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勇崎シュー

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一章ー風の都ー

20 まさかの邂逅

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「「あーっ!」」

 俺が目の前の人物を指すと、雅な服装をした少年も同じ様なポーズを取り叫んだ。

「お、お前はっ……! ……えっと、名前なんだっけ?」

 本気でそう言うと、目の前の貴族っぽい子供ががくりと肩を落とし、危うく壇上から落ちそうになる。

「俺だよ俺! 王城内で会ったレビンだ。覚えておけニセ勇者!」
「知るか! お前最後に出てきたの何話前だと思ってんだ! 名前出ても読者も多分ピンと来てないだろ!」

 あくまでこの世界が創作である事を仮定としたジョークだが、そんなものが異世界人に通じるわけも無くレビンは顔を上気させた。
 それから何かを叫ぼうと空気を吸い込んだ所で、近くにいたボディガード的な騎士に口を抑えられ、耳元で何かを囁かれる。
 するとレビンははっ、とした表情をし、咳払いをして向き直った。そして、先程の態度に対する釈明の後に演説を再開する。

「ね、ねぇ……これって後で処罰されるんじゃ……」

 何やらユズリがあわあわしているが、俺は至って堂々としていた。

「大丈夫じゃね? 俺勇者だし、なんか法外の事されたら王様にチクればいーよ。それよりこんなの聞いててもつまんないし、もう行こうぜ」

 瞬間どこかの貴族様に睨まれた気がしたが、気にせずその場から立ち去る。
 流石に最後のはちょっとやりすぎたかな、と後ろ髪を引かれつつ、俺達は辺りの屋台やらを見て回った。
 暫く移動した後に、とある店を見つける。

「ほえー。かざぐる饅頭……面白い名前だなぁ」

 目の前に見上げるのは、先程も言った通り“かざぐる饅頭”なる風車のような焼きが入った饅頭の店だ。

「なぁなぁ。これ買ってこうぜ。何なら俺奢るし」
「別にお金は自分で出すけど……」

 少し離れた場所で話し合っていると、とある客がそそくさと店の前に立ち塞がる。
 何気なしに見てみると……。

「おい! この店の饅頭……すべてこのレビンが買う!」
「あぁっ!?」

 どっかの貴族が買い占めようとしていた。

「え、ですが……」

 当然店主は困惑を示すが、レビンも食らいついていく。

「いいから早くするんだ。……これは独り言だが、大貴族の子息である俺御用達の店という看板を上げれば、大繁盛まちがいな……」
「在庫含めすべて売らせて頂きます!」

 なんということだ。
 商人魂とその懐事情に素早く切り込む手腕……これは将来悪徳貴族になる素質大アリではないか。

「おやおやすまんなぁ。この店の品はたった今品切れになってしまったようだ。貴様も食したかった様だが残念だったなぁ!」

 先程の恨みだろうが、やる事が豪胆でありつつねちっこい。
 だが、買い占めなんてしたら何が起こるかなんて、少し考えれば分かりそうなものだが。と、考えたのと同時に正しくその事象が起こらんとしていた。

「すみません。お饅頭二つくらさい!」

 まだ舌足らずな四歳くらいの少女が、カウンターから頭をのぞかせ注文する。

「ごめんな嬢ちゃん……さっき売り切れちまったんだよ」

 店主からそう伝えられると、少女は見るからに気落ちした。
 それを見た買い占め犯であるレビンは、何とも気まずそうな面持ちだ。

「おやおやレビン殿。守るべき国民にこんな顔させちゃ、貴族の名折れなんじゃないですかぁ?」

 俺がニタニタと汚い笑みを浮かべながらそう言うと、彼はこちらを鋭く睨んだ後に騎士に命令を下す。

「おい、あの娘に饅頭を二つくれてやれ」
「良いのですか?」
「下らんことでこれ以上我が家の株を下げたくないだけだ」

 意外と丁寧な対応をする事に若干驚きつつ、それを見たユズリが意外な反応を見せた。

「……あのう、私にも…………」

 おずおずと話し出すユズリ。恐らく騎士としての矜恃と食欲との間で相当揺れたのだろう。

「……まぁいいだろう。彼女にも一つ」

 二人いる騎士の内一人は少女に渡している最中なので、もう一人がユズリに一つ手渡した。

「じゃあ俺にも……」
「貴様にやるわけ無かろう!!」

 本来それが目的だったので当たり前の発言だが、俺はちぇ、と心中で舌打ちする。
 そして目線を何処と無く右側に向けると、茶色のローブを目深く被った少年がこちらに近づいてきていた。
 どこか違和感を覚える挙動に訝しんでいると……。

 少年は懐からペティナイフを取り出し、鬼気迫る眼差しでこちらに向かってきた。

「なっ……! おい、レビン!」

 叫ぶと同時に振り向き、貴族は目を見開いて……。


 重い衝突音が鳴った。
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