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第二章 月の国
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しおりを挟む「では部署の、というよりは全体の説明を含めてしたほうがいいだろう」
「はい、お願いします」
まず、ここは中央役場。月の国の首都ティコにある。部署は分かれているが国と街、両方の中枢機関として存在している。
その中で特殊な位置にあるのがこの「総合管理部」
「ま、要するに何でも屋なんだ」
「別名、エンデ部長と愉快な仲間たち」
ゆかいななかまたち。
確かに魅了が解かれてみれば、こんなに明るい人たちもそういない気がするけれど。他の部署からそう言われているのならよっぽどである。それから、ラルドはもともとこの部署の出身なんだそう。だから古巣ということもあって陽菜をこの部署に入れたらしい。
「国と、ティコの街と、中央教会。その三つの橋渡しをするのがうちの部署なんだ」
この三つは関わりが深い。政治は確かに国の仕事だけれど、そこには教会も絡んでくる。なにせ国家元首は月神だから。
「え」
「あれ、知らない……?」
「えーと、あの、はい」
「異世界というのはそういう所から違うのか?面白いな。時間があれば色々と聞きたいものだ」
聞けば、この世界はどの国も国家の長は神らしい。太陽の国で説明を受けたときに神官なら話ができるって言っていたっけ。なるほど、神様と国王を兼任という感じ……?と思いきや国王はちゃんといるらしい。どういうこと。
「今度、月神様について説明する約束だもんね。その時に色々話すよ」
「はい、お願いします」
「だから部長はいつの間にソウマさんとそんなに仲良くなったんスか」
「秘密」
とにかく、国は政治をする上で教会とはどうしても関わりが生まれる。教会は教会で、祭祀や行事を行うのに人員や招待客、場所の関係で国とも街とも協議が必要になる。街はもちろん、場所の提供や街としてのイベントスケジュールが被らないように配慮する。それを昔はそれぞれでやっていたが、連絡漏れや書類の紛失が多く行事や人のダブルブッキングが相次ぎ。
そうして誕生したのが、この部署という訳。
なるほど。だからあんな雑多に色々な稟議や決裁書があったのね。
三者の橋渡しをしてそれぞれの運営が円滑に運ぶように調整するのが仕事。つまり、国、首都、教会のすべての事を理解し把握する必要があるということ。
そりゃあ激務に決まってる。
それから、この部署の出身であるラルドが宰相なんていう国の重要ポストに就くのも頷ける。ようするに、この部署は仕事のできる人間しかやっていけないのだ。
政治にも行政にも宗教にも精通して、すべての所と円滑にコミュニケーションをとり膨大な量の仕事をさばく事ができなければ入れない部署。だからずっと人員不足。そりゃあ猫の手でも借りたい状況よね。借りた猫が酷かったけど。
「部署の説明としてはだいたいこんなものだろう。疑問が出てきたら都度誰かに聞くように」
「はい、ありがとうございました」
そこまででラルドは会議室を出ていった。向かう先は聖女ご一行様のもと。この時間ならばまだ寝ているか朝食をとっているか……。それを聞いた彼のものすごく嫌そうな顔ときたら。
「世界を救う旅」と高らかにうたいながらも一流の宿に泊まり、高級品を買い漁り、豪華な食事をとる彼らの姿はどう見えるのだろう。今のところ、聖女は何かを成した訳もなく。太陽信仰を布教したといえど一時的なもので、魔獣を消したといえど積極的にそうしている事もない。ただ、観光気分で国や街を歩き気の赴くままに歩いただけ。
そんな聖女は、魅了のかかっていない人の目にはどう映り、どう思われるのだろう。
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