レベル“0”ですが、最強です。

勇崎シュー

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三章ー鋼鉄の王国ー

67 理屈派と理論派は時に相容れない。

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 ここは、夢の中……らしい。
 そんな場所で、俺は遂に、もう一人の僕であるヴルヘリットさんと対峙した。
 お互いに黒剣を召喚したところで、眼前のヴルヘリットさんが唐突に剣を構える。

「来い。先ずはお前の力を見極めてやる」

 瞬間、彼から殺気のようなものが溢れ、それが肌を這って来るような感覚を得た。
 恐らく、今まで相当な数の死線を潜り抜けて来たのだろう。
 洗練されたオーラに当てられ直ぐには返答出来なかったが、ここで臆しては何も始まらない。
 僅かに身体を震わせつつも、首肯する。

「……分かりました」

 俺は唾を呑み込んだ後に、淡々とした動作で剣を持ち上げた。

 ……静かだ。
 夢の中だからか、耳が痛くなる程の静寂。
 逆に集中しづらい中で、俺はヴルヘリットさんに注視した。
 隙があれば漬け込みたいところだが、そんなものは全く見当たらない。
 彼は軽く構えてはいるが、それ自体に脅威は感じなかった。しかし、どう斬り込んでも圧倒出来る未来が想像出来ないのだ。

 長い間硬直することになっても、ヴルヘリットさんは俺が仕掛けるのを翹望してくれている。
 いい加減動かねば。だが下手な手は打ちたくないし、生きるか死ぬかの場面でそんなことをすれば状況は悪化するだろう。
 ならば、今は隙が出るまで距離を開けつつ仕掛けていくしかない。
 そう考えた俺は、構え直して彼を見据えた。

「……行きます」

 瞬間、手を閃かせて地面伝いに斬撃を飛ばす。
 それとほぼ同時に床を蹴り、後ろへ跳躍する。視野を広くすることで、相手が何をして来ても対応し易いようにだ。
 しかし、次の瞬間に俺の考えが浅はかなものだと思い知らされる。

「……なるほど」

 彼は極わずかな動きで斬撃を避け、一呼吸もつかぬ間に十メートルはある距離を詰めてきた。
 鮮やかな立ち振る舞いに呼吸を忘れていると、既に首筋に刃が触れていると気づく。

「弱いな。もう少し楽しめると思っていたんだが」

 改めて突きつけられた現実に、俺は歯ぎしりした。
 ヴルヘリットさんは表情を変えず、剣先を離してくれる。

「このまま魔王城へ行ったところで、雑魚兵にも勝てないだろう。多少鍛えた程度でもそれは同じだ」

 彼の正論、いや、恐らく事実であろう発言に、俺の目線は落ちていった。

「前にも言ったが、一瞬で強くなれる方法は無い。だが……」

 少し間が置かれ、不安になったその時、ヴルヘリットさんは言い放つ。

「今回は多少時間がある。この短期間で知り得る限りの技術を継承してやろう。上手く力を受け継げられたなら……お前の願いは叶えられる」

 叶えられる。
 肯定的な言葉を耳にし、俺は頭を上げた。

「では、早速教えてやろう。ディメンテイターの力を」
「……はいっ!」

 返事と共に頭を切り替え、黒剣ディメンテイターについて学ぶ。

 ヴルヘリットさんによると、次元の裂け目は二種類あるらしい。
 まず俺がよく使っていた、一度斬るだけで生まれる直線の裂け目。これは使用者を除いて周辺の物を吸う性質があるようだ。
 そして新しく学んだ二つ目の力。それが三角になるよう斬ることで生まれるトライアングルの裂け目だ。トオヤ戦の時に使っていたが、どうやらこれは逆に使用者のみを吸う性質らしい。

 さらに、意識を集中させる事で別の箇所にも同じサイズの裂け目が出現でき、これにより戦略の幅が広がるようだ。以前見たことがあるのでイメージだけなら簡単に出来る。
 と、言うわけで先ずは見様見真似でやってみることとなったのだが、これが中々難しい。

 三角に斬るところまではいいのだが、この裂け目がデカすぎると勝手に吸収されそうになるし、逆に小さければ通りにくくなり機動力が落ちてしまう。
 それだけでなく、裂け目をあちこちの空間にコピペするのも容易く無かった。
 ヴルヘリットさんのように片手で地面を突き刺すのは難しいので両手で試しているのだが、それでも上手くいかない。
 ぼんやりと何かが浮き出そうな感じは出るのだが、今はハッキリと現出させるに至れなかった。

 何度も試しても上手くいく気配が無い中、唐突にあることを告げられた。

「どうやら、今日はここまでだな。お前の目覚めが近い」

 ここまで、と聞いた瞬間。全身が脱力されたため地面に倒れ込んだ。

「あ、ありがとうございました……」
「あぁ。それと、二つ言わなければいけないことがある」
「は、はぁ……?」

 訝しげな眼差しで彼を見ると、一つ頷いてから話し始める。

「技術は教えてやれる。だが、戦闘に於いての経験は自ら培わなければならない。つまり……現実世界に戻っても、鍛錬は決して怠るなということだ」
「りょ、了解です」

 そしてもうひとつ、と続けて。

「現実では、決して、今日教えた技を試すなよ」
「……え?」

 どうして、という疑問をぶつける機会は無く、俺の意識はゆっくりとフェードアウトしていった。


 そして翌朝、俺の元にとある人物が訪問して来るのだった。
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