他の何よりアイが欲しい。R18

勇崎シュー

文字の大きさ
3 / 27

その花は気休めでしかなく

しおりを挟む
「確かこっちだよな」
 俺はそう呟きながら、日比野の行き先を考える。
 おそらく、日比野が向かった自販機は、道中にあったやつだろう。
 それならこの道を曲がって少し進んだ所の筈だが。
「ねぇ、ところでどこ高なの?何県から来たんだ?」
「いいじゃねぇかそのくらい。なぁ?」
 日比野が、絵にかいたようなチンピラ二人に掴まされていた。
「あ、あの、困ります......」
 日比野の顔は青白く、今にも倒れしまいそうだ。
「おー、日比野、ここにいたのか、ほら、急いでんだから早く行くぞ。あれ?その人たちは?」
 俺はあたかも今気づいたかのように言った。
「あ、いや......」
 恐怖のせいなのか、日比野は上手く喋れないでいた。
「いやー、俺達は現役JK見つけちまったもんだから、ちょっと話しかけてただけだよ。悪かったな兄ちゃん」
 そう言い放った方のチンピラに肩を叩かれ、もう一人と共に薄ら笑いを浮かべながら去っていった。
「ふぅ、流石の俺もあれはやばかったな」
 俺は安堵の息を吐きながら胸を撫で下ろした。
「大丈夫か?日比野。怖かっただろ」
 すると、日比野は俺の胸に飛び込んできた。
「うぐっ、ひぐっ」
 日比野は俺のシャツを掴みながら泣きじゃくった。
 そうか、こいつは。
「一人でよく頑張ったな」
 俺はそう言いながら日比野の頭を撫でた。
 なるべく声が出ないようにしていた日比野は、撫でる毎に落ち着いていった。
「もう平気か?じゃあ、一緒に皆の所に行こうな」
 日比野がこくりと頷く。
 に、しても、こうしてみるとホントに小さいな。庭理よりも数センチは小さい。
「あっ」
 俺達が少し歩いた所で、庭理に出くわした。迎えに来てくれたのだろうか。
「あれ?どうしたの日比野さん」
 庭理が聞くのも無理はない。
 日比野は俺のシャツの袖を掴んで離さないし、目だって赤いままだ。
「まぁ、ちょっとな」
 庭理は腑に落ちない感じだったが、深く聞くこともなかった。
 まぁ、どこかの班長は無神経にあれこれ聞くだろうが。
 
「あー、楽しかったぁ」
 庭理が無邪気に笑う。
 まぁ、その気持ちもわからなくないが。
 俺達はあのあと、ギリギリ清水寺も銀閣寺も見ることができ、シナリオ通りにことを運ぶことができた。
「清水寺の水、けっこう旨かったな」
「そうだねぇ、少なくとも水道水より」
「それな」
 俺達は部屋の真ん中で笑いあった。
 本来この部屋には4人いるはずだが、他の二人はただ今入浴中だ。
 俺達はいろいろ言い訳して入らないようにしている。
「ねぇねぇ、ところでさ、海斗」
 庭理は急に畏まった表情をした。
「なんだ?」
「日比野さんと何かあった?自販機の時とか」
 自販機のとき、というのは俺が日比野をチンピラから救出したときのことだろう。
 しかし、いくら庭理とはいえ、勝手に言っていいものだろうか。
 いや、一応隠しとくか。
「いや、なんも」
 俺はそう言いながら頭を掻いた。
「ふーん。なんかあったんだ」
 俺はあからさまに驚く。
「いや、あの」
 何か言い訳をしようと口を開きかけたそのとに。
「やるじゃん」
 庭理はこのこのと肘で俺の腰をつついてきた。
「ただいまー」
 微妙に使うタイミングが可笑しいが、風呂に行っていた二人が部屋に戻ってきた。
「おかえりー」
 庭理が会わせるようにそう答えた。
「二人とも、ここの風呂凄かったぞ。露天風呂だぞ露天風呂!しかも広い!」
 先ほどただいまと言った方の男、百合木大成が、そう俺達に自慢してきた。
「そうそう、百合木が女風呂覗こうとしてさー」
 もう一人の柏崎秀太が素晴らしい話題を持ってきたので、乗っかることにした。
「何やってんだよ百合木ー、このド変態がよ」
「女風呂は、大人のロマンだからな」
 百合木がキメ顔で言ったので、俺達はツボに入り大爆笑した。続いて百合木自信も耐えられなくなり大笑いに交ざった。
「あ、そうだ。二人とも、これは先輩から聞いた話なんだけどさ」
 柏崎が若干小声でその話とやらを語りだした。
「この学校の先生達って、巡回するって言っといて誰もしないんだって、だから毎年男子が女子部屋に遊びに行くのは恒例らしいよ。ま、流石に大声だしたら二階にいる先生達にバレるけど」
 おい、この学校の先生達は大丈夫なのかよ。巡回するする詐欺じゃねぇか。
「つーわけだ!二人も来るだろ?」
 百合木が横から入り柏崎に代わって俺達を誘ってきた。
「うーん。俺はいいかな」
 俺はそれとなく断った。
 まぁ、日比野みたいなタイプはこういうのをやる奴よりやらない奴の方が好みそうってのが理由だけど。我ながら不純だ。
「まぁ、元々ボクも行く気無かったけど、海斗が行かないんじゃ尚更行かないな。誘いは嬉しいけどね。ごめん」
 そんな行く気がないことを表しながらも相手を気遣う百点満点の断りを見せた庭理は、淡い笑顔を二人に見せていた。これもポイント高いな。
 いや、何評価してんだ俺。
「そうか。じゃあ俺達二人だけで行ってくるわ。まあ気が向いたら来てくれ。405号室にいるからな」
 百合木はそう言い、持っていく荷物をまとめだした。柏崎もそれに習いまとめ始める。
「じゃ、行ってくるわ、兄弟!」
「先生に見つかんなよ兄弟!」
 俺は謎のジョークを交わしあった百合木と柏崎を見送った。
「ねぇ」
 すると、後ろから庭理が俺を呼んだ。
 
 俺はまだ知らなかった。
 
 ここから、俺達の関係が歪んでいくことを。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...