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紡がれる星々
第五百六十四話 聖なる樹
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「……なんてことを」
目を覆いたくなる光景。
ミランダが衝撃を受けるのは、スレイとシグ、二人がいた場所は大きく陥没してしまっている。
「ぐっ……くぅ…………――」
満身創痍のガルアー二・マゼンダ。巻き込まれる様な形で神槍霊撃を受けていた。
「――……魔王様、は?」
すぐに魔王の器、スレイの状態を確認しようとするのだが、背後に得る鋭い気配。
「ハアッ!」
「ガッ!」
獣魔人のギニアスと傭兵隊長のレイがガルアー二へと襲い掛かっている。
「くっ!」
なんとか影に身を潜めることに成功するのだが、二人が放つ闘気の先端を受けて傷を負った。
「マズい……非常にマズい……」
このままでは魔族の敗北。全てが終わってしまう。
「くそっ! 逃げられたか」
「ソレより、二人はどうなった?」
陥没した地面を覗き込むのだがそこには二人の姿がなかった。
「うえ、よ」
疲労困憊、満身創痍で今にも意識を失いそうなミリアがなんとかして見上げる。
「あっ……――」
それでも体勢を維持できず、ぐらッと身体を倒した。
「しっかりして。あなたは最後まで見届けないといけないわ」
「え、ええ。ありがと」
「……どういたしまして」
バニラが受け止め肩を貸し、共に見上げる。
「――……はぁ……はぁ……はぁ……かはっ……」
「まさ……か、本当に死ぬ気だったとは、恐れ入ったぞシグ」
脇腹を貫かれ吐血するシグと陥没した地面を見下ろすスレイ。
「お前、さすがにそれはズル、だろ? 飛べるなら最初から飛んどけっての」
「だがおかげでお前も生き残っただろう? とはいってもお前はもう間もなく死ぬことになるのは変わりないがな」
「へっ。何言ってんだ。どっちにしろお前の負けだっての」
「なに?」
どう見てもシグの魔力は底を尽きているはず。それだというのに勝ち誇った顔をするシグに疑問符を浮かべるスレイ。
「これ……は?」
不意に腹部に得る違和感。手の平を押し当てられている。間にあるのは魔石。
「封魔石ってんだとよ。お前も知ってるだろ?」
瞬時に地面に埋もれていた魔宝玉がそれぞれの色と同種の色を放ち浮かび上がった。そうして向かう先はスレイとシグを囲むように四方へ。
「ぐっ……」
そのまま魔宝玉はグルっと横に動き始め、その速度を徐々に上げていく。次第にそれは高速の回転を生み始める。
「があああっ!」
四色が織り成す光の渦。中に閉じ込められるスレイは苦悶の表情を見せていた。
「正真正銘これで終わろう、スレイ」
「ぐおおおおおおおおおっ」
「さよならだ」
全てを終わらせるのだと、シグが確信を持てる程の強さ。強大な力。それでも歯痒いのは倒しきることができるわけではないと。これはあくまでも封印。そしてそれはいつか解ける。
「シ……グ」
浮かべるスレイの穏やかな笑み。剣の柄から手を離してだらりとさせた。
「スレイ……」
その脱力を目にしてシグはフッと力を抜く。
「油断したな」
「しまっ――」
そのまま穿たれた脇腹に手の平を押し当てられた。ギュッと押し込まれるのは瘴気。
「ぐっ……な、にをした?」
「認めよう。ここではお前には勝てなかった。負けだ。お前には何から何まで敵わなかった」
再びだらりと下げるスレイの腕。もう力は残されていない。それは明確。
「今、お前に呪いをかけた。後世にお前の血が、オレ達の血が残る限り、いつかオレはお前の子孫を殺すために復活するだろう」
「スレイ、お前、そこまで……――」
口にするシグは小さく否定する様にして首を振る。
「――……いや、違う。魔族はそういった悪感情を増大させ、善意を根こそぎ奪い去るんだ。お前はそんな奴じゃない。本音を言うと、俺はお前だからこそミリアを任そうとしていたんだ」
「世迷いごとを」
「本気だっての。お前になら託せると思って村を出たんだ」
目線を下に落とす。そこにはミリアの姿。
「知ってるさ。知ってるからこそそれに応えようとしたんだろ」
「……俺達は結局お互いのことをわかりあっていなかったんだな」
「ああ。それにそれだけじゃない。お前はわかっていない」
シグの背に腕を回すスレイ。それには力が込められていない。
「お前はミリアのこともわかっていなかったんだ。オレの方がミリアのことを間違いなくわかっていたさ」
「…………すまん」
「お前に代わってミリアを守ってここまで来た」
「ああ。わかってる」
「いや、やっぱり全くわかってないなお前は。ここに至って尚も。お前がいないことでミリアがどれだけ寂しそうにしていたか考えたことはあるか?」
「正直、そこまでは気が回らなかった。だからこの呪いを今は呪縛として受け入れよう」
そのままはっきりとスレイの目を見つめる。決意の眼差し。
「だが、これだけははっきりと言っておく。お前が俺にどんな呪いが掛けようと、呪いは必ず解いてみせる。例え俺に解けなかったとしても、俺の子孫はこんな呪いになんて負けないさ」
「天才魔導士は格が違うってか」
「まぁそういうことだ」
ニッと笑顔を向けると、スレイも応えるようにして笑みを作った。
「だといいな」
「スレイ?」
「すまないシグ。抑えようとしたんだが呪いの発動までは止められなかった」
「お前っ!?」
「もう身体の制御がきかないんだ。オレの中で知らない内にこんなにも憎しみが膨れ上がってしまってたなんてな。自分にムカつくよ」
「スレイっ! やっぱり!? しっかりしろ!」
「無駄だっての。もうオレは、人間のオレは消える。先に言っておくぞ。呪いに負けるな。呪いが成就する時はもうオレではない魔王だ。アレは人間とは別の存在だ」
「なに、言ってんだ?」
「時間がない。後は、未来は頼んだ。オレ達の子孫を」
そのままスレイはシグの奥へと目線を向ける。
(え?)
錯覚なのだろうか。スレイと目が合った気がした。
「もっとお前と歩きたかったなシグ」
馳せる想いは空白の時間。在りし日の思い出と、失われた本来あるべきその先。
「けど、それでもここまで楽しかったよ。ミリアを、頼んだ」
ドンっと付き押されるシグは地面へと落下していく。
「スレぇぇぇぇぇイっ」
腕を伸ばして見上げるシグの声が大きく響き渡る中、スレイの身体が盛大な輝きを放つ。
「じゃあな」
届かない言葉と共にスレイはぎゅるッと封魔石に吸い込まれていった。
完全にその姿を失わせると、封魔石は輝きを放ちながらそのままゆっくりと地面に落ちていく。
「……スレイ」
涙を零しながらミリアはその最期を見届けていた。信じられないといった眼差しを向けながら地面に落ちていく封魔石をシグは見送る。
「どうなってんだ?」
「……さぁ?」
何が起きているのか事態を飲み込めない連合軍。
「あの、やろうっ! ふざけんなよっ!」
両膝をついてシグは地面を叩いていた。抱く悔しさ。
そんなシグの後悔を余所に、封魔石は地面に落ちるとすぐさまメキメキと音を立てて、太く大きな根を生み出す。
「どうなってるんだ?」
「我が知るトコロではない」
「封印されたんだよ。その力を封じられて」
呆気に取られる傭兵隊長のレイと獣魔人のギニアスへと説明するエルフのミランダ。地面に這う根は物凄い勢いで成長し、その木は瞬く間に巨木と化していた。
(…………世界樹)
巨木自体が輝きを放つそれは見紛うことなく世界樹に他ならない。
「おい! あっちを見ろ!」
レイが大きく声を放つ先は未だに混沌としていた戦場。
魔族と魔物、共に勢いを失くしていき、連合軍に押し込まれることになる。
「終わったな」
「……ああ」
雨が上がるその頃、曇り空は陽の光を僅かに覗かせ、光差すその先、世界樹の周りには小さな草原が生まれていた。
そうして間もなく空は晴れやかに、地上の喧騒とは対照的な雲一つない美しい空模様を描いている。
◆
「――……すまんミリア。結局スレイを助けらなかった」
「……ううん。シグが責任を感じることない。私も一緒に背負うから」
「ミリア……」
二人して見る先は世界樹。
「ねぇミリア。あたし、この場所を守っていくよ」
「バニラ?」
ぽろぽろと涙を流すエルフの少女。ミリアは驚きを持ってバニラを見る。
「だって、これまでスレイが人間のために戦ってきたことには変わりはないもの。じゃないと、こんなの、こんなの、余りにもスレイが報われない。だから、あたしがスレイと一緒にここを守るの」
「……バニラ」
そのバニラの頭にポンと乗せられる手の平。
「しょうがないな。わたしも付き合うさ」
「ミランダ。いいの?」
「いいさ。こうなったらもうすることなんてないしね。それに一人じゃ大変だろ。他にも誘うさ」
「あびがどう、ミランダ」
涙を拭うバニラにミリアがそっと声を掛ける。
「バニラ、もしかしてスレイのこと……」
「ぐすっ……いや、ぐすっ……まぁそう、なんだけど。あたしじゃスレイを振り向かせられなかった。ごめんねミリア」
「ううん、バニラが謝ることないわ。誰も悪くないもの。スレイも、誰も。この戦争だらけの世の中が悪いの」
俯くミリアの肩を抱き寄せるシグ。
「そうだな。俺達がこれからすることは戦後処理はもちろんだが、人間同士の戦争を失くさないといけないな。でないとまた魔族に付け込まれることになる」
「……うん」
「話がいまいち呑み込めないが、俺もできることをするさ。戦争がなくなれば傭兵部隊も仕事なくすしな」
「ありがとうレイ」
世界樹が神々しい光を放つ中、それぞれが思いを馳せながら世界樹を見上げた。
(これが、世界樹の成り立ちと魔王の封印だったんだ)
余りにも壮絶な時代。結末に胸が痛む。
(悲しい結末だったけど、これだけで終わらない。僕たちはこれで終わってはいけないんだ)
人魔戦争自体は確かに見届けられた。スカーレット家が受けた呪いはこのことを発端としているのだと。
(あくまでもこれは僕たちの時代へと繋がる最初の話)
そうして終わりを告げるかのようにして世界が再び白んでいった。
目を覆いたくなる光景。
ミランダが衝撃を受けるのは、スレイとシグ、二人がいた場所は大きく陥没してしまっている。
「ぐっ……くぅ…………――」
満身創痍のガルアー二・マゼンダ。巻き込まれる様な形で神槍霊撃を受けていた。
「――……魔王様、は?」
すぐに魔王の器、スレイの状態を確認しようとするのだが、背後に得る鋭い気配。
「ハアッ!」
「ガッ!」
獣魔人のギニアスと傭兵隊長のレイがガルアー二へと襲い掛かっている。
「くっ!」
なんとか影に身を潜めることに成功するのだが、二人が放つ闘気の先端を受けて傷を負った。
「マズい……非常にマズい……」
このままでは魔族の敗北。全てが終わってしまう。
「くそっ! 逃げられたか」
「ソレより、二人はどうなった?」
陥没した地面を覗き込むのだがそこには二人の姿がなかった。
「うえ、よ」
疲労困憊、満身創痍で今にも意識を失いそうなミリアがなんとかして見上げる。
「あっ……――」
それでも体勢を維持できず、ぐらッと身体を倒した。
「しっかりして。あなたは最後まで見届けないといけないわ」
「え、ええ。ありがと」
「……どういたしまして」
バニラが受け止め肩を貸し、共に見上げる。
「――……はぁ……はぁ……はぁ……かはっ……」
「まさ……か、本当に死ぬ気だったとは、恐れ入ったぞシグ」
脇腹を貫かれ吐血するシグと陥没した地面を見下ろすスレイ。
「お前、さすがにそれはズル、だろ? 飛べるなら最初から飛んどけっての」
「だがおかげでお前も生き残っただろう? とはいってもお前はもう間もなく死ぬことになるのは変わりないがな」
「へっ。何言ってんだ。どっちにしろお前の負けだっての」
「なに?」
どう見てもシグの魔力は底を尽きているはず。それだというのに勝ち誇った顔をするシグに疑問符を浮かべるスレイ。
「これ……は?」
不意に腹部に得る違和感。手の平を押し当てられている。間にあるのは魔石。
「封魔石ってんだとよ。お前も知ってるだろ?」
瞬時に地面に埋もれていた魔宝玉がそれぞれの色と同種の色を放ち浮かび上がった。そうして向かう先はスレイとシグを囲むように四方へ。
「ぐっ……」
そのまま魔宝玉はグルっと横に動き始め、その速度を徐々に上げていく。次第にそれは高速の回転を生み始める。
「があああっ!」
四色が織り成す光の渦。中に閉じ込められるスレイは苦悶の表情を見せていた。
「正真正銘これで終わろう、スレイ」
「ぐおおおおおおおおおっ」
「さよならだ」
全てを終わらせるのだと、シグが確信を持てる程の強さ。強大な力。それでも歯痒いのは倒しきることができるわけではないと。これはあくまでも封印。そしてそれはいつか解ける。
「シ……グ」
浮かべるスレイの穏やかな笑み。剣の柄から手を離してだらりとさせた。
「スレイ……」
その脱力を目にしてシグはフッと力を抜く。
「油断したな」
「しまっ――」
そのまま穿たれた脇腹に手の平を押し当てられた。ギュッと押し込まれるのは瘴気。
「ぐっ……な、にをした?」
「認めよう。ここではお前には勝てなかった。負けだ。お前には何から何まで敵わなかった」
再びだらりと下げるスレイの腕。もう力は残されていない。それは明確。
「今、お前に呪いをかけた。後世にお前の血が、オレ達の血が残る限り、いつかオレはお前の子孫を殺すために復活するだろう」
「スレイ、お前、そこまで……――」
口にするシグは小さく否定する様にして首を振る。
「――……いや、違う。魔族はそういった悪感情を増大させ、善意を根こそぎ奪い去るんだ。お前はそんな奴じゃない。本音を言うと、俺はお前だからこそミリアを任そうとしていたんだ」
「世迷いごとを」
「本気だっての。お前になら託せると思って村を出たんだ」
目線を下に落とす。そこにはミリアの姿。
「知ってるさ。知ってるからこそそれに応えようとしたんだろ」
「……俺達は結局お互いのことをわかりあっていなかったんだな」
「ああ。それにそれだけじゃない。お前はわかっていない」
シグの背に腕を回すスレイ。それには力が込められていない。
「お前はミリアのこともわかっていなかったんだ。オレの方がミリアのことを間違いなくわかっていたさ」
「…………すまん」
「お前に代わってミリアを守ってここまで来た」
「ああ。わかってる」
「いや、やっぱり全くわかってないなお前は。ここに至って尚も。お前がいないことでミリアがどれだけ寂しそうにしていたか考えたことはあるか?」
「正直、そこまでは気が回らなかった。だからこの呪いを今は呪縛として受け入れよう」
そのままはっきりとスレイの目を見つめる。決意の眼差し。
「だが、これだけははっきりと言っておく。お前が俺にどんな呪いが掛けようと、呪いは必ず解いてみせる。例え俺に解けなかったとしても、俺の子孫はこんな呪いになんて負けないさ」
「天才魔導士は格が違うってか」
「まぁそういうことだ」
ニッと笑顔を向けると、スレイも応えるようにして笑みを作った。
「だといいな」
「スレイ?」
「すまないシグ。抑えようとしたんだが呪いの発動までは止められなかった」
「お前っ!?」
「もう身体の制御がきかないんだ。オレの中で知らない内にこんなにも憎しみが膨れ上がってしまってたなんてな。自分にムカつくよ」
「スレイっ! やっぱり!? しっかりしろ!」
「無駄だっての。もうオレは、人間のオレは消える。先に言っておくぞ。呪いに負けるな。呪いが成就する時はもうオレではない魔王だ。アレは人間とは別の存在だ」
「なに、言ってんだ?」
「時間がない。後は、未来は頼んだ。オレ達の子孫を」
そのままスレイはシグの奥へと目線を向ける。
(え?)
錯覚なのだろうか。スレイと目が合った気がした。
「もっとお前と歩きたかったなシグ」
馳せる想いは空白の時間。在りし日の思い出と、失われた本来あるべきその先。
「けど、それでもここまで楽しかったよ。ミリアを、頼んだ」
ドンっと付き押されるシグは地面へと落下していく。
「スレぇぇぇぇぇイっ」
腕を伸ばして見上げるシグの声が大きく響き渡る中、スレイの身体が盛大な輝きを放つ。
「じゃあな」
届かない言葉と共にスレイはぎゅるッと封魔石に吸い込まれていった。
完全にその姿を失わせると、封魔石は輝きを放ちながらそのままゆっくりと地面に落ちていく。
「……スレイ」
涙を零しながらミリアはその最期を見届けていた。信じられないといった眼差しを向けながら地面に落ちていく封魔石をシグは見送る。
「どうなってんだ?」
「……さぁ?」
何が起きているのか事態を飲み込めない連合軍。
「あの、やろうっ! ふざけんなよっ!」
両膝をついてシグは地面を叩いていた。抱く悔しさ。
そんなシグの後悔を余所に、封魔石は地面に落ちるとすぐさまメキメキと音を立てて、太く大きな根を生み出す。
「どうなってるんだ?」
「我が知るトコロではない」
「封印されたんだよ。その力を封じられて」
呆気に取られる傭兵隊長のレイと獣魔人のギニアスへと説明するエルフのミランダ。地面に這う根は物凄い勢いで成長し、その木は瞬く間に巨木と化していた。
(…………世界樹)
巨木自体が輝きを放つそれは見紛うことなく世界樹に他ならない。
「おい! あっちを見ろ!」
レイが大きく声を放つ先は未だに混沌としていた戦場。
魔族と魔物、共に勢いを失くしていき、連合軍に押し込まれることになる。
「終わったな」
「……ああ」
雨が上がるその頃、曇り空は陽の光を僅かに覗かせ、光差すその先、世界樹の周りには小さな草原が生まれていた。
そうして間もなく空は晴れやかに、地上の喧騒とは対照的な雲一つない美しい空模様を描いている。
◆
「――……すまんミリア。結局スレイを助けらなかった」
「……ううん。シグが責任を感じることない。私も一緒に背負うから」
「ミリア……」
二人して見る先は世界樹。
「ねぇミリア。あたし、この場所を守っていくよ」
「バニラ?」
ぽろぽろと涙を流すエルフの少女。ミリアは驚きを持ってバニラを見る。
「だって、これまでスレイが人間のために戦ってきたことには変わりはないもの。じゃないと、こんなの、こんなの、余りにもスレイが報われない。だから、あたしがスレイと一緒にここを守るの」
「……バニラ」
そのバニラの頭にポンと乗せられる手の平。
「しょうがないな。わたしも付き合うさ」
「ミランダ。いいの?」
「いいさ。こうなったらもうすることなんてないしね。それに一人じゃ大変だろ。他にも誘うさ」
「あびがどう、ミランダ」
涙を拭うバニラにミリアがそっと声を掛ける。
「バニラ、もしかしてスレイのこと……」
「ぐすっ……いや、ぐすっ……まぁそう、なんだけど。あたしじゃスレイを振り向かせられなかった。ごめんねミリア」
「ううん、バニラが謝ることないわ。誰も悪くないもの。スレイも、誰も。この戦争だらけの世の中が悪いの」
俯くミリアの肩を抱き寄せるシグ。
「そうだな。俺達がこれからすることは戦後処理はもちろんだが、人間同士の戦争を失くさないといけないな。でないとまた魔族に付け込まれることになる」
「……うん」
「話がいまいち呑み込めないが、俺もできることをするさ。戦争がなくなれば傭兵部隊も仕事なくすしな」
「ありがとうレイ」
世界樹が神々しい光を放つ中、それぞれが思いを馳せながら世界樹を見上げた。
(これが、世界樹の成り立ちと魔王の封印だったんだ)
余りにも壮絶な時代。結末に胸が痛む。
(悲しい結末だったけど、これだけで終わらない。僕たちはこれで終わってはいけないんだ)
人魔戦争自体は確かに見届けられた。スカーレット家が受けた呪いはこのことを発端としているのだと。
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