追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし

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27 今の暮らし

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久々に王子だった頃の夢を見た。
平民生活ももうすぐ一年経つ。
あの頃は良かった、なんて年寄りくさい事を思いながら仕事へ行く準備をする。

机の上にある保存がきいて安い代わりに硬くてマズいパンにも随分と慣れた。
それを一切れはかじり、二切れほど袋に詰めて鞄に入れる。
「じゃあ行ってくる」
寝室でまだ眠るリーナに声をかけ俺は家を出た。

向かう先は鉱山だ。
元王子だから読み書きも余裕だし知識もあるから平民の仕事など余裕で出来ると思っていた。
しかし、ことごとく断られた。
嫌がらせの類いかと勘繰るほどどこも俺を雇ってくれなかった。

今なら理由が分かる。
元王子だという傲慢さや横柄さが出ていたのだろう。
結果、食べるものに困り持って来た衣服は全て売ってしまった。
ウィルの買った下着が着心地悪いだの、服がショボいだの、そんな贅沢な事はすぐに言えなくなった。

俺の態度が悪かったと分かり改めたが他の仕事の給与だと生活していけそうになかった。
結果、自ら重労働をしている。
金が足りなくなる理由はリーナだ。
俺はこのマズいパンを食べているがリーナはここに来たばかりの頃にウィルが買ったレベルのパンでないと食べられない。
他にも平民のちょっとしたご馳走ってレベルの食事でないと暴言が酷くて家に居るのが辛くなる。
王子だった俺より贅沢なままなんて最低だ。
そんなのだから家の事だって殆ど俺がしている。


先日視察なのかナヤードたち数人の侍従だった者たちが居たので手を振ったが皆こちらを見て首を傾げてそのまま行ってしまった。
俺だと分からなかったらしい。
…無理もない。

暗く狭い鉱山の仕事のせいで姿勢はすっかり悪くなった。
日にあまり当たらないので青白いのに妙に筋肉質、頬はコケてガリガリ、髪はバサバサ…まるで罪人だ。

いや、最近思うんだ。
これなら重労働を科せられている罪人の方がマシなんじゃないかって。
だってアイツらは俺より長時間働かされるが食事は用意してもらえる。
食べてるパンは同じようなもので、あっちはスープまで付いているのを知ってしまった。

俺は普通の鉱夫としての時間だけとはいえキツい鉱山で働くだけじゃない。
帰れば洗濯に掃除に料理…色々家の事をしなくちゃいけない。
口を開けば嘆きや罵倒、不平不満しか言わずに臥せってばかりのリーナの世話が無ければもう少し楽だろうにって思うんだよ。

うっかり金を置いていたら自分だけ美味いものを食いやがる女だ。
一度シャワーとトイレを機能させる魔石購入の為に貯めた纏まった金を置いていた時なんかエメラルドを買ってきやがった!
買い物の準備に少し目を離した隙にだ。

宝石なんかあったって使い道なんかないし小さいものでも今の俺達にはとんでもなく高価な物なのに!
直ぐに返しに行ったが取り合ってもらえず質に持って行ったが元の金額に戻るわけもなく…お陰で予定より小さな魔石しか買えずシャワーのお湯は以前の半分くらいの量しか出てくれないから冬が寒い。

リーナがもっと節約してくれたら…せめて働いてくれたら…。
可愛らしく思っていたリーナの容姿は俺とは反対に太ってしまい肌も髪も荒れて酷く醜い。
なぜこんな女を養い世話をしているのか分からない。
ただ俺が家出をすればリーナは死刑になる。
見殺しにするようなもん…いや、殺すってことになる。
でもずっと今のままの生活も…いっそ…。


そんな堂々巡りの毎日だった。

どこからか風に乗って飛んできた新聞が足に絡みつく。
鬱陶しく思ったが引き剥がした時に目に入った見出しに衝撃が走った。
『ディボラ王女、使節団と交流』
ディボラ王女!?ディボラは侯爵令嬢だ!
兄上は既婚!どういう事だ?

広げて読むと半年前に侯爵令嬢でありながら王籍を与えられた令嬢だと説明があった。
王太子のサポートをしていた第二王子の元婚約者で昔から長らく共に王家を助けていたこと、第二王子が死亡した後も変わらずその役目を引き継いで手助けしていたが侯爵令嬢の身分だと困ることもあり王子妃になる予定だったので王籍を与えられることになったということ、そしてとても優秀ということ…。

「ハハ…俺は…私はもう…死人として扱われていたのか…」

いつからか両の目から涙がボロボロと溢れていた。
気付けば今の生活が当たり前になっていた。
だが何故私はリーナにこんなにも尽くしていたんだろう。
ただ惰性で生きていた。
でも1人ならもっと楽な仕事でもっと楽に生きられるはずだ。
こんな惨めな…こんな辛い日々、もう嫌だ…。

逃げたい気持ちが、人を殺す罪悪感を上回った瞬間だった。



一生を罪悪感に苦しめられる代わりに体が楽になったのと、何も考えずに済むけど体が辛いあの生活を続けるのと、どちらが本当の意味で楽だったのか…今でも私は分からずにいる。
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