レベル“0”ですが、最強です。

勇崎シュー

文字の大きさ
21 / 81
一章ー風の都ー

21 追走

しおりを挟む
 レビンに饅頭をくれと言ったが普通に断られ、目線を何処と無く右側に向けると、茶色のローブを目深く被った少年がこちらに近づいてきていた。
 どこか違和感を覚える挙動に訝しんでいると……。

 少年は懐からペティナイフを取り出し、鬼気迫る眼差しでこちらに向かってきた。

「なっ……!」

 瞬間、俺は頭を働かせる。
 何故、の前に、誰を狙っているのかを先ずは思考した。
 一番可能性があるのは貴族であるレビンだ。本人又はその家系の誰かに恨みを持っているのだろう。
 どの道騎士か俺達二人が狙われたところで防具をしているのだから大した怪我は負わない。ならば少し癪だがレビンを守ることが第一だ。

「おい、レビン!」

 叫ぶと同時に貴族は振り向き、目を見開いた。
 不味い、と思った頃には俺の足は既に動いている。
 間に合え……! と心中で叫びつつローブの少年に体当たりを見舞った。
 こうして、重い衝突音が鳴る。

「ぐぅっ……!」

 裏路地の方へと転んだ少年。俺はその背丈や声、ちらりと見えた肌色に既視感を覚える。
 しかし少年はお構い無しに落としたナイフを拾い上げ、街の影へと駆けていく。

「アイツは俺が追う! 仲間がいるかもしれないから、あんたら二人はレビンを守っとけ!」

 明らかに歳上の騎士二人に粗い言葉遣いをしてしまうが、今は緊急事態なので許して欲しい。
 そう頭で考えつつ、俺は少年の足取りを追った。

「待てっ!」

 翌々考えれば待てと言われて素直に従うわけはないのだが、万が一に賭けて叫ぶ。
 しかし少年は当然疾駆を止めなかった。
 俺は微かな胸のざわめきだけを原動力に追いかけるが、中々追いつけそうにない。
 こうなれば……。

「《剣招来ブレイドコール》っ!」

 我が黒剣を召喚し、少年に向かって突き刺す。
 当然距離がある為接触はしないが、目の前に小さな異次元の隙間が出来る。
 これにより辺りの空気が一瞬だが収束した。

「……っ!」

 茶ローブの少年も踏ん張るが、その吸収力には勝てず後転する。
 俺はよし、と心中で頷き右手に握る黒剣を四散させながら駆け寄った。そしてその素顔を拝もうとローブに手を伸ばす。
 しかしその瞬間、彼はローブの下に隠していたのであろう固く小さい“何か”をこちらに投げつけて来た。

「っで!」

 痛いすら言葉に出来ないほどの唐突な事態に困惑しつつ、クリーンヒットした額を抑えながら再度駆ける。
 もう一度剣を呼び戻し転ばそうと画策するも、常に塀を越えたり壁が背になる状況になるよう逃げられ、上手く躱される。

「くっそ……!」

 ここ数日でほんの少しばかり上がった体力に限界が近づいてきた所で、少年は腰から何かを取り出し、それを三メートルはある塀に向かって投げた。
 それは先端が返しになっており、鎖に繋がれ射出出来るアイテム……。

「フックショット!?」

 勿論、これは俺が勝手に言っているだけで正式名称は別だろうが、某ゲームを彷彿とさせるそれは夜を駆ける猫の如し機能で、一呼吸する間に向こう岸へ去ってしまった。
 登ることも一瞬考えたが、今行った所でもう追いつけないだろう。

「……ぜぇ、はぁ……っ、取り逃した、かっ……!」

 俺は重い足取りでみんなの元へ帰る途中、何かをぶつけられた所である物を探す。
 固くて、小石位の大きさの物は、近辺でひとつしか見つからなかった。

「……これは」

 俺は犯人探しの手がかりになるだろうそれを紺青色の右ポケットにそっと入れる。
 そして、今度こそ饅頭屋へ戻るのだった。








 饅頭屋へ戻った後、ユズリの案内の元レビンが泊まっているらしいとある宿屋の一室へ移動した。

「全く、どういうことだ!」

 憤慨しているのは、当然レビンだ。まぁ、殺されかけたのだからしょうがない。

「それで、アレから何かあった?」

 俺がユズリに問うも、彼女は首を左右に振るのみだった。
 特に仲間とかに追撃はされていない……か。

「おい、ニセ勇者。犯人を取り逃しておいてノコノコ帰ってきたからには、何か有益な情報を手に入れたのだろうな?」

 レビンに言われて一瞬むっ、とするも、仕方無く得た情報を開示する。

「とりあえず子供っぽかったかな。男か女かは分からない。けど上手く地形を利用して逃げられたから、きっとこの街に住んでる奴だ」

 この発言には一つ虚偽が隠されている上、俺のポケットには重要アイテムが入っているが……。
 ここでは敢えて、提出はしなかった。

「そうか……もういい、色々手間をかけさせたな」
「なんだよお前らしくねーな。まぁ、また何か分かったら教えるよ」

 貴族相手に大分横柄な態度を取るが、特に周りの騎士に責められる事も無かったのであまり気にしないようにし、部屋から退室する。
 そして少し歩いた後、俺はユズリの手を引き裏路地へ引き込んだ。

「ど、どうしたの?」

 そう聞かれ、俺は真剣な眼差しで。

「調べたい事がある」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...