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エピソード スフィア・フロイア
第百十三話 閑話 騎士団入団④
しおりを挟む「…………どうしてこんなことになっているのよ」
スフィアは額を押さえて呆れてしまう。
「いやぁ、勢い余って発言したのが、まさかこんなことになるなんてねぇ?」
「誰のせいよだれのッ!?」
「えー?おっかしぃなぁ。ウチは何も間違ったこと言ってないんだけどなぁー?」
横に立っているアスタロッテは首を傾げており、どう見ても悪びれている様子がない。
「(……絶対確信犯でしょ)」
スフィアとアスタロッテが今立っている場所は、先程入団式を終えたばかりの鍛錬場。騎士団が日頃からその戦闘能力を高めるために日夜鍛錬に勤しんでいる場所、土が敷かれた外壁に囲まれた円形の場所であった。
「謝るなら今の内だぞッ!?」
遠く離れたところでは、スネイルが片手に木剣を持っていて大きく声をかけて来る。
更にスネイルの後ろには、スフィアとアスタロッテと同じ騎士服に身を包んだ男達も木剣を持って立っていた。
その数十六人。
それはつまり、スフィアとアスタロッテの二人を除いた今期第一中隊に配属されることになった新人騎士全員を今から相手にするということ。
「本当にいいのだね?」
ゆっくりと歩いてスフィアに近付いて来るのはアーサー。
状況的にはどう見てもおかしいその構図に対して、表情では特に心配をしている様子も見られなく、むしろ笑みを浮かべていた。
「当り前じゃないですか!」
「どうしてあなたが答えるのよ!」
「はははっ、その様子じゃ本当にあれだけの人数に勝つつもりでいるみたいだね」
アーサーが新人騎士達のいるところに顔を向ける。
この状況をアーサーは楽しんでいた。
「そうですね、こうなったらもう仕方ないので。まずは私の実力を知ってもらうことから始めようかと」
「さっすがスフィアちゃん!カッコいい!」
揉み手で笑顔のアスタロッテを見て睨みつけると、アスタロッテは口笛を吹いて顔を逸らす。
「君は一緒に戦わないのかね?別にあれだけいるのだから一緒に戦ってもいいのだよ?」
アーサーはアスタロッテに疑問符を浮かべながら問い掛けた。
「あっ、ウチは、じゃない、あたしは別にいいですよ」
笑顔で両手の手の平をアーサーに向けて振る。
「友達じゃないのかい?」
「もちろん友達ですよ?でもあたしの抱負を言ったじゃないですか。 あたしはスフィアちゃんが活躍する姿を一番近くで見ていたいだけですので」
「そうか……。だが、君も騎士団に所属するのだから戦闘技能は磨いてもらうよ?」
確認する様にアーサーから声を掛けられると、アスタロッテは瞬間キョトンとして、すぐさま笑顔になった。
「もちろんですよ。一番近くにいるのが弱っちかったらスフィアちゃんもお守りで大変ですしね」
そのまま顔付きが真剣な表情に変わる。
「それに、スフィアちゃんがもしピンチになれば一番近くにいるあたしが助けないと誰が助けるのですか? その時にそのピンチを乗り切れるだけの戦う力を持っていることを、あたしはあたしを信じてますので…………って、ちょっとカッコいいこと言った!?ねぇスフィアちゃん?」
グルリと顔を回しスフィアを見た。
「はいはい、カッコ良かったですよー。その時はどうぞよろしくお願いしますねー」
「まっかせて!」
グッと親指を立ててはにかむアスタロッテ。
「(ほんとこういうのを有言実行するからこの子は掴み切れないのよね)」
アスタロッテは聞いていた。
スフィアが在学中、特に三学年の後半、これまで以上の向上心を持って取り組んでいたことを。
守秘義務があったらしいのでその理由の詳細までを語られなかったまでも、大怪我を負って一命を取り留めたということまでは聞いている。
そして、ここで父親である伯爵の情報網を使ってしてもその事実、詳細の一切を得られなかった。
アスタロッテは知っていた。
幼い頃からの付き合いの長さ、スフィアの心境の変化がそれだけのことを事実たらしめる程に何かがあったのだと確信を持って断言できる。
後悔した。
どうしてその時に隣にいられなかったのだろうかということを。
後悔したことを自覚していても、どうしようもないことがあることは理解している。
故に、次にスフィアがそれだけの危機に瀕することがあれば、その時には自分が近くにいられるようにしよう。
可能な限り。
「頼りにしているわよ、アスティ」
「もちろん!」
満面の笑みをスフィアに向けるアスタロッテは、その心の中に一際大きな気持ちを抱いていた。
「どうやら心配はいらないみたいだね」
「えっ?何か言いましたか?」
「いや、ではそろそろ始めようか。あちらはもう準備万端みたいだからね」
アーサーが後ろに下がっていく。
小隊長たちは鍛錬場の外壁周りに設けられた観戦席にて既に腰掛けていて、他にも多くの人がいる。その数は百人を超える程に集まっていた。
アーサーの緊急招集命令を受けて第一中隊に所属する一般騎士達もその場に集められている。
騎士達は一体何事かと思いその場に集まっていたのだが、事の成り行きを伝え聞いた騎士達は好奇心からその場を観戦していた。
「おい、どっちが勝つと思う?」
「そりゃあいくらなんでも女の子二人であれだけの人数を倒せるわけないだろ?」
観戦している騎士達は知らない。
今から戦うのがスフィア一人、多対一で戦うということを。
「そうそう。そんなこと出来るのキリュウ様ぐらいだっての」
ここにはいない、中隊長唯一の女性であるキリュウ・ダゼルドの名前が挙がる。
そんな話をしている騎士達なのだが、この後衝撃的な出来事を目撃することになった。
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