4 / 4
4.まだみぬ未来へ
4.まだみぬ未来へ
しおりを挟む
学園の庭園に、初夏の風が吹き抜ける。
鮮やかな緑の中、俺はベンチに腰掛けて本を読んでいた。中庭だけど端の方だから利用者がいなくて落ち着く場所。俺の特等席。だけどーー
「やあ、レオン」
背後から聞き慣れた声。顔を上げると、ユリウスが立っていた。陽光を背に受けて微笑む姿は、やっぱり絵画みたいに綺麗で。でも、その視線は確かに俺に向けられている。
「……っ、ユリウス様」
思わず本を閉じて立ち上がる。
ユリウスは歩み寄り、当たり前のように俺の隣に座った。
「そんなにかしこまらなくてもいい。僕たちは……婚約者なんだから」
その言葉に、胸が高鳴る。
「こ、婚約者……なんて、まだ信じられないです」
「信じられなくても構わないよ」
ユリウスは柔らかく笑った。
「僕が君を望んだ。それだけだ」
――推しに、選ばれる。
今でも夢みたいで、頬が熱くなる。
「……俺、最初はただのファンだったんです」
ぽつりと口にする。
「ユリウス様のことが好きで、でも遠くから見てるだけで。自分はモブで、物語の外にいる人間だって思ってて……」
ユリウスは黙って耳を傾けていた。
「でも、気づいたんです。……俺が“モブ”かどうかは、俺じゃなくて、隣に立つ人が決めることなんだって」
横を向くと、ユリウスが優しく微笑んでいた。
「じゃあ、もう決まりだね」
「え?」
「君はモブじゃない。僕の、大切な人だ」
真っ直ぐな声に、胸がいっぱいになる。涙が滲んで、笑ってしまった。
俺はもう、ただのモブじゃない。推しに選ばれた、ただ一人の婚約者。
ーーピンク髪のゲームの主人公が現れるのは俺たちが2年になる半年後のこと。ゲームの始まりだ。
主人公が現れたら、俺の“推し”は主人公に靡くのだろうか。できれば、ほかの人を選んで欲しい。
未来はどうなるかわからない。けれど、少なくとも今、俺の手は推しの手に繋がれている。
だから俺はーー
この手を離さないために自分磨きをやめない。“推し”の、ユリウスの隣に立ち続けるために努力するんだ。
「……ユリウス様。これからも、隣にいさせてください」
「それは僕もだよ。レオン。君の隣は僕だけのものだ」
ユリウスがもう片方の手で俺の顔に触れ、額やら低い鼻にキスをしてくる。かきあげられた髪に隠された傷に彼は幻滅するだろうか。と不安になったがすぐに解消された。
「あの時、もっと早く子息たちを止めていればこんな傷つけなかったのに」
「……覚えて」
「うん。可愛らしい子がいる、と思っていたらあっという間に君は彼らに巻き込まれた。……ああでも勘違いしないで、君に近付いたのも婚約者にしたことも、僕の本心しかない」
一瞬の不安を吹き飛ばすように、ユリウスが口にキスをしてきて、俺は、もうなんか色々考えることができない!
「んー! んんっ!」
「っふ。好きだよ、レオン。ずっと、ずっと君だけだ」
……ああ、なんだろうな。きっと俺たちは来年も手を繋いでいそうだ!
風が吹き、二人の影を重ねるように揺らした。
鮮やかな緑の中、俺はベンチに腰掛けて本を読んでいた。中庭だけど端の方だから利用者がいなくて落ち着く場所。俺の特等席。だけどーー
「やあ、レオン」
背後から聞き慣れた声。顔を上げると、ユリウスが立っていた。陽光を背に受けて微笑む姿は、やっぱり絵画みたいに綺麗で。でも、その視線は確かに俺に向けられている。
「……っ、ユリウス様」
思わず本を閉じて立ち上がる。
ユリウスは歩み寄り、当たり前のように俺の隣に座った。
「そんなにかしこまらなくてもいい。僕たちは……婚約者なんだから」
その言葉に、胸が高鳴る。
「こ、婚約者……なんて、まだ信じられないです」
「信じられなくても構わないよ」
ユリウスは柔らかく笑った。
「僕が君を望んだ。それだけだ」
――推しに、選ばれる。
今でも夢みたいで、頬が熱くなる。
「……俺、最初はただのファンだったんです」
ぽつりと口にする。
「ユリウス様のことが好きで、でも遠くから見てるだけで。自分はモブで、物語の外にいる人間だって思ってて……」
ユリウスは黙って耳を傾けていた。
「でも、気づいたんです。……俺が“モブ”かどうかは、俺じゃなくて、隣に立つ人が決めることなんだって」
横を向くと、ユリウスが優しく微笑んでいた。
「じゃあ、もう決まりだね」
「え?」
「君はモブじゃない。僕の、大切な人だ」
真っ直ぐな声に、胸がいっぱいになる。涙が滲んで、笑ってしまった。
俺はもう、ただのモブじゃない。推しに選ばれた、ただ一人の婚約者。
ーーピンク髪のゲームの主人公が現れるのは俺たちが2年になる半年後のこと。ゲームの始まりだ。
主人公が現れたら、俺の“推し”は主人公に靡くのだろうか。できれば、ほかの人を選んで欲しい。
未来はどうなるかわからない。けれど、少なくとも今、俺の手は推しの手に繋がれている。
だから俺はーー
この手を離さないために自分磨きをやめない。“推し”の、ユリウスの隣に立ち続けるために努力するんだ。
「……ユリウス様。これからも、隣にいさせてください」
「それは僕もだよ。レオン。君の隣は僕だけのものだ」
ユリウスがもう片方の手で俺の顔に触れ、額やら低い鼻にキスをしてくる。かきあげられた髪に隠された傷に彼は幻滅するだろうか。と不安になったがすぐに解消された。
「あの時、もっと早く子息たちを止めていればこんな傷つけなかったのに」
「……覚えて」
「うん。可愛らしい子がいる、と思っていたらあっという間に君は彼らに巻き込まれた。……ああでも勘違いしないで、君に近付いたのも婚約者にしたことも、僕の本心しかない」
一瞬の不安を吹き飛ばすように、ユリウスが口にキスをしてきて、俺は、もうなんか色々考えることができない!
「んー! んんっ!」
「っふ。好きだよ、レオン。ずっと、ずっと君だけだ」
……ああ、なんだろうな。きっと俺たちは来年も手を繋いでいそうだ!
風が吹き、二人の影を重ねるように揺らした。
1,143
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜
明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。
その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。
ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。
しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。
そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。
婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと?
シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。
※小説家になろうにも掲載しております。
契約結婚だけど大好きです!
泉あけの
BL
子爵令息のイヴ・ランヌは伯爵ベルナール・オルレイアンに恋をしている。
そんな中、子爵である父からオルレイアン伯爵から求婚書が届いていると言われた。
片思いをしていたイヴは憧れのベルナール様が求婚をしてくれたと大喜び。
しかしこの結婚は両家の利害が一致した契約結婚だった。
イヴは恋心が暴走してベルナール様に迷惑がかからないようにと距離を取ることに決めた。
......
「俺と一緒に散歩に行かないか、綺麗な花が庭園に咲いているんだ」
彼はそう言って僕に手を差し伸べてくれた。
「すみません。僕はこれから用事があるので」
本当はベルナール様の手を取ってしまいたい。でも我慢しなくちゃ。この想いに蓋をしなくては。
この結婚は契約だ。僕がどんなに彼を好きでも僕達が通じ合うことはないのだから。
※小説家になろうにも掲載しております
※直接的な表現ではありませんが、「初夜」という単語がたびたび登場します
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています
水凪しおん
BL
日本の社畜だった俺、ミナトは過労死した末に異世界の貧乏男爵家の三男に転生した。しかも、なぜか傲慢な第二王子エリアスの婚約者にされてしまう。
「地味で男のくせに可愛らしいだけの役立たず」
王子からそう蔑まれ、冷遇される日々にうんざりした俺は、前世の知識とチート能力【植物育成】を使い、実家の領地を豊かにすることだけを生きがいにしていた。
そんなある日、王宮の夜会で王子から公衆の面前で婚約破棄を叩きつけられる。
絶望する俺の前に現れたのは、この国で最も恐れられる『氷の公爵』アレクシス・フォン・ヴァインベルク。
「王子がご不要というのなら、その方を私が貰い受けよう」
冷たく、しかし力強い声。気づけば俺は、彼の腕の中にいた。
連れてこられた公爵邸での生活は、噂とは大違いの甘すぎる日々の始まりだった。
俺の作る料理を「世界一美味い」と幸せそうに食べ、俺の能力を「素晴らしい」と褒めてくれ、「可愛い、愛らしい」と頭を撫でてくれる公爵様。
彼の不器用だけど真っ直ぐな愛情に、俺の心は次第に絆されていく。
これは、婚約破棄から始まった、不遇な俺が世界一の幸せを手に入れるまでの物語。
ちっちゃな婚約者に婚約破棄されたので気が触れた振りをして近衛騎士に告白してみた
風
BL
第3王子の俺(5歳)を振ったのは同じく5歳の隣国のお姫様。
「だって、お義兄様の方がずっと素敵なんですもの!」
俺は彼女を応援しつつ、ここぞとばかりに片思いの相手、近衛騎士のナハトに告白するのだった……。
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?
人生2929回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途なαが婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。
・五話完結予定です。
※オメガバースでαが受けっぽいです。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる