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☆5 異世界にも思春期はあるらしい
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異世界転生して10年経った。
来週で15歳、誕生日には教会へ洗礼式に行く。
俺は5歳の頃に書いた紙切れを取り出し眺めていた。
文字の練習の合間の落書き…のフリをして日本語で乙女ゲームについて覚えてる事をメモった紙だ。
『15歳の何とか式で光魔法』
『特別枠で入学してゲームスタート』
『ライバル女はムラサキ毛で赤目』
『攻略対象は多分6人』
いや…もっと情報無かったのか?5歳の俺よ…この程度の内容は覚えてるわ。
まぁ…一回もやったこと無いゲームだししゃーないか。
当時、「俺は女の子になったんだな」って性自認が変わったのを自覚した事で思考もそのうちソフィアになるんだって思ってた。
ずっと男として生きてきたのに体が変わっただけで自分が女だって思うなんてソフィアになるからだって思ったんだ。
だから俺は俺で無くなる前に子供の頃に憧れた両親に沢山抱っこしてもらう、とか、一緒に手を繋いでお出かけする、とか色々叶えて過ごした。
記憶を無くした娘が甘えてくれると二人も喜んで相手してくれたしな。
あと前の人生ではほとんどしてなかった勉強もちゃんとした。
貴族ならマナーとかその辺はいると思ったし。
どれも頑張れば両親が喜んでくれるし褒めてもくれたから前世と違って嬉しくて頑張れたんだよな。
いつ俺じゃ無くなっても悔いが無いように、いつ消えても良いように…って思ったりしてたのに、ずっと俺の思考のままで生きてるんだよなぁ~。あれー?
「ソフィア様、奥様がお呼びですよ」
物思いにふけっていると代々うちの男爵家に仕えてくれてるおばちゃんメイドのヨナが呼びに来た。
部屋に行くとドレスを着たトルソーが5体ほど並んでいる。
「来週、洗礼式でしょ?どれを着ていくか決めましょう」
トルソーの間にはお母様と二人のメイドがいた。
こちらも長年仕えてくれてる家の子で、領内に実家があるが住み込みで働いてくれている。(ヨナは通い)
針子も出来る双子姉妹、アクアとマリンだ。
ドドンと並んでいるドレスはどれも古いけど男爵家には似つかわしくないような立派な物。どれも古いけど。
実はメロウ男爵家は無条件の継承権と小さいけど自領を持つ建国当時からある歴史ある家らしい。
他の男爵家は当代限りだったり継承する場合何か条件を満たさなきゃいけないらしいが子爵家…そもすれば伯爵家と同じ扱いをされる少し特殊な男爵家だ。
爵位は低いが旧家なせいで品位は高いという面倒くさい家である。無茶苦茶だ。
この事を知ったときは
(攻略対象と結婚ってなったときに身分差云々を埋める為のご都合設定なんだろな)
とか思ってたけど、そんな言い訳みたいな設定に沿って生きるのはケッコーしんどい。
こういう注目度が高いイベントでは格式高い服を着なきゃいけなくなるからだ。
でもウチ程度の収入じゃちょっとした夜会やお茶会用の安いドレスならいざ知らず、格式高いドレスなんて毎度新調してられない。
なのでサイズ調整して、あとデザインを簡単に手直しして何代も着回している。
「ソフィアの髪は新緑の色だから華やかにこのカナリア色のドレスが良いと思うのだけどどうかしら?」
「お嬢様、私はこのルビーレッドが良いと思うのです!」
「私は少し落ち着いたリーフグリーンが良いかと!」
それぞれが推しのドレスとそれをベースにしたリメイク画を手にしている。
俺は迷うことなく選んだ。
「ワタシはリーフグリーンのを選びます!」
俺はこの洗礼式で希少属性の光持ちだと判明する。
一部の高位貴族や王族の属性発表で新聞に載ってた写真は洗礼式の格好だった。
で、希少属性が発見されても新聞には載るらしい。
ってことは今選んでるドレス姿の俺が新聞に載る事になる。
春から特例で高位貴族が集まる学校へ入学する設定だったからどうしても記憶に残るような目立つ色のドレスにはしたくないのだ。
なんせ『試合』だなんて名目でいちゃもん付けてくるモブとの対戦があるゲームだ。
少しでも戦闘を避けるため無難な目立たない服にしとくに越したことない。
かといって候補に上がらなかった暗い色は洗礼式には暗すぎて相応しくない。
だから落ち着いた色のリーフグリーンは俺の髪にも合うし最適な気がした。
「あと、リメイクはお母様の描いた案みたいにシンプルめなものが良いです」
お母様のリメイク画はガラスのビーズが縫い付けられた薄布を使った大人っぽいものだ。
しかし全員首を傾げる。
「「「このドレスにこのデザインは地味すぎない?」ですか?」」
「え…と、大人っぽいのが良いなって」
双子のデザイン画はそれぞれレースをあしらってたりリボンを使っていたり中々に可愛らしい。
15歳の少女だからこそ着られる可愛らしさと華やかさのあるデザインが描かれていた。
お母様の描いた物だけ比較的シンプルなデザイン画となっているのは、カナリア色のドレスはベースが既に可愛らしい系だからだ。
でもココは乙女ゲームの世界だからな。
男に媚びてるとか言われたらたまったもんじゃない。
「大人っぽい、落ち着いたのって素敵かなって…」
目を反らしながらになってしまったが、もう一度言うとお母様は指をアゴにそえてこちらをマジマジと見つめてくる。
「…髪型はどんなものを考えているの?」
「え?えと…1つに纏めたやつ…とか?ヨナがよくお茶会に行くお母様にしてるアレっぽい感じで…」
おばちゃんメイドのヨナは手先が器用で髪結いも得意だ。
お母様がお茶会に参加する時によくしてもらっているのは側面を編み込み、1つに纏めてスッキリとアップにした髪型だった。
「…ソフィアは私より髪が短いから纏めると本当にシンプルな仕上がりになるかもしれないわよ?」
「「奥様!?」」
お母様の、俺のリクエストを受け入れると取れる言葉に双子は咎めるような声を上げた。
「それでもいいから大人っぽくして欲しい」
今度は目を合わせて伝える。伝われ俺の本気っ!
「アクア、マリン、ソフィアの言う通りに仕上げてあげて」
「「でも奥様…」」
先ほどと違い二人共しょぼくれている。
「背伸びをしたい年頃なのよ。ね?」
ちょっと困った様な、諦めたような顔でウインクしてきたお母様に俺はコクリと頷いた。
(思春期の反抗期と思われてる?)
そう少し思ったけど都合が良いからそういう事にしておいた。
来週で15歳、誕生日には教会へ洗礼式に行く。
俺は5歳の頃に書いた紙切れを取り出し眺めていた。
文字の練習の合間の落書き…のフリをして日本語で乙女ゲームについて覚えてる事をメモった紙だ。
『15歳の何とか式で光魔法』
『特別枠で入学してゲームスタート』
『ライバル女はムラサキ毛で赤目』
『攻略対象は多分6人』
いや…もっと情報無かったのか?5歳の俺よ…この程度の内容は覚えてるわ。
まぁ…一回もやったこと無いゲームだししゃーないか。
当時、「俺は女の子になったんだな」って性自認が変わったのを自覚した事で思考もそのうちソフィアになるんだって思ってた。
ずっと男として生きてきたのに体が変わっただけで自分が女だって思うなんてソフィアになるからだって思ったんだ。
だから俺は俺で無くなる前に子供の頃に憧れた両親に沢山抱っこしてもらう、とか、一緒に手を繋いでお出かけする、とか色々叶えて過ごした。
記憶を無くした娘が甘えてくれると二人も喜んで相手してくれたしな。
あと前の人生ではほとんどしてなかった勉強もちゃんとした。
貴族ならマナーとかその辺はいると思ったし。
どれも頑張れば両親が喜んでくれるし褒めてもくれたから前世と違って嬉しくて頑張れたんだよな。
いつ俺じゃ無くなっても悔いが無いように、いつ消えても良いように…って思ったりしてたのに、ずっと俺の思考のままで生きてるんだよなぁ~。あれー?
「ソフィア様、奥様がお呼びですよ」
物思いにふけっていると代々うちの男爵家に仕えてくれてるおばちゃんメイドのヨナが呼びに来た。
部屋に行くとドレスを着たトルソーが5体ほど並んでいる。
「来週、洗礼式でしょ?どれを着ていくか決めましょう」
トルソーの間にはお母様と二人のメイドがいた。
こちらも長年仕えてくれてる家の子で、領内に実家があるが住み込みで働いてくれている。(ヨナは通い)
針子も出来る双子姉妹、アクアとマリンだ。
ドドンと並んでいるドレスはどれも古いけど男爵家には似つかわしくないような立派な物。どれも古いけど。
実はメロウ男爵家は無条件の継承権と小さいけど自領を持つ建国当時からある歴史ある家らしい。
他の男爵家は当代限りだったり継承する場合何か条件を満たさなきゃいけないらしいが子爵家…そもすれば伯爵家と同じ扱いをされる少し特殊な男爵家だ。
爵位は低いが旧家なせいで品位は高いという面倒くさい家である。無茶苦茶だ。
この事を知ったときは
(攻略対象と結婚ってなったときに身分差云々を埋める為のご都合設定なんだろな)
とか思ってたけど、そんな言い訳みたいな設定に沿って生きるのはケッコーしんどい。
こういう注目度が高いイベントでは格式高い服を着なきゃいけなくなるからだ。
でもウチ程度の収入じゃちょっとした夜会やお茶会用の安いドレスならいざ知らず、格式高いドレスなんて毎度新調してられない。
なのでサイズ調整して、あとデザインを簡単に手直しして何代も着回している。
「ソフィアの髪は新緑の色だから華やかにこのカナリア色のドレスが良いと思うのだけどどうかしら?」
「お嬢様、私はこのルビーレッドが良いと思うのです!」
「私は少し落ち着いたリーフグリーンが良いかと!」
それぞれが推しのドレスとそれをベースにしたリメイク画を手にしている。
俺は迷うことなく選んだ。
「ワタシはリーフグリーンのを選びます!」
俺はこの洗礼式で希少属性の光持ちだと判明する。
一部の高位貴族や王族の属性発表で新聞に載ってた写真は洗礼式の格好だった。
で、希少属性が発見されても新聞には載るらしい。
ってことは今選んでるドレス姿の俺が新聞に載る事になる。
春から特例で高位貴族が集まる学校へ入学する設定だったからどうしても記憶に残るような目立つ色のドレスにはしたくないのだ。
なんせ『試合』だなんて名目でいちゃもん付けてくるモブとの対戦があるゲームだ。
少しでも戦闘を避けるため無難な目立たない服にしとくに越したことない。
かといって候補に上がらなかった暗い色は洗礼式には暗すぎて相応しくない。
だから落ち着いた色のリーフグリーンは俺の髪にも合うし最適な気がした。
「あと、リメイクはお母様の描いた案みたいにシンプルめなものが良いです」
お母様のリメイク画はガラスのビーズが縫い付けられた薄布を使った大人っぽいものだ。
しかし全員首を傾げる。
「「「このドレスにこのデザインは地味すぎない?」ですか?」」
「え…と、大人っぽいのが良いなって」
双子のデザイン画はそれぞれレースをあしらってたりリボンを使っていたり中々に可愛らしい。
15歳の少女だからこそ着られる可愛らしさと華やかさのあるデザインが描かれていた。
お母様の描いた物だけ比較的シンプルなデザイン画となっているのは、カナリア色のドレスはベースが既に可愛らしい系だからだ。
でもココは乙女ゲームの世界だからな。
男に媚びてるとか言われたらたまったもんじゃない。
「大人っぽい、落ち着いたのって素敵かなって…」
目を反らしながらになってしまったが、もう一度言うとお母様は指をアゴにそえてこちらをマジマジと見つめてくる。
「…髪型はどんなものを考えているの?」
「え?えと…1つに纏めたやつ…とか?ヨナがよくお茶会に行くお母様にしてるアレっぽい感じで…」
おばちゃんメイドのヨナは手先が器用で髪結いも得意だ。
お母様がお茶会に参加する時によくしてもらっているのは側面を編み込み、1つに纏めてスッキリとアップにした髪型だった。
「…ソフィアは私より髪が短いから纏めると本当にシンプルな仕上がりになるかもしれないわよ?」
「「奥様!?」」
お母様の、俺のリクエストを受け入れると取れる言葉に双子は咎めるような声を上げた。
「それでもいいから大人っぽくして欲しい」
今度は目を合わせて伝える。伝われ俺の本気っ!
「アクア、マリン、ソフィアの言う通りに仕上げてあげて」
「「でも奥様…」」
先ほどと違い二人共しょぼくれている。
「背伸びをしたい年頃なのよ。ね?」
ちょっと困った様な、諦めたような顔でウインクしてきたお母様に俺はコクリと頷いた。
(思春期の反抗期と思われてる?)
そう少し思ったけど都合が良いからそういう事にしておいた。
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