他の何よりアイが欲しい。R18

勇崎シュー

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壊れかけの

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「キスしよ......」
 庭理は今にもふわりと消えてしまいそうな表情で、俺に迫る。
 今まで男として接してきた庭理に、キス。それ自体は特に違和感を感じることは無かった。
 むしろ、してしまった方が、いや、俺は単純に庭理とキスしたいんだろう。
 
 そんな庭理に俺は............。
 
「ごめん。それは出来ない」
 俺は庭理から目を反らした。
「庭理が女だって分かって、混乱してたり、こんな気持ちで庭理とキスしても、なんか狡いというか、自分が許せなくなっちゃいそうで」
 後半何を言っているのか自分自身分からなくなっていたが、とにかく、俺は庭理の誘いを断った。
 庭理はうつむき今にも消えてしまいそうだった。
「俺、先に出てるから」
 俺はそう言って湯船から出ていった。
 もう、俺の頭の中には、風呂のでかさに感動したことも、満点の星の煌めきも、風呂での快感も残ってなかった。
 
 
 気まずい。
 あの日から二日後、今俺達は帰りの新幹線に乗車していた。
 席は相変わらず庭理と隣同士だが、お互い目を会わせようとしない。
「庭理、帰ったら話がある」
 俺がそう言い終えた刹那、新幹線が東京の駅に着いた。
 生徒達は足早に新幹線から降り、その後電車やバスを使って無事神奈川県にたどり着いた。
「では、皆さんお疲れ様でした。今日は解散」
 先生がぱんと手を叩き、解散を促した。
「よし、じゃあ庭理、帰ろうぜ」
 庭理はあれから何も喋らない。
 まぁ、俺のせいだからしょうがないんだけど。
 俺が歩き出すと庭理もついてきてくれた。
 そして、俺達は二十分程の徒歩で自宅のアパートに着いた。その間、俺達が口を開くことは無かった。
 軋む音をたてながら扉を開け、俺達は部屋へ入り、俺が鍵をかける。
「海斗」
 庭理に呼ばれ、俺を一瞬びくりと驚いた。
「なんだ?」
 庭理は自分のシャツをぐっと掴みながら、俺にあることを聞いてきた。
「ボクのこと、嫌いになった?」
 涙ぐみながらそう問いかける庭理に、俺は僅かに怒りを覚えた。
「なんでそんなこと思うんだよ。嫌いになんかなるわけ無いだろ」
 俺は淡々と言ったが、言い方が少し怖かったかもしれないと反省した。
「でも、ボクっ、女の子ってこと隠してっ......」
 ぽろぽろと何滴かの涙が庭理の眼からこぼれ落ちた。
「それだったら、俺なんか殺人だぞ。俺もそれ隠してたんだし、殺人の方が罪重いだろ」
「そんなことっ......」
 俺は泣き止まない庭理に、頭にぽんと手を乗せた。
「ま、一旦落ち着こうぜ」
 俺はそう言いながら、寝室へ向かった。今は、今だけは別々で居たい。
 
 あれからどれくらい経っただろうか。
 時刻は6時を少し過ぎたくらいだ。
 俺はずっとこの部屋でぼーっとしていたが、庭理は何していただろう。
 そんなことを考えていると、隣の部屋から良い匂いがしてきた。
 俺が隣の部屋を覗くと、庭理が調理していた。
「庭理、今日くらい出前とかでよかったんじゃないか?明日も学校あるんだし」
 俺がそう言っても、庭理は頷かない。
「今日は作りたい気分なんだ」
 庭理が微笑を浮かべた気がした。
「これ、できてるやつだろ?運んどくな」
 俺は野菜炒めを卓上へ運んだ。
 
「「いただきます」」
 いつもより低いトーンだったが、俺達は食事を始めた。
 相変わらず、庭理の飯は旨い。
 庭理の飯を食うと、あぁ、帰ってきたんだなって再確認できる。
 俺達は黙々と食事を続け、今日も残さず食い終えた。 
 皿洗いは俺の当番なので、食器を集めキッチンへ向かった。
「いやー、にしてもなんで俺、今まで庭理のこと気づかなかったんだろうな。俺馬鹿過ぎだろ」
 俺が笑いながらそんなことを言うと。
「まぁ、下着とか海斗が手をつけないような所に置いてたし、着替えだって見られないようにトイレでしてたから」
「いや、にしてもさ」
「でも、ボクだって海斗の傷のこと知らなかった」
「あぁ、まぁそれは俺も注意してたからな。まぁよく一年ちょっと一緒に住んでんのに俺達ボロださなかったよな。すげぇわ」
 俺がそんな風に感心していると、少なからず庭理に笑顔が戻った気がした。
「よし、皿洗い終わりっと。さ、風呂でも入ろうかな」
 俺がわざとらしくそう呟くと、どうぞと庭理が言ってくれた。
 あ、てか庭理先に入らせてあげたほうが良かったかな?ま、もういいか。
 そう考えているうちに、俺は脱衣場で服を脱ぎ終わった。
「ふー」
 風呂場に入り、軽くシャワーを浴びたあと、俺は湯船に浸かった。
 温泉もよかったけど、やはり自宅の方が落ち着く。
 ふと、俺はあの時のことを思い出した。
 あの時、当たってたよな、完全に。
 大きいわけでは無かったが、全くないというわけでもなかった。
 庭理のやつ、今までサラシでも巻いてたのか。
 そう考えているうちに、俺は顔が赤くなっていることに気づいた。のぼせたわけではないようだが。
 俺はブクブクと風呂の中で泡をたててると、ガラリと扉が開いた。
 ん?扉が開いた?
 
「っておい!何入ってきてんだよ庭理!」
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