AR・SURVIVORS━エーアール・サバイバーズ━

勇崎シュー

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3、生き残る為に

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「キャアアアアッ!?」

 外から悲鳴が聞こえてくる。

「っ!?千夏!ちょっと行ってくる!」

 俺が剣を片手に家を出ようとすると、千夏が俺の服を引っ張ってきた。

「私も連れてって」

「いや、あぶねぇって」

 妹は依然俺の服を離そうとしない。
 しびれを切らした俺はため息を一つ吐く。

「分かったよ。その代わり、俺から絶対離れるなよ」

 コクりと頷く妹の手を掴み、俺は扉の鍵を開け家から飛び出た。
 すると、近所のおばさんが、サバサバでお馴染みのモンスター、コボルトに襲われていた。
 コボルトは人形の犬で、知能が高い。
 しかし、攻撃力はあまり強くなく、サバサバの中では一二を争う程の雑魚として見られている。
 だが、短剣を持っているコボルトに対して、おばさんの武器はパンパンのゴミ袋だ。おそらく、おばさんはごみを棄てようと外に出たのだろう。

「ゴアアアァッ!」

 コボルトが犬とは思えない雄叫びで威嚇する。
 おばさんは恐怖からか、身動きが取れないでいた。
 そんなおばさんに、コボルトは容赦なく剣を降り下ろした。

「やめろ!」

 俺は自分でも信じられない速さで走り、スキルを発動させる。
 《アインスラッシュ》。片手剣の初級スキル。威力は他の片手剣スキルの中で一番弱いが、使い勝手は良い。
 スキルを使うと、刀身に淡く青白い光が纏う。
 そしてそのまま、コボルトを真っ二つに斬り裂いた。 

「ゴォ......ォ......」

 コボルトはその場で倒れた。
 ゲームでは十分後に透明になっていき消滅するが、今回はどうだろう。
 いや、それより、モンスターが街に蔓延っていることの方が問題だ。

「あ、貴方お隣の、美園さんのところの息子さん?」

「あ、はい。そうです。無事でしたか?」

「私は無事よ。貴方が助けてくれたのね。ありがとう」

 お礼は素直に嬉しいが、今は喜んでいる場合ではない。
 
「おばさん。今は危険です。外に出る時は注意して下さいね」

 俺はおばさんにそう言い残し、一度帰宅した。

「お兄ちゃん、さっきの凄かった」

「ん?モンスターのことか?」

「いや、それもあるんだけど、お兄ちゃん、すっごく強かった」

 確かに、思い返せば、俺はかなり戦えていたな。
 長剣もけして軽くは無いが、むしろ手に馴染んだ。
 スキルも、使い方なんて知らない筈なのに、自然と使えた。
 戦闘も身体が勝手に動くような感覚で、気づけばコボルトを斬り捨てていた。
 もしかしたら、プロトタイプのサバサバをしてた影響か?

「お兄ちゃん、これからどうするの?」

 俺の思惟を余所に、千夏がこれからについて聞いてくる。
 それはこれから必ず問題になる筈だし、確かに議論すべきなのだろう。

「そうだな。先ずはこの先生きていく為には、強くならなきゃいけないと思う。俺は勿論、千夏も」

「私も?」

 千夏は見るからに不安そうな顔をする。
 今回はコボルトのレベルが1だったのでレベル差で勝てたが、次もそうなるとは限らない。
 それに、これから先、千夏だけで戦わなければいけなくなることもあるだろう。

「大丈夫だって。俺もついてるし、安全第一で行けば死ぬことは......」

 俺は言いかけて、止まった。
 もし、この世界でゲームオーバーになったら、どうなるんだ?

 まさか、死ぬ?

 あり得ない話では無いかも知れない。
 俺達の肉体は、データにインプットされているわけではない。つまり、復元が出来ないのだ。
 もし、体力がなくなり力尽きたら、消滅して、一生そのままの可能性もあり得てしまう。

「お兄ちゃん、どうしたの?」

「いや、何でもない」

 俺は冷や汗を滴ながら、前髪を弄った。

「......」

「ん?どうした?俺の顔なんか真面目な顔で見て」

「なんでもない」

 若干前のめりになっていた千夏は、そう言って姿勢を正した。
 俺は話を戻そうと、咳払いをする。

「兎に角、今はレベル上げだ。こんな状況じゃ学校にも通えないだろうし、暇な時はなるべくレベルを上げる時間に費やそう」

「学校、そういえば、皆はどうしてるだろ」

 皆、と言うのは、学校の友達のことだろう。
 俺も友達が居ないわけでは無いので、心配だ。

「千夏、友達のことも心配だろうけど、今は自分たちのことを考えよう」

「でも......」

 千夏は顔を伏せ、見るからに不機嫌だ。
 俺だって、できるだけ多くの人を救いたい。
 でも、俺にそんな力があるとも思えない。千夏を守るのに必死だしな。

「そうだ千夏、これ渡しておくよ」

 俺は自分のリュックから木製の杖を取り出す。
 サバサバの世界では、杖等の魔法アイテムが無いと魔法を使えない。
 いつか魔法が使えるようになったときの為にとっておいたが、武器はこの杖と俺の長剣しか持っていないので、千夏に渡すものはこれしかない。

「よし、行くか」

 俺は覚悟を決め、立ち上がった。
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