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★6 元カレの思い出
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声色で彼がまた私を悪者にしているのが分かった。
気取られないよう小さくため息をついてから軽く目を伏せ声の主に向かって軽くカーテシーをする。
「おはようございます。セイン様」
セイン第二王子。私の婚約者だ。
深い藍色の髪に親しみを感じる茶色の目をした無駄に見目の良い剣が得意な王子様。
嫌いなのよね、コイツ。
私の前世の学生時代の元彼となんか似てるから。
もちろんまんまな訳じゃない。
元が創作世界だからかセインの方が全体的にキレイだ。
等身だって流石にここまでスラッとしてなかった。
それでも日本人に変換したら絶対アイツになるってくらいには似ている。
大学でも一際目を引いていた彼に告白された事で私はコロッと恋に堕ちた。
便利屋にするために彼女という肩書を付けてきたのだと気付いたのは別れてから。
飴と鞭を使い分ける言葉や態度に騙され散々尽くしてしまった。
代返なんて可愛いものでレポートどころか卒論の叩き台、就活のエントリーシート、何でも『手伝う』という形で私が殆ど押し付けられていた。
卒業まで付き合っていたら卒論は叩き台だけでなく仕上げまでやらされていたかもしれない。
あと一人暮らしの彼の部屋の合鍵を渡されていた。
新婚気分を彷彿させる彼の言葉に浮かれて家政婦さんよろしく家事もさせられていた。
ちなみにお泊りは殆ど無し。
理由は浮気三昧してたから。
私は滅多に泊めてくれなかったくせに他の女は気軽に泊めていたのだ。
でもお泊りの痕跡を見つけても彼には姉がいて、実際お家デート(という名の家事をしにいってた)日に何度か遭遇したことがあるくらい泊まりに来ていたから(立地が彼の姉にとって都合良かったらしい)怪しい物証は全て姉の物だと言い張っていたし、口が上手くて騙されていた。…いや、彼を信じるために目を瞑っていた。
ただ、浮気については他の女とデートしてる現場に遭遇して問い詰めた事が何度かある。
が、「言い寄られて少し余所見してしまった。君の良さを再確認しただけになったよ」と言われるのだ。
その度に彼の言葉を無理やり信じた事にして飲み込んでしまっていた。
許すとかけてくれる「君は本当に理想の彼女だよ。結婚しようね」って言葉が嬉しくて…。
そんな洗脳されているような関係だったのに別れた理由は私の就職先に口を出してきたことが切っ掛けだった。
彼の内定先よりずっと上の一流企業から内定を貰えた時、結婚に支障が出るから辞退しろ、しないなら別れると言われたのだ。
第一志望に内定が貰えた私は辞退だけは嫌だと拒んだ。
すると怒った彼に「別れるから連絡してくるな」と着拒にSNS類のブロックを喰らった。
学校では無視され、連絡が付かずガックリと落ち込み「辞退すべきだったのか」と考え…た時に急に目が醒めた。
『まだ結婚してない口約束の段階で私の人生完全に変わるような事に無責任に口出ししてくる男、いる?あの男の為に人生大きく変えて後悔しない?』って。
そこから一気に冷静になって、利用するために復縁要請がある気がして…で、実際に翌週には超!上からの態度で復縁要請があった。
で、完全に冷めたのだ。むしろ怒りも湧いた。
多分入学してから3年ほど付き合っていた(便利屋にしていた)から別れて相当不便を感じたんだろう。
私が拗ねている、と決めつけているのもあって復縁要請は本当にしつこかった。
「おい!聞いているのか?」
そーそー、なんかこんな風にえらっそーに言う男だったのよ…あ。
「申し訳ありません、途中から考え事をしておりました」
私、王子にお小言貰ってる最中だったわ。
伏せていた目を少し横にやるとオロオロとしているソフィがいる。
「あのっ…!入学式!始まっちゃいませんか?!」
その声に王子も「あっ」と言わんばかりの表情を浮かべたので「まさに私の考え事の内容です」と伝えてみる。
「おまっ…気付いていたなら早く声に出せ!」
セイン様がキョロキョロと周りを見ている隙に視線で辺りを見回すと先程までパラパラと歩いていた人たちが居なくなっている。
懐中時計を開くと式の開始まであと5分も無かった。
でも小走りで行けば間に合うはずだ。
「では失礼します。ソフィ、走って行きましょ」
「そうしましょう!では王子様、失礼します!」
ソフィと並んではしたなくない程度に駆けていく。
あとに残ったのは
「いじ…め…られてたのでは、無かったのか?」
そう戸惑い呟くセイン王子だけだった。
気取られないよう小さくため息をついてから軽く目を伏せ声の主に向かって軽くカーテシーをする。
「おはようございます。セイン様」
セイン第二王子。私の婚約者だ。
深い藍色の髪に親しみを感じる茶色の目をした無駄に見目の良い剣が得意な王子様。
嫌いなのよね、コイツ。
私の前世の学生時代の元彼となんか似てるから。
もちろんまんまな訳じゃない。
元が創作世界だからかセインの方が全体的にキレイだ。
等身だって流石にここまでスラッとしてなかった。
それでも日本人に変換したら絶対アイツになるってくらいには似ている。
大学でも一際目を引いていた彼に告白された事で私はコロッと恋に堕ちた。
便利屋にするために彼女という肩書を付けてきたのだと気付いたのは別れてから。
飴と鞭を使い分ける言葉や態度に騙され散々尽くしてしまった。
代返なんて可愛いものでレポートどころか卒論の叩き台、就活のエントリーシート、何でも『手伝う』という形で私が殆ど押し付けられていた。
卒業まで付き合っていたら卒論は叩き台だけでなく仕上げまでやらされていたかもしれない。
あと一人暮らしの彼の部屋の合鍵を渡されていた。
新婚気分を彷彿させる彼の言葉に浮かれて家政婦さんよろしく家事もさせられていた。
ちなみにお泊りは殆ど無し。
理由は浮気三昧してたから。
私は滅多に泊めてくれなかったくせに他の女は気軽に泊めていたのだ。
でもお泊りの痕跡を見つけても彼には姉がいて、実際お家デート(という名の家事をしにいってた)日に何度か遭遇したことがあるくらい泊まりに来ていたから(立地が彼の姉にとって都合良かったらしい)怪しい物証は全て姉の物だと言い張っていたし、口が上手くて騙されていた。…いや、彼を信じるために目を瞑っていた。
ただ、浮気については他の女とデートしてる現場に遭遇して問い詰めた事が何度かある。
が、「言い寄られて少し余所見してしまった。君の良さを再確認しただけになったよ」と言われるのだ。
その度に彼の言葉を無理やり信じた事にして飲み込んでしまっていた。
許すとかけてくれる「君は本当に理想の彼女だよ。結婚しようね」って言葉が嬉しくて…。
そんな洗脳されているような関係だったのに別れた理由は私の就職先に口を出してきたことが切っ掛けだった。
彼の内定先よりずっと上の一流企業から内定を貰えた時、結婚に支障が出るから辞退しろ、しないなら別れると言われたのだ。
第一志望に内定が貰えた私は辞退だけは嫌だと拒んだ。
すると怒った彼に「別れるから連絡してくるな」と着拒にSNS類のブロックを喰らった。
学校では無視され、連絡が付かずガックリと落ち込み「辞退すべきだったのか」と考え…た時に急に目が醒めた。
『まだ結婚してない口約束の段階で私の人生完全に変わるような事に無責任に口出ししてくる男、いる?あの男の為に人生大きく変えて後悔しない?』って。
そこから一気に冷静になって、利用するために復縁要請がある気がして…で、実際に翌週には超!上からの態度で復縁要請があった。
で、完全に冷めたのだ。むしろ怒りも湧いた。
多分入学してから3年ほど付き合っていた(便利屋にしていた)から別れて相当不便を感じたんだろう。
私が拗ねている、と決めつけているのもあって復縁要請は本当にしつこかった。
「おい!聞いているのか?」
そーそー、なんかこんな風にえらっそーに言う男だったのよ…あ。
「申し訳ありません、途中から考え事をしておりました」
私、王子にお小言貰ってる最中だったわ。
伏せていた目を少し横にやるとオロオロとしているソフィがいる。
「あのっ…!入学式!始まっちゃいませんか?!」
その声に王子も「あっ」と言わんばかりの表情を浮かべたので「まさに私の考え事の内容です」と伝えてみる。
「おまっ…気付いていたなら早く声に出せ!」
セイン様がキョロキョロと周りを見ている隙に視線で辺りを見回すと先程までパラパラと歩いていた人たちが居なくなっている。
懐中時計を開くと式の開始まであと5分も無かった。
でも小走りで行けば間に合うはずだ。
「では失礼します。ソフィ、走って行きましょ」
「そうしましょう!では王子様、失礼します!」
ソフィと並んではしたなくない程度に駆けていく。
あとに残ったのは
「いじ…め…られてたのでは、無かったのか?」
そう戸惑い呟くセイン王子だけだった。
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