19 / 35
19
しおりを挟む
私達は今王城の小さなガゼボで王太子シグルスと馬車を待っている。
今日から保養地で一週間お世話になるのだ。
侍女や侍従はどちらでも良いと言われているのでそれぞれに1人づつ侍女と侍従、計4人の使用人を連れてきた。
着替えなどの荷物は先に王家の人に預けてあるのでもう着いているかもしれない。
「お久しぶりですわ」
ニコニコと(セルディ的には無表情で)上品な茶色のワンピースをまとい荷物を持ってこちらに向かって歩いてくるのはシル様だった。
「お久しぶりです…ってシル様お一人なのですか!?」
私は慌てて侍女にシル様の荷物を持つよう指示を出す。
「ありがとう。お父様が王家が用意するなら不要だろうって仰って…」
少し俯き仰ったのでお兄様も寂しげにされたのを感じたらしい。
「到着まで不便でしょう。俺の侍女をお使いください。侍従が居れば充分なので」
お兄様グッジョブ!さすが攻略対象、気が利く。
「その必要はないよ。シルの侍女は既に用意してあるからね」
そう爽やかに登場したのはシグルスだった。
さすがメイン攻略対象。タイミング良くセルディの上を行く。
そしていつの間にか愛称呼びになっている。
「シル、この保養期間のうちに公爵に妹なんかではなく君との婚約を認めさせるからね?安心していいんだよ。休暇が終わる頃には城で暮らせるからね?」
そっとシル様の両手を自身の両手で包み微笑むとシル様は真っ赤になってしまった。
「ツィルフェール公爵令嬢の表情が変わったの、俺でも分かった」
だなんてボソッと言ってくるお兄様。
この一週間でシル様の尊さと表情の変化の見極めを叩き込んでやると内心決意する。
「…で、君は…ディルアーナ…嬢……?」
人を見て言い淀んで固まらないで欲しいが2週間でかなり痩せたのだ。この反応も無理はない。
なんせ前回シグルスに会ったのは休暇に入って3日目。
まだ見た目は本人が『もしかして?』と思う程度にしか痩せてなかった。
「お久しぶりです。本日からお世話になりますわ」
ニッコリと笑うとシグルス様が「ほう」と感心したような声を上げた。
今の私はちょっとふっくらしている程度にしか太っていない。
たった2週間じゃ有り得ない痩せ方だけどダイエットに魔法を組み込むとどんどん痩せた。
そりゃもう驚く程に痩せたのでかなりスチルのディルアーナに近付いている。
「本当にキレイになったわ…頑張ったのよね。えらいわ」
シル様が褒めてくれる。
シル様には、彼女を驚かせてはならないと手紙を送った上で先日うちに遊びに来てもらっていた。
見た目がかなり変わったので人見知りを起こすかもしれないという懸念もあったからだ。
しかし彼女はダイエットの成功を祝福し、とても喜んでくれた。
「美しくなったわ!ディディ、本当にキレイよ!」
そういって美容に良いというパックをプレゼントしてくれた。
「私の従者がトロル族の血を継いでいてね、ハーブや薬草にとても詳しいの」
「トロル族…?トロールでなく、ですか?」
トロールというのは魔物の中でも上位種で知能こそ高くは無いが頑丈な皮膚を持ち、魔法を使う固体もいるという大柄な亜人種の1つである。
ゲームでは差別される表現は無かったが、現実だとエルフやドワーフなど含め亜人は差別されている。
その原因は魔物の中に亜人種がいるからに他ならない。
「トロル族というのは妖精族の一種よ。人里から離れた丘陵地帯に住んでることが多いんだけどエルフ並に薬草に詳しい一族らしいわ」
シル様曰く純粋なトロル族はホビット族のように小柄で、成人した時に小さいほど強い力を持つらしい。
力の強いトロル族は人に幸運や不運を与える特殊な魔法を使えるので昔は権力者に狙われた事もあるそうな。
だがその時、身を守る為に当然ともいえるが彼らは人に不運になる魔法をかけ、現地に来ていた権力者が受けた為に滅んだ国もあったそうだ。
その為魔物と同様だと危険視する国もあるという。
彼らの見た目は、どんな長さに切っても毛先がオレンジになる大半が真っ赤な不思議な髪と黒い大きな目、少し尖った耳をしているのでトロル族の存在を知っていれば簡単に分かるという。
ただその大きな目に小柄な体躯と女性は可愛らしい者が多い為、それなりに人と交わっていて種族全体でみるとほとんどが人との混血、時折先祖返りした者が産まれるが純粋なトロル族はもはやおとぎ話の中にしかいないとまで言われてるそうな。
「あまりメジャーな種族ではないから余り問題無いけど…気付いた人には差別されちゃうのよね。危険視されるよりはずっと良いんだけど…」
少し困ったような顔で僅かに微笑むシル様。
自身の従者が差別されることに心を痛めているらしい。
ツィルフェール公爵は、公爵家なら貴族の使用人も沢山抱えているだろうにわざわざ亜人の血を引く者をシル様の従者にあてがっている。
それも一般人が見る分には人だが知識人には蔑まれる、公爵家の面子を保ちつつそれなりの者にはシル様は冷遇されている令嬢だと示す様な特徴の亜人をわざわざ雇って。
「公爵様は…何故シル様に不遇な扱いを強いるのでしょう…」
「私が至らないから仕方ないわ。それにトロル族の彼が従者なのは不遇でもなんでもないわよ?とても能力が高くて博識で…いつも助けられているの」
そりゃ私も本音では亜人は特殊な能力や才能がある分、人より優れているとは思う。
従者として助けてくれるならとても助かるだろう。
しかし亜人はこの国では蔑まれ、軽く扱われる存在なのは簡単に変えようも無いことなのだ。
そんな出自の者をわざわざ娘の従者に当てている、その行動こそが『不遇』なのだがシル様は分かっているのかいないのか…。
なんと言えばいいか分からない気持ちを押し込めて、私は黙ってぎゅうっとシル様を抱きしめた。
今日から保養地で一週間お世話になるのだ。
侍女や侍従はどちらでも良いと言われているのでそれぞれに1人づつ侍女と侍従、計4人の使用人を連れてきた。
着替えなどの荷物は先に王家の人に預けてあるのでもう着いているかもしれない。
「お久しぶりですわ」
ニコニコと(セルディ的には無表情で)上品な茶色のワンピースをまとい荷物を持ってこちらに向かって歩いてくるのはシル様だった。
「お久しぶりです…ってシル様お一人なのですか!?」
私は慌てて侍女にシル様の荷物を持つよう指示を出す。
「ありがとう。お父様が王家が用意するなら不要だろうって仰って…」
少し俯き仰ったのでお兄様も寂しげにされたのを感じたらしい。
「到着まで不便でしょう。俺の侍女をお使いください。侍従が居れば充分なので」
お兄様グッジョブ!さすが攻略対象、気が利く。
「その必要はないよ。シルの侍女は既に用意してあるからね」
そう爽やかに登場したのはシグルスだった。
さすがメイン攻略対象。タイミング良くセルディの上を行く。
そしていつの間にか愛称呼びになっている。
「シル、この保養期間のうちに公爵に妹なんかではなく君との婚約を認めさせるからね?安心していいんだよ。休暇が終わる頃には城で暮らせるからね?」
そっとシル様の両手を自身の両手で包み微笑むとシル様は真っ赤になってしまった。
「ツィルフェール公爵令嬢の表情が変わったの、俺でも分かった」
だなんてボソッと言ってくるお兄様。
この一週間でシル様の尊さと表情の変化の見極めを叩き込んでやると内心決意する。
「…で、君は…ディルアーナ…嬢……?」
人を見て言い淀んで固まらないで欲しいが2週間でかなり痩せたのだ。この反応も無理はない。
なんせ前回シグルスに会ったのは休暇に入って3日目。
まだ見た目は本人が『もしかして?』と思う程度にしか痩せてなかった。
「お久しぶりです。本日からお世話になりますわ」
ニッコリと笑うとシグルス様が「ほう」と感心したような声を上げた。
今の私はちょっとふっくらしている程度にしか太っていない。
たった2週間じゃ有り得ない痩せ方だけどダイエットに魔法を組み込むとどんどん痩せた。
そりゃもう驚く程に痩せたのでかなりスチルのディルアーナに近付いている。
「本当にキレイになったわ…頑張ったのよね。えらいわ」
シル様が褒めてくれる。
シル様には、彼女を驚かせてはならないと手紙を送った上で先日うちに遊びに来てもらっていた。
見た目がかなり変わったので人見知りを起こすかもしれないという懸念もあったからだ。
しかし彼女はダイエットの成功を祝福し、とても喜んでくれた。
「美しくなったわ!ディディ、本当にキレイよ!」
そういって美容に良いというパックをプレゼントしてくれた。
「私の従者がトロル族の血を継いでいてね、ハーブや薬草にとても詳しいの」
「トロル族…?トロールでなく、ですか?」
トロールというのは魔物の中でも上位種で知能こそ高くは無いが頑丈な皮膚を持ち、魔法を使う固体もいるという大柄な亜人種の1つである。
ゲームでは差別される表現は無かったが、現実だとエルフやドワーフなど含め亜人は差別されている。
その原因は魔物の中に亜人種がいるからに他ならない。
「トロル族というのは妖精族の一種よ。人里から離れた丘陵地帯に住んでることが多いんだけどエルフ並に薬草に詳しい一族らしいわ」
シル様曰く純粋なトロル族はホビット族のように小柄で、成人した時に小さいほど強い力を持つらしい。
力の強いトロル族は人に幸運や不運を与える特殊な魔法を使えるので昔は権力者に狙われた事もあるそうな。
だがその時、身を守る為に当然ともいえるが彼らは人に不運になる魔法をかけ、現地に来ていた権力者が受けた為に滅んだ国もあったそうだ。
その為魔物と同様だと危険視する国もあるという。
彼らの見た目は、どんな長さに切っても毛先がオレンジになる大半が真っ赤な不思議な髪と黒い大きな目、少し尖った耳をしているのでトロル族の存在を知っていれば簡単に分かるという。
ただその大きな目に小柄な体躯と女性は可愛らしい者が多い為、それなりに人と交わっていて種族全体でみるとほとんどが人との混血、時折先祖返りした者が産まれるが純粋なトロル族はもはやおとぎ話の中にしかいないとまで言われてるそうな。
「あまりメジャーな種族ではないから余り問題無いけど…気付いた人には差別されちゃうのよね。危険視されるよりはずっと良いんだけど…」
少し困ったような顔で僅かに微笑むシル様。
自身の従者が差別されることに心を痛めているらしい。
ツィルフェール公爵は、公爵家なら貴族の使用人も沢山抱えているだろうにわざわざ亜人の血を引く者をシル様の従者にあてがっている。
それも一般人が見る分には人だが知識人には蔑まれる、公爵家の面子を保ちつつそれなりの者にはシル様は冷遇されている令嬢だと示す様な特徴の亜人をわざわざ雇って。
「公爵様は…何故シル様に不遇な扱いを強いるのでしょう…」
「私が至らないから仕方ないわ。それにトロル族の彼が従者なのは不遇でもなんでもないわよ?とても能力が高くて博識で…いつも助けられているの」
そりゃ私も本音では亜人は特殊な能力や才能がある分、人より優れているとは思う。
従者として助けてくれるならとても助かるだろう。
しかし亜人はこの国では蔑まれ、軽く扱われる存在なのは簡単に変えようも無いことなのだ。
そんな出自の者をわざわざ娘の従者に当てている、その行動こそが『不遇』なのだがシル様は分かっているのかいないのか…。
なんと言えばいいか分からない気持ちを押し込めて、私は黙ってぎゅうっとシル様を抱きしめた。
129
あなたにおすすめの小説
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます
水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか?
私は、逃げます!
えっ?途中退場はなし?
無理です!私には務まりません!
悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。
一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。
悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。
潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。
悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました
タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。
ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」
目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。
破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。
今度こそ、泣くのは私じゃない。
破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。
乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる
アミ100
ファンタジー
国立大学に通っていた理系大学生カナは、あることがきっかけで乙女ゲーム「Amour Tale(アムール テイル)」のヒロインとして転生する。
自由に生きようと決めたカナは、あえて本来のゲームのシナリオを無視し、実践的な魔法や剣が学べる魔術学院への入学を決意する。
魔術学院には、騎士団長の息子ジーク、王国の第2王子ラクア、クラスメイト唯一の女子マリー、剣術道場の息子アランなど、個性的な面々が在籍しており、楽しい日々を送っていた。
しかしそんな中、カナや友人たちの周りで不穏な事件が起こるようになる。
前世から持つ頭脳や科学の知識と、今世で手にした水属性・極闇傾向の魔法適性を駆使し、自身の過去と向き合うため、そして友人の未来を守るために奮闘する。
「今世では、自分の思うように生きよう。前世の二の舞にならないように。」
追放された悪役令嬢は、辺境の谷で魔法農業始めました~気づけば作物が育ちすぎ、国までできてしまったので、今更後悔されても知りません~
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢リーゼリット・フォン・アウグストは、婚約者であるエドワード王子と、彼に媚びるヒロイン・リリアーナの策略により、無実の罪で断罪される。「君を辺境の地『緑の谷』へ追放する!」――全てを失い、絶望の淵に立たされたリーゼリット。しかし、荒れ果てたその土地は、彼女に眠る真の力を目覚めさせる場所だった。
幼い頃から得意だった土と水の魔法を農業に応用し、無口で優しい猟師カイルや、谷の仲間たちと共に、荒れ地を豊かな楽園へと変えていく。やがて、その成功は私欲にまみれた王国を揺るがすほどの大きなうねりとなり……。
これは、絶望から立ち上がり、農業で成り上がり、やがては一国を築き上げるに至る、一人の令嬢の壮大な逆転物語。爽快なざまぁと、心温まるスローライフ、そして運命の恋の行方は――?
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる