S級冒険者の子どもが進む道

干支猫

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学年末試験 二学年編

第四百五十九話 転生者

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「どうした? おら、かかってこいよ」
「…………」

これ以上何を言っても無駄。

(だったら……――)

覚悟を決めるしかない。ここまでの動きで大体は掴めた。これ以上放置しておくとどう変化するか分からない。

「――……いくよ」

剣に二種類の魔力、闘気と光属性の魔力を流し込む。

「光閃撃」

ゴンザが驚きに目を見開く中、素早く斬撃を振るう。

「なっ!?」

眩いばかりの光を放ちながらゴンザ目掛けて飛来する一筋の閃光。

「ぐっ、おおおおおっ――」

黒い剣身で受け止めるのだが、圧倒的なまでの威力を誇るヨハンの最大の技。それをゴンザは抑えきれない。

「がはっ!」

パキンと音を響かせながらそのまま勢いよく後方に弾き飛ばされた。
ゴンザの大剣は二つに折られ、クルクルと宙を舞うと先端部分は地面に刺さる。

「終わりだよ。ゴンザ」
「っつぅ!」

倒れ伏しながらも未だに戦意、否、殺意を宿した瞳でヨハンを睨みつけていた。
以前と同様、二種類の魔力を同時に用いた剣閃を使用したことによる体内への圧倒的な負荷を抱えるのだが、これでこの戦いの決着を見据えた。剣が折られた以上魔法を不得意とするゴンザからすれば明らかに劣勢になっている。

「ま、まだそんな技を隠し持ってやがったのか?」
「とっておきだけどね」

ゆっくりとゴンザに近づき、真っ直ぐに剣先を向ける。

「…………」
「ゴンザ。上手く言えないけど、それ以上その力を使うと良くないと思うんだ」

無言で拳を握り締めながら伏し目がちにしているゴンザに対して、ヨハンも僅かに膝を折って屈む。
明らかにゴンザの力は向上している。しかしそれは魔族――ガルアーニ・マゼンダが接触したことによって得た力だろうと。それが意味することは紛れもない負の力。その先にあるのは――――。

「!?」

直後ヨハンの胸、破れた衣服から覗かせている精霊石が大きく輝きを放った。直感的にその輝きが危険を告げているのだと察知する。ゴンザの身体を内部から湧き出るようにして黒い瘴気が包み込んでいった。

「ゴンザっ!」

慌てて後方に飛び退く中、ゴンザはゆっくりと立ち上がる。

「よぉくわかったぜ。このままだとどうあってもてめぇには勝てないってことがよぉ」

目線を合わせようとしない中、紡がれていく言葉と共に黒い瘴気はゴンザの手の中に収束していった。
顔を上げ、はっきりと目を合わせた次の瞬間、物凄い殺気を得る。

「っつうっ!」

即座に剣を顔の左側、縦に構えると鈍い音を生み出す。
黒い瘴気がゴンザの手の平からまるで鋭い刃の様に伸びていた。先端がヨハンの頬に僅かに届いており小さく傷を作っている。

「だったら……――」

ビュルッと縮んでいくなり、その様はまるで大きな鎌の様。

「――……どんな手を使ってだって、テメェを殺してやるぜ」

ゴンザの身体以上の大きさの鎌を悠然と持っているその立ち姿はまるで死神の様に映る。

「どうやら無事に転生できたようだな」
「お前はっ!」

ぬッとゴンザの後ろに姿を見せる白髪交じりの老爺。魔族ガルアーニ・マゼンダ。

「感謝しようぞ、小僧。こやつの感情を最大にまで引き出してくれたのだからな」
「どうしてここに!?」

二回戦、魔導闘技場によって生み出された森の中で対峙したあの時に姿を消して逃げたのではなかったのかと。

「なに。このままではせっかく生まれた個体をすぐさま失ってしまうからのぉ。少しばかり助力に来たというわけだ」
「…………ゴンザ」

ジッと見るゴンザの様子は明らかに先程までとは異なっている。はっきりと目が合う様子から殺意は得られるのだがどこか落ち着き払っていた。

「あ? なに言ってんだてめぇ?」
「黙って聞いておれ。詳しい話はまた後でしてやろう。それより、儂は今喜びに満ち溢れておる。何より大きな収穫が二つあったのでな」
「収穫、だと?」
「うむ」

ヨハンの言葉を受けるガルアー二・マゼンダはゴンザとヨハンを交互に見る。

「先ずはこやつ。まさか上級魔族に転生するとは思いもよらなかった。それもこれも全部小僧のおかげのようだな」
「上級魔族?」
「こやつや私のように人型を保ったまま転生した者のことだ。魔族にも色々と階級があるのでな」

ガルアーニ・マゼンダの言っている内容の詳細は定かではないが、恐らく最初の魔族ゴルゴンや姿を変貌させたレグルスのような異形の魔族の事を差しているのだということは理解できる。

「…………もう一つは?」

瞬時に嫌な予感が脳裏を過った。

「ふははっ。器だ。ようやく器を見つけることができた。これが何よりの収穫よのぉ」
「!? それは誰だっ!?」

予感が的中する。

「やはりお主にはわかっておらなんだようだな。この場におったのだ。器となるべき肉体がな。あれだけ巨大な魔力反応を見せてくれたことでようやく見つけられた」

チラと周囲を見回すガルアーニ・マゼンダ。

「まさか余興のつもりであの魔物を生み出したのがこれほどの結果をも生み出そうとは思いもよらなかった。やはり何事も試してみるものだな」
「だから誰なんだ! 誰が魔王の器なんだ!?」
「さて。誰なのかのぉ」

ニタッと笑みを浮かべるガルアーニ・マゼンダなのだが、そのガルアーニ・マゼンダ目掛けて大きな鎌が振り切られていた。

「おっと」

影に身を落として鎌は空を切り、すぐさま再び姿を見せる。

「さっきから何を言ってやがんだテメェは?」

ガルアーニ・マゼンダをギンッと睨み付けるゴンザ。

「逸るな逸るな。これから色々と教えてやろう」
「あ? んなもんどうでもいいんだよ。俺はこいつを殺せればよぉ」
「とはいうが、こやつは中々の強者。それに邪魔も入ろうとしているのだ。ならば機を改めればどうかな? そのための手引きをしてやろう」

シーサーペントを討伐したエレナ達が今にもこちらに向けて駆けつけようとしていた。

「んなもん関係ねぇなッ!」

まるで言うことを聞かないゴンザはヨハン目掛けて鎌を振り切る。

「この武器は!?」

先程何もない空間からゴンザの手の中へと生み出されたその鎌。その変則的な動きが軌道を読めなくさせていた。

「くっ!」

それでも剣戟を放ち、なんとか鎌を弾き返す。

「ゴンザ!」
「ほれ、どうする? このままあやつを倒しきれるのか?」
「…………チッ」

ピタと動きを止め、鎌を肩に背負った。

「儂に付いて来ればあやつを殺す力を身に付けさせてやろう」
「…………」
「ゴンザ! だめだっ! 行くなっ!」

大きく声を掛けるのだが、ゴンザはヨハンを睨みつけるのみ。振り返りヨハンに背を向ける。

「できなければテメェを殺すからな?」

耳元で小さく呟き、ガルアー二・マゼンダはニタっと笑みを浮かべた。

「かまわんよ」

地面に浮かび上がる影、その中に沈めていく。

「待てッ! まだ話は終わってないぞ!」
「こちらとしては話すことなどないさ。むしろ教えてやった方だな。後は機が熟すのを待つのみ」

このままでは逃げられる。すぐさま急いで魔力を練り上げて中空にいくつもの氷を生み出した。

「くそっ!」

しかしそれはすぐに諦めることになる。
逃がさない様に攻撃を仕掛けるつもりだったのだが、氷の魔法は撃ち込まれることも、魔力を維持されることもなく、ただただその場で魔力の素となり霧散していった。

「ヨハン! さっきのは!?」
「……モニカ」
「大丈夫ですの? ヨハンさん」
「……エレナ」
「それより、アイツはどこにいったのよ?」
「……ナナシー」

駆け付けて来たモニカ達に対してどう答えたらいいものなのか、返答に困る。

「……ごめん」

ただその一言を言葉にすることしかできなかった。

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