他の何よりアイが欲しい。R18

勇崎シュー

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刺よりも鋭く、血よりも紅く

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「見てみて!富士山!富士山見えるよ!」
 がたん、がたんと心地よい振動が伝わってくる。それが眠気を誘ってくるが、生憎前日かなり寝たので、昼寝する気にはなれない。
「ねぇねぇ、聞いてる?海斗」
 そんな矛盾したことを考えながら、俺は手揉みしている自分の手を見ていた。
「ねぇ、海斗ってば!」
 俺は自分が呼ばれていたことに気づく。
「な、なんだ庭理」
「まったく、せっかく富士山見えてたのに、もう見えないよ。てかぼーっとしすぎじゃない?」
「んなことねぇよ」
 俺はそう言いながら頭を掻く。
 まぁ、きっとこれから日比野と京都を巡ることになるから、緊張しているのだろう。
「あ、そうそう、海斗、トランプしようよ」
「二人でか?うわー、クソつまんなそう」
 それに、この新幹線は左右で二人ずつ座れる仕組みなので、俺と庭理は横並びだ。やるとしてもやりにくいというわけだ。
「いいじゃん。どーせ暇だし」
「まぁ、いいけどよ」
 
「よっしゃあがり!はい、また俺の勝ち~!」
「ずる!ずるしたでしょ!なんで只のババ抜きなのにこんな実力差がでんだよぉ!」
 意外と盛り上がった俺達は、目的地までずっとトランプしていた。
 
「はい、ではここから班行動です。5時までには旅館に戻ってきて下さいね」
 先生の合図で、俺達は一斉に駅から散り散りになった。
「海斗、ボク達が行くところって清水寺と銀閣寺だよね?」
「あぁ、確かな」
 目的地を確認していると、数歩前に歩いている二人の女子のうち、一人が俺達に顔を向ける。
「あんた達、あたしらが計画進めるとき、ちゃんと話聞いてなかったんでしょ。たがらそうなるのよ」
 いや、なにがどうなってんだよ。と言いたかったが、呑み込んだ。
「わりー」
 俺がそう適当に返事をすると、ふんと前へ向き直った。
 今のはこの班の班長、宮崎恵里奈だ。見てくれはいいが、常に意地っ張りな態度をしているので男子からも女子からもよく思われてない奴だ。
 そして、もう一人の女子が日比野恵美だ。身長はやや低めで、髪は肩に少し着くくらいの長さだ。おしとやかで、どことなく清楚な感じで、そんなとこが、まぁ、なんていうか、良いとこだ。
「海斗、なににやけてるの?キモいよ?」
「べ、別ににやけてねぇし!」
「はい、海斗顔真っ赤~」
 そう言われながら俺は庭理につつかれる。
「ちょっと、あんた達二人、なにふざけてんの?」
 清水寺への道中、俺達が茶化しあっていると、宮崎が急にいちゃもんをつけ始めた。
「は?別にこのくらいいいだろ。せっかくの修学旅行な訳だし」
 始まってしまった。
 俺が修学旅行を嫌がっていた理由は、このためでもある。
 宮崎とは中学も同じだった為、性格もよくしっているが、こいつとはなにかと合わない。
 だから、宮崎と喧嘩して、それを見た日比野に嫌われてしまうかもと懸念したのだ。
「え、なに?これあたしが悪いって言いたいの?」
「別にそんな事言ってないだろ」
 そんな言い合いをしていると、庭理が止めようと一歩踏み出してくれた。
「け、喧嘩はやめましょう......よ......」
 しかし、止めてくれたのはまさかの日比野だった。
「あ、ごめん日比野。空気悪くしちゃって」
「ちょっと!めぐちゃんの前にまずあたしに謝りなさいよ!」
 うぜー。
「はいはい。ごめんごめん」
「なにそれ!チョー適当!ふざけないで!」
 マジうぜー。
「今回の件であなた様を不快にさせてしまったこと、誠に申し訳ございませんでした」
 俺がふざけてそういうと。
「ふん!わかればいいのよ」
 あ、こいつネタってわかってねぇ。
「さ、時間も押してるし、行くわよ、めぐちゃん」
 そう宮崎が日比野に言うと、清水寺へ向かって再度歩き始めた。
「海斗、災難だったね」
 庭理が背伸びしながら、耳元でそう労ってくれた。
 
「あー、もう限界ー、あんた達、ちょっとジュース買ってきてよ」
 そう駄々をこね始めた宮崎が、俺達にそう命令してきた。
「清水寺までもうちょっとなんだから、我慢しろよ。確かそこで水飲めるだろ」
「えー、そこまで我慢できないし、てか水とか不味くて飲めないし」
 そんな子供みたいなこと言う宮崎に、俺がキレかけると。
「わ、私が買ってくるから、喧嘩しないで」
 日比野がそう言い出した。
「お、めぐちゃん気が利くじゃん」
 お前はすこぶる気が利かないけどな。
「いや、日比野が買ってくることないだろ。こんな駄々っ子無視して、最悪置いてこうぜ」
 そして、また俺が宮崎と喧嘩しそうになると。
「あ、あっちに自販機あったから、買ってくるね!」
 日比野は駆け足で飲み物を買いに行った。
「ふっ、あんたもめぐちゃんを見習うことね」
 お前は自分を見直せ。と言いたかったが、せっかく日比野が喧嘩にならないようにしてくれたのだから、俺は無視することにした。
「庭理、だいぶ疲れてるみたいだけど大丈夫か?」
「うん。でも丁度休みたかったから、日比野さんには感謝だな」
 そういいながら庭理は首に掛けてるタオルで汗をぬぐった。
 今は十月で涼しいとはいえ、あまり運動しない俺達には少し厳しいかもしれない。
 それから少し経って。
「ねぇ、めぐちゃんちょっと遅くない?」
 宮崎がそんなことを言ってきた。まぁ、俺もそのことについては気掛かりだった。
「なんかあったんかな。俺ちょっと見てくる」
 そう言って、俺は日比野の向かった自販機へ駆け出した。
 なにもなければいいのだが......。
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