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10 食事
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夕暮れ。
森に似つかわしく無い良い匂いが辺りに漂う。
今夜は少し暖かいので寝床は木の上だ。
いい感じの大木があったので魔法で切り倒した木で何枚か板を作り、寝てる間に落ちないよう同じ高さの枝の間に渡してある。
簡易ツリーハウスだ。
2本の縄と薪ほどの木の枝で作った梯子をロープに結び、引っ掛けて垂らせば昇り降りも楽々できる。
良い匂いはその木の下から漂っていた。
「美味しいわぁ♪シェリーちゃん天才!」
スープに入れた干し肉からたっぷりと旨味が出て、調味料は岩塩だけなのにコンソメスープに近い味わいのスープとなっていた。
他には下茹でしてアクを抜いた野草が入っている。
美味しさでいうと…正直少し物足りない程度だ。
だが。
「美味しいのはこっちよ!お母様も食べた!?」
道中見つけたハーブと塩で焼いたニードルディアの串焼きはジューシーで、柔らかな肉が最高に美味しかった。
牛肉に似ているがもう少し旨味が濃いというのだろうか。
見た目は赤身なのに霜降り肉の様に柔らかく、噛むたびじゅわっと肉汁がスープのように口に溢れる。
割とメジャーな肉なので何度も食べたことがあるはずなのにこんなに美味しいのは初めてだった。
侯爵家で出されていたニードルディアももちろん美味しかったのだが…こんなにジューシーな肉汁も無ければ、焼いただけでここまでの柔らかさもない。
もう少し独特の臭みもあり、ステーキなどシンプルな料理の時は牛肉の方が好きだった。
「そりゃ狩りたてだもの~。街で売ってる魔獣肉と鮮度が違うし当然よ。それよりこれも久々だけどフッカフカで美味しいわぁ~♪」
お母様がハフハフと食べているのは蜘蛛の例のアレである…。
確かに香ばしい匂いは悪くない。
でもマサオの記憶を知るまで蜘蛛は大の苦手だったのだ。
食べる勇気が出ない。
「採るとこ見たから抵抗あるのかもだけど本当に美味しいのよ?3日くらいで味が落ち出すから街でもここまで美味しく食べられないし…」
蜘蛛パンもどきを手にショボンとするお母様。
チロッと時々上目遣いで見てくるから私が悪いみたいな罪悪感が湧いてくる。
「ひ…一口…少しなら…」
物凄く嫌だけどモソモソ食べるのを見たら拒否しきれなかった。
決死の覚悟でそう言ったのにぱあっと明るくなったあと、また少し暗くなる。
「あのっ…無理させたいわけじゃないの。美味しいから食べてみてほしかっただけなのよ…」
困ったようにそう言う。
我が母親ながら可愛いのが何か腹立つと勢いで蜘蛛パンもどきを奪って…流石にガブリとはいけなかったが少しかぶり付いて目を見開いた。
「…美味しい……!」
ふわっとして、ほんのり甘くて香ばしい。
バターのような香りすらあるがディニッシュのようなクドさや油っこさはない。
焼き立てのパンだと言われたら、こんな美味しいパンは初めてだと感動すらしそうな味だった。
「でしょでしょ?こんな美味しいのはせいぜい明日までねっ!半月近く日持ちするけど段々味が落ちてくからお母様は一週間以上経ったのは食べたくないくらいコレ好きなのっ。旅してた時は取り合いしたものよ~。茹で派もいたしね。でも、茹でたのも美味しいけどお母様は断然焼く派!」
さっきまでしょぼしょぼしてたのに生き生きと蜘蛛パンについて語りだした。
「味が落ちたらどう変わるの?」
「固くなっていくわ。一週間以上経つと甘みも抜けていくのよ」
なるほど…パンの劣化に近そうだ。
さっきまであんなに嫌悪していたというのにあの味を知るともう一口食べたくなる。
お母様、ニマニマして焼き立てを差し出してくる。
奪って齧った物を返し、受け取るとニマニマは満面の笑みへと変わった。
敵わないなぁ~。
そんな事を思いつつ大満足な夕食を終え、私達は木の上で眠りについた。
森に似つかわしく無い良い匂いが辺りに漂う。
今夜は少し暖かいので寝床は木の上だ。
いい感じの大木があったので魔法で切り倒した木で何枚か板を作り、寝てる間に落ちないよう同じ高さの枝の間に渡してある。
簡易ツリーハウスだ。
2本の縄と薪ほどの木の枝で作った梯子をロープに結び、引っ掛けて垂らせば昇り降りも楽々できる。
良い匂いはその木の下から漂っていた。
「美味しいわぁ♪シェリーちゃん天才!」
スープに入れた干し肉からたっぷりと旨味が出て、調味料は岩塩だけなのにコンソメスープに近い味わいのスープとなっていた。
他には下茹でしてアクを抜いた野草が入っている。
美味しさでいうと…正直少し物足りない程度だ。
だが。
「美味しいのはこっちよ!お母様も食べた!?」
道中見つけたハーブと塩で焼いたニードルディアの串焼きはジューシーで、柔らかな肉が最高に美味しかった。
牛肉に似ているがもう少し旨味が濃いというのだろうか。
見た目は赤身なのに霜降り肉の様に柔らかく、噛むたびじゅわっと肉汁がスープのように口に溢れる。
割とメジャーな肉なので何度も食べたことがあるはずなのにこんなに美味しいのは初めてだった。
侯爵家で出されていたニードルディアももちろん美味しかったのだが…こんなにジューシーな肉汁も無ければ、焼いただけでここまでの柔らかさもない。
もう少し独特の臭みもあり、ステーキなどシンプルな料理の時は牛肉の方が好きだった。
「そりゃ狩りたてだもの~。街で売ってる魔獣肉と鮮度が違うし当然よ。それよりこれも久々だけどフッカフカで美味しいわぁ~♪」
お母様がハフハフと食べているのは蜘蛛の例のアレである…。
確かに香ばしい匂いは悪くない。
でもマサオの記憶を知るまで蜘蛛は大の苦手だったのだ。
食べる勇気が出ない。
「採るとこ見たから抵抗あるのかもだけど本当に美味しいのよ?3日くらいで味が落ち出すから街でもここまで美味しく食べられないし…」
蜘蛛パンもどきを手にショボンとするお母様。
チロッと時々上目遣いで見てくるから私が悪いみたいな罪悪感が湧いてくる。
「ひ…一口…少しなら…」
物凄く嫌だけどモソモソ食べるのを見たら拒否しきれなかった。
決死の覚悟でそう言ったのにぱあっと明るくなったあと、また少し暗くなる。
「あのっ…無理させたいわけじゃないの。美味しいから食べてみてほしかっただけなのよ…」
困ったようにそう言う。
我が母親ながら可愛いのが何か腹立つと勢いで蜘蛛パンもどきを奪って…流石にガブリとはいけなかったが少しかぶり付いて目を見開いた。
「…美味しい……!」
ふわっとして、ほんのり甘くて香ばしい。
バターのような香りすらあるがディニッシュのようなクドさや油っこさはない。
焼き立てのパンだと言われたら、こんな美味しいパンは初めてだと感動すらしそうな味だった。
「でしょでしょ?こんな美味しいのはせいぜい明日までねっ!半月近く日持ちするけど段々味が落ちてくからお母様は一週間以上経ったのは食べたくないくらいコレ好きなのっ。旅してた時は取り合いしたものよ~。茹で派もいたしね。でも、茹でたのも美味しいけどお母様は断然焼く派!」
さっきまでしょぼしょぼしてたのに生き生きと蜘蛛パンについて語りだした。
「味が落ちたらどう変わるの?」
「固くなっていくわ。一週間以上経つと甘みも抜けていくのよ」
なるほど…パンの劣化に近そうだ。
さっきまであんなに嫌悪していたというのにあの味を知るともう一口食べたくなる。
お母様、ニマニマして焼き立てを差し出してくる。
奪って齧った物を返し、受け取るとニマニマは満面の笑みへと変わった。
敵わないなぁ~。
そんな事を思いつつ大満足な夕食を終え、私達は木の上で眠りについた。
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