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勇崎シュー

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三章ー鋼鉄の王国ー

70 鮮烈なる刺突

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 ここは、鋼鉄の王国モルジア内にある、ディッセル騎士団の屯所。
 アルティさんの権限で特別にここの修練場を使わせて貰える事になったので、厚意に甘えさせてもらったのだ。
 俺だけでなく、見届け人としてショーゴも入所を許可してもらい、勿論ユージンさんも居る。

 今から、彼との決闘が始まるのだ。

「おい、ユージン。タクマ!」

 落ち着いた声に振り向くと、そこには二刀の木刀を持ったアルティさんが居た。
 ユージンさんもそれに気づいた時、その木刀をそれぞれの手に持ち、俺達に投げつけてくる。
 空中で高速に回る剣、俺はそれを難なくキャッチした。

「すご! よく取れたなータクマ」
「いや、これは前に手に入れた片手剣スキルのただの副作用みたいなモンだよ」

 ショーゴに全然凄くないという旨を伝えるも、彼は目を輝かせ続ける。
 本当に大したこと無いんだけどな。俺の自力じゃないし、と視線をユージンさんに移すと、やはり彼も苦もなく手にしていた。

「じゃ、早速始めるっスよ」

 彼は俺に木剣の切っ先を向けつつ宣誓する。
 その眼差しを受けた後、アルティさんへ目を向けた。

「始める前に、幾つか確認いいですか? この試合って、スキルとか魔法とかの使用は有りなのか、とか」

 純朴なる質問に対し、アルティさんは眉ひとつ動かさずに答えてくれる。

「魔法は施設を大規模に破壊する恐れがあるので禁止だ。が、スキルは使用しても良いものとする」
「分かりました。ありがとうございます」

 俺は回答に対する礼をした後に、改めてユージンさんに向き直った。

「準備万端です。何時でもお願いします」
「オレもオーケーっスよ!」

 俺達の顔を見た後に、深く頷くアルティさん。彼は双方の間に立ち、右手を前に突き出す。

「それでは、これより騎士ユージン、勇者タクマによる模擬試合を開始する」

 ユージンさんとの距離は三メートル程。試合開始の合図が鳴ったら、即座に詰められるだろう。
 このような試合形式は初めてなので、様々な憶測に不安を煽られる。
 いや、必要以上に深く考えすぎるな。今はとにかく、最初の一本。これを防ぐことだけに神経を注ぐのだ。

「双方用意……始めィッ!!」

 豪胆な声が会場に響き渡ったところで、ユージンさんは流石の反射速度で向かってくる。

「ふィイイイイっ!」

 独特な気合いの入れ方で突撃して来るのに対し、俺は剣を横にしつつ後方へ跳んだ。
 ユージンさんは迷いなく、剣を肩に乗せ身体を捻らせる。
 これは袈裟斬りの構えだろう。そう読んだ俺は予測したコース上に剣の腹を掲げた。

「ィーはァアアーっ!」

 相変わらず独特な叫びだが、それに気を取られぬよう気をしっかり持ちつつ、斬撃を迎える。
 しかし、剣がぶつかるその瞬間、不思議な事が起きた。

「……っ!?」

 思わず呼吸が止まる。だが無理もない。
 今、目の前で確かに。

 斬撃が剣をすり抜けたのだ。

 いや、違う落ち着け。
 自らを心中で叱咤し、相手をよく見る。
 ユージンの剣は、丹田辺りに置かれ腕は引き絞られていた。
 どうやら斬ろうとしたのはフェイクで、剣が衝突しそうになった瞬間手前に引いたらしい。

 これはまずい。
 過去の記憶や身体が覚えている戦いの恐怖が、一気に増幅される。
 そして、その察しより早く、その攻撃は穿たれた。

「ふィアアアァアーっ!」

 一秒にも満たない時間で、右脇腹を突かれる。

「ふぐぼっ……!」

 これは、前にレアルの領主邸で立ち合った老執事を思い出す。
 彼のエストック捌きも凄まじかったが、ユージンさんは木剣とはいえ重い武器で同等の速度なのだ。
 つまり、この攻撃は速く……そして重い。

 膝を着きたくなる程の痛みだが、ここで折れる訳にはいかないので気合いで持ちこたえる。
 そして改めて敵に向かおうにした時、ユージンさんの木剣が強く輝き出している事に気づいた。
 まずい。普通の攻撃ですら目で追えないのに、スキルなんて使われればタダで済まない。
 大打撃を悟った俺は、無意識の内に剣を水平に掲げ、攻撃スキルの構えを取っていた。

「ちょえィイイイイーっ!」
「ぐっ……!」

 俺は突き攻撃に対し、次元一文字で応戦する。
 すると、スキルとスキルがぶつかり合い、衝撃が辺りの空気を鋭く切り裂いた。
 使用者である俺達も吹き飛ばされ、倒れはしないものの間に五メートル程の猶予が与えられる。

「へぇ。今のを凌ぐのはスゴいっすね」
「……こんなとこで負けれないんだ。俺は強くなって、絶対にユズリを取り返すんだから!」
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