残念女の異世界紀行

LEKSA

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CHAPTER Ⅰ

03 インプット知識

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 命を賭けた初戦闘は呆気ないものだった。
 生き物を殺したことにもっと忌諱感を抱くかと思っていたが、戦いが終わった後でもそんな思いが芽生えることはなかった。

 地面に落ちているお陀仏した敵を眺める。
 パッと見、蛇。
 体長はそこまで長くない。今周囲で死んでいる中で最もデカい個体でも、40㎝あるか…くらいだ。
 しかし、太さはそれなりにある。野球のバットの一番太いところの周囲くらいある。
 頭から尻尾?まで太さが均一でくびれがない為、かろうじて蛇という感じだが、雰囲気はツチノコだ。
 そして何より見た目で目立つのが、側部に生えた計4本の―カンガルーやバッタやカエルのようなやたらと跳躍力を備えてそうな筋肉質の―脚だ。
 口がほぼ180°開き、上顎には鋭い歯が2本生えていて、ギュッと絞ると赤黒い毒らしき液体が出てきた。

 この毒は、身体の自由を一瞬にして奪う、所謂神経毒に分類されるようだ。しかし威力は強烈で、一匹が一回の攻撃の際に噴出する量はおよそ3g。咬まれた瞬間から身体が痺れて力が入らなくなり、2回咬まれれば、心肺停止で死に至る。
 この毒に侵された者の救助方法は、この蛇の派種である蛇の毒が必要。その蛇は海に生息していて、その歯には同じく神経毒があるのだが、前者が脱力する毒なら、こちらは硬直する毒を持っている。
 その毒の特徴から、前者は〈脱死蛇だっしほだ〉、後者は〈硬死蛇こうしほだ〉と呼ばれている。

―という知らないはずの知識が、脱死蛇だっしほだを触って色々調べている内に、後から後から、かなり驚いた。
 知らないはずの情報を、まるで遠い昔に一度調べたことがあって、それを引き出してくるかのような奇妙な感覚。

 ラノベでよく目にする、頭の中にグー◯ル先生がいて、主人公が疑問に思ったことをバンバン答えてくれるような…そんなヒラメキ型のサポートシステムではなく、「あれって何やったっけ?」と、問題を探りながら答えを導き出していく芋づる式の情報知識サポートが、わたしには施されているようだ。
 まぁ…脳内に他人が住み着いてるような気持ち悪い感覚はしなくて済みそうだが、正直言ってこのタイプの知識サポート…、間怠っこしい!!
 人外感はないが、人間らしい面倒臭さがある。
 自分が凄く年数を生きてきたんじゃないかと錯覚するくらいの膨大な知識量に、深く考えたら溺れそうだ。

 植え付けられたインプット知識によると、脱死蛇だっしほだの毒と皮は売れるらしい。
 ウホウホしながら脱死蛇だっしほだを手に取ったが、入れ物がない。
 どうしようか、と蛇片手に固まっていると、ふと腰にあるポーチがアイテムボックスであるということを
 情報知識サポート様々である。
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