76 / 81
四章ー血地の戦場ー
76 隊の証
しおりを挟む
夕食の後、片付けを終えた隊員達は、男女で別れてそれぞれの就寝用スペースに移動した。
四人で雑魚寝するも、一人は子供だからスペースに不満はなく、寧ろもう二、三人は入れそうだ。
イクスも隊長が居るからか特に暴れずに寝付き、他の人々も就寝していく。
アルティさんはイクスが寝たのを確認した後、まだ仕事があると移動してしまった。
更に広がった寝床に転がり、俺は静かに夢の世界へと向かう事にする。
おやすみ。と、心中で唱えながら。
「よう」
心做しかフランクな出迎えを受けた俺は、同様に軽く挨拶を交わした。
「どうも。今日もよろしくお願いします」
光源の無い、しかし視界に困らないという不思議な空間。そう、ここは夢の世界だ。
前回に引き続き、この場でヴルヘリットさんにディメンテイターの力を教わる。
「あぁ。と、言っても、暫くは“展開”が出来るようになる迄只管に反復するのみだが。まぁ、助言が必要になれば口を出すさ」
「了解です」
俺はひとつ頷いてから、彼が“展開”と名付けた技の習得に奮戦した。
しかし今日も、完全な習得には至らなかったのである……。
微睡みの中、それは唐突に起きた。
顔面に放たれる、風船が爆発したような破砕音。そして、降り注がれる冷水。
季節は冬の終わりに差し掛かった頃。当然、まだ気温は低くーー。
「……冷った!!」
俺は数秒のラグの後に跳ね起きた。
「ぬあっはっはー! どーだ。このおれさまが直々に起こしてやったぞー!」
「またお前か、イクスッ!!」
犯人の顔を見るや否や、少年に向かって特攻していく。
「朝から騒々しいっスよ……。隊長が来たら怒られるし、イクスもさっさと謝るっス」
「んべーっだ!」
既に起床していたユージンに対し舌を出すイクス。そのイクスを血相変えて追いかける俺。
中々カオスな状況の中、一人の女性が現れた。
「騒がしいと思ったら……何やってんだ。アンタ達」
アズサさんは、その目をより一層細めて三人を見回す。
「もしかして、飯っスか?」
「あぁ。冷めない内に食べな」
彼女の肯定に、二人の男性陣が沸き立つ。
未だ慣れない空気感に頬を掻きつつ、俺も共に移動した。
今朝の料理は、薄焼きパンにベーコンっぽい肉料理、そしてレタス風な野菜と赤いグリーンピースみたいなのが乗ったサラダの三品だ。
この世界の水準にしては豪華な方であろう食事に、恐らく税金から賄われているんだろうなぁ、と邪推してしまう。
勿論、命懸けで戦うのだからこれくらいは当然だろう。しかし余所者である俺が、その恩恵を受けていいのだろうか。
「ん? 何してるっスか。さっさと食うっスよ。今日は出撃するんスから」
「え、マジですか?」
「大マジっス。君も出ると聞いてるっスよ」
なるほど。そうなれば引け目を感じている場合では無い。間接的に人類を守る事をするのだし、食事を取らねばパワーは出ない。
それに、俺はユズリを一刻も早く助けねばならないのだ。魔王城にはあと十七日で辿り着かなくてはいけないし、遠慮してその目的が閉ざされては死んでも死にきれなくなるだろう。
「じゃあ……いただきます」
健康的な朝食に幸福感を得た後、食器を片付けてから更衣室的な場所で装備を整える。
男児三人組で着替えていると、不意に誰かが入室して来た。
どちらかの女性だったら、このエッチ! と叫んでいたかもしれないが、そこに居たのはアルティさんだ。
「隊長。会議は終わったんスか?」
「あぁ、先程終わった。それでタクマ。今日から騎士として戦うの時はこれを着けてくれ」
隊長から差し出されたのは、薄いプレートアーマーだった。
「それは軽く防御面に優れているだけでなく、所属する隊を明確にする物でもあるんだ。サイズが合うか試しに着て見てくれ」
受け取ってからよく見てみると、確かに胸の位置に紋章の様な何かが描かれている。
恐らくこの隊のエンブレムか何かなのだろう。
シャツの上から装着してみると、大き過ぎず小さ過ぎず、とどのつまりベストサイズだと判明した。
「バッチリです」
「そうか。予備の備品だったが問題無いようだな。では頼むぞタクマ。今日は初陣なのだからな」
「はい!」
俺の返事を聞き届けたアルティさんは、先に外で待つことに。残った三人は気替えを続ける。
プレートアーマーの上からハーシンの村で貰ったコートを羽織り、レザーグローブやブーツも装着した。
胸に刻まれた隊の証を指でなぞりつつ、出立する。
「よし……やるぞ!」
両の頬を叩き、心中に燃ゆる覚悟を固めた。
四人で雑魚寝するも、一人は子供だからスペースに不満はなく、寧ろもう二、三人は入れそうだ。
イクスも隊長が居るからか特に暴れずに寝付き、他の人々も就寝していく。
アルティさんはイクスが寝たのを確認した後、まだ仕事があると移動してしまった。
更に広がった寝床に転がり、俺は静かに夢の世界へと向かう事にする。
おやすみ。と、心中で唱えながら。
「よう」
心做しかフランクな出迎えを受けた俺は、同様に軽く挨拶を交わした。
「どうも。今日もよろしくお願いします」
光源の無い、しかし視界に困らないという不思議な空間。そう、ここは夢の世界だ。
前回に引き続き、この場でヴルヘリットさんにディメンテイターの力を教わる。
「あぁ。と、言っても、暫くは“展開”が出来るようになる迄只管に反復するのみだが。まぁ、助言が必要になれば口を出すさ」
「了解です」
俺はひとつ頷いてから、彼が“展開”と名付けた技の習得に奮戦した。
しかし今日も、完全な習得には至らなかったのである……。
微睡みの中、それは唐突に起きた。
顔面に放たれる、風船が爆発したような破砕音。そして、降り注がれる冷水。
季節は冬の終わりに差し掛かった頃。当然、まだ気温は低くーー。
「……冷った!!」
俺は数秒のラグの後に跳ね起きた。
「ぬあっはっはー! どーだ。このおれさまが直々に起こしてやったぞー!」
「またお前か、イクスッ!!」
犯人の顔を見るや否や、少年に向かって特攻していく。
「朝から騒々しいっスよ……。隊長が来たら怒られるし、イクスもさっさと謝るっス」
「んべーっだ!」
既に起床していたユージンに対し舌を出すイクス。そのイクスを血相変えて追いかける俺。
中々カオスな状況の中、一人の女性が現れた。
「騒がしいと思ったら……何やってんだ。アンタ達」
アズサさんは、その目をより一層細めて三人を見回す。
「もしかして、飯っスか?」
「あぁ。冷めない内に食べな」
彼女の肯定に、二人の男性陣が沸き立つ。
未だ慣れない空気感に頬を掻きつつ、俺も共に移動した。
今朝の料理は、薄焼きパンにベーコンっぽい肉料理、そしてレタス風な野菜と赤いグリーンピースみたいなのが乗ったサラダの三品だ。
この世界の水準にしては豪華な方であろう食事に、恐らく税金から賄われているんだろうなぁ、と邪推してしまう。
勿論、命懸けで戦うのだからこれくらいは当然だろう。しかし余所者である俺が、その恩恵を受けていいのだろうか。
「ん? 何してるっスか。さっさと食うっスよ。今日は出撃するんスから」
「え、マジですか?」
「大マジっス。君も出ると聞いてるっスよ」
なるほど。そうなれば引け目を感じている場合では無い。間接的に人類を守る事をするのだし、食事を取らねばパワーは出ない。
それに、俺はユズリを一刻も早く助けねばならないのだ。魔王城にはあと十七日で辿り着かなくてはいけないし、遠慮してその目的が閉ざされては死んでも死にきれなくなるだろう。
「じゃあ……いただきます」
健康的な朝食に幸福感を得た後、食器を片付けてから更衣室的な場所で装備を整える。
男児三人組で着替えていると、不意に誰かが入室して来た。
どちらかの女性だったら、このエッチ! と叫んでいたかもしれないが、そこに居たのはアルティさんだ。
「隊長。会議は終わったんスか?」
「あぁ、先程終わった。それでタクマ。今日から騎士として戦うの時はこれを着けてくれ」
隊長から差し出されたのは、薄いプレートアーマーだった。
「それは軽く防御面に優れているだけでなく、所属する隊を明確にする物でもあるんだ。サイズが合うか試しに着て見てくれ」
受け取ってからよく見てみると、確かに胸の位置に紋章の様な何かが描かれている。
恐らくこの隊のエンブレムか何かなのだろう。
シャツの上から装着してみると、大き過ぎず小さ過ぎず、とどのつまりベストサイズだと判明した。
「バッチリです」
「そうか。予備の備品だったが問題無いようだな。では頼むぞタクマ。今日は初陣なのだからな」
「はい!」
俺の返事を聞き届けたアルティさんは、先に外で待つことに。残った三人は気替えを続ける。
プレートアーマーの上からハーシンの村で貰ったコートを羽織り、レザーグローブやブーツも装着した。
胸に刻まれた隊の証を指でなぞりつつ、出立する。
「よし……やるぞ!」
両の頬を叩き、心中に燃ゆる覚悟を固めた。
1
あなたにおすすめの小説
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。
【あらすじ】
異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。
それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。
家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。
十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。
だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。
最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。
この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。
そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。
そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。
旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。
☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。
☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる