レベル“0”ですが、最強です。

勇崎シュー

文字の大きさ
52 / 81
二章ー止まない街ー

52 雨の音。目覚め。

しおりを挟む
「認めるよ。今回勝てたのは……運が良かっただけだ」

 悲しげな眼差しでガンゾルドを見下ろすと、とある奇跡が舞い降りた。
 それは……

 天を覆う雲が割れ、暖かな陽光が射し込んだのだ。

 止まない街と呼ばれるこの街に降りた陽射し。
 久方振りに見た光景に眼が潤みそうになるが、鼻を突く煙臭さに自然と雫は引いていった。
 煙の正体を探るべく、白煙の元を目で追うと、そこには日を浴びて干からびていくガンゾルドが目に入る。
 そうか、こいつの弱点は日光。
 だから止まない街である、レアルを拠点にしたのか。

 一つの疑問が晴れた所で、俺の意識は遠のきその場に崩れ伏した。








「……ぅ」

 倦怠感、喉の乾き、痛む全身。
 何がトリガーとなったかは分からないが、とにかく俺は睡眠状態から覚醒した。
 眉を寄せながらゆっくりと目を開ける。最初は焦点が合わなかったが、数度の瞬きで無事正常の視界に戻る。
 始めに目にしたのは、深い茶色の岩っぽい天井。視線を下げると、右奥に扉が見え、左手には簡素な窓とカーテン。

 そして、椅子に腰掛け可愛らしい寝息を立てている少女、ユズリが居た。
 もしかして、夜通し付いていてくれたのだろうか。俺は体のあちこちに包帯を巻いた彼女の姿を見て、胸が縮み込むような圧迫感を感じた。

「いっ……」

 しっかり起き上がった所で、左半身が痛む。
 そういや左ばっか攻撃受けてたなぁ。と己のクセや弱点が分かりそうになった所で、ユズリの寝息が不規則になってきた。
 彼女に視線を移すと、やはり口をむにむにさせたり眉を八の字にしたりと覚醒の兆しを見せている。
 俺は起きる手助けをするため、彼女の左手を三度指先でつついた。

「ん、ぅ……」

 ユズリも数度瞬きし、小さく欠伸をしながら起床する。

「おはよ」

 想像以上に枯れた声で挨拶すると、彼女は「うん……」と目を擦った。
 しかし異変に気づいたのだろう。一瞬身を硬直させてから、風を切り裂く様にこちらに顔を向ける。

「あ……た、タクマ! もう、心配したんだよ……」

 ユズリは椅子を倒すほど勢いよく立ち上がり、俺の左手首をぎゅっと掴んだ。
 そして、数秒間無言で見つめあっていると、彼女の目が潤み出した。

「え、ちょ」
「あ、ごめん……」

 俺が動揺を隠し切れないでいると、ユズリは両手で目元を覆う。

「そうだ。お水持ってくるね。喉乾いてるでしょ」

 彼女はそう言って足早に出てってしまった。
 これは、相当な心配をかけてしまったんだな。
 それにしても、俺はどのくらい寝入ってしまったのだろう。
 この喉のいがみ具合からみて、数時間程度とは思えない。
 うーむと唸っていると、木製のコップを片手にユズリが戻って来てくれる。

「ありがと」

 まだまだガラガラな声でお礼を言い、並々と水の入ったコップを受け取り少しずつ飲み込む。

「……ふぅ。ところで、他の皆は大丈夫なの?」
「うん。レジスタンスの皆もタクマ程重症じゃないよ」

 そっか、と安心しつつ、他にも色々気になる事を聞いていく。
 まず、風の都でお世話になった親方の従兄弟、ヴェルギさんの訃報については、ユズリが既に手紙を書いて然るべき場所に預けたらしい。

 そしてガンゾルド、奴らの正体について……。

「吸血鬼」

 彼女から放たれたその一言に、俺の肩は揺れた。

「……そっか、やっぱり」

 ガンゾルド達は、吸血鬼だった。この事実に、最後の最後で俺は察していた。
 あの赤い瞳と、弱点が太陽の光である事。
 しかしこの二点だけでは、他の魔物にも当てはまる。
 せめて吸血鬼である最も確実な要素である、吸血シーンを見れればその正体を知れたのに。

「くそっ……!」

 俺は右手で布団を思い切りぶっ叩いた。
 すると、背後で何かが倒れ……。

「冷てっ!?」

 鉄製の何かが倒れる音と共に、俺の背中に水が跳ねた。
 この感じは、恐らく花瓶でも倒してしまったのだろう。

「ちょ、何してるのよ」

 ユズリは焦りながらタオルを取り出し、俺とベッドを拭いてくれた。

「ご、ごめんなさい……。でもさ、吸血鬼だって事前に知れたら、もっと良い作戦が練れたんじゃないかと思うと、悔しくて……吸血鬼ならさ、弱点も色々あるし」
「え、そう?」

 彼女は窓を開け、タオルを外に出しつつ絞りながら不思議そうな顔を向ける。

「え、あるでしょ色々と。十字架とかニンニクとか……後は銀製の武器とか」

 とりあえずパッと出てきた吸血鬼の天敵を上げるも、やはりユズリの顔は晴れない。

「ええ、そんな弱点聞いた事ないけど……」
「そ、そうなの?」

 どうやらこの世界の吸血鬼は、俺の居た世界の者より幾分か逞しいようだ。

「……あ、そういえば、フウマは? また離れる前に、話くらいしたいんだけど」

 吸血鬼の話題から、第一形態のガンゾルドに強烈なダメージを与えた勇者を思い出したので問う。
 しかし、彼女はその手を止め、何やら良くない雰囲気を醸し出すのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...