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風の精霊フィーネ

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ケミルがさっきから、ずっと肩を震わせいる。
よっぽど楽しい事があったのだろう。
私は、もう神様と呼ぶのはやめようと思う。

私は、ザーナとの契約を済ませて、これから命令をすればいいのだが、ザーナの様子が少し変だ。
ザーナの髪がザワザワしている。


「あ、あのケミル?ザーナの様子が変ですが、契約をするとこれが普通なんでしよまうか?」

「魔力酔いだな。要はレーナの魔力を多く摂取し過ぎて、魔力過多の状態だ」


ザーナは、苦しげにしている。


「え、あのどうすれば治るんですか?自業自得とはいえ可愛そうです」


「あんなことされたのにレーナは優しいなぁ。ほっとけばその内ケロリと治る。全く、精霊王ともあろう者が情けない。欲張りすぎなんだよ」

そう言うと、ケミルは手のひらをザーナに乗せた。
すると、ザーナの顔色が良くなり、ザワザワしていた髪が静かになった。

ケミルもなんだかんだで優しいと思う。認めなさそうだけど。

「ケミル、ありがとう」

少年ザーナの姿でケミルにお礼を言って、私に向き直った。

「レナの魔力が美味しくて欲張ってしまいました。ごめんなさい」

少年ザーナは、ペコリと頭を下げた。

というか、さっきまでと存在感が違わないだろうか?
そう、声がさっきまでは脳に直接話しかけられていたような感じだったのが、耳から聞こえる。

「え?ザーナ、さっきと変わったよね?」

ザーナは、嬉しそうに笑った。

「レナの魔力のおかげで今ならどんな願いも叶えてあげられそうだよ。今、僕はレナと同じように人間界に存在しているんだ」

それってどういうこと?

「おい、まさか実体化ができるのか?」
「そうだよ」
少年ザーナは得意げだ。

「レナとイチャイチャしても、レナの独り言と思われて気味悪がられたりしないよ?」
ザーナが期待するかのようにキラキラとこちらを見上げた。

ザーナ少年は可愛いけれど、イチャイチャする予定はありませんよ?

「精霊王の中でも、ずば抜けたな」
ケミルは呆れたような、感心したような顔だ。

「それだけレナの魔力がすごいってことだからね?」

私の魔力そんなに?
今後それがどう影響するのか不安だけど、涼介に会う為には必要な魔力だと思っていこう!使いどころを間違えなければきっと大丈夫。



「これで、レナの魔力はここから出る前にこの魔力を封じ込めれば少なくなり、必要に応じて魔力を引き出すことも可能です。属性は、光と風を残して、他の属性は他の者には見えないよ」

ザーナは、仕事が早かった。
石は、透明で手のひらに収まるサイズのものが渡された。魔力を銀行に預けるようなものかな?
さすが妖精王は伊達ではない。


「ザーナありがとう。では他の精霊とも契約するので、私の側を離れていてください。何かあれば呼びます」


「えっ、ずっと側に置いてくれないの?」
ザーナは、プルプルと悲しみいっぱいの瞳で見上げてくる。

これ以上、ザーナをつけあがらせてはいけない気がします。本当に可愛いのに、ごめんなさい。

「ザーナに命令します。呼ぶまで近くに来てはいけません」

私の命令には絶対。
ザーナは、しぶしぶの顔ではあったが。

スッとザーナが消えた。


「ふふっ、さすがレーナ。なんだかんだで精霊王まで手懐けて言うことを聞かせてるんだから大したものだよ。他の精霊達も王ばかりだったら笑えるな」

ケミルは、ちっとも笑えない冗談を言う。

「やめてください。精霊王なんて、そんなすごくなくていいんです。はぁ、光の精霊との契約がこんなに大変だとは思いませんでしたよ」

「まぁ、今すぐにここで全ての精霊との契約はしなくてもいいが、さっきザーナが光と風属性は見えると言っていたから、風の精霊とは契約しておいた方がいいよ」

全ての属性とこんなやり取りをしていたら大変だと思っていたが、あと風の精霊とだけなら何とかなりそうですね。

「分かりました。では、風の精霊を呼び出します。風の精霊よ、私と契約し、私の密命を守ると約束できるのならば、魔力の一部をあなたに与えることを約束いたしましょう。契約をする者よ。ここに姿を見せて」


私の風の魔力に応じた精霊が姿を現わす。



ー私とどうか契約をしてください。


風の精霊は、私くらいの背丈の水色の髪、緑な瞳をした、とても可愛い女の子だった。


「契約しましょう」


つい、ザーナの時と違い速攻で返事してしまったが後悔はない。

「あなたのお名前は?」

ーフィーネと言います。名前持ちの精霊は、ある程度の魔力操作は出来ます。契約者様のことは何とお呼びすればいいでしょうか?

「レーナでもレナでも好きな呼び方でいいですよ。私はフィーネと呼びますね」


ーレーナ、レナ・・。レーナ、レナ・・。


とても悩んいるようだ。フィーネは真面目さんのようで、二択よりはこちらが決めてあげた方が良さそうですね。

「フィーネ、レーナと呼んでください」

そう言うと、フィーネはホッとした顔をした。
「はい。レーナとお呼びします。では契約をお願いします」

私は、今度こそ指先にナイフを当てて血を出し、フィーネにその血を与えて契約を結んだ。


そう、そう!これよ!これ!
やっと、普通の精霊との契約が出来たことにホッとする。


ケミルは、何か面白いのかニヤニヤしている。
「あ、あの何か面白いことありました?」
「んふふ。やっぱりレーナは面白いなぁって思ってさ。フィーネと会話できてるのはかなり高位な存在だからね?でも精霊王ではないみたいだね。まぁ、そこは面白くはなかったかな~」

「そうそう面白いことなんて起きるものじゃないんですよ。私の身体が持ちません」

フィーネはかなり高位な精霊さんなんだ。すごい!

「しょーがないなぁ。まぁ、今日はザーナとのやり取りが面白かったから、今回は特別サービスで良いものをプレゼントしてあげるよ」

「えっと、何をいただけるのでしょう?」

「レーナは、これから収納魔法に鑑定魔法を取得するにあたって、その魔法の構築の知識をプレゼントするよ。ザーナとフィーネに手伝ってもらえば、両方とも今日から使用可能だよ」


「本当に?ケミルありがとうございます。ふふふ、嬉しいです」


ケミルは、私のおでこに手を触れると、またもやポウとナニかが入り込み、収納魔法と鑑定魔法の術式の情報が入ってきた。
ケミル、何気にすごいです。

あれ?でもすでに転生する時の特典じゃなかったけ?なんか、納得いかないが仕方ない。

私は、早速ザーナを呼び出した。
ザーナは、精霊王の姿で現れた。

「こんなに早く呼び戻してくれるとは思いませんでしたが、とてと嬉しく思います。この者が新しい契約された風の者でしょうか?」

ザーナは、冷たい視線でフィーネをジロジロと上から下まで値踏みするように見た。

「そうです。ザーナに紹介しますね。この子が風の精霊フィーネです。フィーネ、こちらが先ほどあなたの前に契約した精霊王ザーナです」

フィーネは、ザーナの正体が精霊王と聞くとガタガタ震え出した。

「あ、えっ、その始めましてっっ!フィーネと言います。新入りです。すいません!」

その様子にザーナは、冷たい目線を和らげた。どうやら合格したらしい。

「ふふ。レナは中々良い子を選んだようですね。精霊は同じ契約者の仲間であるけれど属性が違うのでウマが合わない場合が多いのです。しかし、彼女とは上手くやっていけそうですね。よろしくフィーネ」

ザーナの言葉に私もホッとする。
精霊の世界も大変なんだなぁと思った。


「では、挨拶もすんだことですし、お願いがあります。これから私は大量の魔力を使って、収納魔法た鑑定魔法を作り出します。魔力を与えますので、手を握ってください」




ザーナと私、フィーネの3人で円陣を組んだ。

まずは、収納魔法。これは容量を大きくしたいし、料理とか冷めないように時間を止める魔法も組み込みたい。私が手で触れなくても収納できるように、少し離れていても認識したものとして、魔法陣を組み直す。




ここから、私の冒険譚が始まるー。


に違いない。



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