな、と思いつつ舌なめずりをしてから思考を落ち着かせる。一昨日の満月の日はアメディスに急ぐため無理を押しており、まだ熱が身体に残っていた。
「ん?」
「この先は軍事国家アメディス! あなたはあの募集を見て来たの?」
 聞かれたのでテーネは正直に答えようとするが、念の為に確認は取る。まだ目指している軍事国家アメディスまでは距離がある。名物と言われている日時計も見えていない。
「アメディスの関係者さんです?」
「逆よ、あんな悪の枢軸に加担しようとしている奴を止める為に見張ってるの」
 余計なお世話だなぁと思いつつ、素通りしようとしたが通せんぼをされてしまう。この程度で剣を抜いて殺したりはしないが、少しスルーする手段を考える。念の為、魔力を両腕に溜めてすぐに動ける様にする。
「アメディスに参加するの?」
「えと……そうじゃなくてこっちに用事が……」
 ハッキリ言わないが、嘘も吐かない。嘘が苦手なことはテーネ本人も自覚がある為だ。
「そっちはアメディスしかないけど?」
「え? 他に街があるんじゃ……」
「あるけどこっちの街道はアメディスにしか繋がってない」
 だが向こうも頑固で道を譲ってくれない。どうも軍事で他の国を侵攻しようとしているアメディスを妨害するのが正義だと思っているらしい、正義を振りかざす人間が一番面倒なのだ。
「あの、これから帰る途中なんですよアメディスに……」
 とりあえず国民のフリをしてやり過ごそうと考える。だが、それで許してくれるほど正義マンは甘くない。剣を抜き、少女は戦いの準備を始めた。
「じゃあ、交渉の材料になってもらうわ」
「バスターが民間人を傷つけるの?」
「悪を討つのがバスターの仕事、黄色烙印くらいならおつりが来るわ」
 その民にアメディス国民は入っていないのかとテーネは嫌気がしたのだが、こうなっては仕方ない。躊躇わず、防具に覆われていない脚部へ向けて魔力を込めたファントムブレードを放つ。
「がっ!?」
 いくら重要な臓器がないとはいえ、脚は文字通りの生命線。特に重装備を支えるのであれば尚更。太ももを貫通したブレードにより血を流し、少女は膝を付く。
「あんた……何を……」
 確実なトドメを刺すべく、テーネは剣を抜いて彼女に迫る。それを見て少女は急に懇願を始めた。
「やめて……、たすけ」
 しかしそれを聞かず彼は首を切断して息の根を止めた。長い髪は丁度ひっかけて持っていくのに都合がいい。欲求を理性で留め目的地へ急ぐため戦闘は手短に。
「手土産、出来たかな……」
 あんまり弱いと意味ないかな、と思いつつアピールの材料に持っていくことにした。血は胴体の側から流れるので、あまり汚れることは気にしなくていい。

 そうして大通りを歩いていると、いよいよ軍事国家アメディスの象徴とされる日時計が見えてきた。大きな壁越しにも見えるほど大きな針で、それっぽいから日時計と呼ばれているだけでその正体は不明。軍事を軸にする国だけにその内情を余り明かしていない。
「さて……」
 ぱっと見で募集に応じたことが分かる様に、案内を手にマントを頭から脱いで魔の加護の烙印が見える様にする。いきなり持っていては面喰らうだろうと、少女の首は髪を使って肩にかけ、ぱっと見で分からない様にした。
「いよいよだね」
 上手くいけば、これまでの様に毎日脅えて過ごす必要が無くなるかもしれない。テーネは人斬りとして多くの人を手にかけてきたが殺しを楽しんでいるわけではない。彼は殺されることなく暮らしたいだけなのだ。だが魔の加護があるだけでバスターたちは命を狙い、大きな町には入ることができない。
 期待と不安に胸を躍らせながら、アメディスの門へ足を向ける。そこでは見張りの兵士が槍を手に辺りを警戒していた。彼らはテーネを見るなり近寄ってきて、何者かを尋ねてきた。
「何用か?」
「これを……」
 彼は案内を見せ、烙印を示した。兵士は話が分かったらしく、すぐに通してくれた。
「これはわざわざどうも。では志願者の選定を行いますのでお待ちください」
「ところでこれは?」
 兵士の一人が彼の持つ妙な物を気にかけ、それについて聞いた。
「あ、はい。さっき大通りでアメディスへ行く人を妨害していたバスターの首です」
 正直に答えて首を見せると、大の大人が悲鳴を上げて逃げ惑った。さすがに恐怖に歪んだ表情のままではダメだったか、と半ば見当違いのことを考えて、テーネはそっと少女の瞼を閉じてやる。顔はいい、脚の具合からして鎧ではわからなかったが体つきも……と邪な感情が沸いたのをテーネは抑え込んだ。
(満月じゃないのに……)
「と、とにかくこちらへ」
 首は持ち込めないとのことで、その辺に置いておくしかなかった。通されたのは門番の詰め所らしきところで、男達が常にいる影響か妙に汗臭い。そしてどこかみすぼらしい。
「おやおやこれはまた若い人が……では選定を行う」
 そこで待っていると、担当と思われる老人が姿を見せる。若い、といってもテーネは成長どころか老化もしないらしく、自分の年齢などもう忘れてしまった。
「先ほどの首、拝見しました。パラディンレベル23……上位職を無傷で仕留めましたか」
「いえ、幸運にも不意が突けたので」
 ここは少し話を盛るべきだろうが、元々謙虚で正直な性格故にそんなことを言ってしまう。それに戦いの話を盛ると兵士になってしまうかもしれない。
「ふむ、複数の魔の加護を持っておられるようだ。魔の加護はあまり詳しくないのだが、そういうものなのかね?」
 テーネは人斬り、暗黒魔導士、暗殺者と複数の加護を持っている。バスターの加護は同時に受けることが出来ず、その都度加護の神殿で切り替える必要がある。魔の加護については所有者が情報を秘匿していることもあり、そのルールはあまり公になっていない。
「多分特殊かと……。昔捕まって人体実験された時に」
「そうか」
 本当に重要なことは隠しつつ、可能な限り正直に伝える。いくらこれから暮らす予定の国だとしても、万が一を考えると全て手の内を明かすのは賢くない。
「やはり前線希望かね?」
「あ、いえ……その、実は数学を少々嗜んでいて……文官希望なんですが……」
 テーネの隠れた特技、それは数学。魔法文化の中では建築家の特殊技能か金持ちの道楽でしかないのだが、魔の加護を得る前から彼は数学者に憧れていた。
「ほう! 数学とな? それは珍しい。どの程度か見せてもらおう」
 老人は意外にも数学の部分に食いついてきた。彼は連絡用の黒板に空いたスペースを見つけると、そこに二次方程式を記した。書いている途中にもテーネは頭の中である程度計算をしていた。文官でも四則計算と平均の割り出し以外は特殊な技能扱いされることも多い中、この国はレベルが違う。
「これは解けるか」
「はい!」
 久々に同じ興味を持つ相手というのもあり、彼はうきうきしながら式を解いた。老人が式を書き終わる頃には暗算が済んでおり、後はそれを出力するだけだ。もちろん、検算も同時に済ませる。
「おお、早いな」
 随分久しぶりに褒められ、テーネは少し鼻が高かった。その後も老人は彼のスキルを確認するため、様々な問題を出した。それをテーネは難なく解く。字が汚い点については老人も目を瞑った。下手なりに1と7や、0と6など見間違えない様に気を使っているのは分かった。
「これにてでは、王に報告する。ここで待っておれ」
「はい」
 老人は結果を国王に伝えるらしい。そういう専門の部署ではなく、国王に直とはなかなか気合が入ったスカウトだ。
「おう、お前が希望者か」
 待っていると、大柄な兵士が声をかけてきた。
「あ、はい」
「では選定を開始する」
 有無を言わさず、選定と言われて別の場所に連れていかれてしまった。選定はさっき終わったのでは? と言えないのがテーネの弱いところ。基本口下手で引っ込み思案。魔の加護を得る前からこんな感じで周りからは浮いていた。

 連れていかれたのは訓練所らしき広い空間。いくつか訓練用の人型をした的があるのだが、これを打ち据えるのが選定なのだろうか。
「今回の選定では、お前の武力を見せてもらう。この的を思う存分攻撃してみろ」
 的はいくつかあり、移動できるようにコロが付いているものから床に埋まっているもの、何も装備していないものや鎧を付けているものなど様々存在する。テーネとしてはなるべく弱そうな標的を選んでバシバシ活躍している様に見せたい。だが、普段は確実に仕留めなければならないかつ余力を残しながら戦う必要がある都合自分の全力を試す機会は滅多にない。
 己の力量を知るのは今後どうあっても生存を助けてくれるだろう。
「これにしよっと……」
 フルプレートの鎧を着た、床に埋まった標的を選ぶ。近くに盾があるので、その中から衝撃を逃がし易いラウンドシールドを選んで置いてもらう。大判かつ丸いだけでなく防御する面がなだらかに外側へ傾斜を描いている。なんかこうすると丈夫、という知識は多く伝わっているがテーネの様にこういう形状は力を逃がすと理屈まで理解してる者は少ない。
「これ装着してもらえますか?」
「随分自信家だな」
「あ、いえ……自分でも全力を試す機会がないのでやってみたくて……」
 ラウンドシールドを構えた鎧の標的が完成する。剣では当然太刀打ちできないので、こういう時はハンマーなどで上からぶっ叩くらしい。バスターでもここまでのフル装備をした者は少ない。
「よーし……」
 腕を捲り、義手を出して魔力を溜める。周囲の景色が揺らぐ程度のチャージはよくやっているが、それ以上は試していないなともっと蓄えてみる。溜め続けると紫の炎が腕に灯る。
「そろそろかな」
 堅い床が抉れるほどの踏み込みで駆け出し、その腕を盾にぶち込む。部屋中が振動し、鉄が裂ける甲高い音が響く。腕は盾と鎧を容易く貫通し、背中は大きく抉れて埋め込まれた床から標的がもげた。腕を抜くと標的は転がり、鎧の下に着て来た鎖帷子や皮や綿の破片が散らばる。
「ひぇ……」
 自分でやっておいてぞっと青ざめるテーネ。周りの兵士たちもざわめく。
「ふむ、なかなかやるな」
 大柄な兵士は冷や汗をかきながらその実力を認める。だがもう一つ、と試験を続けた。
「腰に帯びた剣の腕はどの程度か?」
「はい、まぁこんなものです」
 見せられる技を選んで、いくつか見せる。剣を回転させて投げ、手元に戻す十八番とも言える『エスパド・スライバー』。これ一個を様々な手法で魅せる。不意に剣を光らせる『エスパド・ブラシュ』や鎧破壊、武器破壊などは不意打ち気味に使いたいので黙っていることに。
「ほほう、凄いものだな」
「剣はその……義手の技を隠すものなので自信ないですけど」
 テーネの自己評価は正直なものだ。剣術は義手という切り札を隠すものであり、その技量はどこまで行っても過信できるものではない。過信、慢心は死を招くと歴史は伝える。
「ああ、いたいた」
 先ほど選定してくれた老人がやってくる。国王に報告が済んだ様子だが、元の場所からテーネが連れ出されてしまったので探す羽目となった。
「門番長! 選定は私の仕事だぞ!」
「一緒に戦う兵士が信用出来るか確かめて何が悪い!」
「お前が何と言おうと国王から合格のお達しが出た」
 現場と指揮系統が仲悪そうなので心配になったが、とりあえず合格の様だ。それについては門番長も認める。
「ふん、こっちとしても合格だ」
「ありがとうございます! これからよろしくお願いします!」
 無事、テーネはアメディスの試験に受かりここで暮らす権利を得た。目的である安住の地を得たのだが、ここは軍事国家。その平穏が続くかどうかは、まだ分からない。

 アメディス国民となったテーネは、募集に応じためぼしい戦力であることから上位の扱いを受けるとのこと。案内されたのは国の指定する重要な人材が暮らす、良質な建築物。デザイン性は皆無だがそんなものである。
(もしかしてここ高い?)
 硬い階段を踏みしめながらテーネは心配する。家賃のことではなく、この階段の上がり具合を見るに、上階が住居になるだろう。彼は高いところが苦手だ。もし窓から外の景色など見えた日には一日中カーテンを閉める羽目となる。
(これ、珍しい建材だね)
 石の様だが削った痕跡のないこの建材は、泥と石灰を組み合わせたコンクリートというものらしい。とても硬い上に、自由な形に固められて便利なんだとか。
「ここがお前の部屋だ」
 部屋に通される。そこは一人用のベッドだけで埋まってしまう様な狭い部屋だ。窓はなく、上に換気用の穴が開いているだけ。とりあえず高所の心配はしなくてほっとする。
「割と不評なのだが、どうかね?」
 先ほどから案内をしてくれてる老人は、外国の人間にこの待遇があまりウケないことを気にしていた。確かに窓のない殺風景な部屋では微妙な顔もする人はいる。とはいえ彼からすれば安全が確保されているだけで十分だ。部屋の外観も気にならない。
「いえ、殺される危険がないだけで十分安心です」
「そうか。今日は丁度配給の日だ。日割りしなくて済む。週一だぞ」
 食料は配給性。堅そうなパン三つと小さな容器に入ったザワークラウト。キャベツの漬物は壊血病を防ぐのに役立つ。食事面も概ね心配なさそうだ。
(上流でこれなのね)
 他の人はもっと厳しい環境なのかなとは思ったが、そんな心配をする余裕はない。それが気になるのなら、自分が頑張ってこの国を盛り立てればいいのだ。
「シャワールームはあっち、時間無制限だ。石鹸は月一で配る」
 前提として時間の話をしたので、制限がある場合もあるようだ。テーネの小さな掌にも収まるサイズのものを、更に半分に切った石鹸が渡される。
「タオルはこれ、部屋番が書いてある。歯ブラシも月一だ」
 ごわごわの布切れが洗面用具と太い枝をほぐしたものが洗面用具。彼も日用品が手に入らない中で歯磨きの重要性は分かっているので、この枝をほぐして繊維を毛羽立てた歯ブラシはよく自作している。
「洗濯物はシャワールーム前の籠に部屋番が書いてあるからそこに入れておけ。高価な装飾は外した方がいい」
「はい」
 衣服は戦闘で破れたり血まみれになったりするのでそんな高価なものはない。心底大事にしているチョーカーだけ管理を徹底しておけば良さそうだ。
「一応、全員に渡しているからこれもやるぞ。作業着と替えの下着だが……お前さんは服装自由だから着る必要はない」
「いえ、助かります」
 ほぼ手ぶらで旅をしているテーネにとってはこんなものでもありがたい。誰かのお下がりなのか袖や裾が擦り切れているが、あること自体が大助かり。

 一通りの説明を受け、テーネは部屋で休んだあとシャワールームに向かう。指示通り服は籠へ突っ込み、古びたタイルを裸足で踏みしめる。長いこと戦いで多くの傷を受けた身体は、それが想像できないほど白く美しい肌をしている。怪我もすれば痛いのだが、治癒能力が高いのか切断された腕以外は跡形もなく治ってしまう。
 シャワールームは共用で、狭い空間にシャワーが並んでおり仕切りの類は一切ない。男女は別れているのかという疑問が湧くのだが、遠い東の国では混浴が当然という話も聞いたことがある。
(……)
 テーネは自分の頬を叩いて邪念を取り払う。この地域だと男女が共に湯浴みするのは夜伽でしかない。
「いたい……」
 右手の義手で叩いた方は思ったより痛かった。
「わっ、冷たい」
 蛇口を捻ると、壁に固定されたシャワーヘッドから水が出る。疲労に火照った身体にはこれが心地よい。この世には湯が出るシャワーや、お湯を張って浸かる習慣もありそれも経験済みだが、なにより敵の心配をしなくていいのがテーネにとって最大の幸福であった。部屋も簡素であるが鍵が掛かり、その鍵を首に掛けられる様に紐が付いている。少ない資材で快適さを追求しようという思想が垣間見えた。
「ふぅ……」
 時間無制限ということもあり、ゆったり水を浴びて緊張をほぐす。髪もすっかり伸びてしまったが、切る機会を見失っている。ここに床屋はあるのかどうか。これから暮らすのでゆっくり考えればいいことだが。
(お仕事、どこに配属されるかな……)
 可能ならば前線に行かなくても済むといいな、と彼は考えた。選別の様子を見るに、学がある者は珍しいようだがついうっかり自身の力をひけらかしてしまった。どっちになるかは五分五分だろうか。
(あー、でもボク数学は趣味の範囲だしなぁ)
 だがテーネの数学は建築など実用の方向ではなく、学術的な部署に配属される可能性は低いと見ていた。色々考えているとすっかり周囲のことが頭から抜けてしまったのか、男の驚く声で意識が引き戻された。
「うわ! お、女?」
「あ、男! 男!」
 よく間違えられるが、そんなに女っぽいだろうかとテーネは考える。確かに大人になりきる前に魔の加護を受けた影響はあるが、彼に自覚はあまりない。実際は言われなければ少女だと思ってしまうほどだ。
「あ、ああ……、まぁここ共用だからあれだけど、新顔?」
「はい、今日から」
 男は以前からここに住んでいる様だ。彼はテーネの顔を見て事情を察する。
「魔の加護かぁ、ならここに来るのが一番だろうなぁ。俺なんか国で禁じられてた研究したいからこっち来たが、設備も暮らしも大変でな。冷たっ!」
 やはり他の国と比べて生活水準は良くないとのこと。上流と思われるこのエリアでそんな感想なのだ。一般市民については言わずもがな。男はシャワーの冷たさに悶絶しながらそそくさと身体を洗って撤退を始める。
「ま、俺の研究が実ったらお前にもいい暮らしが出来るさ。お互い頑張ろうぜ」
「はい!」
 久しぶりに仲間を得て、少しテーネは不安が和らいだ。
「あ、初日はお祝いなのか国が娼婦送ってくるからゆっくり楽しめよ。当たりが引けるといいな」
「え?」
 男は去り際にそんなことを言う。テーネも長く生きているので娼婦がどういう仕事をする人なのか、それがどういうことなのかは知っている。
(えっと、確か加護にも聖娼ってのがあってそれ受けてると妊娠しなかったり病気防いだり、えっでも魔の加護ってたしかいやボク実際に見たわけじゃないけど)
 加護には魔物を倒す以外にものも存在し、武器を作るだけでなく娼婦をするためのものさえある。テーネは冷水を頭から被って冷静になろうとする。彼がここまで動揺しているのはそういうことが恥ずかしい気持ちがある以上に魔の加護の性質を知っているからだ。
 ここのところ邪な気持ちに捉われるのは魔の加護の効果。魔の加護は子供に伝染するため子供を作ってもらうと与えた側としても得する仕組み。そのためか魔の加護を持つものはその雌雄問わず満月の日に発情する。今のテーネは満月の日に無理を押したせいでその影響が残っている状態だ。
(落ち着け落ち着け落ち着け)
 テーネは自身の魔の加護を誰かに伝染させたくないと思っていた。よって子供を作るなど言語道断。タオルで身体を拭き、着替えた彼は部屋へ戻る。
「あら、あなたが新人さん。かわいい子ね」
 部屋の前には一人の女が立っていた。ブロンドの髪はこの状況故か、短く切られてくすんではいる。だが豊満なプロポーションは粗末な衣服だからこそ彩りを増す。思ったより美しい女性がやってきて、テーネの頭はパンクしそうになっていた。
「私はクラリス。この宿舎の娼館にいるから、お気に召したらご指名お願い」
 アメディスでの初日は全部、このクラリスの印象に持っていかれてしまったような気がするテーネなのであった。

   @

 翌日、テーネが呼び出されたのは会議室。実は配属を決める議論が平行線を辿っており、本人の意見を募る他ないほど煮詰まっていた。
「じゃから! 学のあるもんは少ない言うとるじゃろがい!」
「あの実力を前線に置けば、兵も安心し士気が上がる!」
 昨日の老人と大柄の兵士、門番長の地位にいる人らしい、がまだ言い合っていた。どうも夜通しこの議論は続いたらしい。テーネも自分の意見が出せるのは嬉しいが、少し呆れていた。昨日のことがまた吹っ飛びそうになる。
 昨日自分にあてがわれた娼婦のクラリスは聖娼の加護を持たない。国によってはあの加護を持たない者の売春は違法だが、アメディスは加護の神殿からも締め出されている様だ。子供を産めば支給も増え褒賞がありそれが魔の加護なら増加するので、テーネは種馬としての機能も期待されているそうだ。女日照りになることはないだろうとクラリスはからかった。それで暮らしがよくなるなら、と思うが先のビジョンがないのに子供ばかり作っても意味がないとテーネは感じていた。
「お前さんもそう思うじゃろ?」
「お前も前線で暴れたいだろう?」
 二人に言い寄られ、少し考える。個人としては前線に行きたくないので、なんとか門番長の機嫌を損ねない様に言葉を選んだ。
「あの、門番長さん……実力を高く買っていただけるのは大変うれしいんですが……ボクってその、戦い方の都合不意打ちが多くて合戦みたいに集団で真正面から戦うとなると足並みを乱してしまうというか」
「確かにそうだが……せっかくの力だ。なんとか……」
 納得はしてもらえたが、それでももったいないと思われている。すると、昨日遭遇した学者の男が折衷案を出してくれた。
「では、午後に要人警護の為の訓練を行いましょう。午前は研究所で。これでいかがですか?」
「うむ……出来れば一日研究所にいてほしいが……」
 老人は研究を優先させたがっていた。このままでは埒が明かないので、ここはテーネがスパッと決めることにした。
「ボクは研究に回ります。しかし万が一この国が襲われた時は戦わねばなりません。なので、訓練も定期的にします」
 訓練をしたかったのは、テーネ自身でも自分の技がどこまで出来てどこまで通じるのか知りたかったから。新技も開発できれば、今後の為になる。普段は即座に相手を仕留めなければならないため、思いつきを試す余裕はなかった。それが出来るのはありがたい限り。
「助かりました、案を出していただけで」
「双方引く手数多とは妬けちゃうねぇ」
 移動中は学者の男と話している。元々あまり社交的な方ではないテーネだが、集団で暮らすなら少しはと思い知り合った男とのやり取りは続ける。
「しかし女の噂ってのは速いもんだ。君が可愛い顔に反して夜はすごいって話がもう流れている」
 どうやらクラリスを伝ってテーネの夜の事情が即座に流出したらしい。たしかに昨日は理性が飛んでしまっていたが、そんなになっていたとは思わなかったのである。テーネは頭から湯気が出るような思いであった。

 というわけで本人の意志がハッキリと明示されたことで配属が決定した。軍事研究所。アメディアの根幹たる軍事の発展を支える部署だ。老人に連れられてやってきたのは、日時計の針の真下。
「我々は今、ヒューゲストキャノンの調整を行っている。外から見えたあれだ」
 あの日時計は兵器だったらしい。鉄の筒から弾丸を火薬や魔力で発射する大砲のとても大きなもの、ということだ。
「我々はあれの設計図を発掘し、あらゆるものを犠牲にして完成させた。作りさえすれば、世界を手中に収めることも可能だと信じてな。だが、現実は違った」
 そう、このヒューゲストキャノンはあまりに大き過ぎた。試射しようものなら、周囲の国に警戒体制を取られてしまう。作っている時点でも外交封鎖を受ける代物なのだ。
「つまり、試射の一発で周辺国のうち最も強力な一国を確実に落とさなければ周囲の反撃に遭い、この国は陥落……」
 政治に疎いテーネにもその結末は見えていた。確かに強大な兵器に見えるが、その大きさは取り回しを悪くし、逆に進軍すれば安全、国民を避難させてしまえば撃たれても被害が最小限に抑えられる、という欠点を抱えていた。奇襲性の無さ、防衛に転用できない融通の利かなさがアメディスを追い詰めた。
「こうなったら防衛装備が欲しいけど……」
 最強の矛を得たのなら、同時に盾も持つべき。だがこの国は上流にさえ硬いパンを配給するほど物資が乏しい。もう追加で何か作る余力はないだろう。
「オマケに文官は忙しくて人手不足だ。調整も遅々として進まん」
 軍事国家ということもあり兵士の充実を優先した結果、高度な計算を要する兵器の運用が可能な人材の育成が進んでいなかった。ヒューゲストキャノン建造と同時に育成もすればよかったのだろうが、元々進んでいない人材育成、そもそも教えられる人間がいない。キャノン完成でさえ奇跡に近い。
「というわけで、このキャノンの調整が我が国の命運を分ける。共に頑張ろう」
「はい」
 テーネの仕事は、このキャノンを撃てる状態にすること。この国は普通に人が暮らしていて、この国の性質が善か悪かはテーネにはわからない。むしろ長く生きている彼であるからこそそんなものは時代で流れてしまうことをしっている。とにかくこの国の民を助ける。それがテーネの目的だった。

 その後、彼は熱心に仕事へ取り組んだ。やはり問題は人手不足の部分が多く、キャノンの運用に必要な演算を行える人材が一人増えただけでも進捗は劇的に変化した。数学が出来る、という条件はともかく計算式が建築とは全く異なるのだ。
 ヒューゲストキャノンはその砲塔を360度旋回することが可能で、その為に干渉する建造物は事前に撤去されていた。長さはもちろんのこと、発射される砲弾のサイズも巨大で着地点は甚大な被害を受けるだろう。
「これは?」
 テーネは計算中、設計図に記されたある式に目をやる。設計図は朽ちない様に石板に彫られていた。
「ああ、なんでも最初に撃つべきポイントの式らしい」
「最初に? 数値が固定みたいだけど……」
 学者の男はその内容を知っていた。どこで撃つのかもわからないのに最初から数値が入っているというのも奇妙な話だ。回る様に作られた砲身の向きに指定がないのも引っ掛かる。
「……発掘地域はここ。アメディスはここ」
 計算用に用意された周辺の地図を見ても、発掘した場所とアメディスは離れている。この兵器をどこで作り、どこに向けるかもわからないのに発射の威力や角度が指定されている。これではこの式を書いた人もどこへ着弾するか分からないだろう。
「うーん、わからない……」
 どう考えても意味不明なので、みんな無視していたのだ。重要なのは狙った場所に着弾させる技術。
「それより明日は休みだな。今夜は娼館にでも行こうや」
「あ、いえ……実は行く日を決めてまして……」
 学者の男に遊びに誘われるが、断る。この国の娯楽はこのくらいしかなく、働いている女達も聖娼の加護を受けていない。この国がバスターの軍事利用をしないのは、バスターが人を殺せば烙印持ちになって敵のバスターが殺せる様になり、泥沼にもつれ込むのを事前に予想しているから。悪事も働いていないただの人間の兵士なら、バスターも攻撃は出来ない。
 その前にただの人間とある程度レベルの上がったバスターでは勝負にならず、殺すことさえなく制圧されるのだが。それ以前に加護の神殿から締め出されているというのも問題だ。選択として使わないというより最初から選択できない。
「そうか、魔の加護の発情期か。満月に入れてるのか」
「ええ」
 発散せずに堪えるとパフォーマンスはがくっと落ちる。邪な感情が残ってしまうからだ。今まではそれで誤魔化してきたが仕事をするならとちゃんと対策を練っておきたいと、満月の日に行くことは昨日の夜にクラリスへ伝えている。しかしその一方でこんなことを繰り返すと、という心配もあった。
「子供が魔の加護を持ってくるのを気にしてるのか? むしろこの国じゃ沢山欲しいだろうけどな」
 学者の男はテーネの心配を見抜いた。聖娼の加護がないということは、女達も仕事で妊娠する可能性がある。そうなると、魔の加護の効果でその子供にテーネの加護が遺伝する。このことや発情期のことを伝えれば種馬扱いでこの様に仕事などせず暮らすことも可能だっただろうが、彼はそれをしなかった。
 魔の加護を持つということは周囲全てが敵になる苦しみを背負うことであり、アメディスが上手く時代の流れに乗って大国となってもその栄華がどれほど続くかは分からない。テーネも長いこと生きており、栄えた国が衰退する話も聞いて体験もしている。だからこそ、アメディスが衰退した時のことを考えると自分一代で終わらせるのが一番穏便だ。
「そ、それにボクにとって一番楽しいのは安心してぐっすり寝ることだから……」
「そうか、なら無理強いはしないけど、オススメ聞きたいならいつでも待ってるぞ。嬢だけじゃなくて、やり方もな」
 娯楽がないとはいえ、テーネとしては命の心配をせずに枕を高くして眠れることは最大の娯楽であった。クラリスのことは気になったが、たまたま発情期に被っただけで印象に残っているだけだと頭から振り払う。むやみに魔の加護を拡散しないために、彼女だけを指名すると決めた。そう、これは不用意に魔の加護を持って生まれる子を増やさないためだとテーネはなんども執拗に自分へ言い聞かせる。

   @

 仕事をすれば報酬もある。だが、アメディスでは物資不足が慢性化しており貨幣経済は機能していない。配給でしか物資を得られないが、テーネの様な重要人材はより多くの配給が受けられる。
「これなら、これとかな……」
 そのため国民の間では階級を跨いで物々交換が行われている。テーネもそこに参加し、不足している衣服などを調達した。物資不足はヒューゲストキャノンの建造が原因ということもあり、その前にあったものや廃材などから製造したものが交換に出る。
 テーネがアメディスに来てから一か月、彼は最低限で暮らす術を知っているのでなるべく支給されたものを流している。
(痩せてるし顔色も良くない……)
 殆どの国民が飢えており、やせ細っている。パンを持っていくと奪い合いになってしまうため持ち出せずにいた。いくら空腹慣れしているとはいえ、テーネもギリギリの量しかもらっていないので流す余裕はない。国土の割に人が多いようにも感じられた。
 これではいくら農業をしても国民を養えないだろう。そうなると輸出入が大事になるが、あのヒューゲストキャノンを脅威に感じる国々によって封鎖を受け、難しい状態だ。
「そのチョーカー、結構な物資と交換できるんじゃないか?」
 装飾品は役に立たない、と思われたが上流との交換材料になるらしく、チョーカーとの交換は度々持ち掛けられた。だが彼にはいくら積まれても売れないものであった。
「これは大事なものなの」
「そうか……」
 家族の形見でも生活必需品の為に売り払うのが常態化しているらしく、意外そうな顔をされる。このチョーカーは、ある人達との思い出が詰まったかけがえのない品だ。義手は外せない為あまり言及しないが、それもまた同じく大事なもの。
(ボクが頑張ってキャノンを完成させれば、大事なものを売らなくていいようになるかな……)
 切羽詰まった国民の姿を見て、テーネはもう少し頑張ろうと思ったのだった。
「テーネ!」
 交換市をうろついていると、彼に声をかける者がいた。クラリスだ。昨日はちょうど満月で、彼女と一晩を過ごした。ちゃんと発散したためかなんだか調子がいい。あまりこの国では食料も肌や髪を整えるものもあまりないのだが、娼婦を買うためにそうしたものを持ってくる人はいる様だ。この国では娼婦さえ物々という状態なのだ。
「クラリスさん、何か入り用ですか?」
「挨拶しただけ。市によく来てるって聞いたし」
 クラリスとテーネは他愛もない話をする。肌を重ねるだけでなく、出会えばこうして世間話くらいはする。この国は確かに貧しく大変だ。だが自分を魔の加護というだけで追い出したり殺したりしない。それだけでテーネは彼らのために頑張ろうと思えるのだ。

   @

 テーネは時折、訓練所で自身の出来ることを探りながら訓練を行った。自分でも把握していない能力や魔法が多く、非常に今後の為となった。
「ふむふむ……一応メインは人斬りだけど魔法も使えるんだね」
 特にかつて自分を拾ってくれた王室が丹精を込めて作らせた義手の全性能は、未だにテーネ自身も見ることが出来ていない。元々は凄く硬くて丈夫でメンテナンスフリーの義手、という話だったが万が一の時に身を守れる様にと魔力制御機構が組み込まれている。こいつがかなりの曲者で、光の剣を出すだけの機能から派生して色んなことが出来過ぎる。
「指から出して本数を……って制御難しいな」
 指から分けて出すのは奇襲に使えそうだが、一本が細くなって威力が落ちる上にコントロールも困難になる。もっと威力の高い飛び道具、それこそファントムブレードみたいに補充しなくてもよいものが欲しいところだ。
「うーん……」
 とにかく判明した分だけでも使える様に練習あるのみだ。作った人がこの世にもういないので全容を知るのが困難。
「ちょうどいいとこにいたな、テーネ。少しいいか?」
「はい?」
 訓練をしているところに門番長がやってきた。貴重な研究員なので前線に出すなと王命が出ていたはずなので、危ない任務はないはず。
「使われていない脱出口のチェックを命じられてな……でも暗くって参ってたんだ。頼めるか?」
「はい、お任せを」
 テーネはある事情から、暗闇でもものを見ることが出来る。夜目が利く、という様に僅かな光でも見えるというレベルではない。灯りの無い地下の様に一筋の光さえ差さなくとも問題なく歩くことが出来る。
 やってきたのは王城。こういう国はトップが独裁で贅沢な暮らしをしているものだが、国王もかなり切り詰めていて調度品の類が城から殆どなくなっている。資金にするために売り払ったのだろうか。
「元々、この城にはいくつか脱出口がある。その中でも壁の外に繋がるこいつの手入れが出来て無くてな」
 扉は硬く閉ざされており、中を開けると灯りを灯すものが一切なく真っ暗。一応、魔力を流すと点灯する魔法石照明の基礎があったが、試してみても作動しない。根本が故障している様だ。
「出口も封鎖してあったが、魔物が住み着いているかもしれない。先導を頼む」
「分かりました」
 物理的な封鎖が行われていても暗闇には悪霊系の魔物が住み着く。魔の加護は魔物に対して有効打を出せないが、この義手は別。これのおかげで魔物と人間、双方と敵対することになっても生き抜くことが出来た。
「よーし……」
 右腕に意識を持っていき、テーネは先頭に立って脱出口を進む。後ろの兵士たちが短い蝋燭をカンテラに灯して付いてくるが、正直この灯りも暗闇に吸い込まれてしまい頼りない。
「何も出るなよ……出るなよ……」
 テーネは緊張しながら先へ進む。何もないに越したことはない。だが、これだけ暗く放置された場所に何もいないわけがない。彼はあるものを見つけ悲鳴を上げた。
「わぁあああ!」
「敵か?」
 後ろの兵士が身構える。しかし見つけたのはムカデであった。そこそこ大きいが魔物ほどの脅威はない。
「む、ムカデだぁあ!」
「なんだムカデか、びっくりした」
 こう見てもテーネはムカデや蜘蛛の様な気持ち悪い系の虫、蛇など一般的に恐れられる存在が苦手だ。それ以上に怖い目にだって遭っているが、怖いものは怖い。生理的に受け付けないという奴だ。
「蜘蛛だーっ!」
「もう虫はいいよ」
 虫を見つけてからというものの、テーネの足取りは遅くなる。天敵のいない閉ざされた空間では虫がよく育つ。
「うううう……怖いよぉ、虫いっぱいいる……きっと灯りを天井に向けたらびっしりいるんだ……」
「自分で最悪な想定を述べるな」
 性格的にも経験的にもネガティブ。それがテーネ。そうでなければ油断や自分に都合のいい想定に釣られて死んでいる。ようやく出口へ辿り着いた頃には、日も暮れかかっていた。
「よし、とりあえず害虫の駆除と灯りの修理でいいな」
 チェックが終わったので、脱出口を兵士たちは引き返そうとする。
「え? この道戻るんです?」
 虫に出くわさない様に外から帰ろうとしていたテーネは意外そうな顔をする。
「当たり前だろ。誰かに見られてたらどうするんだ」
「うぅ……」
 虫のことを考えて心底嫌な顔をするが納得はしているので大人しく従う。すっかり縮こまってびくびくしながら歩く羽目となったが、先頭ではなく殿なので移動は遅くならない。むしろおいてかれない様に必死だ。

「それでそんなことに……」
 クラリスとも逢瀬や指名を重ね親交が深まる。元々テーネに見栄を張ったりかっこつけたりする性質がないため、へとへとになっている理由を聞かれて素直に答えている。酒場など食料の不足でないのでテーネが支給された食料を持ってきて、それを二人で分けて食べる。おしゃれなロケーションもなく人目に付かないだけの場所だが二人でいればどこにいても楽しいものだ。
「でも最近、満月の日以外に来てくれてうれしいよ」
「そ、それは……」
 テーネがクラリスを買う頻度も増えていた。自分で整えねばならないコンディションの問題に彼女を巻き込む負い目からクラリアの助けになりたいと思ったが。方法を学者の男に聞いたところ指名の頻度を増やして店の売れ筋に乗せるのがいいとのことなので試してみたのである。テーネは長く生きているが魔の加護が原因で町に入れないこともあり娼館で遊んだりは経験が乏しい。
「私さ、他の町から流れてきたのよね」
「そうなんですか?」
 クラリスは自分のことを話す。テーネが詮索しないのもあって、付き合いが長くなっていても知らないことは多い。
「他の町で娼婦やってたけどテーネっていいお客さんだと思うよ。礼儀正しくてさ。なんか娼婦を下に見てる人たまにいて、説教とかしてくる人いるの。自分だって金で抱いてるくせに」
「あ、あー……」
 学者の男から女遊びのNGとして教わったことをしている人がいると聞き、テーネはなんとも言えない気持ちになった。
「さすがに激しいけど、テーネは気遣ってくれるし」
「ん、なんかすみません……」
 発情も相まって夜は苛烈な部分もある。ちゃんと発散してもクラリスを前にしているとなんだか理性が溶けやすい様にはテーネも感じている。
「いいよ。必死な時のキミの顔、かっこよくて、夢中な感じが可愛くて、好きだから」
「……」
 テーネは相手の仕事からしてその発言をどこまで真に受けていいか悩んだ。しかし夜のことを話の俎上に上げられると少し、その気になってしまう。
「あの、クラリスさん」
「ん? 抱きたい? いいよ」
 思い切って指名を入れようとするが、先に言われてしまう。二人は連れ添ってクラリスの勤める娼館へ向かう。客と娼婦としての関係、友人としての関係が混ざりその境界があいまいになりつつあった。そんな中でもテーネはしっかり彼女の仕事を尊重していた。

   @


「よし、そろそろだね」
 ヒューゲストキャノンの調整も終わり、試射の時が来た。苦労して作り上げた最終兵器が完成し、国民もお祝いムードだ。研究所には国王もやってきて、試射を見守る。国王はさぞ立派な服を着ているのだろうと思われるが、国民と大して変わらない作業着姿だ。パフォーマンスとかではなく本当に貧しい状態が続いている。
「これ、なんです?」
「ああ。設計図と一緒に出土したらしいよ」
 最終チェックを学者の男としていたテーネは、資料に紛れていた芋の様な置物を見つけた。そこに付けられた模様はどこかで見た様な形をしている。あまり参考にならないのか乱雑に放置されていた。それと地図を交互に見て、彼はふとあることに気づいた。
「……世界球体説?」
「え? それって世界が丸いっていうオカルトの?」
 世界球体説とは、この世界が平面ではなく丸いのではないかという説だ。その根拠として、水平線に消える船が下から見えなくなる、というものがある。ただし世界が丸かったらどうやって我々は大地に立っているんだという疑問が出てきて、信じている者は殆どいない。
「これが世界の模型なのだとしたら……」
「おいおい、我々より進んでいる文明を持っているって話だろうこのキャノンを作ったのは。だったらこんなオカルトは信じていないだろう」
「ですよね」
 流石にそれはあるまい、とこれ以上の追求はやめた。これを調べようにもアメディスにはその余力がない。そして知る手段もない。
 ヒューゲストキャノンはいよいよ発射の時となる。
「諸君! これまで我慢を強いて申し訳ない。だが、このヒューゲストキャノンの恐ろしさを世に知らしめれば、我が国は覇権を得る!」
 既に軌道計算は済んでいる。現在、アメディスの物資を封鎖している連合の中でも最大の国家に狙いを定めている。向こうはあれが自壊することなく安全に撃てる、ないしましてや当てることが出来るとは思っていない様でアクションを起こしてこない。
「では、火を入れい!」
「はっ!」
 射撃の担当はテーネとなった。名誉なことだが、いざ撃つとなると大きな責任がのしかかる。その上、成功したとしても大量殺人の十字架を背負うことになる。なのであまり誰も乗り気でなかったので彼が名乗り出たのだ。
「魔力、充填……点火!」
 加えて魔法を扱えるので、点火要因にピッタリだった。軌道計算もメインでテーネが行い、建造以外は彼が担ったとも言える。念のため砲身の真下から国民を避難させる様に進言し、安全確保も十分。
「いっけーっ!」
 テーネの脳裏に、物々交換で出会った貧しい人々の姿が浮かぶ。この一射が、彼らの生活を良くすることを願って発射した。このサイズにしては不思議と、衝撃は少なかった。先端が眩く光ると、遅れて耳をつんざく様な轟音が響く。
「どうなった……?」
「まだ、わかりません……」
 あまりにも規模が大きく、着弾の様子は分からない。一応、標的の国が見える場所に監視の兵を派遣しているがリアルタイムで連絡を取ることは出来ない。着弾、それを観測し連絡を寄越す。いずれもタイムラグが発生する。
「と、とにかく発射自体には成功した! 諸君、ご苦労である!」
 何はともあれ、国王の言う通りヒューゲストキャノンが破損せずに発射出来たというのは事実。果報は寝て待て、今はお祝いの時だ。

「うーん……違う」
 テーネは気になっていた最初に撃つべきポイントの計算をしていた。だが、何度やっても地図の端からはみ出してしまう。例えアメディスが世界の端にあったとしても、射線を対角線に取っても地図の中を大きく逸脱している。そもそもなんで、どこで作られるかも不明な大砲の発射ポイントを定める数値が固定なのかという疑問に必ずぶつかるのだ。
「そんなまさか……ね」
 ただしある説を当てはめると、答えが出る。だがそれは考えない方がいいと彼は計算を辞めた。
「ところで、まだ避難は早計ではないか?」
 国王はテーネの指示に疑問を抱いていた。砲塔を旋回させ、その下から国民を避難させる。その命令をお願いしていたのだ。
「いえ、結果がどうあれ……次に打つ手は決まっています」
 しかし彼は確固たる意志の元、行動していた。現場に任せ、余計な口を出さないのは実に理想的な上司であった。
「ふむ、確かにその方が良さそうだ」
 テーネも行動指針は国王にだけ伝えてあった。軍事行動は大規模になるほど関わる人数が増え、情報が漏れる危険を増す。予想される結果や目的は発案者と責任者が知っていればいい。末端は思考を放棄し、自身の役割に徹すればいい。
「報告します!」
 しばらくして監視の兵士が、国王も待機している研究所にやってきた。兵士は砂まみれ煤まみれでただ事ではなさそうだ。
「どうした?」
「ヒューゲストキャノンの砲弾を思われるものが敵国に着弾したあと……爆発し国土を焼き尽くしました……」
 ちゃんと映ったものを記録する追憶の鏡程度は持たせてもらっており、そこに記録された惨劇を見て、テーネ以外の全員が口を閉ざす。
「生存者は? 反撃の余力はあると思いますか?」
 彼としてはそこが心配になった。このヒューゲストキャノンはバカスカと連発出来ない。そして防衛には使えない。もし敵に反撃の力が残っていては、危険が伴う。
「いえ、とても……国が火に包まれています」
「そう……」
 テーネは次の手を考えた。敵は一国ではない。次の砲撃が来る前に仕留めようと仕掛けてくる可能性はあった。だから、敵国全てに着弾させられる様に軌道計算は全て済ませてある。
「テーネ……その、なんだ。戦争ってのは一人の罪じゃ……」
「いえ、ボクが心配しているのは……。メンテナンス! 進捗どうですか?」
 彼が罪の重さにふさぎ込んでいると思ったのか、学者の男は元気づけようとする。だが、彼は次の行動を起こした。
「大丈夫です! 撃てます! ……けどまさか」
「はい! 第二射いきます!」
 そう、なるべく間を開けずに二発目を撃つ。一発目が外れたとしても、二番目に大きい敵国へ向けて。そうすれば誰しも他人事とは思えず、あまりの速さに電撃侵攻での攻略ではなく交渉で撃たせない様にするはず。
 王室上層部とテーネの間で決まった作戦がこれだ。この一日で国を取り巻く環境を好転させる。ここに全てを賭けるのだ。日が経つほど対策や準備の時間を相手に与えてしまう。行動は先に決めて瞬間的に実行する。
「総員、退避完了しました! 第二射、行けます!」
「撃ちます!」
 テーネは連絡を待つ間、既に砲身や魔力を計算通りに調整しており整備士の退避が終わると同時に二射目を放つ。二度目とはいえ、この衝撃には誰もがまだ慣れない。
「ボクは今まで、自分が死なないためだけに誰かの命を奪ってきました。ですが」
 彼は学者の男に語りかける。この大量殺戮の引き金を引いたことに、後悔はない。
「これでみんなが少しでも幸せになってくれれば、いいなって」
 その日からアメディスは、周囲にただ警戒されるだけの国ではなくなった。逆らえば国を穿たれる、その力を持ち畏怖を持って警戒される正真正銘の軍事国家となったのだ。
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