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勇崎シュー

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一章ー風の都ー

23 可愛い提案

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 バックを気絶させた俺達は、借りっぱなしのエアロマシンまで彼を引き摺り拘束した。
 ここまで来たら水でもぶっかけて無理やり起こそうかと思ったが、まだ彼の事情を微塵も知らないので自重する。
 となると、バックが起きるまで寝る訳にはいかなくなった。徹夜などした事ないので不安もあるが、ここは気合いを入れるしかない。

「……暇だなぁ」
「ほっぺたグリグリして起こしちゃう?」

 中々に可愛い提案だが、即採用する程でもないのでうーむと唸る。
 すると、腕を縄で拘束されているバックに動きが出た。
 寝返りだったら確認損だなと思ったが、幸い彼は何度か眉間に皺を寄せた後にゆっくりと瞼をあげる。

「……ぐっ」

 拘束に気づき、無理やり取ろうとしていたがすぐに諦めた。そしてため息をひとつついた後にこちらを睨んでくる。

「……突き出さねぇのか。俺を騎士団に」

 俺は一拍空けてからその問いに答えた。

「知りたかったからね、単純に。なんでバックがあんな真似したのか」
「……それだけか?」

 複雑な顔を見せる彼に対し、俺はうんと頷く。

「あんちゃん、変な奴だな」
「たまに言われる」

 即答すると、バックはほんの僅か頬を上げ、少し考えた後に理由をぽつりぽつりと話し始めた。

「……殺されたんだよ、親父もおふくろも。……アイツの、レビンの親父に……っ!」

 衝撃の、しかしある程度感じていた事実に、俺は生唾を呑んだ。
 バックは険しい表情で目線を下げる。

「殺されたって言っても、物理的じゃない……よな? 何されたんだよ……解雇か、それとも、貶められて借金背負わされたとか……」

 これはどちらかというとドラマとかに有りそうな展開だが、お決まりのパターンではある。
 しかし、今回の場合はハズレだったようで、バックは首を左右に振った。

「いや、そうじゃねぇ……レビンの親父……リビン・グードは機械工学に力を入れていたんだ。その成果は上々で、僅かな期間で上位貴族に成り上がった。けど……」

 魔法に栄えたこの世界で工学に力を入れるなんて、確かに鬼才だ。
 バックの一呼吸の間にそう考えたが、次の言葉で息を詰まらせる。

「けど、工場から出た廃棄物やガスで環境が汚染されて……カースベルグが異常に増えた。そのせいで奴らに襲われる事件が次々起こったんだ!」

 それを聞いたユズリは「そんな……」と零し、俺もある程度察する。

「そう、か。君の両親も、カースベルグに……」
「いや……確かにカースベルグだが、俺達が襲われたのは異形のモンスターだった。羽根は左右二枚ずつあって……図体も何倍もあった……アイツは正真正銘の“バケモノ”だった」

 バックが身体を震わせ始めたので、拘束を緩め寝かしてやる。
 過去を思い出してしまったが故なのだろう。申し訳ないことをさせた。
 しかし、異形のモンスターか。恐らく遺伝子に異常が起きて産まれた奇形種なのだろう。俺のいた世界でも双頭の蛇は発見されていたし、人間でも多指症などは稀によくある症状として知られている。なので彼の言っている事も恐らく事実なのだ。

「バック、君の言い分は分かったよ。でもレビンを傷つけるのは違うだろ。君の親を殺したのはデカいカースベルグで、そいつが産まれる原因を作ったかもしれないのはリビンっていう貴族なんだから」

 あくまで第三者だから言える意見を述べると、バックは怒り二割寂しさ八割の顔で虚空を眺めた。
 そして、軽く唇を噛むと……。

「……だったら、どうすりゃあいいんだよ……どうすりゃ親父とおふくろの無念を晴らせるんだ……俺は、俺のこの気持ちはどうしたら……っ」

 恨みと、それ以上の悲しさと不安からだろう。彼は大粒の涙を幾つも零した。
 無理もない。俺よりいくつも年下の少年が背負うには、重すぎる過去だ。
 本来なら他人の俺が何かをしてやろうだなんて考えは傲慢なのだろう。ただ、首を突っ込み、自らの意見を述べた以上、その責任は負わねばならない。
 覚悟を決めた俺は、両手で目元を抑えるバックに言い放った。

「俺がカースベルグを倒す」

 この宣言に、バックとユズリが顔を向ける。

「俺がバックの両親の仇を討つよ……勿論、だからレビン一家を恨むのは止めろだなんて、言えないけど……少しでも君の溜飲が下がるなら、やってみせる」

 そして、自らの覚悟を肯定するかのように、俺は立ち上がった。
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