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第3章 35歳にして、感動の再会
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テツ君に誘われ、昼食を一緒にとることになった。
久しぶりの再会を祝って自分が奢ると言ってきかないテツ君のお言葉に甘え、彼の行きつけのお店に連れて行ってもらったのだが、メニューを見てそのことを後悔した。
「テ、テツ君。ちょっと、そっちのメニューを貸してくれるかな?」
「いいっすけど、同じメニューですよ」
首を傾げながら渡してくれたメニューに目を走らせるが、やはり彼の言う通り、内容は一字一句同じものだった。
「テツ君、これ、絶対印刷ミスだよ」
値段の設定がいつも自分が行っている店とは桁違いで、金額を見るだけで胃もたれをおこしそうなほどだった。
ふるふると震える指先で値段を指しながら小声で言うと、テツ君は豪快に笑った。
「ははは、印刷ミスじゃないっすよ。幸助さんは相変わらずおもしろいですね」
全くウケを狙った覚えはないのだが、テツ君はツボにはまったようで声を立てて笑っている。
この金額に動じないところといい、高級そうなスーツといい、今の彼は随分羽振りがいいようだ。
仕事が決まったら、今度は自分が奢ろうと思っていた自分が恥ずかしい。
「幸助さんは、何が食べたいですか? この黒毛和牛フィレ肉の網焼きが特においしいんっすけど……」
「ぼ、僕は、サラダとパンがあれば十分」
返せない借りを作るわけにはいかない。
僕は引き攣った笑みで手を振った。
「そんな遠慮しないでくださいよ。幸助さんにはいろいろお世話になったんですから」
お世話になった?
まるで心当たりがない。
ただ一緒に映画を見てしゃべってばかりで、先輩らしいことをした覚えがまるでない。
むしろ、映画同好会廃部の危機を救ってくれたテツ君にこそ、僕は大きな借りがある。
僕と晴仁が二年に進級した時、先輩たちが卒業したため、同好会は僕ら二人だけだった。
同好会の存続には、最低部員が五名必要だった。
何とか二人は集まったが、あと一人が難しかった。
僕らの学校は部活の入部が絶対で、新入生のほとんどが既に他の入部を決めていた。
そんな中、入部してくれたのがテツ君だった。
新入生で部活が決まっていないのは彼だけだと知り、僕は毎日のようにテツ君に泣きつく勢いで勧誘した。
その成果が実を結び、見事、映画同好会は存続することができたのだ。
今思うと、札付きのワルだった彼によくあんな強引な勧誘ができたものだと、若かりし頃の自分に感心する。
若いってすごいなぁ……。
「じゃあ、俺のオススメを適当に頼んどきましたんで」
過去に思い耽っている間に、テツ君がいつの間にか店員さんに注文を済ませてくれたようだ。
注文を撤回するわけにもいかず、去っていく店員さんの背中をわたわたと見詰めることしかできなかった。
「あ、あの、幸助さん、ひとつお聞きしたいんですけど」
急に改まって、真面目な顔でテツ君が居直った。
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