4 / 27
真の実は甘美な味
しおりを挟む
「ねぇ」
時刻は7時を少し過ぎたくらい。
外はすっかり暗くなっているが、俺達の夜が終わるには早すぎだ。
「なんだ?庭理」
庭理は頬を赤らめながら、恥ずかしそうにあることを提案した。
「お風呂、一緒に入りに行かない?」
唐突に言ったそれは、あり得ないものだった。
いや、他人から見れば普通の光景なのだろうが、俺達には事情というやつがある。
俺達の出会いのきっかけであったプールしかり、肌を露出させることは、俺達は避けてきた。
それなのに、何故、今。
「なんで今、しかも今日なんだ」
俺は思っていた疑問をそのままぶつけた。
「......今は言えない。でも、一緒に温泉に入ってくれるなら、その時に言うよ」
庭理は、険しいような寂しいような顔をしながら、前髪を弄くった。
「......分かった」
庭理は、何かしらの覚悟をした上で、俺にその事を持ちかけたのだろう。
ならば、男たるものそれに答えなければいけない。
「あのさ、ちょっと自分勝手なこというけど、先に入っててくれる?」
「あぁ」
俺はそう言い残し、着替えを持って脱衣場へ向かった。
「はぁ~」
温泉でのあまりの快楽に、俺は思わず締まりのない声を出してしまった。
すると、からんと音が鳴る。きっと庭理が来たのだろう。
俺は出入口に背を向けて入浴しているので、誰がそこにいるのかわからない。いや、あえてそうしているのだが、おそらく庭理が掛け湯をし、こっちへ向かってきてるのだろう。そういう音が聞こえた。
「庭理か?」
その問いかけをされた人物が、「うん」と答えた。
「そっち向いていいか?」
「......まだ、駄目」
まるでか弱い少女のような声で庭理が断る。
「ねぇ、目を瞑って、こっち向いて。絶対に目を開けちゃだめだよ」
俺は言われた通り、ぎゅっと目を瞑り、振り向いた。
すると、ぽちゃんと庭理がお湯に浸かった音がした。
「なぁ、今どこにいるんだ?お湯入ったんだろ?こっち向いたままでいいのか?」
その問いかけには、言葉でなく行動で返された。
「っ!?」
背中に何か柔らかいものが当たった。いや、当たったというよりは、引っ付いた。
「海斗がプールとかで肌見せなかった理由、これなんだね」
庭理が悲しそうな声で言ってきた。
「いや、それより庭理......お前......」
そこまで言うと、庭理は更に強く俺を抱き締めた。
「庭理お前、女だったのか」
俺に密着している肌が、更に熱くなった気がした。
「かいと......」
とろけるような声が、俺の鼓膜を溶かしにかかる。
「次はかいとの番だよ。ねぇ、教えて、これ」
庭理のいうこれ、というのは、俺の背中にある無数の傷のことだろう。
まぁ、背中だけでなく肩や太ももにもいくつかあるが。
きっと、庭理はこの傷について聞いてはいけないと分かっているのだろう。
正直、この傷の話は楽しいものではないし、あまり言いたくもない。
しかし、庭理も誰にも言えないような秘密を打ち明けてくれたのだ。俺だって、親友として打ち明けなければ。
「楽しい話じゃないぞ」
俺は諦めたようなため息を吐き、話始めた。
「これはクソ親父につけられたもんだ。全部な。毎日毎日ギャンブル尽くし、母さんの稼いできた金や、俺の学費のための貯金とかも全部スってくんだよ。で、ギャンブルとかで大負けしたり、そうじゃなくてもイライラしてたら蹴られたり殴られたり、ひでぇ時はカッターとかで斬られたよ。まぁ、それが一番多かったかな」
庭理が、俺の話を聞きながら、俺の背中を撫でていた。
「そういや食器とかもよく投げられてたっけ、我ながらよく生き残れたもんだよ。頭とか無意識に守ってたからかな?飯とかも雑草とかの日とか普通にあったし、ま、そんなクソみたいな生活しててさ、俺が小三の時に」
俺は一瞬、言葉が詰まった。ここから先は、さらに辛い展開になる。
しかし、俺は声を震えさせながらも語り続けた。
「俺が小三の時に、親父が......親父が包丁で母さんを......母さんを......。それで、その夜。俺も包丁で寝てる親父を......!」
「かいと、もういい」
気づけば、俺は涙の粒を大量に流していた。心臓の鼓動もかなり速い。
「ありがとう」
庭理は、感謝の言葉と共に、更に強く俺に密着した。
「こっち向いて」
そういうと、庭理は俺から離れた。
肌の温もりはまだ残っているが、大切な何かを無くしてしまったような、それに近い気分にさせられた。
そんな感傷に浸りながらも、俺は一応目を閉じたまま、庭理の方を向いた。
「目、もう開けていいよ」
胸は見ない胸は見ない胸は見ない胸は見ない胸は見ない!
そう念じながら俺は目をゆっくりと開いた。
庭理は、泣いていた。
女と分かったからか、その表情はとても儚いようなもので、可愛らしかった。美しいとさえ思えた。
俺は色々思うことを全て圧し殺し、庭理を目を見る。
「かいと......」
寂しそうな、けれども暖かい声が、俺の名を呼ぶ。
「キスしよ......」
そんな庭理に俺は......。
俺は............。
時刻は7時を少し過ぎたくらい。
外はすっかり暗くなっているが、俺達の夜が終わるには早すぎだ。
「なんだ?庭理」
庭理は頬を赤らめながら、恥ずかしそうにあることを提案した。
「お風呂、一緒に入りに行かない?」
唐突に言ったそれは、あり得ないものだった。
いや、他人から見れば普通の光景なのだろうが、俺達には事情というやつがある。
俺達の出会いのきっかけであったプールしかり、肌を露出させることは、俺達は避けてきた。
それなのに、何故、今。
「なんで今、しかも今日なんだ」
俺は思っていた疑問をそのままぶつけた。
「......今は言えない。でも、一緒に温泉に入ってくれるなら、その時に言うよ」
庭理は、険しいような寂しいような顔をしながら、前髪を弄くった。
「......分かった」
庭理は、何かしらの覚悟をした上で、俺にその事を持ちかけたのだろう。
ならば、男たるものそれに答えなければいけない。
「あのさ、ちょっと自分勝手なこというけど、先に入っててくれる?」
「あぁ」
俺はそう言い残し、着替えを持って脱衣場へ向かった。
「はぁ~」
温泉でのあまりの快楽に、俺は思わず締まりのない声を出してしまった。
すると、からんと音が鳴る。きっと庭理が来たのだろう。
俺は出入口に背を向けて入浴しているので、誰がそこにいるのかわからない。いや、あえてそうしているのだが、おそらく庭理が掛け湯をし、こっちへ向かってきてるのだろう。そういう音が聞こえた。
「庭理か?」
その問いかけをされた人物が、「うん」と答えた。
「そっち向いていいか?」
「......まだ、駄目」
まるでか弱い少女のような声で庭理が断る。
「ねぇ、目を瞑って、こっち向いて。絶対に目を開けちゃだめだよ」
俺は言われた通り、ぎゅっと目を瞑り、振り向いた。
すると、ぽちゃんと庭理がお湯に浸かった音がした。
「なぁ、今どこにいるんだ?お湯入ったんだろ?こっち向いたままでいいのか?」
その問いかけには、言葉でなく行動で返された。
「っ!?」
背中に何か柔らかいものが当たった。いや、当たったというよりは、引っ付いた。
「海斗がプールとかで肌見せなかった理由、これなんだね」
庭理が悲しそうな声で言ってきた。
「いや、それより庭理......お前......」
そこまで言うと、庭理は更に強く俺を抱き締めた。
「庭理お前、女だったのか」
俺に密着している肌が、更に熱くなった気がした。
「かいと......」
とろけるような声が、俺の鼓膜を溶かしにかかる。
「次はかいとの番だよ。ねぇ、教えて、これ」
庭理のいうこれ、というのは、俺の背中にある無数の傷のことだろう。
まぁ、背中だけでなく肩や太ももにもいくつかあるが。
きっと、庭理はこの傷について聞いてはいけないと分かっているのだろう。
正直、この傷の話は楽しいものではないし、あまり言いたくもない。
しかし、庭理も誰にも言えないような秘密を打ち明けてくれたのだ。俺だって、親友として打ち明けなければ。
「楽しい話じゃないぞ」
俺は諦めたようなため息を吐き、話始めた。
「これはクソ親父につけられたもんだ。全部な。毎日毎日ギャンブル尽くし、母さんの稼いできた金や、俺の学費のための貯金とかも全部スってくんだよ。で、ギャンブルとかで大負けしたり、そうじゃなくてもイライラしてたら蹴られたり殴られたり、ひでぇ時はカッターとかで斬られたよ。まぁ、それが一番多かったかな」
庭理が、俺の話を聞きながら、俺の背中を撫でていた。
「そういや食器とかもよく投げられてたっけ、我ながらよく生き残れたもんだよ。頭とか無意識に守ってたからかな?飯とかも雑草とかの日とか普通にあったし、ま、そんなクソみたいな生活しててさ、俺が小三の時に」
俺は一瞬、言葉が詰まった。ここから先は、さらに辛い展開になる。
しかし、俺は声を震えさせながらも語り続けた。
「俺が小三の時に、親父が......親父が包丁で母さんを......母さんを......。それで、その夜。俺も包丁で寝てる親父を......!」
「かいと、もういい」
気づけば、俺は涙の粒を大量に流していた。心臓の鼓動もかなり速い。
「ありがとう」
庭理は、感謝の言葉と共に、更に強く俺に密着した。
「こっち向いて」
そういうと、庭理は俺から離れた。
肌の温もりはまだ残っているが、大切な何かを無くしてしまったような、それに近い気分にさせられた。
そんな感傷に浸りながらも、俺は一応目を閉じたまま、庭理の方を向いた。
「目、もう開けていいよ」
胸は見ない胸は見ない胸は見ない胸は見ない胸は見ない!
そう念じながら俺は目をゆっくりと開いた。
庭理は、泣いていた。
女と分かったからか、その表情はとても儚いようなもので、可愛らしかった。美しいとさえ思えた。
俺は色々思うことを全て圧し殺し、庭理を目を見る。
「かいと......」
寂しそうな、けれども暖かい声が、俺の名を呼ぶ。
「キスしよ......」
そんな庭理に俺は......。
俺は............。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる