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☆6 ゲームが始まるらしい

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見覚えのある制服を来て、俺は部屋の鏡を見る。
あの落としたアクリルキーホルダーに描いてあった制服と同じだな、と少しおぼろげになったイラストを思い出した。
「いってきます」
机の上に飾った家族写真に言って部屋を出ると学園へと向かう。

…って言っても道路を挟んですぐ向かいだ。
ゲームの舞台となる『王立ロット高位貴族魔法学園』は全寮制の学校だった。
伯爵家以上の一定以上の魔力がある子息子女が通う所だが、俺みたいな光属性持ちは特待生として迎え入れられる事になっているらしい。

部屋は全員個室。
なんと前世の俺が住んでたアパートより広い。
しかも各部屋にトイレとシャワールーム(浴槽付)、ミニキッチンまで付いているっていうんだから…なぁ。

あと洗濯は寮の職員さんに頼める。
掃除も予約すりゃ頼めるそうだ。
んで朝夜の食事は基本メニューなら食堂で自由に頼めるっと。
全部頼める…。

食堂も基本メニューっつっても何種類も用意されていたし、毎日変わるらしい。
昨日の夜行ったけど美味かった。
ついおかわりしてしまった。

だから有料メニューって何なんだと思ったら取り寄せが必要なものとかスゴい高級食材メニュー…俺には縁が無さそうだぜ。
なんつーか…高位貴族の学校だけあって至れり尽くせりっつーか…食事、家より豪華だったわ。

全寮制の名目というか理由は『人に仕えられる立場となる者だからこそ、自身の事を自分で出来る自立した生活を経験する』だそうだ。
自分で…何するってんだ?着替えと風呂か?そんなもんするのが自立って高位貴族やばくねーか?


学校の正面に来ると見たことある景色になった。
前世で2次元で見た景色だ。
広告の背景画にこの学校はよく出てきた。
(ホントにゲームの世界なんだなぁ)
なんて改めて思っていると何やら視線を感じる。
周りに目をやるとそれぞれ知り合いと登校しているらしい。

そして気付く。
俺の明るい緑の髪はめちゃくちゃ珍しいのではないか、という事に。
だーれもこんな目立つ髪色してない。
日本の感覚で言えば、そりゃ色んな髪色があってカラフルだけど、どれもそれなりに落ち着いてると言うか無難というか…モブゆえの主張の無さがあって、そんな中だと俺はものすごく目立ってる。

あんなにドレスやらに気を配ったのに髪の毛でこんな目立つとは誤算だ。
とりあえず入学式定番のフラグを立てないように全力を尽くさなけりゃならない。
定番といえば・迷子!・ぶつかる!・戦闘!
…この辺りだな。

迷子は何人も歩いてるし案内の人が何人も立ってるから大丈夫だろう。
ぶつかって戦闘とかの流れに気を付ければいいか、と視線をあちこちにやっていると、後ろが少し騒がしい。
振り返ると俺と同じくらい目を引く紫の髪をした美人…もとい悪役令嬢が登校してきたとこだった。

一人歩く彼女と目が合う。
(しまった!悪役令嬢とチュートリアルがあるゲームか!?)
一瞬目が泳ぐ俺に、彼女は…なんと微笑みかけてきた。

一瞬うっと息が詰まる。
だって超美人!めっちゃ俺好み!欲を言えばもーちょっとメリハリボディが好きだけど、乙女ゲームにギャルゲーのスタイルを求めても居るわけ無いわな。

じゃ、なくて。
戦闘を避けねば!と考えた俺の口から思わず出たのは上ずった声での朝の挨拶だった。

「! えぇ、おはよう。…ねぇ、あなた。もしかして光属性のメロウ男爵家のご令嬢かしら?」
思っていた以上ににこやかな挨拶が帰ってくる。
「そうです!ご存知頂いていて光栄ですワ。ソフィア・メロウと申しますノ」
ちょっと緊張しちゃうのは許して欲しい。
「私はリザベラ・ヘンダーセルよ。実は闇属性なの。希少属性同士、仲良くしてくださると嬉しいわ」

そう言いながら握手の為に差し出してくれた手はしなやかで柔らかく俺の顔は緩んでいたかもしれない。
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