勇者様の荷物持ち〜こんなモテ期、望んでない!〜

綺沙きさき(きさきさき)

文字の大きさ
236 / 266
第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?

61

 俺が振り向くより早く、押し倒されそうなくらいの勢いでその声の主に抱きしめられた。

「……ッ。無事でよかった……っ」

 まるで戦場で生き別れた友との再会かのようにおおげさに言ってドゥーガルドはさらに腕に力を込めた。

「ちょっ、ちょっと! く、苦しいっ」
「……ふふ、見ない間にずいぶん可愛い姿になって驚いた。純白の花嫁かと思ったぞ」
「今そういう寒い台詞いいから! ケツを撫でるな! というかマジで苦しい! クロが潰れる!」

 俺とドゥーガルドの間に挟まれて押し潰されているクロがさすがにかわいそうで抗議の声を上げる。
 
「……ああ、すまない。いたのか。ソウシしか見えなかった」
「絶対見えるだろ! どんだけ視野が狭くなってんだよ! とりあえず離れろ!」

 そう言うと、ドゥーガルドは渋々といった感じではあったが、俺を腕の中から解放した。
 少しの間とはいえ生死にも関わる押し潰され方をされたクロはカンカンだった。
 
「き、貴様! 私を殺す気か!」
「……確かにいつか殺す気ではあるが、今のは単なる事故だ。すまなかった」
「すまなかったですむか!」
「……安心しろ、その姿ではあまりに罪悪感が残る。次の満月の時、本来の姿に戻った際には勝負を決める」
「ふははは、世迷い言を抜かすな。その前に貴様など私が噛み殺してやる」

 グルル……ッ、と鋭い牙を見せて威嚇するクロと、冷たい無表情でそれを見下ろすドゥーガルド。
 
 なんでこいつら、似たもの同士なのにこんなに仲が悪いんだ……。
 
 同族嫌悪というやつだろうか。いずれにせよ、頭痛の種は増える一方だ。
 俺はハァ、と大きく溜め息を吐いた。
 
「お前ら、いい加減に――」
「ソウシ」
 
 無駄で面倒な争いが始まる前に二人を止めようとした時、くいくい、と服の裾をエグバードに引かれ言葉を飲み込んだ。
 
 し、しまった……! ついいつもの調子に戻って地声で話してしまった!
 
 今までの裏声もはっきりいって女のものとは思えなかったが、この地声は完全にアウトだ。
 その証拠に、怪訝そうにエグバードの眉間に皺が寄っている。
 
「あ、いや、これは、なんというか、その……」

 慌てて弁解しようとするが意味のない言葉が出てくるばかりだ。
 しかしエグバードの眉間の皺は俺の声のせいではなかった。
 
「あの男はなんだ? ……少しソウシに馴れ馴れしくはないか」
「……はい?」

 エグバードからの思いも寄らない言葉に目をパチパチと瞬かせる。
 恐らくドゥーガルドのことを言っているのだろうが、なぜか不機嫌になっているエグバードに俺は戸惑った。
 
「え、えっと、馴れ馴れしいとは……?」
「だって、そうであろう。まるで恋人かのような抱擁をして……、ソウシが嫌がっているというのに馴れ馴れしいではないか」
 
 そう言ってエグバードはむくれたまま、俺の腕にぎゅっと抱きついてきた。
 実際の年齢を知っている俺からすれば、拗ねた子どもにしか見えないのだが、実年齢を知らない上に俺へ偏執的恋愛感情を抱くドゥーガルドにはそうは見えなかったようだ。

「……お前こそ馴れ馴れしい、今すぐソウシから離れろ」

 ス……ッ、と剣を抜いてその切っ先をエグバードに向けた。
 これには俺も慌てた。
感想 119

あなたにおすすめの小説

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

「ねぇ、俺以外に触れられないように閉じ込めるしかないよね」最強不良美男子に平凡な僕が執着されてラブラブになる話

ちゃこ
BL
見た目も頭も平凡な男子高校生 佐藤夏樹。 運動神経は平凡以下。 考えていることが口に先に出ちゃったり、ぼうっとしてたりと天然な性格。 ひょんなことから、学校一、他校からも恐れられている不良でスパダリの美少年 御堂蓮と出会い、 なぜか気に入られ、なぜか執着され、あれよあれよのうちに両思い・・・ ヤンデレ攻めですが、受けは天然でヤンデレをするっと受け入れ、むしろラブラブモードで振り回します♡ 超絶美形不良スパダリ✖️少し天然平凡男子

俺の現実にヤンデレ総受けBLパッチが当てられたんだが。

田原摩耶
BL
ある日突然弟や友人たちにあらゆる矢印向けられたりボコられたりするややホラーBLです

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。