レベル“0”ですが、最強です。

勇崎シュー

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四章ー血地の戦場ー

76 隊の証

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 夕食の後、片付けを終えた隊員達は、男女で別れてそれぞれの就寝用スペースに移動した。
 四人で雑魚寝するも、一人は子供だからスペースに不満はなく、寧ろもう二、三人は入れそうだ。
 イクスも隊長が居るからか特に暴れずに寝付き、他の人々も就寝していく。
 アルティさんはイクスが寝たのを確認した後、まだ仕事があると移動してしまった。
 更に広がった寝床に転がり、俺は静かに夢の世界へと向かう事にする。
 おやすみ。と、心中で唱えながら。







「よう」

 心做しかフランクな出迎えを受けた俺は、同様に軽く挨拶を交わした。

「どうも。今日もよろしくお願いします」

 光源の無い、しかし視界に困らないという不思議な空間。そう、ここは夢の世界だ。
 前回に引き続き、この場でヴルヘリットさんにディメンテイターの力を教わる。

「あぁ。と、言っても、暫くは“展開”が出来るようになる迄只管に反復するのみだが。まぁ、助言が必要になれば口を出すさ」
「了解です」

 俺はひとつ頷いてから、彼が“展開”と名付けた技の習得に奮戦した。
 しかし今日も、完全な習得には至らなかったのである……。






 微睡みの中、それは唐突に起きた。
 顔面に放たれる、風船が爆発したような破砕音。そして、降り注がれる冷水。
 季節は冬の終わりに差し掛かった頃。当然、まだ気温は低くーー。

「……冷った!!」

 俺は数秒のラグの後に跳ね起きた。

「ぬあっはっはー! どーだ。このおれさまが直々に起こしてやったぞー!」
「またお前か、イクスッ!!」

 犯人の顔を見るや否や、少年に向かって特攻していく。

「朝から騒々しいっスよ……。隊長が来たら怒られるし、イクスもさっさと謝るっス」
「んべーっだ!」

 既に起床していたユージンに対し舌を出すイクス。そのイクスを血相変えて追いかける俺。
 中々カオスな状況の中、一人の女性が現れた。

「騒がしいと思ったら……何やってんだ。アンタ達」

 アズサさんは、その目をより一層細めて三人を見回す。

「もしかして、飯っスか?」
「あぁ。冷めない内に食べな」

 彼女の肯定に、二人の男性陣が沸き立つ。
 未だ慣れない空気感に頬を掻きつつ、俺も共に移動した。

 今朝の料理は、薄焼きパンにベーコンっぽい肉料理、そしてレタス風な野菜と赤いグリーンピースみたいなのが乗ったサラダの三品だ。
 この世界の水準にしては豪華な方であろう食事に、恐らく税金から賄われているんだろうなぁ、と邪推してしまう。
 勿論、命懸けで戦うのだからこれくらいは当然だろう。しかし余所者である俺が、その恩恵を受けていいのだろうか。

「ん? 何してるっスか。さっさと食うっスよ。今日は出撃するんスから」
「え、マジですか?」
「大マジっス。君も出ると聞いてるっスよ」

 なるほど。そうなれば引け目を感じている場合では無い。間接的に人類を守る事をするのだし、食事を取らねばパワーは出ない。
 それに、俺はユズリを一刻も早く助けねばならないのだ。魔王城にはあと十七日で辿り着かなくてはいけないし、遠慮してその目的が閉ざされては死んでも死にきれなくなるだろう。

「じゃあ……いただきます」

 健康的な朝食に幸福感を得た後、食器を片付けてから更衣室的な場所で装備を整える。
 男児三人組で着替えていると、不意に誰かが入室して来た。
 どちらかの女性だったら、このエッチ! と叫んでいたかもしれないが、そこに居たのはアルティさんだ。

「隊長。会議は終わったんスか?」
「あぁ、先程終わった。それでタクマ。今日から騎士として戦うの時はこれを着けてくれ」

 隊長から差し出されたのは、薄いプレートアーマーだった。

「それは軽く防御面に優れているだけでなく、所属する隊を明確にする物でもあるんだ。サイズが合うか試しに着て見てくれ」

 受け取ってからよく見てみると、確かに胸の位置に紋章の様な何かが描かれている。
 恐らくこの隊のエンブレムか何かなのだろう。
 シャツの上から装着してみると、大き過ぎず小さ過ぎず、とどのつまりベストサイズだと判明した。

「バッチリです」
「そうか。予備の備品だったが問題無いようだな。では頼むぞタクマ。今日は初陣なのだからな」
「はい!」

 俺の返事を聞き届けたアルティさんは、先に外で待つことに。残った三人は気替えを続ける。
 プレートアーマーの上からハーシンの村で貰ったコートを羽織り、レザーグローブやブーツも装着した。
 胸に刻まれた隊の証を指でなぞりつつ、出立する。

「よし……やるぞ!」

 両の頬を叩き、心中に燃ゆる覚悟を固めた。
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