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第一章 太陽の国
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しおりを挟む朝電車に乗り込み、揺られ続けて夕方。一行は国境を越え、月の国へとたどり着いた。
思ったよりも近かった。
太陽の国の首都が月の国寄りの位置にあるのだろう。ここから月の国の首都まではまた一日かかるらしい。
「ずっと座ってたから身体中痛ぁい」
「すみません、ちょっと強行軍すぎましたね」
「明日からはもっと休憩とろうよ。途中で降りてさ」
「そうだな、ヒナの身体のためにもそれがいいと思うぜ」
訂正、たぶんあと三日くらいかかりそう。そんなのでいいの、とはもちろん口を挟まない。
「大きい街だねぇ~お買い物したぁい!ね、結慧さん」
「……そうね」
「では宿をとってからにしましょう」
月の国、国境の町ヤリク。
太陽の国と接しており、交易の要所として栄えている街のようだ。太陽の国の首都方面へはほとんどの旅人がここで一泊するため、宿屋、食事処が多く旅の必需品から土産物まで多くの店が軒を連ねている。
けれど、やっぱりここも活気がない。
太陽が昇らない原因が月神、と言われているせいもあるだろう。太陽の国だけでなく、その他の国の人たちも月の国を敵視しているのだとしたら。
かつて賑わっていたであろう大通りは閑散として、閉まっている店舗も目につく。宿屋も数多くあっただろうに、営業しているところはそう多くはない。
「あ、あっちには何があるんだろぉ」
「おいヒナ、危ないぜ」
大通りから分かれる細い路地。ふらふらとそちらに入り込もうとする陽菜をクラウドが制する。
「えーでもぉ、こういうところにお洒落なカフェとかあったりするじゃない?」
「路地裏がお洒落で安全なのは日本だけよ」
「そうなの?」
海外とか行ったことないからなぁ、と陽菜は素直に戻ってくる。けれど
「僕たちがついているから安全だけど?」
「そうですね、いざとなれば我々がお守りしますよ」
結慧が口を挟んだのが気に食わなかったのだろう、リュカもルイも戻ろうとした陽菜をぐいと押し留める。さっきは危ないと止めていたはずのクラウドまで「行きたいところに行っていいんだぜ」なんて。まるで子供の張り合いのよう。
結局全員で角を曲がって路地に入り込む。そこは案の定薄暗く埃っぽい。ゴミもちらほら転がっていてなにもない、日本とは違う道。
「あれ、ほんとになんにもなかったぁ」
「こんなもんだろ、こういうところは」
このまま歩いたらなにかあるかなぁ、なんて言う陽菜と、それを止める気もない男たち。海外旅行なんて結慧だって行ったことはないけれど、こういうところは犯罪者だとかスリだとかに気をつけなければならないのは知っている。
腕に自信があるから落ち着いていられるのだろうが、彼らが守るのは陽菜だけ。結慧がなにかに巻き込まれたとしてもきっと助けてはくれやしないのだろう。
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