S級冒険者の子どもが進む道

干支猫

文字の大きさ
512 / 724
紡がれる星々

第五百十一 話 合流

しおりを挟む

「しかしこいつはどういう奴なのだ?」

三つ首の魔物が唸り声を上げる様子を後方でサナと共に見るサイバル。

「魔獣……の複合体?」
「やはりそうなるか。つまりそうなれば、謂わば合成獣、といったところか」

灯りの下に姿を見せたことでようやくその全体をはっきりと視界に捉えた。十メートルに到達しそうである体躯。三つ首の頭部の他には背中に生えている不十分な形の翼。およそ飛べるような代物ではなかった。それ程に明らかに異常な個体。

「くるっ!」

両手を大きく伸ばすサナは炎を遮る為に再び障壁を展開させる。





左の道に向かったヨハン達、三つの分岐があった大広間へと到達しようとする頃。

「あれ? 誰かいる?」

前方、大広間に灯りと人影が見えた。近付くとそれが誰なのと認識する。
そこにいたのはアーサー達。

「どうやら無事のようだね」
「アーサーさん達はどうして?」
「いやなに……――」

ジッと見るヨハン達の姿。まるで疲労を感じさせない様は思わず自身の隊と比べてしまう。

「――……少しモニカくんのことが気になってね」

ニコリと笑みを浮かべて強がった。

「きもっ」
「……ははは。そうかい」

侮蔑の眼差しがその答えだと。

「いやさすがに冗談だよ。それより、何か見つかったかい? こちらはまだ奥があったのだが、あまり深入りすると危険だと判断してその前に引き返して来たのだよ」
「えっと、大きな扉がありました」
「ほぅ、扉か。中は覗いたのかい?」
「いえ、鍵が掛かっているのか開きませんでした」
「ふむ。なるほど、こちらはそういったものは見当たらなかったからね。どうやらそこは調べる必要がありそうだ」

思案気な表情のアーサーに対してレインが恐る恐る口を開く。

「な、なぁ、ナナシーは?」
「ナナシー……ああ、あのエルフの子のことだね。キリュウさんがいるから大丈夫だろうが、ここにはマリン様もいることだしまだ様子を見に行けていないよ」

これ以上の無理はできないのだと。疲労の色を滲ませている騎士を見るその視線が物語っていた。

「余裕がある者が見に行くのが一番なのだがね」
「だったら……――」

ヨハンとアーサーはキリュウ達が向かって行った右側の進路に顔を向ける。

「ん? 誰か来る? それに、この音……」

同じようにしてニーナがその方角に向けてジッと目を凝らし、加えてその耳に微かに届いて来るいくつもの反響する音。それは鎧の軋む音と共に駆ける足音。

「お兄ちゃん、あれテレーゼって人だよ。それに騎士の人もいるね。二人、だよ?」
「どうやら向こうは何か起きたみたいだね」

まだニーナの眼でギリギリ見える程。これだけの遺跡の中を二人だけで引き返して来るなんてありえない。

「アーサーさん!」
「ああ。かまわないよ」

まだ何も言っていないにもかかわらずアーサーは肯定する。
ほんの一瞬だけ呆気に取られるのだが、顔だけ見れば理解した。つまり、アーサーも同様の考えなのだと。

「ありがとうございます。ニーナ! 一緒に頼む」
「りょーかい」

ヨハンとニーナ、共にテレーゼ達がいる通路に向けて駆け出す。

「なっ……――」

テレーゼが目で追うのは前方から物凄い勢いでこちらへと向かって走ってくる二人。
入れ違いで脇を通り抜けるヨハンとニーナ。もう既にその後ろ姿は通路の奥に消えて行った。

「――……いまのは?」
「それよりも、早くアーサー様に報告をするぞ!」

立ち止まるテレーゼを騎士が強引に腕を引き、広場まで連れて行く。

「あ、アーサー様っ!」

息を切らせる騎士。

「その様子だと、どうやら新種が現れたみたいだね」
「は、はい! それで現在キリュウ様を中心として時間を稼がれています。加勢を」
「…………ふ、む」

その場にいる面々を見て思考を巡らせた。考える時間はそれほど残されていないのだが、地上のことも踏まえるとどうするべきか。

(いや、今はこちらに集中するべきだな)

自分達がいないことで襲撃を受けることは予め示しておいた。だからこそ今は地上に残して来た仲間を信頼するべき。

「よし。スフィアくんとアスタロッテくんはマリン様とここで待機してくれ。他の皆もだ」

残る騎士達に指示を出す。

「エレナ様、これより私はキリュウさんの加勢に向かいますがあなたはどうなさいますか?」
「わたくしも当然行きますわ」
「かしこまりました」
「もちろん私もいくわよ」
「ええ。どうぞ」

アーサーと共に並び立つエレナとモニカ。

「では後のことは頼むよスフィアくん」
「お任せください」
「カレンさん、よろしくお願いしますわね」
「仕方ないわね。早く戻って来てね」

そうしてヨハンとニーナの後を追うようにして三人は駆け出した。





「ぐっ、倒しても倒してもキリがない」

新種の魔物、魔獣の集合体を前にするキリュウなのだが、どうにも再生が無限に思えてならない。これまで何度もその身体や頭部を破壊し続けている。

「どうしますか?」

隣に着地するナナシーの問いかけ。
背後にいるサナとサイバルは後方から支援を継続していた。

「ねぇサイバルくん、何か方法はないの?」
「とはいうが、見たこともない魔物の倒し方など……」

わかりようがない。再生を繰り返す魔物など聞いたことがない。

(……そういえば、前にヨハンくんとモニカさんが戦った相手にそういうのがいたような?)

かつてシトラスが人工的に造った吸血鬼。ヨハン達は知る由もないのだが、娘のサリーを生き返らせる為に行われた研究の副産物。その吸血鬼、ヴァンパイアとも呼ばれる魔物もまた再生能力を有していたのだと。

「だったら、核を壊せばいいの?」

その時にどうやって倒したのかを聞いたことがあり、朧気にだが覚えていた。

「ごめんねサイバルくん、ちょっとだけ任せるね」

即座に魔力を練り上げるサナ。右手のブレスレットが共鳴するようにして光り出す。

雨の矢シャイニングレイン

魔獣の複合体の周囲に発生させるいくつもの水の塊。

「相変わらず凄まじいな」

周囲に水がなくとも、生み出せる水の量は四大精霊の力を行使していることもあり流石の一言。

「サナっ!」

ナナシーが魔獣の複合体の攻撃を躱しつつ視界に飛び込んできたその攻撃。意図するものが何だろうと、意味のないことをするはずがない。
だったら、今はその目的がなんであろうとも前衛と後衛の役割だけを代わればいい。

茨の牢獄スオンプリズン

魔獣の複合体の動きを止めるため、魔獣の複合体の足下にいくつもの茨を生み出した。
絡み取るように巻き付くその茨によってその動きを制限させる。

「長くはもたないわね」

魔力量だけならば相当に多い自負はあるのだが、それと強度は別の話。ミチミチと音を立て、いつまで保てるのかわからないが、しかしこの魔法の目的はあくまでもサナの補助。動きを止めるだけで十分。

「はぁっ!」

そうしてサナの掛け声に呼応するように、魔獣を取り囲む水の塊からはいくつもの水針が射出されていく。

「どう、なの?」

具に観察するのは、合成獣の様子。これだけの数の水針が身体を貫いていけば何かしらの反応を見せるかもしれない。

「――?」

痛みに身を捩るような様子の一切を見せない中、ふと違和感を覚える。

「今の動きは?」

頭部をも突き刺す雨の矢。
三つ首の不規則な動きの中に、どこか意思を感じさせるようにして首を捻る動きを見せた。しかし明確にどういう意図だったのかわからない。

しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

処理中です...