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勇崎シュー

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四章ー血地の戦場ー

75 団円の夕食

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「よし、全員揃ったな。既に顔を合わせている者も居るが、改めて紹介しよう。新隊員のタクマだ」
「し、新入のタクマです。よろしくお願いします!」

 俺は横に立つ隊長以外の、目の前の四人に向けて挨拶をした。
 左手から紫の長髪でモデル体型の女性、お尻を治療してくれた少女、俺との試合で引き分けたユージンさん、そして右端には椅子に縄で縛り付けられた少年Xが、強制的に座らされている。

「それでは、今度は皆がタクマに自己紹介してくれ。改めてユージンから頼む」
「了解っス。改めましてディッセル騎士団第一遊撃隊副隊長、ユージン・モットーっス。言っとくっスけど、引き分けたとはいえオレの方が立場は上っスからね。そこんトコ弁えるよーにっス!」
「うん。分かった」
「ホントに分かってるっスか!?」

 俺達が盛り上がりそうな所で隊長に制止され、今度は紫メッシュの長髪女性が挨拶してくれる。
 今一度容姿を確認してみると、顔はキリッと整っており、両耳にピアスまで空けている。やや露出の高い格好で、しかし重要な所は確り鎧で固めているようだ。長剣を携えている事から、戦闘員でほぼ間違いないだろう。

「アズサ・ローランだ。私やこの子にちょっかいを出そうものなら、あんたをちょん切るからね」

 そう言って彼女は、隣の少女の頭にポンと手を乗せた。
 ちょん切るとは何処をなのか詳しく聞きたかったが、黙殺して頷いておく。

「わ、分かりました……善処します」

 俺が返答した後、今度は黒髪の少女が溜息混じりに名乗り始めた。

「……マクロ。ファミリーネームは無い。……まぁ、よろしく」
「うん。よろしくね」

 と、普通に返したつもりなのだが、何故かアズサさんに睨まれる。馴れ馴れし過ぎたのだろうか。

「では最後に、ほら、イクス。挨拶は大切だぞ」

 少年Xはアルティさんに促され、渋々といった感じで口をすぼませながら喋り始めた。

「イクス・バナード。お前を殺す者の名だ」
「無駄にかっこいいけど怖ぇよ!」

 俺がそうツッコむのと同時に、隣のユージンさんからの鉄拳制裁が少年X……元いイクス氏に降り注がれる。

「いでっ! 何すんだバカユージン!」
「失礼な態度とるなっス。バカイクス! てかどこからあんな言葉遣い覚えてくるっスか!」

 何とも微笑ましい光景だが、流石に隊長が黙っているわけもなくまたもや制された。

「お前ら、いい加減にしろ。特にイクス、いつも言っているが信用を失うような真似はするな。戦闘時、お前の命を守るのも私達仲間なんだぞ」
「……へーい」
「はい。だろう」
「……はい」
「よし」

 隊長には流石に頭が上がらないのか、不機嫌ながらも素直に応じる姿に意外性を感じる。

「これで全員紹介したな。私の隊は故あって傾奇者ばかりだが、仲良くしてやってくれ。皆も頼むぞ」

 アルティさんの頼みに全員が生返事するが、仕方ないだろう。昨日今日で突如入った新米兵をいきなり信用しろ、だなんて言われても困る筈だ。

「さて、そろそろ夕飯時だな。今日は炙りシチューだ」
「「いよっしゃあああああぁあぁあぃっ!」」
「炙り……シチュー……!!」
「悪くないわね」

 炙りシチューとは。という説明を聞く前に、隊員達が湧き上がる。
 と言うか、ユージンさんとイクスが割と仲睦まじい事に驚く。いや、恐らく彼らは反射的に同じ反応をし、それを俺が仲良しと勝手に認識しているだけなのだろうが。

「今日は新人歓迎会だからな。とはいえ急な用意でいつもの豪勢には劣るが」
「関係無いっスよ! 早く食べたいっス!」
「あんた少しは落ち着きなさいよ。仮にも副隊長でしょ?」
「ちょ、誰か、誰か縄を解けぇええっ!」

 突然の団円に目を丸くしていると、裾を二回程引かれる。

「……あなたも来れば」
「あ、うん」

 確かマクロという名の少女が先導し、リビング的な所に連れて来てもらった。
 真ん中にある丸テーブルの更に真ん中には、ぐつぐつと音を立てながら蓋の隙間から湯気を出す黒大鍋が、鍋敷き越しに置かれている。
 既に他の隊員達は机を囲んでおり、俺は何となく左に隊長、右にマクロちゃんがくる位置に座った。

 全員が着席した事を確認した隊長は、右手にミトンを装着し鍋蓋を開く。
 瞬間。香ばしい肉やチーズの香りが広がった。見てみると、どうやらシチュー風のスープ上にたっぷりのチーズが乗った料理らしい。
 しかし二つ謎なのが、炙ってある様子も、あれだけ目を輝かせていた隊員達が一切手をつける様子もない事だ。
 この疑問に答えるように、アルティさんはテーブルの下から、チャッカマンとピストルを合わせた様な形状の何かを取り出し、そこから火を出してチーズを炙った。
 直後、威力をましたチーズの香ばしさが鼻腔を刺激する。

「隊長! もう食っていいっスか!?」
「あぁ。それでは、食事を始めようか」
「やっほーい!」

 隊長の許可が出て即座に飛びついたのは、少年イクスだった。
 それに続くように他の団員もスプーンで自身の椀にスープをぶち込んで行く。
 まるで戦場のような光景に唖然としていると、不意にスープが並々入った椀が差し出された。

「ほら、遠慮せずに食べると良い」
「あ、ありがとうございます」

 彼が俺の椀を手にした所も、スープを掬った所も見れなかったが、恐らくそれ程緊張していたのだろう。
 俺は手を合わせていつも通り「いただきます」と口にした。

「お、律儀だな。食事の際に礼を言うなんて」
「へんらやうらな」
「イクス、喋るか食べるかどっちかにしな」

 アルティさんの問いに対し、俺は苦笑を浮かべる。

「俺の故郷では食べる前、調理してくれた人や食材、農家の人に対して感謝するのが仕来りというか……そういう文化があるんです」
「ほう。成程、殊勝だな。では私も……いただきます」

 アルティさんは見様見真似で同じことをしてくれた。

「へんっ、めんどくせぇ。おれはやんねぇぞ!」
「……たいちょがやるなら私も……いただきます」
「既に頂いてるけどいただきますっス!」
「いただきます」

 イクス以外もいただきますをしてくれた光景に、俺はこの隊への認識を変えた。
 確かに皆個性的だけど、根はいい人たちばかりなのかもな、と。

「む、むむぅ……い、いただきます……」

 他の全員がやったからだろう。いたたまれなくなったイクスも、手を合わせる。
 それを見た全員、勿論俺も、朗らかに、そして大きく笑った。

「な、なんだよ! 笑うなバカどもぉ!」

 俺は笑顔を浮かべつつ、炙りシチューを頬張る。

「うまっ!」

 肉とチーズの絶妙な味のマッチにより、思わず言葉がこぼれ落ちた。
 それを聞いた若男二人が、俺に向かって笑顔で叫ぶ。

「「だろ!?」」
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