レベル“0”ですが、最強です。

勇崎シュー

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三章ー鋼鉄の王国ー

66 夢の中

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 俺が目覚めたのが深夜。そこからショーゴとフウマが見舞いに来てくれて、様々な事情を伝えると、二人がユズリ奪還に協力してくれる事になった。
 その後、詳しい話の続きは翌朝にしようと意見が出たため一旦解散する。

 再び一人きりになった俺は、ゆっくりと瞼を閉じて夢の世界へ飛び込んだ。



「…………眠れねぇ……」

 いつもならば、激しく身体を動かすことが多いため疲労が眠気を後押ししてくれるが、今はゆっくり休める心情では無かった。
 ユズリの事が気がかり過ぎる。
 しかし、その彼女を救う為にも、今は休養を取らねばならない。
 唸りつつも無理やり寝ようとした結果、ふと思い出す。

「……あ、《剣招来ブレイドコール》」

 俺は寝たまま黒剣を取り出し、語りかけた。

「もう一人の僕、おーい。もう一人の僕!」

 夜なので静かに呼びかけるも、中々返答が来ない。
 うぬぬ、と唸っていると、不意に宝飾の赤石が輝き出した。


 ーーどうした?


 頭の中で問いかけて来てくれたので、同じく脳内で返答する。

 ……あの、聞きたいことが色々あるんです。

 ーーほう。

 ……えっと、例えば、どうやったら強くなれるのか、とか……。

 ーーやはりか。確かに、それを望むだろうな。魔王城で自らの願いを全うする為には、今以上の力が必要なのだから。

 ……はい。あの、それで……。

 ーーいいだろう。教えてやる。我が愛剣、ディメンテイターの極意を。


 ディメンテイター……それがこの黒剣の名前。
 何故かしっくり来る名称に苦笑しつつ、俺は改めて聞いた。

 ……お願いします。俺に、この剣の力を教えて下さい!

 ーーあぁ。では、夢の世界で待っている。なるべく早く来い。


 そこで、もう一人の僕との疎通は途絶えた。
 いや、眠れないから困ってたんですけど。
 しかしそんな苦言は当然発せられることも無く、俺は祈るように床についた。

 強ばる身体をできる限り弛緩させ、意識を遠くに追いやる。
 焦るほど眠気は遠くなるので、なるべく頭は空に。
 そうこう眠るための策をねっている間に、どうにか睡眠に入る事が出来た。
 俺がそれを認識出来たのは、“夢の中で目覚めた”からだ。

「……ここは?」

 辺りは暗く、遠くに行くほど闇は濃い。足元も例外ではなく、霧のようなものが地を這っていた。
 しかし視覚に困ることは無く、不思議な感覚だが空間を認識するだけなら容易い。
 そんな中、とある人物が霧の中から現れた。

「……ここは、お前の夢の中だ」

 この声は……聞き覚えがある。いや、まず間違いなくそうだろう。
 目の前に現れた、黒髪で琥珀のような澄んだ瞳をした長身の男。……否、僅かに耳が尖っていたり、八重歯が発達したりしているので人間ではない。
 一瞬ガンゾルドと同じ吸血鬼かとも思ったが、奴らは瞳の色が鮮血らしいので違う。
 だが、これだけは言える。

 この男、もう一人の僕はーー魔王軍側だ。

「少し遅い就寝だったな。それも無理は無いか」

 相手は何の動揺も無く話し続ける。

「あの、貴方は……?」

 再度男を見て、その格好を探る。
 黒い金属製の肩当やら胸当てやらが付いた赤黒いロングコート、スタッズ付きのレギンス。両手はこれまた黒い金属造りのガントレットが嵌められていた。
 やはり、この人は戦闘員だったと考えられる。
 しかし、そんな人物が何故、今俺の目の前にいるのだろう。

「あぁ。そういえば名乗ってすらいなかったな。我の名はヴルヘリット、しがない剣士さ」

 名前は以前魔王に呼ばれていた為知っては居たが、確かに面と向かって会話するのは初めてだ。

「あ、俺は……」
「お前の事はよく知ってるよ、タクマ。我々は、常に同じ所に居た」
「……は、はぁ……?」

 あまり要領の得ない発言だったが、それより大事な話がある。
 とにかく、俺についてはよく知っているようだし、諸々の説明を省いて直球で頼もう。

「あの、早く黒い剣……ディメンテイターでしたっけ。貴方みたいに上手く扱えるようご指導お願いします!」

 ヴルヘリットさん相手に頭を下げると、彼は数秒後に答えてくれた。

「あぁ、勿論。その為にここに来たんだからな」
「……っ! ありがとうございます!」

 顔を上げてお礼を言うと、彼は苦笑の後に右手を上げる。
 そして、意外な言葉を放った。

「《剣招来ブレイドコール》」

 彼の詠唱に、俺は息が詰まる。
 使えるのか、ここで……?
 そんな疑問を打ち消すように、魔法陣が現れ黒剣、ディメンテイターが召喚された。
 しかしよく見ると、ヴルヘリットさんが出現させた黒剣は随分色素が薄く見えた。儚げな印象を受けるが、色以外の装飾は全て同じに見える。

「どうした。お前も召喚しろ」
「えっ、は、はい。《剣招来ブレイドコール》……!」

 いつものように剣を召喚すると、今度は確りと黒く輝くお馴染みのディメンテイターが現れた。
 安心するも束の間、眼前のヴルヘリットさんは、唐突に剣を構える。

「来い。先ずはお前の力を見極めてやる」
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