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外伝 会えなくても
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それから僕は、1年だけ王国の執事として仕事をしていた。彼女が居なくなっても王宮での仕事は山程ある。彼女の残り香をたまに感じるように過去の思い出に浸っては、幸せに旅立った王女のニュースを聞いていた。
しかし1年もすると彼女の話は滅多に出なくなり、彼女がどうしているのかも全く分からなくなってしまった。
そこで僕は、ある決心をした。
「辞める…ですか。
私には止める権利はありませんが、此処から出て一体何処に行くのですか?」
「彼女が旅立った国に。
仕事の当てなんてありませんが、それでも僕はそうすると決めたんです。」
「成程…そういう訳ですか。
ならば尚更私には止められませんね。
良いでしょう、退職手当は出しておきますので受け取ってから荷物をまとめて下さいね。」
「感謝してもしきれませんね。
今まで本当にありがとうございました。」
そう上の者に伝え、僕は19年を過ごした王宮を旅立った。
--------キリトリ線--------
それから僕は後を追うように彼女が居る国へ向かい、小さな家を借りて根を張った。
そこから始めた仕事は王宮の仕事とは全然違い、新鮮味を感じ一生懸命働いた。
勿論元居た国よりは多く、お嬢様の情報は手に入った。幸せそうに過ごす彼女の噂話をよく耳にして、安心する日々だった。
そんな小さな幸せを噛み締めていたとある日、家のポストに元居た国の王宮から手紙が届いた。
中には「王宮の働き口が1人分空いたらしい。僕の事を紹介したら、「姫に会えるような高い位の仕事ではない」との事だが、喜んで採用しようと言われた」と書かれていた。
また…姫のいる王宮の仕事を?
僕の胸は一瞬にして張り裂けそうになり、すぐに返事を書いて送り返しいつでも出られるように荷物をまとめた。
それから1週間の後、2月の初めに。
「この書を持って王宮に向かいなさい。話は通っています」との便りを貰い、僕はすぐに王宮に向かった。
思い出の王宮とはまた違う王宮。
けど何もかもが違う訳では無い。
彼処には彼女が居なかったが、此処には居る。
会えなくても、姿を見れなかったとしても此処には僕が愛した彼女がいる。
もう彼女は人妻になってしまったが、そんな事はどうだっていい。
たとえ返ってこなかったとしても構わない。
僕が貴女の傍で貴女を愛していられたのなら。
―――僕はそれでいいんだ。
--------キリトリ線--------
…それから2年後。
薔薇が咲き誇る中庭の噴水に静かに腰かけていた1人の王宮の下働き。
なんだか眠れなくなって外の空気を吸いに来た1人の第1王子の妃。
本当ならば「御機嫌よう」で済むはずの2人の挨拶は。
―――涙と感動と、許されぬ筈の愛で満ちていた。
しかし1年もすると彼女の話は滅多に出なくなり、彼女がどうしているのかも全く分からなくなってしまった。
そこで僕は、ある決心をした。
「辞める…ですか。
私には止める権利はありませんが、此処から出て一体何処に行くのですか?」
「彼女が旅立った国に。
仕事の当てなんてありませんが、それでも僕はそうすると決めたんです。」
「成程…そういう訳ですか。
ならば尚更私には止められませんね。
良いでしょう、退職手当は出しておきますので受け取ってから荷物をまとめて下さいね。」
「感謝してもしきれませんね。
今まで本当にありがとうございました。」
そう上の者に伝え、僕は19年を過ごした王宮を旅立った。
--------キリトリ線--------
それから僕は後を追うように彼女が居る国へ向かい、小さな家を借りて根を張った。
そこから始めた仕事は王宮の仕事とは全然違い、新鮮味を感じ一生懸命働いた。
勿論元居た国よりは多く、お嬢様の情報は手に入った。幸せそうに過ごす彼女の噂話をよく耳にして、安心する日々だった。
そんな小さな幸せを噛み締めていたとある日、家のポストに元居た国の王宮から手紙が届いた。
中には「王宮の働き口が1人分空いたらしい。僕の事を紹介したら、「姫に会えるような高い位の仕事ではない」との事だが、喜んで採用しようと言われた」と書かれていた。
また…姫のいる王宮の仕事を?
僕の胸は一瞬にして張り裂けそうになり、すぐに返事を書いて送り返しいつでも出られるように荷物をまとめた。
それから1週間の後、2月の初めに。
「この書を持って王宮に向かいなさい。話は通っています」との便りを貰い、僕はすぐに王宮に向かった。
思い出の王宮とはまた違う王宮。
けど何もかもが違う訳では無い。
彼処には彼女が居なかったが、此処には居る。
会えなくても、姿を見れなかったとしても此処には僕が愛した彼女がいる。
もう彼女は人妻になってしまったが、そんな事はどうだっていい。
たとえ返ってこなかったとしても構わない。
僕が貴女の傍で貴女を愛していられたのなら。
―――僕はそれでいいんだ。
--------キリトリ線--------
…それから2年後。
薔薇が咲き誇る中庭の噴水に静かに腰かけていた1人の王宮の下働き。
なんだか眠れなくなって外の空気を吸いに来た1人の第1王子の妃。
本当ならば「御機嫌よう」で済むはずの2人の挨拶は。
―――涙と感動と、許されぬ筈の愛で満ちていた。
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