8 / 12
08:操炎のルーンナイト
しおりを挟む
騎士の空からの斬撃を後ろに跳んでかわした俺は、躓きそうになりつつ、なんとか踏ん張り短剣を構える。
「……なるほど、近くで見て確信した。てめぇか、メイフィルをやったのは」
メイフィル? 誰だ。
俺は騎士が口にした者の正体について思惟する。
そしてひとつの結論に至った。
「……あのエルフのことか」
俺の返答により、騎士は眉間に皺を寄せた。
「その通りだ。てめぇだろ、やったのは、その剣が何よりの証拠だ」
「人聞きが悪いな。元はと言えばそっちが俺達の仲間を攻撃してきたからだろ。それに、こっちは殺してない」
俺の言葉に、騎士は不機嫌な笑顔で嘲笑した。
「はっ、お前ら魔族は殺されて当然の種族だろ。なにせ、今まで何度も世界を滅ぼそうと画作してきたわけだしな」
その話は聞いたことがある。確か、この世界は二度、魔王と称される存在によって滅ぼされかけたのだ。その度に、勇者と呼ばれるものが打ち倒すことによって防いできたらしいが。
「魔王と俺達はカンケーないだろ。人間だって、人殺しはいるだろ? だったら同じ人間族のあんたも人殺しと同列と見ていいのか?」
「構わねぇさ。実際、このオレサマだって、仕方なく人を斬ったことがある。だが、魔族はそんなレベルじゃねぇだろ。面白がって人を虐殺し、命を弄び、世界を滅ぼすだ? そんな勝手なやつらのどこに同情できるっつんだ」
騎士は驚く程早く返答した。
正論、なのかもしれない。この騎士の述べたものは。
「それでも……」
俺は奥歯を噛みしめた。
「それでも、魔族にだって良い奴はたくさんいるんだ。年長のタガは皆のアニキで面倒見もよくて、クラはいつもは大人しい癖に、誰かが喧嘩すると真っ先に仲裁に入るし、メオは誰よりも勉強ができて、色んなこと教えてくれて、リグは親友で、アミちゃんは普段キツイこと言ったりもするけど、本当はすっげぇ優しい良い子で……」
俺の話しに飽きたのか、騎士が剣を振りかぶり迫ってきた。
聞けよ、話は最後まで。
俺は沸騰するように怒りが込み上げてきた。
「お前らが、奪ったんだッ! 陰牙ァッ!」
俺は降り下ろされた綺麗な軌道の剣を陰牙で弾く。
「なっ……?」
驚いているようだが、まだ終わんねぇよ。
日陰神明流、二ノ技━━
「漠引!」
俺は突いた剣を裂くように引く。
騎士は、これを身をよじって肩の鎧に当てさせ致命傷を避けた。
━━だが、まだだ。
「日陰神明流、三ノ技━━」
俺は剣を引き抜いた勢いそのまま、むしろ力を更に込め、放つ。
「━━裏穿ッ!」
俺は身体を右回りに回転させ、低い斬撃を繰り出す。
ガキィンッ、と鋼の音が辺り轟いた。
つまり━━
「なるほど、お前、やっぱ強いな。魔族のガキの癖に」
「…………これも捌ききるのかよっ……!」
俺は吼えるように毒づいた。
騎士は弾いた筈の剣で、俺の剣技━━裏穿を真っ向から受け止めた。
俺の現在放てる剣技の全てを持ってしても、この騎士ひとり、倒せないとは……。
「魔族じゃなけりゃ、弟子にしてぇくらいだ」
軽い絶望に浸っていると、騎士は俺の剣をピシッと跳ねた。
瞬間、騎士は俺の胸に向けて剣を突けてきた。
これは、もう━━
「ちっ」
騎士は舌打ちしながら、後方に跳びずさった。
そして、俺の目の前を突風が横切り、地面に獣のような爪痕を遺す。
「諦めちゃ駄目だ、ヴル……!」
リグ。またリグに助けられた。
「地味に邪魔だな、おまえ」
剣をぶら下げながら、騎士はリグを睨んだ。
俺は慌ててリグの前に出る。
「今さら無駄だ。不本意な勝ち方になるが、おまえ達の負けは確定だ。何故なら、さっきの剣戟を聞き付けた仲間が駆けつけにくる。流石に、数で劣っちゃお前らも無理だろ」
それは、俺もわかっていた。戦いが長引くと、応援が駆けつけてしまう恐れ。
元々騎士を呼びつけない為に、アングリズリーを秒殺したのだ。それなのに、これでは意味がない。
━━逃げる? でも、今逃げるとアミちゃんを置いていく、否、見棄てることになる。
そんなこと、死んでも嫌だ。
ならば戦うしか無いが、使える技は出し切った。ここからどうすれば。
何も案が出てこない。くそっ、くそっ、くそっ! 焦っている。落ち着け。でも、技の連続使用で体力も疲弊している。リグも、殺傷力のある魔法はそもそもあまり使ってこなかったし、乱発させるとすぐくたばってしまうだろう。
「ヴル、良い案がある」
俺は何故か動こうとしない騎士を見据えたまま、リグの言葉に驚いた。
「マジか。なんだその案って」
リグは、一度空気を吸った。そんな音がした。
「僕が戦うから、ヴルはその間に、アミちゃんと逃げて」
「……………………はっ?」
「……なるほど、近くで見て確信した。てめぇか、メイフィルをやったのは」
メイフィル? 誰だ。
俺は騎士が口にした者の正体について思惟する。
そしてひとつの結論に至った。
「……あのエルフのことか」
俺の返答により、騎士は眉間に皺を寄せた。
「その通りだ。てめぇだろ、やったのは、その剣が何よりの証拠だ」
「人聞きが悪いな。元はと言えばそっちが俺達の仲間を攻撃してきたからだろ。それに、こっちは殺してない」
俺の言葉に、騎士は不機嫌な笑顔で嘲笑した。
「はっ、お前ら魔族は殺されて当然の種族だろ。なにせ、今まで何度も世界を滅ぼそうと画作してきたわけだしな」
その話は聞いたことがある。確か、この世界は二度、魔王と称される存在によって滅ぼされかけたのだ。その度に、勇者と呼ばれるものが打ち倒すことによって防いできたらしいが。
「魔王と俺達はカンケーないだろ。人間だって、人殺しはいるだろ? だったら同じ人間族のあんたも人殺しと同列と見ていいのか?」
「構わねぇさ。実際、このオレサマだって、仕方なく人を斬ったことがある。だが、魔族はそんなレベルじゃねぇだろ。面白がって人を虐殺し、命を弄び、世界を滅ぼすだ? そんな勝手なやつらのどこに同情できるっつんだ」
騎士は驚く程早く返答した。
正論、なのかもしれない。この騎士の述べたものは。
「それでも……」
俺は奥歯を噛みしめた。
「それでも、魔族にだって良い奴はたくさんいるんだ。年長のタガは皆のアニキで面倒見もよくて、クラはいつもは大人しい癖に、誰かが喧嘩すると真っ先に仲裁に入るし、メオは誰よりも勉強ができて、色んなこと教えてくれて、リグは親友で、アミちゃんは普段キツイこと言ったりもするけど、本当はすっげぇ優しい良い子で……」
俺の話しに飽きたのか、騎士が剣を振りかぶり迫ってきた。
聞けよ、話は最後まで。
俺は沸騰するように怒りが込み上げてきた。
「お前らが、奪ったんだッ! 陰牙ァッ!」
俺は降り下ろされた綺麗な軌道の剣を陰牙で弾く。
「なっ……?」
驚いているようだが、まだ終わんねぇよ。
日陰神明流、二ノ技━━
「漠引!」
俺は突いた剣を裂くように引く。
騎士は、これを身をよじって肩の鎧に当てさせ致命傷を避けた。
━━だが、まだだ。
「日陰神明流、三ノ技━━」
俺は剣を引き抜いた勢いそのまま、むしろ力を更に込め、放つ。
「━━裏穿ッ!」
俺は身体を右回りに回転させ、低い斬撃を繰り出す。
ガキィンッ、と鋼の音が辺り轟いた。
つまり━━
「なるほど、お前、やっぱ強いな。魔族のガキの癖に」
「…………これも捌ききるのかよっ……!」
俺は吼えるように毒づいた。
騎士は弾いた筈の剣で、俺の剣技━━裏穿を真っ向から受け止めた。
俺の現在放てる剣技の全てを持ってしても、この騎士ひとり、倒せないとは……。
「魔族じゃなけりゃ、弟子にしてぇくらいだ」
軽い絶望に浸っていると、騎士は俺の剣をピシッと跳ねた。
瞬間、騎士は俺の胸に向けて剣を突けてきた。
これは、もう━━
「ちっ」
騎士は舌打ちしながら、後方に跳びずさった。
そして、俺の目の前を突風が横切り、地面に獣のような爪痕を遺す。
「諦めちゃ駄目だ、ヴル……!」
リグ。またリグに助けられた。
「地味に邪魔だな、おまえ」
剣をぶら下げながら、騎士はリグを睨んだ。
俺は慌ててリグの前に出る。
「今さら無駄だ。不本意な勝ち方になるが、おまえ達の負けは確定だ。何故なら、さっきの剣戟を聞き付けた仲間が駆けつけにくる。流石に、数で劣っちゃお前らも無理だろ」
それは、俺もわかっていた。戦いが長引くと、応援が駆けつけてしまう恐れ。
元々騎士を呼びつけない為に、アングリズリーを秒殺したのだ。それなのに、これでは意味がない。
━━逃げる? でも、今逃げるとアミちゃんを置いていく、否、見棄てることになる。
そんなこと、死んでも嫌だ。
ならば戦うしか無いが、使える技は出し切った。ここからどうすれば。
何も案が出てこない。くそっ、くそっ、くそっ! 焦っている。落ち着け。でも、技の連続使用で体力も疲弊している。リグも、殺傷力のある魔法はそもそもあまり使ってこなかったし、乱発させるとすぐくたばってしまうだろう。
「ヴル、良い案がある」
俺は何故か動こうとしない騎士を見据えたまま、リグの言葉に驚いた。
「マジか。なんだその案って」
リグは、一度空気を吸った。そんな音がした。
「僕が戦うから、ヴルはその間に、アミちゃんと逃げて」
「……………………はっ?」
0
あなたにおすすめの小説
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる