AR・SURVIVORS━エーアール・サバイバーズ━

勇崎シュー

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1、この世界はゲームじゃない。

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 青々と繁る木々。
 地を照らす太陽。
 俺達は今日も、この世界を駆ける━━。

「お兄ちゃん。ご飯出来たよー」

「うわっ!」

 妹の声に驚き、思わず椅子から転げ落ちる俺、美園幸みそのこうは、痛む頭を押さえながら、リビングのある一階へ向かう。

「さっき凄い音がしたけど大丈夫?」

「あ、あぁ。大丈夫」

 俺は妹の向かいの席に座った。
 親は昨日から旅行で不在なので、今晩は俺の妹、美園千夏みそのちなつと二人での晩食である。
 俺と千夏は、手を合わせいただきますと言い、食事を始める。

「父さんと母さん帰って来るのって、明日だっけ?」

「うん。夜ご飯までには帰るって言ってた」

 それを聞きながら俺はオムライスを頬張る。
 今日の食事は千夏が作ったものだ。結構旨いものだなと感心した。
 明日は俺が食事当番だが、何を作るかまだ決めあぐねている。

「ごちそうさん。じゃ、俺もう戻るわ」

「ん。お粗末様でした」

 コップに注がれていた麦茶を飲み干し、食器を台所に戻してから、俺は自室に戻った。
 
 俺は今、とあるゲームに熱中している。
 一昨日からリリースされた、〝サバイバル×サバイバー〟。通称〝サバサバ〟と言うゲームだ。
 大々的な告知が無かった上に、何処の会社が作ったゲームなのかも不明なゲームで、それ故かプレイヤーは千人ほどしか居ない。
 世界で同時にリリースされたため、日本人だけなら百人いれば多い方だろう。

 現状かなりマイナーなゲームではあるが、正直俺が今までしてきたゲームの中でダントツに面白かった。
 設定は、主人公が事故によりとある島に流れ着いてしまうところからサバイバル生活が始まる、と言ったありきたりな感じだ。

 しかし、重要なのは中身。
 このゲームは、一見只のサバイバルゲームだが、実はかなりファンタジーな要素が含まれているのだ。
 体力ゲージやマップ等の表示がレベル機能以外一切無いが、一つだけ、表示されているものがある。

 それは、スキルだ。

 スキルとは武器を装備したり、特殊攻撃、魔法、料理や鍛冶といったものまで数多くある。
 そんなファンタジーゲームにありそうなシステムだが、それだけではない。

 舞台の島には、モンスター達が蔓延っているのだ。
 モンスターを倒すことでアイテムが手に入ったり、経験値が貰えたりする。
 レベルが上がれば攻撃力などのステータス(自身では数字として確認出来ない)が上がったり、スキルを強くしたり新たに覚えたり出来る。

 他にも自分の家を建設出来たりと色々出来るのだが、説明すると更に長くなってしまうので省略しよう。

 今日は幸いにも土曜日、やろうとすればオールナイトでゲームが出来る。
 このゲームはレベルが上がりにくい為、俺はまだ14レベルだ。
 今日中に20は行きたいな。

 俺がそんなことを思いながら操作をしていると、突如パソコンの電源がぶつりと切れる。

「......あっ。って、はあああああああっ!?なにこれ?え、マジ?ふざけんなよ!このゲーム一回死んだらまたレベル1からスタートなのにぃぃぃぃっ!」

 オープンワールドの世界に置いて、寝落ちは死を意味する。今回は寝落ちでは無いが、それと同じ状態と言っていい。
 サバサバは一度死ぬとアイテムはその場に全てドロップし、プレイヤーはレベル1から再スタートとなる。
 このゲームをプレイして間もない時、一度だけ死んだが、あのときの虚無感は思い出したくない。
 ふと時計を見ると、時刻は丁度零時だった。
 視線をパソコンに戻すと、ぴこんと音が鳴り、目の前にメッセージの届いた時に現れる表示が現れた。
 まさか、サバサバの運営のサーバーがおちたのか?それでメッセージを送ってきたとか?
 それなら死ぬ前の状態にしてくれるなり多少待遇はなんとかしてくれるだろうが。

「ん?あれ?」

 何度マウスでクリックしても、キーボードを叩いても反応しない。
 すると、メッセージの上に〝touch〟と文字が浮かび上がった。
 パソコンにそんな機能は無い筈だが、なんとなくタップしてみる。
 すると、メッセージが開き、こう書かれていた。

『サバイバル×サバイバーの世界へようこそ!
この世界はサバイバル生活を基本とした冒険ファンタジーです。モンスターを倒したりして素材を集め、強くなりましょう。そして各都道府県に一体存在するボスモンスターをプレイヤー達で協力して倒し、その後現れる最終モンスターを倒して、ゲームをクリアしましょう。御武運お祈り致します。』

 なんだこれ。
 もうサバサバならインストールしてるのに、今さらこんなメッセージが来るとは。
 ん?よく見るとメッセージがもう一通来てる......?

「お兄ちゃん。どうしたの大きな声出して。あとさ、急にスマホが使えなくなっちゃったんだけど、直し方分かる?」

 すると妹が、ノックも無しに扉を開け、そう聞いてきた。
 反射的に振り向くと、メッセージボックスも俺の視線にあわせて動く。

「おおわっ!」

 あまりに驚いた為、俺は奇怪な声を上げてしまう。 

「どうしたのお兄ちゃん!あ、もしかして私の顔になんか付いてる?」

 俺は顔を触りだした妹に対して。

「なぁ、俺の頬っぺた恒ってくれないか?」

「えっ、何急にどうしたの?」

「いや、今夢の中かどうか確かめたい」

 すると千夏は俺に近づき、思いっきりひっぱたいてきた。

「俺つねれって言ったんですけど! ビンタしろなんて言ってないんですけど!」

 じんじんと痛む頬を擦りながら、そう叱咤する。
 いや、それより、問題なのは痛みがあることだ。
 夢じゃない、のか?
 それにしても、視界内にメッセージボックスやらスキル欄があるのが気持ち悪い。

「ま、いいや。もう夜中だし、寝ようぜ」

「あ、本当だ。まぁスマホは明日なんとかしますか。じゃあお兄ちゃんおやすみ」

「おやすみ」

 俺はもう何も考えずに、寝ることにした。
 もしかしたら、夢かも知れないからな。
 この時の俺は、気づく由もなかった。

 〝サバイバル×サバイバーの世界へようこそ〟の本当の意味に。
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