13 / 112
後悔
013 予想外の出来事
しおりを挟む「ねぇ先輩、今の人って?なんか驚いてたみたいですけど?」
「えっ?あっ、あぁ、高校の同級生なんだけど、こんなところで偶然会ったからびっくりしたんだ」
「ふーん、そうなんですね。綺麗な人ですね」
「…………」
神社の鳥居の近くで今はもう見えない花音の後ろ姿の残像を見つめながら瑠璃に話し掛けられるのだが、瑠璃は潤の様子がどこか心ここにあらずといった様子を感じ取る。潤の背中越しに繋いでいた離された手を見つめながら名残惜しそうに思うところがある様子を見せた。
「先輩!!」
「あっ、ああ、ごめん。っと、ちょっと待ってスマホが―――…………はぁ!?」
瑠璃は顔を上げて沈んだ潤の背中に対して少し大きめに声を掛ける。潤は少しばかり驚きながらも振り返りそこで瑠璃の存在をはっきりと思い出した。
その瞬間にスマホのバイブを感じ取るのだが、確認すると同時に顔を歪める。
「どうしたんですか?」
「……いや、杏奈と光汰なんだけどな、俺達が見つからないからって先に帰ったらしい」
「えっ?そうなんですね」
「ん?思ったよりも驚いていないけど?」
「そ、そんなことないですよ!も、もう杏奈ちゃんったら勝手に帰って困りますよね!」
「あ、ああ。そうだな」
潤の様子を確認する様に声を掛けた瑠璃なのだが、杏奈と光汰が先に帰ったことを告げても特段驚いた様子を見せないことに疑問を投げかけると瑠璃は慌てて取り繕った。
慌てふためく瑠璃の様子を見て潤は少しばかり不思議に思う。
「(まぁいっか)瑠璃ちゃん、この後は?なんか光汰もうちに居るみたいだし、杏奈に会いに家に来る?」
「じゃあせっかくなんでそうさせてもらいます」
「ん。じゃあ一緒に行こうか」
「はい」
光汰の連絡を受けて瑠璃と一緒に家に向かうことにしたのだが、瑠璃の表情がどこか思わしくないことが気になった。
もう人混みを抜けた後で手は繋いでいない。会話はそれなりにできるのだが、途中で言葉に詰まることがある。
歩いて向かうなか、瑠璃と待ち合わせていた場所、綺麗な川が流れる橋の上で突然瑠璃が立ち止まった。
潤と瑠璃の間には二歩程度の距離が空いている。
「どうしたの?」
「……あの、先輩」
「なに?」
「さっきの人って、先輩の好きな人ですか?」
「えっ!?」
突然立ち止まったことにどうしたのかと思ったのだが、瑠璃の口から発せられた言葉は潤が予想していない内容だった。突然の質問に対してどう答えたらいいかわからず返答に困り少しばかりの沈黙が流れると、瑠璃の方から先に口を開く。
「否定しないってことは少なからずそういう気持ちがあるってことですよね?」
「う……ん、まぁ……、けどどうして瑠璃ちゃんがそういうこと聞くの?」
「それは、その……。 先輩!」
潤の様子を見て瑠璃は質問の内容が疑問から確信に変わる。潤に質問の意図を尋ねられると瑠璃は少しばかり逡巡した後に決意の眼差しを潤に向ける。
「どうしたの?」
「あ、あの、先輩、私と付き合ってくれませんか!?」
「えっ? 今なんて?」
瑠璃の様子に変化を感じ取ったのでどうしたのかと思うのだが、瑠璃の口から次に告げられた言葉は再び潤が予想していなかった言葉だった。
突然瑠璃に告白されたのだが、聞き間違えたのかと思い思わず聞き返した。
「だから、私と付き合って下さい!」
「いや、急にどうしたの?」
潤が聞き間違えたと思うのだが、はっきりと瑠璃の口から今告白されているのだと理解する。
「先輩がさっきの人が好きなのはわかりました。だからその前に私の気持ちを先に伝えとこうと思って」
「いや、さっきの人っていっても―――」
「それで、そのぉ、返事は……?」
潤の様子から花音のことを好きだということを察したのだが、明確に言葉にはしていない。気持ちはあるのだが何も出来ていない現状だけなのでどう伝えたらいいものかと悩んでいたら、瑠璃の方から告白の返事を恐る恐る確認する様に尋ねてきた。
「…………ごめん」
瑠璃の催促に対して、潤は申し訳なさそうに小さく返事をする。瑠璃にもその返事は聞こえて思わず俯いてしまうのだが、少しばかりの間を開けて俯いた顔を上げ再び潤を見上げる。
「理由を…………教えてもらえますか?」
瑠璃は泣きそうになりながら上目遣いで潤を見上げるのだが、その眼はしっかりと潤を見ている。その真剣な眼差しを見ていると思わずうんと言ってしまいそうになるほど瑠璃が可愛く映っていたのだが、それでも脳裏に花音の顔を思い浮かべて小さく首を振った。
「いや、だって、瑠璃ちゃんは杏奈の友達だし――」
「それって、杏奈ちゃんの友達とは付き合えないんですか?」
「いや、そんなことはないけど」
「じゃあそれは理由になりませんよ。それに……今日は楽しくなかったですか?私は、私は楽しかったです!先輩と2人で……その、デートしているみたいで」
瑠璃は表情を少しばかり曇らせながらも懇願する様に潤の言葉の説得力の無さを追求する。
「まぁ楽しかったのは確かだよ、話も合うと思うし」
「じゃあ…………じゃあ、付き合って、くれませんか?」
「いや俺、瑠璃ちゃんのことそんなに知らないし」
「私のことをもっと知ったら付き合ってくれるんですか?」
「いや、そういうわけじゃないけど……」
潤の言葉を受けて瑠璃は可能性を見出すのだが、潤は付き合えない理由にまだそれほど瑠璃のことを知らないことを理由に挙げる。すると瑠璃は一歩潤に歩み寄り、自身のことを知ってもらえたら付き合えるのかと尋ねた。
「私が先輩のことを好きだと、何か困りますか?」
「困りはしない……かな?それに好きって言われるとどちらかというと嬉しいし」
「それじゃあ!」
困った様子を見せている潤に対して瑠璃は震えるようなか細い小さな声で少しばかり申し訳なさそうにするのだが、潤が続けた言葉で瑠璃は表情をパッと明るくさせた。
「それでもやっぱり付き合えないよ」
「それって、私とは何があっても付き合えないんですか?」
「そんなことはないと思うよ、瑠璃ちゃんは可愛いし。ただ――」
「じゃあ先輩が私のことをあの人よりも好きになったら付き合ってくれますよね?」
「そりゃ瑠璃ちゃんのことが好きになれば付き合うこともあるかな?」
「やたっ!言質獲りましたからね!絶対に先輩に私のことを好きにさせてみせますのでこれから覚悟しておいてくださいね♪」
瑠璃の質問に対して潤は戸惑いながらも言葉を探しつつ答えたのだが、最後の質問に答えたところで瑠璃は表情を綻ばせて可愛らしい笑顔を潤に向けた。その笑顔を見た潤もまたあまりにも可愛すぎたので直視できずに思わず視線を逸らせてしまった。
瑠璃にしても、潤が『ただ』の後に続く言葉がさきほど会った花音のことだということは想像できたので、何を言われるかまではわからないにしても、そのことを潤に口にさせることなく話を進めたかったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
婚約破棄のために偽装恋人になったら、ライバル店の天才パティシエに溺愛されすぎています
草加奈呼
恋愛
大学生の佐藤天音は、
“スイーツの神の舌”を持つことで知られる、洋菓子店の一人娘。
毎年、市内のスイーツコンテストで審査を務める天音は、
そこで出会った一人のパティシエのケーキに心を奪われた。
ライバル店〈シャテーニュ〉の若きエース
イケメン天才パティシエ・栗本愁。
父に反対されながらも、どうしてももう一度その味を
確かめたくて店を訪れた天音に、愁は思いがけない言葉を告げる。
「僕と、付き合ってくれないか?」
その告白は、政略的な婚約を断つための偽装恋人の申し出だった。
そして、天音の神の舌を見込んで、レシピ開発の協力を求めてくる。
「報酬はシャテーニュのケーキセットでどうかな?」
甘すぎる条件に負け、
偽装恋人関係を引き受けたはずなのに──
いつの間にか、愁の視線も言葉も、本気の溺愛に変わっていく。
ライバル店×コンテストでの運命の出会い×契約恋人。
敏腕パティシエの独占愛が止まらない、
甘くて危険なシークレットラブストーリー。
🍨🍰🍮🎂🍮🍰🍨
※恋愛大賞に参加中です。
よろしければお気に入り、いいね、
投票よろしくお願いいたします。
∞
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。
入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。
しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。
抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。
※タイトルは「むげん」と読みます。
※完結しました!(2020.7.29)
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい
瑞原唯子
恋愛
だから、きっと、恋を知らないままでよかった。
伯爵令嬢のシャーロットはもうすぐ顔も知らないおじさまと結婚する。だから最後にひとつだけわがままを叶えようと屋敷をこっそり抜け出した。そこで知り合ったのは王都の騎士団に所属するという青年で——。
---
本編完結しました。番外編も書きたかったエピソードはひとまず書き終わりましたが、気が向いたらまた何か書くかもしれません。リクエストなどありましたらお聞かせください。参考にさせていただきます。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる