62 / 228
第5章 35歳にして、愛について知る
3
しおりを挟む
「な、なんで、僕なんですか! 僕にピアスをあけるのは諦めたんじゃなかったんですか!」
初出勤日に桜季さんにピアスをあけられそうになったが、その後はピアスについて触れてこなかったので、てっきり度の過ぎたジョークか諦めたかだと思っていた。
「え~、諦めてないよぉ。おれって諦めない男だからぁ。それに最近、おれと色違いのお揃いのピアス見つけたからこれはぜったい青りんごにつけてあげなきゃぁって思ってぇ」
「いえいえ結構です!」
僕は力いっぱい首を横に振った。
「遠慮しなくていいよぉ。青りんごとおれの仲じゃなぁい」
「いえいえ遠慮じゃなくて本当に結構なので! お揃いは彼女さんにしてあげてください!」
「え~、おれ今彼女いないよぉ。あ、それで青りんご遠慮していたのぉ? めっちゃかわいい~!」
ぐしゃぐしゃとまるで犬にするように僕の頭を撫でる桜季さん。
僕の渾身の拒否が全く通じていない。
「あ、あの、そういう意味じゃなくて……」
「色違いのピアス見つけた時に真っ先に青りんごの顔が思い浮かんだんだよねぇ。ピアスの色が青だからかなぁ。だからこれは何か運命的な感じがしてね~」
声を弾ませる桜季さんに僕の言葉は届いていないようだ。
うぅ、どうしよう……。
「と、とりあえず、ここを出ましょう! もう少しでミーティングも始まりますし!」
こういう時は逃げるが勝ちだ。
桜季さんの横をするりと通り過ぎようとしたが、その瞬間に強く腕を引っ張られ、そのまま壁に手首を貼りつけるようにして押さえ込まれてしまった。
後ろは冷たい壁。
前はにやにやと笑う桜季さん。
両側には柵のように彼の両腕が立ち塞がる。
……もしかしてこれ逃げられない?
こめかみに嫌な汗が流れる。
「えへへ~、壁ドン~」
「壁丼!?」
なんておいしくなさそうな食べ物だろう……。
いや、そもそも食べ物なのだろうか?
この状況で食べ物の名前を出るのはおかしいから、何か他の意味の言葉なのかもしれない。
壁どんっていう最近流行っているキャラクターとか?
壁どんのことで頭がいっぱいになっていると、不意に耳たぶをぺろりと舐められた。
初出勤日に桜季さんにピアスをあけられそうになったが、その後はピアスについて触れてこなかったので、てっきり度の過ぎたジョークか諦めたかだと思っていた。
「え~、諦めてないよぉ。おれって諦めない男だからぁ。それに最近、おれと色違いのお揃いのピアス見つけたからこれはぜったい青りんごにつけてあげなきゃぁって思ってぇ」
「いえいえ結構です!」
僕は力いっぱい首を横に振った。
「遠慮しなくていいよぉ。青りんごとおれの仲じゃなぁい」
「いえいえ遠慮じゃなくて本当に結構なので! お揃いは彼女さんにしてあげてください!」
「え~、おれ今彼女いないよぉ。あ、それで青りんご遠慮していたのぉ? めっちゃかわいい~!」
ぐしゃぐしゃとまるで犬にするように僕の頭を撫でる桜季さん。
僕の渾身の拒否が全く通じていない。
「あ、あの、そういう意味じゃなくて……」
「色違いのピアス見つけた時に真っ先に青りんごの顔が思い浮かんだんだよねぇ。ピアスの色が青だからかなぁ。だからこれは何か運命的な感じがしてね~」
声を弾ませる桜季さんに僕の言葉は届いていないようだ。
うぅ、どうしよう……。
「と、とりあえず、ここを出ましょう! もう少しでミーティングも始まりますし!」
こういう時は逃げるが勝ちだ。
桜季さんの横をするりと通り過ぎようとしたが、その瞬間に強く腕を引っ張られ、そのまま壁に手首を貼りつけるようにして押さえ込まれてしまった。
後ろは冷たい壁。
前はにやにやと笑う桜季さん。
両側には柵のように彼の両腕が立ち塞がる。
……もしかしてこれ逃げられない?
こめかみに嫌な汗が流れる。
「えへへ~、壁ドン~」
「壁丼!?」
なんておいしくなさそうな食べ物だろう……。
いや、そもそも食べ物なのだろうか?
この状況で食べ物の名前を出るのはおかしいから、何か他の意味の言葉なのかもしれない。
壁どんっていう最近流行っているキャラクターとか?
壁どんのことで頭がいっぱいになっていると、不意に耳たぶをぺろりと舐められた。
31
あなたにおすすめの小説
転生したが壁になりたい。
むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。
ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。
しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。
今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった!
目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!?
俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!?
「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」
人気アイドルが義理の兄になりまして
三栖やよい
BL
柚木(ゆずき)雪都(ゆきと)はごくごく普通の高校一年生。ある日、人気アイドル『Shiny Boys』のリーダー・碧(あおい)と義理の兄弟となり……?
彼はオレを推しているらしい
まと
BL
クラスのイケメン男子が、なぜか平凡男子のオレに視線を向けてくる。
どうせ絶対に嫌われているのだと思っていたんだけど...?
きっかけは突然の雨。
ほのぼのした世界観が書きたくて。
4話で完結です(執筆済み)
需要がありそうでしたら続編も書いていこうかなと思っておいます(*^^*)
もし良ければコメントお待ちしております。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。
それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。
友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!!
なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。
7/28
一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。
【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる