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三章ー鋼鉄の王国ー
65 二筋の光
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「私の名はヴァーナ・ゲル・シュテルベル。現魔王を務めている」
半ば予想出来ていたが、改めて聴かされたその発言に、俺は絶句した。
「では、次の満月の夜だぞ。努努忘れぬように……な」
魔王は凛とした声で釘を刺すと、地面を鋭く蹴ると共に浮遊する。
ユズリとトオヤもバリアごと宙に浮かせ、そのままどこかへ飛び去ってしまった。
「ぐっ……くそ……」
既に身体にかかっていた重圧は消えているが、俺は立ち上がれずにいた。
折られたのだ……心を。
「くそぉおお…………っ」
虚しく、叫びにもならない悲鳴は、誰に聞かれることも無く霧散した。
畝る暗闇から抜け出すように、目が覚めた。
そこにあるのは、知らない天井。鉄骨のようなもので埋められており、簡易的な電球風の照明が吊るされていた。
どうやら、あれから気絶してしまい、誰かが運んでくれたらしい。
そう考えつつ喉と全身の僅かな痛みを我慢して、あちこちを見回す。
部屋は七畳程の広さで、奥に鉄製のドアが見える。因みに、俺は端っこのベッドに横たわっているようだ。簡素な鉄製の丸テーブルとちょっとした鉄タンスが近くに置かれている以外、他に家具らしい家具は見当たらない。
そういえば、以前大怪我を負って目覚めた時には、ユズリが居てくれた。
だが、今は独りだ。
……寂しい。
突然孤独に襲われた俺は、胸に絞扼感を覚えた。
「ユズリ……」
思わず口にしてしまい、瞳が潤んできた所で……。
「無事かタクマぁあああああーっ!!」
何者かが訪ねてきた。
「う、うるさいな……って、ショーゴ?」
扉を弾いて目の前に現れたのは、怪我をしていたはずのショーゴだ。
「あ、よかった。無事だったんだなー」
そう言われ自身の身体を見てみると、包帯が何ヶ所かに巻かれてはいるものの大怪我しているようには見えない。
「てか、動いて大丈夫なのかよ。まだ安静にしてなきゃじゃ……」
「まーそうなんだけど、様子見に行ってくれた仲間がタクマが倒れてる所を発見して……それからここまで運んで治療もしてくれたらしーんだ」
そうだったのか。と感謝を得つつ、ショーゴの話を聞き続ける。
「俺はそれを後から聞いたから、ここにくるのにちょっと時間かかっちまったけどなー……。でも、ユズリは見つからなかったらしくて……タクマ、何か知らないか?」
何気無い質問に、俺は拳に力を込めた。
「……連れて、行かれた」
「え……?」
深く息を吸って、少し感情を整えてから、詳しく話す。
「連れて行かれたんだ。……魔王に、魔王城まで。…………俺が、弱いから……くそ…………っ」
拳に力が入っていくと共に、身体が硬直し頭が下がってゆく。
雫が垂れそうな瞳は強く瞑る事で誤魔化し、摩耗した心をどうにか取り繕う。
「な、ウソだろー……?」
一瞬だけ本気で拳を握ってから、脱力しショーゴに向き直った。
「……本当だよ。だから、助けに行く」
その宣言に、彼は呆気に取られてから顔を近づける。
「無茶だ! 俺たち、まだこの世界に来てそんなに年月経ってないだろー……? そんな状態で行っても……」
「分かってるよ!!」
数秒の沈黙の後、俺は声を荒らげてしまった事を謝った。
「……でも、行かなきゃ。助けたいんだよ……ユズリを、絶対に」
彼女との思い出をリフレインさせつつ、俺はまたも拳を握る。
ショーゴは気まずそうに目を泳がせ、暫く無の時間が過ぎた後。
「あ、あのー……」
今度は自信なさげな聞き覚えのある声が、ドア付近から耳に入った。
二人で目を向けると、そこには黒いフード付きコートを着た少年が頬をかいている。
「……フウマ」
「ご、ごめん……お取り込み中に。それと……」
彼は数歩近づいてから、俺たちに頭を下げた。
「ショーゴの敵討ち、僕がやり遂げたかったんだけど……全部タクマに背負わせてしまって……ごめん」
やはり、フウマは復讐を考えていたようだ。
だからといって彼のせいで傷ついた事はないので、謝られる筋合いはないのだが。
「……それはいいよ。それよりショーゴ。次の満月っていつだか分かる?」
急な問いに彼が悩んでいると、横に立つ少年が助け舟を出した。
「確か一昨日が満月だったから……次は丁度二十日後かな。でも、どうして……?」
「言われているんだ。その日に来いって、魔王本人にな」
それを聞いた二人は、お互いに顔を合わせ、僅かに頷く。
どうしたのだろうと思った瞬間、二人は力強く言い放った。
「俺達も行くぞー!」
「……話は立ち聞きしちゃったから分かるよ。……一緒にユズリさんを助けよう!」
思わぬ言葉に、俺の心は少し温んだ。
半ば予想出来ていたが、改めて聴かされたその発言に、俺は絶句した。
「では、次の満月の夜だぞ。努努忘れぬように……な」
魔王は凛とした声で釘を刺すと、地面を鋭く蹴ると共に浮遊する。
ユズリとトオヤもバリアごと宙に浮かせ、そのままどこかへ飛び去ってしまった。
「ぐっ……くそ……」
既に身体にかかっていた重圧は消えているが、俺は立ち上がれずにいた。
折られたのだ……心を。
「くそぉおお…………っ」
虚しく、叫びにもならない悲鳴は、誰に聞かれることも無く霧散した。
畝る暗闇から抜け出すように、目が覚めた。
そこにあるのは、知らない天井。鉄骨のようなもので埋められており、簡易的な電球風の照明が吊るされていた。
どうやら、あれから気絶してしまい、誰かが運んでくれたらしい。
そう考えつつ喉と全身の僅かな痛みを我慢して、あちこちを見回す。
部屋は七畳程の広さで、奥に鉄製のドアが見える。因みに、俺は端っこのベッドに横たわっているようだ。簡素な鉄製の丸テーブルとちょっとした鉄タンスが近くに置かれている以外、他に家具らしい家具は見当たらない。
そういえば、以前大怪我を負って目覚めた時には、ユズリが居てくれた。
だが、今は独りだ。
……寂しい。
突然孤独に襲われた俺は、胸に絞扼感を覚えた。
「ユズリ……」
思わず口にしてしまい、瞳が潤んできた所で……。
「無事かタクマぁあああああーっ!!」
何者かが訪ねてきた。
「う、うるさいな……って、ショーゴ?」
扉を弾いて目の前に現れたのは、怪我をしていたはずのショーゴだ。
「あ、よかった。無事だったんだなー」
そう言われ自身の身体を見てみると、包帯が何ヶ所かに巻かれてはいるものの大怪我しているようには見えない。
「てか、動いて大丈夫なのかよ。まだ安静にしてなきゃじゃ……」
「まーそうなんだけど、様子見に行ってくれた仲間がタクマが倒れてる所を発見して……それからここまで運んで治療もしてくれたらしーんだ」
そうだったのか。と感謝を得つつ、ショーゴの話を聞き続ける。
「俺はそれを後から聞いたから、ここにくるのにちょっと時間かかっちまったけどなー……。でも、ユズリは見つからなかったらしくて……タクマ、何か知らないか?」
何気無い質問に、俺は拳に力を込めた。
「……連れて、行かれた」
「え……?」
深く息を吸って、少し感情を整えてから、詳しく話す。
「連れて行かれたんだ。……魔王に、魔王城まで。…………俺が、弱いから……くそ…………っ」
拳に力が入っていくと共に、身体が硬直し頭が下がってゆく。
雫が垂れそうな瞳は強く瞑る事で誤魔化し、摩耗した心をどうにか取り繕う。
「な、ウソだろー……?」
一瞬だけ本気で拳を握ってから、脱力しショーゴに向き直った。
「……本当だよ。だから、助けに行く」
その宣言に、彼は呆気に取られてから顔を近づける。
「無茶だ! 俺たち、まだこの世界に来てそんなに年月経ってないだろー……? そんな状態で行っても……」
「分かってるよ!!」
数秒の沈黙の後、俺は声を荒らげてしまった事を謝った。
「……でも、行かなきゃ。助けたいんだよ……ユズリを、絶対に」
彼女との思い出をリフレインさせつつ、俺はまたも拳を握る。
ショーゴは気まずそうに目を泳がせ、暫く無の時間が過ぎた後。
「あ、あのー……」
今度は自信なさげな聞き覚えのある声が、ドア付近から耳に入った。
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「……フウマ」
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だからといって彼のせいで傷ついた事はないので、謝られる筋合いはないのだが。
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「言われているんだ。その日に来いって、魔王本人にな」
それを聞いた二人は、お互いに顔を合わせ、僅かに頷く。
どうしたのだろうと思った瞬間、二人は力強く言い放った。
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「……話は立ち聞きしちゃったから分かるよ。……一緒にユズリさんを助けよう!」
思わぬ言葉に、俺の心は少し温んだ。
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