147 / 724
廻り合い、交差
第百四十六話 天災への分類
しおりを挟む「ま、まさか……」
アマルガスもその黒い粒が徐々に大きくなるのを見て目を疑う。
すぐさま背後を振り返った。
「スフィア!」
怒鳴るような大声を発す。
「はっ! すぐに学生達の避難を始めます!」
「頼む! アレが相手だとここにいてはさすがに死人がでてしまうッ!」
スフィアはアマルガスと目が合うなり何を伝えようとしているのかその意を汲み取った。
「なんだ?」
「急に大声だすからびっくりしたなぁ」
わけもわからず困惑している学生達に向かって次にスフィアが大きく声を掛けのだが、学生達はアマルガス達が突然慌ただしくしている姿を不思議に思う。
「みなさん!すぐに街の中に戻ってください!最後尾は私達が務めますので!」
「えっ?」
スフィアはそのまま他の騎士に振り返った。
「ほらっ!」
騎士達は一体何事が起きたのかと目を合わせるのだが、間髪入れずにスフィアの怒声が響き渡る。
「ぼーっとしてないであなた達も早く誘導に入りなさい!」
「は、はっ!」
騎士達は言われるがまま学生達の避難誘導に入った。
「なんだなんだ?一体何が起きたってんだ?」
クルドはヨハン達が見ている方向。その先を、眉の辺りに手を添えて遠くを見たのだが、徐々にソレが何なのかを理解すると同時に膝をガクガクと震わせ怯えながら指を差した。
「あっ…あああ……。あ、あ、あれは……りゅ、竜、じゃないのか……?」
クルドの言葉を他の学生達が半信半疑でそれぞれ視線を移していくのだが、それが疑念から確信へ、そして恐怖に移るまではそれほど時間は掛からない。
次の瞬間、クルドの発言を断定する出来事が起きた。
遠くの空、黒い粒のその眼下。そこには大きな森が広がっている。
黒い粒がその森に対して何かを吐き出す。
しかしそれは目視でもわかるほどの炎の塊。それが空から森に降り注いだ途端に大きな火柱になった。
巨大な火柱が立ち上ると同時に瞬く間に森は大きく燃え広がる。
レイン達も避難する中に入っているのだが、突然の事態に困惑していた。
「おいおい、一体何がどうなってやがんだ?」
「あれって、もしかして飛竜?」
ようやくどうして避難することになったのか理解する。
しかし、モニカにも疑問が過る。
「でも……飛竜にしては大きくない? まだ遠目だからはっきりとはわからないけど……」
「……ええ。あれは……規格外ですわ…………」
思わずエレナの額に一筋の汗が流れた。
どう見ても通常の飛竜とは一線を画するその巨体。それがもたらす脅威がどれほどのものなのか、想像するだけで恐ろしくなる。
「(わたくしにできること……――)」
エレナは即座に思考を切り替えた。避難よりもすることがある、と。
ここは王都、王国で一番大きな街であり国の要。これだけの脅威が迫る中で王族として何らかの対応をしなければならないと考える。
そのまま視線を動かして周囲を見るのだが、一番近くにいる者達は混乱の極致に陥っていた。
「わあああああああッ!」
「竜だぁあああああああ!」
「落ち着いて、まだ十分に距離があるわ!」
叫び走り出す学生達を落ち着かせようとスフィアを始めとした騎士達が右往左往と動き出している。
「(学生達はスフィアが、騎士の方達が……――)」
そうして次に視線を向けるのはヨハン達。
「(あちらにはラウル様がいますし、アマルガス大隊長も。ヨハンさんもいますことですし……――)」
となるとこの場をすぐに駆け抜けて王家に報告に向かわなければならないのかと僅かに思考を向けるのだが――。
「(スフィア?)」
そこでスフィアと目が合った。
小さくウインクされ、微かに首をヨハン達の方向に向けられたことでその意図を汲み取る。
「レイン? モニカ?」
判断をしかねているレインとモニカに声を掛けた。
「なんだ?」
「どうしたの?」
「わたくし達はヨハンさんと一緒にいますわよ」
決意の眼差しを二人に向ける。
「えっ? いいの?」
「ええ。緊急事態です。仕方ありませんわ」
「まぁ……わかったわ」
レインとモニカも顔を見合わせて深く頷く。
そこでエレナ達は学生達の中を抜け出し、ヨハンの下に向かった。
「エレナ? どこにいくつもりなの?」
ふとマリンの視界に飛び込んで来たのは流れとは逆に向かって動き始めたエレナ達。
「どうしました?マリン様?」
「……カニエス。私達もいくわよ!」
「えっ?は、はい!……って、どこにでしょうか?」
エレナ達の後を追うようにしてマリンも走り出す。
「……エレナのあの様子。恐らくなにかあるわね」
それは幼い頃からエレナを見続け、一挙手一投足を注意深く見ていたマリンだからこそ断定できた。
「へ?えっ?エエッ!?」
カニエスはマリンの後ろ姿を追いかけるのだが、逃げ惑う学生達の流れに逆らうその進行方向を見て驚愕する。
どう見ても竜に近付くように走っていた。
「(いやいやいや。おいおい、いくらなんでも危険地帯に居続けるなんてできないぞ?)」
そのまま内心では焦りを覚える。
ポケットの魔石、魔力を増強させる魔石を握りしめた。しかし同時に考えるのは、例えこれがあったところで自分の魔力では何もできはしないということは理解出来る。
「はぁ。ここらが潮時ですかね」
散々弄ばれた相手だが、これ以上付き従っていても死んでしまっては元も子もない。逃げるタイミングだけは逃さないよう、算段を付け始めた。
22
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる