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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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「あ! そうだ! ここを少しでも早く我が家だと思ってもらえるよう私たちのことを『お父さん』『お母さん』って呼んでもらうのはどうかしら?」
「名案だね、さすがアシュリー」
「ふふふ、だって早くソウちゃんと家族になりたいもの」
「え、いや、あの、俺は……」
にこやかに善意百パーセントで話を進めていく上級陽キャ二人にたじろいでいると、アシュリーさんが悲しそうにしゅんと眉尻を下げた。
「あ……、やだ私ったらまた勝手にはしゃいじゃったわ。そうよね……、本当のご家族が元の世界にいるのに無神経だったわね……」
「いやっ、そういうわけじゃなくて……」
「私なんかじゃ、本当のご家族の代わりにすらなれないわよね、ごめんなさい、図々しい提案をして……」
「いやいや、本当にそういう意味じゃなくて……! えっと、お気持ちは本当に嬉しいです!」
今までのキラキラとした表情が嘘のように瞳を潤ませる姿に良心が痛くなって慌ててフォローすると、アシュリーさんの瞳にパァァと輝きが戻った。
あ、やばい……、と思ったが今さら言葉を撤回するわけにもいかない。
「本当に?」
「え、あ、はい……」
「よかった~! 図々しい提案をしてソウちゃんに嫌われたかと思ったからすごくホッとしたわ」
アシュリーさんは嬉しそうに言いながら目尻の涙を拭うと、おもむろに両腕を広げて俺に満面の笑みを向けた。
「そうと決まれば、さっそく呼んでみて」
「……え?」
俺は思わず聞き返した。
「だから、お母さんって呼んで。あ、もしくはママでもお母様でも構わないわよ! 好きに呼んでちょうだい」
ニコニコと上機嫌で可愛い笑みを浮かべながら俺のお母さん呼びを待つアシュリーさん。
彼女に悪意はないことは明らかだ。むしろこの言動のすべては善意と優しさで出来ている。
だからこそ簡単にノーと突き返せないのだ。
できれば、いや絶対、ドゥーガルドの妄想を助長させる言動は少しだってしたくない。
だが、キラキラと瞳を輝かせ期待の眼差しを向けるアシュリーさんを前にすると、途端に断固たる意志も揺らいでしまう。
何というか、子どもから砂で作った団子を「はい、どーぞ」と差し出された気持ちと似ている。
相手からの「わぁ、おいしい!」を期待している純粋無垢な子どもに「これは砂だから食べられない」と真顔で突き返す大人が果たしているだろうか……。
俺はちらりと視線を上げてアシュリーさんを見る。
にこにこと上機嫌に微笑む彼女は、俺がお母さんと呼んでくれると信じて疑っていない。
……仕方ない。
俺は腹を括った。
「…………お、おかあ、さん」
ドゥーガルドの妄想を助長する発言への躊躇もあるが、初対面の美女をお母さん呼びするのはなんだか気恥ずかしさもあり、俺は顔を背けてボソリと呟いた。
だが、そんな小さな声でもアシュリーさんは聞き逃さなかった。
「……ッ、ソウちゃん!」
アシュリーさんは感極まった様子で俺の名を呼ぶと、がばっと勢いよく抱きついてきた。
「なんていじらしいの……っ! 今までとても心細かったのね。大丈夫、これからは私にどんどん甘えて!」
腕に溢れんばかりの母性を込めてさらに強く、ぎゅううう、と抱きしめるアシュリーさん。
美女の柔らかな胸の感触と甘い香水の香りに包まれて、平常心を保てる童貞はいない。
俺も例に漏れずドギマギしていると、オリヴァーさんがこちらを見ながらコホン、と咳払いした。
あ、やばい……!
あれだけラブラブな夫婦なのだ、たとえ息子の恋人だろうと最愛の妻が他の男を抱きしめている図は見ていて気持ちのいいものではないだろう。
謝ってすぐに離れようとしたが、それを阻むようなタイミングでオリヴァーさんはスッと両腕を広げた。
そして、
「ソウシ君、私のことは呼んでくれないのかい?」
「……へ?」
思いがけない言葉に俺は目を丸くした。
「名案だね、さすがアシュリー」
「ふふふ、だって早くソウちゃんと家族になりたいもの」
「え、いや、あの、俺は……」
にこやかに善意百パーセントで話を進めていく上級陽キャ二人にたじろいでいると、アシュリーさんが悲しそうにしゅんと眉尻を下げた。
「あ……、やだ私ったらまた勝手にはしゃいじゃったわ。そうよね……、本当のご家族が元の世界にいるのに無神経だったわね……」
「いやっ、そういうわけじゃなくて……」
「私なんかじゃ、本当のご家族の代わりにすらなれないわよね、ごめんなさい、図々しい提案をして……」
「いやいや、本当にそういう意味じゃなくて……! えっと、お気持ちは本当に嬉しいです!」
今までのキラキラとした表情が嘘のように瞳を潤ませる姿に良心が痛くなって慌ててフォローすると、アシュリーさんの瞳にパァァと輝きが戻った。
あ、やばい……、と思ったが今さら言葉を撤回するわけにもいかない。
「本当に?」
「え、あ、はい……」
「よかった~! 図々しい提案をしてソウちゃんに嫌われたかと思ったからすごくホッとしたわ」
アシュリーさんは嬉しそうに言いながら目尻の涙を拭うと、おもむろに両腕を広げて俺に満面の笑みを向けた。
「そうと決まれば、さっそく呼んでみて」
「……え?」
俺は思わず聞き返した。
「だから、お母さんって呼んで。あ、もしくはママでもお母様でも構わないわよ! 好きに呼んでちょうだい」
ニコニコと上機嫌で可愛い笑みを浮かべながら俺のお母さん呼びを待つアシュリーさん。
彼女に悪意はないことは明らかだ。むしろこの言動のすべては善意と優しさで出来ている。
だからこそ簡単にノーと突き返せないのだ。
できれば、いや絶対、ドゥーガルドの妄想を助長させる言動は少しだってしたくない。
だが、キラキラと瞳を輝かせ期待の眼差しを向けるアシュリーさんを前にすると、途端に断固たる意志も揺らいでしまう。
何というか、子どもから砂で作った団子を「はい、どーぞ」と差し出された気持ちと似ている。
相手からの「わぁ、おいしい!」を期待している純粋無垢な子どもに「これは砂だから食べられない」と真顔で突き返す大人が果たしているだろうか……。
俺はちらりと視線を上げてアシュリーさんを見る。
にこにこと上機嫌に微笑む彼女は、俺がお母さんと呼んでくれると信じて疑っていない。
……仕方ない。
俺は腹を括った。
「…………お、おかあ、さん」
ドゥーガルドの妄想を助長する発言への躊躇もあるが、初対面の美女をお母さん呼びするのはなんだか気恥ずかしさもあり、俺は顔を背けてボソリと呟いた。
だが、そんな小さな声でもアシュリーさんは聞き逃さなかった。
「……ッ、ソウちゃん!」
アシュリーさんは感極まった様子で俺の名を呼ぶと、がばっと勢いよく抱きついてきた。
「なんていじらしいの……っ! 今までとても心細かったのね。大丈夫、これからは私にどんどん甘えて!」
腕に溢れんばかりの母性を込めてさらに強く、ぎゅううう、と抱きしめるアシュリーさん。
美女の柔らかな胸の感触と甘い香水の香りに包まれて、平常心を保てる童貞はいない。
俺も例に漏れずドギマギしていると、オリヴァーさんがこちらを見ながらコホン、と咳払いした。
あ、やばい……!
あれだけラブラブな夫婦なのだ、たとえ息子の恋人だろうと最愛の妻が他の男を抱きしめている図は見ていて気持ちのいいものではないだろう。
謝ってすぐに離れようとしたが、それを阻むようなタイミングでオリヴァーさんはスッと両腕を広げた。
そして、
「ソウシ君、私のことは呼んでくれないのかい?」
「……へ?」
思いがけない言葉に俺は目を丸くした。
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