転生悪魔の復讐譚

勇崎シュー

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01:魔族の日常

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「おおおぉっ!」

 俺はこれ以上無い程の咆哮とともに、剣を降り下ろした。

「わっ」

 俺の幼馴染であるリグルスが、情けない声をあげながらも俺の剣を弾いた。

「てやっ、せいっ、やぁっ!」

 俺は何度もリグルスに剣を叩きつけた。リグルスは防戦一方……に見えるが、彼の戦い方はここぞというときに反撃するカウンタータイプなので、気を抜くことは出来ない。

「くっ、そこだっ」

 ほらきた。
 リグルスが俺の剣をかわし、鋭い突きを放ってきた。
 俺はリグルスの反撃をなんとか避け、突いてきた右手の手首を左手で掴み、転がすように地面に倒す。
 そしてリグルスが起き上がる前に、首元に切っ先を向けた。

「……負けました」

 リグルスはため息を吐きながら木剣を投げ捨てた。
 俺はにっ、と頬を釣り上げながら、リグルスに手を差し伸べる。
 リグルスは俺の手を掴んで立ち上がった後、衣服に付着した砂埃を払った。

「はー、これで六五勝六五敗一引き分けか。この試合に勝てれば……」

 そのあとは気恥ずかしくなったのか、言葉を中断したリグルスと近くにいる俺の元に、ひとりの魔族の少女が小走りで近寄ってきた。

「お疲れ様、ヴルヘリット、リグルス。今回も決着つかなかったね」

 彼女の名はアミスタ。何を隠そう、俺の想い人……というのは恥ずかしい言い方だが、将来お嫁さんにしたいな、と思っている女の子である。

 しかし、問題なのはリグルスも同じ気持ちらしく、アミスタ……アミちゃんは俺達のことを特に異性として見ていないことだ。

 幸いなのはアミちゃんはまだ好きな人がいないらしく、俺達にもチャンスがあるということだ。でもアミちゃんは当然ひとりしかいないため、結婚出来るのはひとりだけ……そこで公平を期すため、二人で決闘を行い、先に二勝した方がアミちゃんをお嫁さんにできる勝負を始めたのである。

「そういえば二人とも、お母さん達に頼まれてた山菜採り、もう終わったの?」

 アミちゃんのその一言により、俺とリグルス……リグはその場で硬直した。硬直というよりもはや石化だ。カチカチだ。
 そして数秒後、石化は解け……。

「やべぇ、決闘で頭いっぱいだったから、全く採ってねぇ! リグ、行くぞ!」
「う、うん!」
「そんなこったろうと思った……私も手伝うわ」

 アミちゃんに礼を言った後、俺達は近くに置いていた山菜籠に木剣をぶちこみ、森の中へ山菜採取に急ぐのだった。



▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼



「はー大量大量。なんとか日が暮れるまでに言われた分集められたな」
「日、暮れ始めてるけどね、もう。でもアミちゃんのお陰でだいぶ助かったよ。ありがと」
「どういたしまして。全く、あんた達は私がいないと危なっかしいったら……」

 空が赤、橙、紫とグラデーションを飾るなか、俺達は村に向かい森を歩いていた。
 俺の背丈の半分くらいある大きさの山菜籠は、三分の一程山菜が詰められている。

「……あ、焼き魚のいい匂い…………」

 リグが鼻をすんすん鳴らしながら、そう呟いた。

「おー、今日の晩飯はアラヤの塩焼きか? ってことはラク達が頑張ってくれたんだな」
「いや、この匂いはアラヤってより……サシャミじゃない?」
「サシャミ!? すげーな、今晩はご馳走じゃねぇか。てか相変わらずすげー鼻だな。俺魚の匂いもまだ……いや、してきたな。魚の焼ける匂い」

 リグの相変わらずの嗅覚に感心しつつ、俺もすんすんと辺りの空気を熱心に吸い込む。

「あんた達、犬じゃないんだから……」

 アミちゃんにつっこまれ、俺達は赤面した。
 そんなことをしている内に、あっという間に村に到着した。
 簡素な家が幾つか立ち並んでいるだけの侘しい村だが、俺達の故郷であることに間違いはない。

「お、あんた達おかえり。山菜はちゃんと採ってきたかい? あぁ、それと聞いて驚きなよ、なんと今日の晩御飯……」
「サシャミだろ。山菜もちゃんと採ってきたよ」

 俺は家の縁側に山菜籠をどかっ、と置いた。

「ありゃ、当てられちゃった。もしかしてまたリグルス君の鼻かい? 相変わらず凄いねぇ」

 俺の母さんが手を頬に置いて感心する。

「お、山菜も充分だね。お疲れさん。それじゃ、村の皆に配ってきなさい」

 俺達は健気に返事し、自分達の分の山菜を取った後の籠を背負い、小走りで配りに向かう。

 この村は、人口たったの四十七の小村である。だからこそ、皆で助け合って生活しているのだ。
 因みに、この村で一人っ子であるのは俺とリグとアミちゃんだけである。
 村の皆に配り終わった俺は、リグとアミちゃんと別れ、帰宅した。

「ただいまー! 母さんサシャミサシャミーっ」
「はいはい。急がなくてもサシャミは逃げないよ」

 俺は既に配膳されていたちゃぶ台の前に勢いよく座り、箸を手に取った。
 そして、いい香りのするサシャミの塩焼きを貪るのだった。

「サシャミ旨ぇー!」

 そんな俺の姿に、母さんはただただ微笑んでいた。

 俺はこんな日常が、ずっと続くと思っていた。
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