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勇崎シュー

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序章ー転移ー

10 旅立ちの日に

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「いいですか? ハーシンの村に着いたら、先ずは宿屋の確保。それからギルドで冒険者登録をして、その後は……」

 ここは、馬車の荷台の中。
 ユズリは鎧では無く、全身を包む濃き色のローブ的なものを着しており、俺はパジャマから簡素な皮鎧に着替えてある。
 俺は兎も角、何故ユズリが着替えたか聞いたところ、冒険者でいる間は勘違いされないよう、支給された鎧は着ないようにするらしい。

 そして、これからの予定について話し合っている所なのだが、話し合うと言っても、基本ユズリが色々決めてくれているので……。

「何か慣れてるね。騎士の時はリーダー的な役目だったの?」
「いえ、女性は隊長にはなれない決まりなので……。あるとすれば、長女だったからかな」

 タメ口でいいよと言ってあるが、騎士故か敬語混じりの口調でそう返される。

「そっか。俺はひとりっ子だから、兄弟とかちょっと憧れるかも」

 頭の後ろで腕を組みながら呟くと、彼女は曲げた人差し指を顎に当てつつ微笑んだ。

「ふふ。でも、兄弟が多いとそれはそれで大変なんだから」

 なかなか実感の篭った返答に微笑を浮かべ返すと、引手のおっちゃんに着いたことを知らされる。
 因みに、馬車の引手さんにはモンスターに襲われた際に助ける事を条件に、タダで乗せてもらう手筈だ。まぁ、これも異世界モノでは割と見かけるハナシである。
 しかしこの前の襲撃があったからか、モンスターも身を潜めているようで戦闘に入ることは無かった。

「よし、それじゃあ早速行こうか。先ずはえーと、宿屋の確保だっけ」

 俺はおっちゃんに礼を言ってから降り、ユズリに確認を取る。
 彼女も一言感謝を伝えてから、質問に答える。

「そうよ。まぁ、この村は以前警備に配属された事があるから、場所は大体分かっているけどね」

 二人でそんな会話を交わしつつ歩いて、ふと立ち止まる。

「どうしたの?」

 その問いに、俺は辺りをぐるりと見回す。
 所々木が生い茂り、何軒か見える家は木製。道は特に舗装されて無く、強いていえば踏みしめられて草木の生えていない所が道としてあるくらいだ。
 一見、普通の街並みならぬ村並みといったところだが、一つの違和感が胸を鳴らした。

「静か過ぎない?」

 まさか自分がこんな漫画みたいな台詞を言う事になるとは思ってもみなかったが、事実この村は静かすぎる。
 朝方に出発した為、今は昼過ぎといったところだが、誰も外出していないため全く賑わっていない。

「確かに……妙ね」

 彼女も指を顎に当て思考を巡らせている様だが、立ち尽くしていると不意に右方向の家の窓が開けられる。

「サバック、こっちだ早く! そこの二人も来なさい!」

 窓から顔を出した老人に言われ、引手のおっちゃん含めた俺達は言われるがまま家に入らせてもらった。






「どういうことですか、村長」

 サバックという名前らしい馬車の引手が、先程声をかけてきた老人に訊ねる。
 どいうこと、というのは、閑静なこの村についてだと思われるが……。

 というか、やっぱりこのおじいちゃん村長だったのか。
 恐らく文明が未発達なこの世界では、長寿な人間は珍しい筈。より知識を持った長寿者が村長に選ばれる事は珍しくないらしいし、展開的に初めに会う人物は村長か子供かの二択だと相場が決まっている。
 まぁ、これもラノベで得た知識だが……。

「……ゴブリンだ」

 村長のその一言に、俺は苦笑を浮かべた。
 ゴブリンは俺のいた世界では大半のRPGに出てくる程メジャーなモンスターで、あまり強くない印象を持ちがちだが狡猾な為決して侮れない。
 勿論これも小説知識だが、ゴブリンを舐めた冒険者が何人痛い目を見てきたか……あくまで空想上の話だけど。

「ほれ、勇者召喚の儀を一目見ようと、村の冒険者達の一部が王都へ向かってしまっただろう? それを好機と見た目敏いゴブリン共が、ここぞとばかりに村を襲ってきて……女、子供を攫ってしまったんだ」

 これもよくある展開だが、目の前の人から直接説明されると、その場の雰囲気も相まって沈鬱な気分になる。
 それこそ、文字を追うだけでは得られない緊張感だ。

「今はヤツらに狙われないよう、残った者達には外出しないよう言っているが、この状況がいつまでも続いては持つまい……そこで、冒険者である貴方達二人にお願いしたい」

 格好をみて冒険者と判断されたのだろう俺達は、お互いの顔を見合わせた。

「ゴブリンか……」

 一言だけ呟き、俺は……。

「…………無理、っすねぇ……」

 何とも情けない声で、後ろ髪を掻いた。
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