35歳からの楽しいホストクラブ

綺沙きさき(きさきさき)

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第4章 35歳にして、初のホストクラブ!!

34

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「あ、あの、蓮さんが謝る必要はないです! 蓮さんの言ったことはその通りですから! なので頭を上げさせてください」
「えぇ~。まぁでも青りんごが言うなら……」

唇を尖らせつつ、桜季さんは蓮さんの頭から手を離した。
蓮さんは顔を上げると「テメェ、髪のセットが崩れるだろうが!」と目を尖らせ桜季さんに詰め寄った。

「あ、あの、蓮さん!」
「あ?」

額に青筋を立てた状態で振り返られ一瞬怯んだが、それでも何とか持ち堪えて口を開いた。

「蓮さんが言った通り、僕は指名がないので蓮さんのように売れている方たちの売り上げからお給料を頂くことになります。だから蓮さんが僕のことを不愉快に思うのは仕方ないことだと思います。でもっ、だからっ」

真っ直ぐ蓮さんの目を見詰めた。
僕の決心が少しでも伝わるように、目に力を込める。

「だから、僕は僕のできることを精一杯がんばらせてもらいます! それで、少しでもお給料に見合った仕事ができればと思っています。なので、あの、よろしくお願いします!」

頭を深く下げたが、返ってくるのは沈黙ばかりだった。
鬱陶しかっただろうか?
恐る恐る顔を上げて蓮さんの様子を窺い見ると、彼はぽかんと口を開けていた。
てっきり顔を露骨に顰めていると思っていたので、その表情に僕は少し驚いた。
しかし僕と目が合うと蓮さんはすぐに顔を顰めさせ、そっぽ向いてしまった。

「おっさんの決意表明なんて見苦しいんだよ。せいぜい俺の足だけは引っ張るなよ、おっさん」

吐き捨てるように言い捨てて、蓮さんは厨房から去って行った。

「あ~可愛げがないねぇ。これはまたお仕置きが必要かなぁ」
「や、やめてあげてください!」

桜季さんが呟いた不穏な言葉に、僕は慌てて首を振った。

「ふふふ、冗談だよぉ、冗談。まぁ、ドロップキックくらいはお見舞いするかもだけどねぇ」
「それもやめてあげてください……」
「まぁ、その話は置いといてぇ。はい、青りんご」

桜季さんが調理台からりんごをひとつ取って僕に投げてきた。
反射神経の鈍い僕だが、何とかまごつきながらもそれをキャッチすることができた。

「ウサギりんご作ってフルーツの盛り合わせの準備しといてねぇ。客を呼ぶだけが仕事じゃないんだって分からせてやろうよぉ」

桜季さんがにやりとピアスが光る口端を持ち上げた。

「……っ、はい!」

僕は桜季さんから受け取ったりんごをぎゅっと握った。
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